「ローマ教皇、ウクライナに『白旗』促す」(BBC NEWS JAPAN)
https://www.bbc.com/japanese/articles/ckrx1nd2804o
ローマ教皇、ウクライナに「白旗」促す 強い反発と批判の声
Reuters
ローマ教皇フランシスコ
2024年3月11日
キリスト教カトリック教会のトップ、ローマ教皇フランシスコが、今月放送予定のスイスの放送局RSIのインタビューで、ウクライナにロシアとの戦争を終わらせるために交渉し、「白旗を揚げる勇気」をもつよう求めた。ウクライナ側は強く反発している。
このインタビューは2月に収録され、今月20日に文化番組の中で放送される予定。
ロイター通信によると、教皇はインタビューで、ウクライナにロシアとの和解を求める人々と、和解は侵略を正当化することになると主張する人々の間の議論に関してコメントを求められた。その際、インタビューをした人は和解について、「白旗」を振るという表現を使った。
教皇はこれを受け、「最も強い者は、状況を見て、国民のことを考え、白旗を揚げる勇気をもって、交渉する者だ」と発言した。
さらに、「敗北し、物事がうまくいっていないと分かったら、交渉する勇気をもたなければならない」と付け加えた。
ウクライナ大統領らが批判
この発言はウクライナ内外で激しく批判されている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は10日夜の定例ビデオ演説で、教皇には直接言及せず、「ロシアの人殺しや拷問部屋がそれ以上、欧州へ進撃することができないのは、青と黄の旗の下で武器を手にしたウクライナ人が、ロシアの進軍を抑え込んでいるからだ」と述べ、さらに戦争の最前線にいるウクライナ人の司祭らの働きをたたえた。
「彼らは最前線にあって、命と人間性を守り、祈りと会話、行動でサポートしている」
「これこそが教会だ。人々と共にある。2500キロメートル離れたどこかにいて、生きたい人とこちらを破滅させようとする者たちの仲介を仮想世界でやろうとするのとは違う」
ドミトロ・クレバ外相も同日、「私たちの旗は黄色と青だ。私たちはこの旗とともに生き、死に、勝利する。これ以外のいかなる旗も掲げない」とソーシャルメディアに投稿した。
ウクライナの駐ヴァチカン大使は教皇のコメントを、第2次世界大戦中にアドルフ・ヒトラーとの会談を提唱した声になぞらえた。
多くのウクライナ国民もソーシャルメディアで、教皇発言を強く批判している。その中には、ウクライナ・ギリシャ・カトリック教会のトップも含まれる。
一方、ポーランドのラデク・シコルスキ外相は、教皇はバランスを取るため、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対しても、ウクライナから軍を撤退させる勇気をもつよう促すのかと問いかけた。
Reuters
ウクライナ軍はこのところ東部で守勢に回っている
ヴァチカンが弁明
こうした反発を受け、ヴァチカン(ローマ教皇庁)のマッテオ・ブルーニ報道官は、教皇は降伏ではなく、交渉によって戦闘を止めようと言っているのだと説明。
「(教皇は)交渉の勇気によって至る停戦について言及するため、インタビュアーが口にした白旗のイメージを使った」と述べた。
また、教皇が「交渉は決して降伏ではない」と明言してきたとも付け加えた。
ロシアの本格侵攻が始まって2年以上がたち、ウクライナは守勢に回っている。ロシアは先月、戦略上重要なアウディイウカを掌握。以来、ロシア軍は西進し、いくつかの村を占拠している。
こうしたなか、アメリカではウクライナに600億ドル(約8.8兆円)規模の支援をする予算案が、議会下院で可決されないままになっている。ヨーロッパでも各国が、ウクライナ支援の方法について合意を形成できないでいる。
(英語記事 Ukraine criticises Pope's 'white flag' comment)
関連トピックス 宗教 ウクライナ侵攻 ウォロディミル・ゼレンスキー 外交 ウクライナ ロシア 欧州 ローマ教皇フランシスコ
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ウクライナ、ヴァチカン大使を呼び出し 教皇の「白旗」発言めぐり
Getty Images
