【視点】プラグマティズムと二重性は日本外交の基盤/日本のAUKUS加盟で、地域諸国との関係はどうなるか?/【視点】日本のNATO加盟は現実的か?(Sputnik日本)

【視点】プラグマティズムと二重性は日本外交の基盤/日本のAUKUS加盟で、地域諸国との関係はどうなるか?/【視点】日本のNATO加盟は現実的か?(Sputnik日本)









https://sputniknews.jp/20240418/18219293.html





【視点】プラグマティズムと二重性は日本外交の基盤





2024年4月18日, 09:00







© AP Photo / Jeff Chiu





リュドミラ サーキャン






日本外務省のホームページ上で公表された2024年版外交青書では、緊迫化する国際情勢により、同盟国・同志国間のネットワークを「重層的」に構築することが重要であり、そのために日米韓、日米豪などの枠組みを活用しつつ、オーストラリア、インド、欧州諸国、NATOなどとの安全保障上の協力を強化すると記載されている。日中関係については、「戦略的互恵関係」を包括的に推進するとし、日韓関係については「両国の緊密な協力が今ほど必要とされる時はない」と明記されている。





日露関係に関しては「北方領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持していく」としている。また「厳しい対露制裁を課すとの方針を継続している」と記載されているほか、エネルギー分野については「ロシアのエネルギーへの依存をフェーズアウトする方針」だが、ロシアにおける石油・天然ガス開発事業「サハリン1」および「サハリン2」については権益を維持する方針をとっていると記されている。



ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所日本研究センターの上級研究員オレグ・カザコフ氏は、日本の外交青書で反映されているプラグマティズムと二重性が今日の現実だと主張している。





「国家間には多くの問題や対立が存在している。米中関係は危機的状況にあるように見えるが、両国は交渉を行っており、2つの椅子に座ろうとしている。中国とベトナム、中国とフィリピン、日本と韓国などの間にも係争中の問題がある。単純な解決策はなく、国益を擁護しながら既存の軌道に沿って進む必要がある。



挑戦的な姿勢や緊張がエスカレーションするリスクが存在しており、それらが何も良いことをもたらさないのを誰もが理解している。前世紀は、深刻な対立が生じた場合に国家間の関係が断たれた。しかし現在、各国は政治的立場の違いにもかかわらず、関係の維持に努めている。関係の断絶は外交の崩壊だ。したがって日本は出口のない状況でも合理的に問題を解決しようとしている。この二重性は中国外交にも存在している。明確にどちらか一方の側につくことはせず、自制を発揮し、自分たちの国益を追求する。日本も同じ路線を取っている。なぜなら例えば中国との関係断絶は日本にとって破滅的だからだ。



ロシアは日本にとって経済的および政治的関係という点ではそれほど重要ではないが、関係を断って自分の『人生』を台無しにはしたくない。なぜなら外交とは話し合いをして合意することであり、問題を武器で解決することではないからだ」




オレグ・カザコフ氏

ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所日本研究センターの上級研究員




ロシア高等経済学院世界経済国際政治学部のイリーナ・ゴルデーワ准教授は「日本の外交青書外交政策のベクトル合わせであり、まずは実用主義的な思考に立脚している」と考えている。





「それは(日本にとって)有益なことであり、日本が望んでいることでもある。米国はアジア太平洋地域の安全保障をめぐり、日本にその管理を任せたいと考えており、日本自体も原材料市場、販売市場、物流、生産チェーンが集中する同地域で自国の役割を強化することに関心がある。一方、日本はこれを単独で行うことはできないため、米国や同地域の他の国々、特にオーストラリア、インド、フィリピンから支援を取り付けようとしている。日本は独自に、また他国の支援を受けて自国の防衛力を増強しており、自分たちの憲法の平和主義規定から徐々に遠ざかっている。



しかし日本は、政治と経済を分離している。日本の中国との貿易額は膨大であり、日本は何千もの経済的な糸で太平洋地域の国々とつながっている。したがって自国に損害を与えないように慎重に行動しなければならない。



そのためロシアの立場によって実現不可能である領土問題を解決するという立場を宣言しながらも、日本が原材料分野における有益な経済プロジェクトを急いで放棄することはない。対露制裁が発動されていても、現段階ではエネルギー資源を獲得するより効果的な機会がないため、日本はサハリン・プロジェクトへの参画を維持している。日本はスポット市場でガスを購入し、オーストラリアや他のLNG生産国からも購入しているが、サハリン・プロジェクトの権益は、エネルギー資源を迅速かつリーズナブルな価格で得る機会である」




イリーナ・ゴルデーワ氏

ロシア高等経済学院世界経済国際政治学部の准教授




サンクトペテルブルク国立大学東洋学部の職員、エフゲニー・オスマノフ氏は、「日本にとって安全保障は存亡に関わる問題だ」と考えている。





「日本にとって経済は政治よりもはるかに重要である。特に日本は原材料の分野で脆弱であるため、ロシアとの関係において日本は策動の余地を残している。中国については、友好的なレトリックにもかかわらず、実際のところ関係は政治面において非常に不安定だ。



台湾をめぐって紛争が起きた場合、日本がどちらの側につくかは誰もが知っている。一方、外交青書は行動指針ではなく、国際社会を含む社会に向けた文書である。そしてそこでは、日本が直面している課題と、それらの課題に日本がどのような方法で対処するつもりであるかが記載されているだけである。日本がやるべき事は、イスラエルパレスチナのケースのように、こうした課題が本格的な紛争に発展するのを防ぐために、あらゆる外交手段を駆使して、2つの椅子どころか、すべての椅子に座ることである。日本は自国に害を及ぼすであろう紛争の防止に努めている。日本にとって、これは存亡に関わる問題である」




エフゲニー・オスマノフ氏

サンクトペテルブルク国立大学東洋学部の職員




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https://sputniknews.jp/20240420/aukus-18235479.html





日本のAUKUS加盟で、地域諸国との関係はどうなるか?





