「羽田空港で日本航空機が炎上、海保機と衝突」(BBC NEWS JAPAN)
https://www.bbc.com/japanese/67862916
羽田空港で日本航空機が炎上、海保機と衝突 乗客乗員379人全員脱出と
2024年1月2日・更新 2024年1月3日
Reuters
羽田空港の滑走路で燃え上がる日本航空機(2日)
東京都大田区の羽田空港で2日午後5時50分ごろ、着陸した日本航空(JAL)の旅客機が滑走路で海上保安庁の航空機と衝突し、炎上した。岸田文雄首相は同日午後9時前、記者団に対し、乗客乗員379人全員が機体から脱出したことと、海上保安庁機の乗員6人のうち5人が死亡したことを明らかにした。海上保安庁機JA722A機は、能登半島地震の支援に向かおうとしていたという。
炎上したのは日本航空のJAL516便。午後4時に新千歳空港を出発し、午後5時40分に羽田に着陸する予定だった。NHKなど複数メディアは、日本航空の話として、乗客乗員379人全員が機体から脱出したと伝えた。乗客は367人で、うち8人が子どもだという。
日本航空は2日夜、「本日1月2日夕刻、当社のJAL516便が羽田空港に着陸した際、海上保安庁の航空機と接触し滑走路上で炎上しました。お亡くなりになられた海上保安庁の関係者の方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。当社便にご搭乗されていたお客さま、乗員は全員脱出したことを確認しております」とコメントした。
首相官邸は、海上保安庁JA722A機とJAL516便が衝突したとし、岸田首相が、「1. 関係省庁、関係機関の緊密な連携のもと、被災者の救出・救助活動に全力を尽くすこと 2. 早急に被害状況を把握するとともに、国民への適切な情報提供に努めること」を指示したと発表した。
岸田首相は午後9時前に首相官邸で記者団に対し、日航機の乗客乗員が無事だったことと、海上保安庁機の乗員6人のうち5人が死亡したことを明らかにした。首相は、海上保安庁の乗員たちが能登半島地震の支援へ向かうところだったと説明。「大変残念なことで、その使命感に敬意と感謝を表し、哀悼の誠をささげる」と述べた。
事故原因は
国土交通省と海上保安庁は2日午後9時過ぎに記者会見し、海上保安庁機の乗員6人のうち5人が死亡したことと、機長が負傷しているが意識があることを明らかにした。海保の瀬口良夫次長は「ご迷惑をかけた皆様に深くおわびする」としたうえで、「かけがえのない職員の命を失ってしまったことは、痛恨の極み」と述べた。国交省の平岡成哲航空局長は事故状況について、「C滑走路に南側からJAL機が着陸しようとしていた。滑走路上に海上保安庁の機体があり、そのまま衝突した。どういう形で衝突をしたのか、詳細はまだ確認できていない」と話した。
複数報道によると、日本航空は3日未明に記者会見し、乗員から聞き取った内容として、日航機機に対する管制からの着陸許可を認識し、復唱した後に着陸操作を実施したと発表した。
国土交通省は3日、管制官とJAL516便や海保JA722A機との交信記録を公表した。それによると、海保機に対して滑走路への進入指示は出ていなかった様子。管制塔が「JA722A、東京タワー、こんばんは。1番目、C5上の滑走路停止位置まで地上滑走してください」と指示したのに対して、海保機は「滑走路停止位置C5へ滑走します。JA722A、1番目。ありがとう」と答えている。滑走路停止位置は、滑走路手前の誘導路にある。
一方で朝日新聞などの報道によると、海保機の機長は事故直後、「管制官から離陸許可が下りていたという認識だった」という趣旨の内容を話していたという。
燃える日航機から脱出する人たち(動画提供:@ricole0704)
事故について専門家は
英キングス・コレッジ・ロンドンのアレッシオ・パタラノ教授はBBCに対して、「日本の滑走路のほとんどがそうだが、羽田空港も同様だ」として、「自衛隊や緊急対応のフライトが最優先されるのは、きわめて極端な事態に限られている。そのため、民間機と滑走路を共有しなくてはならない」のだと話した。
英クランスフィールド大学で交通システム研究を主導するグレアム・ブレイスウェイト教授(事故原因調査)は、燃え上がる日航機が滑走後に停止した映像を見ながら、「衝突によって左側のエンジンが衝撃を受けたことで、燃料ラインが破裂したようだ」と解説。「その時点で巨大な火の玉が上がり、それ以降は燃料漏えいが続いているようだ。燃料が機体から流れ落ち続けることで、非常に厳しい事態になる」と説明した。