ウクライナ当局はヴァチカンの駐ウクライナ大使ヴィスバルダス・クルボカス大司教(写真)を呼び出した
2024年3月12日
キリスト教カトリック教会のトップ、ローマ教皇フランシスコが、ウクライナはロシアに「白旗を揚げる勇気」をもつべきだと発言したのを受け、ウクライナ当局が11日、ヴァチカン(ローマ教皇庁)大使を呼び出した。
ウクライナ外務省によると、同国政府はヴァチカンの駐ウクライナ大使ヴィスバルダス・クルボカス大司教に対し、教皇の発言に「失望した」と伝えたという。
外務省は大使の呼び出しに関して声明を発表。「教皇庁のトップは強者の権利を合法化し、向こう(ロシア)が国際法の規範をこれ以上無視するのを奨励するのではなく、善が悪に確実に勝利するため急いで力を合わせる必要があると世界にシグナルを送ることや、被害者ではなく加害者に訴えかけることが期待されると伝えた」とした。
教皇をめぐっては、来週放送予定のスイスの放送局RSIによるインタビューの発言録が公表され、ウクライナで怒りが広がっている。
この発言録について報じたロイター通信によると、教皇は「最も強い者は、状況を見て、国民のことを考え、白旗を揚げる勇気をもって、交渉する者だ」と発言した。白旗は伝統的に戦場での降伏の象徴となっている。
ヴァチカンの報道官は、教皇は降伏ではなく、交渉によって戦闘を止めようと言っているのだと説明した。
それでもウクライナは、不快感を明確に示そうとしている。
ロシアに屈服との見方の払拭図る
ウクライナは、ロシアによる侵攻から2年以上が経過した現在、ロシアに屈服するとの見方を打ち消そうと躍起になっている。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は11日夜の演説で、「この戦争の正当な終わり方を決めるのはウクライナであることを確実にするため、今こそ私たちが最大の集中力と最大の取り組みを示す時だ」、「私たちは耐えられる。私たちは勝たなくてはならない」と国民に訴えかけた。
この演説の前には、ゼレンスキー氏は仏放送局BFMテレビの取材で、「ウクライナ東部でロシアの進軍を食い止めた」と述べた。
この主張が正しいのかは確認されていない。
ゼレンスキー氏はまた、ロシアの「脅威に対応」するため、ウクライナが全長2000キロメートルに及ぶ防衛要塞を建設中だと述べた。既存の要塞を補強し、新たな要塞を作っているという。
西側支援の遅れ
米議会の上院情報委員会では11日、中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官が、戦争の勢いはロシアに傾いているとの見方を提示。ウクライナはさらなる支援が得られなければ、今年中に「大きな地盤」を失う可能性が高いと述べた。
バーンズ氏はまた、「ウクライナ人が勇気と粘り強さを失いつつあるわけではない」、「彼らは弾薬がなくなりつつあり、私たちは彼らを助けるための時間がなくなりつつある」とした。
アメリカは戦争を続けるウクライナにとって最大の支援国だが、このところ支援が停滞している。議会下院は、ウクライナへの600億ドル(約8.8兆円)の軍事支援を含む950億ドル規模の予算案をめぐって行き詰まっている。
今秋の米大統領選挙で大統領が交代すれば、支援が完全に途絶えることも懸念されている。
ウクライナの国防相は先月、欧米によるウクライナ支援の半分が遅れており、ウクライナの人命と領土が犠牲になっていると述べた。
ゼレンスキー氏は、大方失敗に終わった昨年の反転攻勢で開始が遅れたのも、東部の要衝アウディイウカを奪われたのも、西側からの武器の供給が滞っているせいだとしている。
(英語記事 Ukraine war: Vatican envoy called in over Pope 'white flag' remarks)
関連トピックス 宗教 ウクライナ侵攻 ウォロディミル・ゼレンスキー ウクライナ ロシア ローマ教皇フランシスコ
(投稿者より)
ドイツ軍のビデオ会議の内容をロシア側がSNS上にリークする事件がありました。内容は「クリミアとロシアを結ぶ橋をミサイルでどう攻撃できるか」だそうです。
ウクライナの劣勢が明らかになりつつある中、欧州諸国がロシアの勝利を阻むためにウクライナに地上部隊を投入するかどうかが現実的な検討課題に成りつつあります。