「脱出可能になってすぐに乗務員たちは非常扉を開いたはずで、それによって脱出シューターが自動的にふくらんだはずだ」、「客室の座席その他の材料は防火素材でできているが、燃えないわけではない。それでも、あの量の燃料であれほど激しい炎が燃え上がったのは意外だった」と教授は話した。
煙が充満する機内から脱出しようとする乗客
教授はさらに、「どの空港でも救急消防隊は3分以内にどの場所にも到達できるよう待機していて、実際の機体到達目標時間は2分だ。第一に、脱出を妨げるような炎の消火が優先される。旅客機は設計段階で、脱出口が半分しか使えない状態でも、90秒以内に全員が脱出できるよう設計されている」と解説した。
機体が保たれたことが脱出を可能に=専門家
衝突したJAL機はエアバス「A350」。2人の航空専門家はBBCニュースに、機体の主要構造が保たれたことで、乗客乗員379人の脱出が可能になったと話した。
元パイロットのアラステア・ローゼンシャイン氏は、A350が別の飛行機と「非常に強く衝突」したにもかかわらず機体が崩壊しなかったことで、日航機の機長たちは滑走路で停止させることができたのだろうと指摘した。
ローゼンシャイン氏によると、A350はカーボンファイバーなど強力な新素材で造られているため、燃え続ける炎にも長時間にわたり耐え続け、そのことも乗客乗員の脱出を可能にしたと話した。
旅行アナリストのサリー・ゲシン氏は、航空機の枠組み設計では軽量化と強度の維持が課題なのだと説明。それだけに、全員が脱出できるまでA350が構造の一体性を維持したことは「まったく信じられない」として、その「強靭さ」を証明したと述べた。
(英語記事 Japan Airlines plane in flames on runway in Tokyo)
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https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-67869818
「奇跡だ、助からないと思った」 日航機炎上事故で乗客らが見たもの
2024年1月3日
グレアム・ベイカー、BBCニュース
Reuters
燃え上がる日本航空機と消火活動にあたる消防車(2日、東京・羽田空港)
乗客乗員379人を乗せた日本航空516便が2日、着陸した羽田空港で海上保安庁の航空機と衝突した時、最初に襲ってきたのは衝撃だった。
炎に包まれながら滑走路を走るJAL便内には、煙と熱が立ち込めた。
そして生存本能が働き始め、人々は煙が充満し機体から逃げようと奔走した。
JAL516便に搭乗していた全員が脱出したことは、それだけで並外れたことだ。複数の専門家は、完璧な避難と最新テクノロジーが、脱出成功に大きく寄与したと指摘している。
一方、能登半島地震の支援に向かおうとしていた海上保安庁機では、乗員6人のうち5人が死亡。残る機長は重傷だという。
2日午後5時40分に羽田空港で何があったのか、なぜ両機が同じタイミングで同じ滑走路にいたのか、調査が進められている。
現時点では、乗客が自ら撮影した動画や証言を通じて、数分間の恐ろしい体験と、助かったことへの驚きを語っている。
スウェーデン出身のアントン・デイベさん(17)はスウェーデン紙アフトンブラーデットに対し、エアバスA350機が海上保安庁機と衝突し、滑走路で停止した際の混乱をこう語った。
「数分間で、客室内に煙が充満した」
「煙がものすごく染みて痛くて、地獄みたいだった。あれは地獄だった」
「ばっと床に伏せると、非常扉が開いて、そこに飛び込んだ」
「どこに行くのかも分からなかったので、ただ外に走り出た。混乱状態だった」
スウェードさんと家族は、けがもなく飛行機から脱出できた。
煙が充満する機内から脱出しようとする乗客
山家聡さん(59)は、最初の衝突で飛行機が「横に傾き、大きな衝撃を感じた」と話した。
別の乗客は、「着陸時に飛行機が何かにぶつかるような衝撃があった。窓の外では火花が散り、機内は煙で充満していた」と説明した。
共同通信が取材した別の乗客は、「着陸したと思ったら何かにぶつかって上に突き上げられるような衝撃があった」と話した。
複数の乗客がその瞬間を、携帯電話で撮影した。
飛行機が停止し、まだ火花を散らしているエンジンからの赤い光を撮影した乗客もいた。別の乗客は機内の様子を撮影したが、乗客が叫び、客室乗務員が次の行動を指示しようとするなか、煙が立ち込め、カメラのレンズはすぐに曇り、何も見えなくなった。
NHKの取材に応じた乗客の女性は、着陸後に火災が激しくなり、機内は真っ暗だったと語った。
「機内は熱くなっていて、正直、助からないと思った」
別の乗客によると、非常扉が一部しか使われていなかったため、脱出は大変だったという。「後方と中央のドアは開けられないとアナウンスがあったので、みんなが前から降りた」と、この乗客は説明した。
「教科書通りの避難」
燃える日航機から脱出する人たち(動画提供:@ricole0704)
乗客らが脱出シューターから降りてくる様子をとらえた映像もある。激しく燃え上がる機体から逃げようとして転げ落ち、より安全な場所に走っていく人も見受けられる。
かさばる手荷物を抱えている人はいないように見える。これは、客室を素早く無人にするための重要な要素だ。
航空アナリストのアレックス・マケラス氏はBBCに対し、乗務員は、衝突後の重要な最初の数分間に「教科書通りの避難を開始することができた」と説明した。
火災は最初の90秒間、エアバスA350の「1カ所だけに抑え込まれて」いたため、乗務員が全員を脱出させるための短い余裕があった。
マケラス氏はまた、全ての脱出口が開いていない様子から、炎から離れているのはどのドアかを乗務員が明確に把握していたのだろうと指摘した。一方で、パニックに陥った乗客が例えばロッカーから荷物を取ろうとするなどすれば、それで避難が遅れる可能性もあったと付け加えた。
エアバスA350は、カーボンファイバーの複合素材で作られた最初の商用機の一つ。機体が最初の衝突とその後の火災に耐えられたのは、そのためだと考えられている。
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火が急速に燃え広がり、飛行機を飲みこむ中で、全員脱出は成し遂げられた。映像でには、飛行機の胴体が真っ二つに割れ始めるなか、消防士たちが炎を食い止めようと奮闘している様子が映っていた。
乗客の山家さんはこうした混乱の中で、全員の脱出には5分ほどかかったと話し、「火は10分か15分で燃え広がっていた」と付け加えた。
乗客の沢田翼さん(28)は、「奇跡としか言えない。死ぬかもしれなかった」と話した。
火災が鎮火されたのは数時間後だった。乗員乗客のうち14人が軽傷を負った。
乗客たちはすでに、自分たちが経験したことを受け入れ、友人や愛する人々に無事を伝え、これから起こることに備えようとしていた。
「なぜこんなことが起きたのか知りたい」と言った沢田さんは、その答えが出るまでは他の飛行機に乗るつもりはないと付け加えた。
飛行機の火災は数時間後に消し止められた
(英語記事 How passengers escaped 'hell' of Japan jet fireball )
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https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-67879255
海保機への滑走路進入指示、交信記録になく 羽田空港の日航機炎上で国交省が記録公表
2024年1月4日
Reuters
滑走路で海上保安庁機と衝突し炎上した日本航空機(2日、東京・羽田空港)
東京・羽田空港の滑走路で2日夜に日本航空(JAL)の旅客機と海上保安庁の航空機が衝突し、5人が亡くなった事故で、国土交通省は3日夕、管制官と両機との交信記録を公表した。記録によると、海保機に対する滑走路への進入指示はなかった。
日本政府や警視庁などによると、JAL機と海保機の衝突で、炎上したJAL機の乗員乗客379人が避難した。乗客乗員のうち14人が負傷したという。一方、海保機の乗員6人のうち5人が死亡。機長は重傷を負った。
この事故について国土交通省は3日、空港管制官とJAL516便や海保JA722A機との交信記録を、BBCなど報道各社に公表した。それによると、海保機に対して滑走路への進入指示は出ていなかった様子。
JAL516便は、札幌の新千歳空港を午後4時15分ごろに出発し、午後5時47分に羽田のC滑走路へ着陸した。海保JA722A機は、羽田空港航空基地に所属していた。
管制塔が午後5時45分11秒、「JA722A、東京タワー、こんばんは。出発機1番目、C5上の滑走路停止位置まで地上滑走してください」と指示したのに対して、海保機はその8秒後、「滑走路停止位置C5へ滑走します。JA722A、出発機1番目。ありがとう」と答えている。滑走路停止位置は、滑走路手前の誘導路にあり、離陸予定の飛行機はここで滑走路に入る順番を待つ。
事故前の交信記録によると、海上保安庁機JA722Aと管制塔の交信はこれで終わっている。
一方で朝日新聞などの報道によると、海保機の機長は事故直後、「管制官から離陸許可が下りていたという認識だった」という趣旨の内容を話していたという。
国交省が公表した記録によると、管制官は海保機とのやりとりに先立つ午後5時43分2秒、JAL機に対して「滑走路34Rに進入を継続してください」と指示。午後5時44分56秒には、「滑走路34R 着陸に支障なし」と連絡し、JAL機は5秒後に同じ内容を復唱している。
複数報道によると、日本航空は3日未明に記者会見し、乗員から聞き取った内容として、日航機に対する管制からの着陸許可を認識し、復唱後に着陸操作を実施したと発表した。
BBCはこのほか、当該の滑走路停止位置でいくつか照明が点灯していなかったとの情報も得ている。しかし、これについて専門家は、滑走路とその周辺の区域には、誘導灯など照明だけでなく、滑走路に入る前の停止位置がペンキなどでマーキングされていると指摘する。
Reuters
炎上した日本航空のエアバスA350機を調べる当局(3日、羽田空港)
乗客の1人は共同通信に対して、「着陸時にボンと何かにぶつかったように突き上げる感じがした。窓から火花が見え、機内にガスや煙が充満した」と話している。
現場の生中継映像では、着陸したJAL機から大きな火の玉が上がり、JAL機が燃えながら滑走し、停止する様子が映っていた。乗客は非常扉から脱出シュートで脱出し、走って機体から離れた。
乗客の1人はソーシャルメディアに現場の写真を投稿し、「乗ってました。無事です。よかった」と書いた。
当局によると、日航機の乗務員は着陸前に特に異常を報告していなかったという。
日本航空は2日夜、「本日1月2日夕刻、当社のJAL516便が羽田空港に着陸した際、海上保安庁の航空機と接触し滑走路上で炎上しました。お亡くなりになられた海上保安庁の関係者の方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。当社便にご搭乗されていたお客さま、乗員は全員脱出したことを確認しております」とコメントした。
岸田首相は同日午後9時前に首相官邸で記者団に対し、日航機の乗客乗員が無事だったことと、海上保安庁機の乗員6人のうち5人が死亡したことを明らかにした。
首相は、「能登半島地震の対応のために搭乗していた海上保安庁の職員6人のうち、5人が死亡したと報告を受けた。この方々は被災地、被災者のために高い使命感、責任感を持って職務にあたっていた職員で、大変残念なことだ。その使命感に敬意と感謝を表し、哀悼の誠をささげる」と述べた。
海上保安庁機は能登半島地震の被災地支援のため、新潟航空基地に救援物資を輸送する途中だった。
衝突したJAL機はエアバス「A350」。A350は、強くて軽い複合素材のカーボンファイバー強化プラスチックを多く使用している。A350が関係する大事故は、今回が初めて。
エアバス社は2日、事故原因調査を支援するために専門家チームを日本に派遣すると発表した。
(英語記事 Japan Airlines: Coastguard plane not cleared for take-off, transcripts show)
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(投稿者より)
海保機の亡くなられた乗員の皆様の御冥福をお祈りいたします。併せて、この事故で負傷なさった方々にお見舞いを申し上げます。
日航機の乗客は18分で全員が避難することが出来ました。これについては海外から奇跡との声があったようです。一方、荷物室に預けられていた2匹のペットは助からなかったことから、一部のSNSから非難の声が上がっていました。極限状態の中ですから仕方ないようにも思えますが、今後このことについて議論が発生するかも知れません。
更に1つの原因として、管制塔には滑走路への誤進入をモニター上で管制官に注意喚起するシステムがあるのですが、このモニターに表示された注意喚起を管制官が見落とした可能性が指摘されています。
原因の究明が待たれますが、犯人を捜して責任を負わせるのでは無く、今後の改善に繋がる形を作って頂きたいと願っております。