2024年4月20日, 08:57







© AP Photo / Evan Vucci





リュドミラ サーキャン






英国は、日米のアジア太平洋地域における共同演習に来年、2025年に参加の意向を表明した。その一方でAUKUS加盟国の英国、米国、オーストラリアは、日本の加盟に期待しており、今のところ、核の要素を含まない協力のいわゆる「第2の柱」(PILLAR II)について話し合いを行っている。これは、水中技術、量子コンピューター、AI、サイバーセキュリティ、電子戦、極超音速ミサイルとその迎撃手段、情報交換技術などの分野における防衛装備の共同開発を想定した協力だ。





日本は、この協力がもたらす影響をまだ検討中だが、同盟諸国との関係は継続するつもりである。日本の閣僚の間では意見が分かれており、中国に対抗するためにAUKUSに参加する必要があるという意見もあれば、日本は同盟各国との二国間協力で十分だという意見もある。AUKUSとの合同演習や接触強化は、すでに複雑化した日本と他のアジア太平洋諸国との関係をさらに困難するのだろうか。ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所、日本研究センターのオレグ・カザコフ主任研究員は次のように考えている。





「日本が原子力潜水艦に関するAUKUSとの協力の第1の柱に参加する可能性はまずない。日本は核を『持たず』『つくらず』『持ち込ませず』という非核三原則を堅持している。つまり日本が、軍事目的で核計画に参加することは、反日感情をぬぐいきれない国はもちろん、日本人自身にとっても極めて苦痛をもたらす。だが、政府が第2の柱に参加する可能性はかなり高い。それは、日本がAUKUSに正式に加盟するのではなく、技術的なパートナーシップを結ぶという形式になるからだ。この形式のもとで、日本はオブザーバーの地位を与えられる可能性がある。地域諸国の中では、中国と北朝鮮がこれを危惧しているが、ベトナムやマレーシアのような他の多くの国々とは著しい関係悪化は無いだろう。日本は、安全保障分野を含め、政府安全保障能力強化支援(OSA)のもとで、これらの国々に援助を惜しみなく提供しているのだから」




日本がAUKUSに参加しても、地域諸国の大半は、声明を出したり、抗議デモ活動を起こさないと考えるのは、ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所ベトナムASEANセンターの研究員グリゴリー・クチェレンコ氏だ。





「軍事演習については、この地域の国々自身が参加することもあり、今では鋭い反応はない。AUKUSだが、これはNATOとは異なり、軍事同盟ではなく、相互防衛義務を伴わない科学技術・軍産協力に焦点を当てたパートナーシップであることに留意したい。インドネシアはこれに中立的な態度で臨むと思う。今年2月、インドネシアの次期大統領に選出されたプラボウォ・スビアント国防相の最初の仕事は、中国と日本への訪問だった。日本の岸田首相とは、安全保障を含む幅広い問題で協力を強化することで合意した。ベトナムは2023年に米国と包括的戦略パートナーシップ協定を結んでおり、日本とは大規模なインフラ整備を含む、大規模プロジェクトで協力関係にある。 ラオスミャンマーカンボジアは、自国の経済と人材開発への日本の投資を期待しているため、日本と喧嘩することはない。 2023年、岸田首相はラオスへの援助を約束し、ラオス大統領と地域問題やウクライナ危機、北朝鮮のミサイル開発問題などで協力することで合意した。シンガポールとフィリピンは一般的に親欧米国である。だから、日本を非難できるのは、そしておそらく非難するだろうのは、中国と北朝鮮だけだ」




政治 中国 AUKUS NATO 北朝鮮 ベトナム 国際 米国











https://sputniknews.jp/20240427/nato-18281514.html





【視点】日本のNATO加盟は現実的か?





2024年4月27日, 05:47







© AP Photo / Takashi Aoyama/Pool





リュドミラ サーキャン






日本の外務省は2024年度版「外交青書」の中で、変わりゆく国際安全保障環境に対応し、法の支配に基づく国際秩序を維持・強化するため、日本は基本的価値と戦略的利益を共有するパートナーであるNATOとの戦略的な連携を着実に強化していくことを明らかにした。





2023年5月、岸田首相は 「日本がNATOの加盟国、準加盟国になる計画はない」と述べた。その直後の2023年7月、日本は2023年から2026年までの日・NATO国別適合パートナーシップ計画(ITPP:Individually Tailored Partnership Programme)を採択。この計画に記された16の協力分野には、海洋・宇宙安全保障、サイバー防衛や情報操作などの脅威に対し、合同軍事演習までを含む共同行動、軍備管理、軍縮・不拡散の分野が含まれている。



日本のNATO加盟は時間の問題か、加盟を妨げている要因は何かについて、スプートニクが専門家に見解を尋ねたところ、様々に異なる意見がかえってきた。

元駐日ロシア大使で、現在、モスクワ国際関係大学外交学科長のアレクサンドル・パノフ氏は次のように考えている。





「日本がNATOに加盟すれば、条約に従ってNATOの軍事作戦に参加する義務が生じる。そういう展開には日本は全く興味がない。日本政府にとって重要なのは防衛費を増額し、米国やNATO諸国との軍事同盟を強化することによって、自国の防衛力を強化すること。2022年、日本政府はNATO諸国に倣い、2027年までに防衛費をGDPの2%まで引き上げる計画を発表した。自衛隊NATOが使用するものと互換性のある武器・弾薬の備蓄を増やしている。



日本は数十年にわたってNATO接触してきた。海上自衛隊は太平洋と地中海で行われるNATOの二国間、多国間演習に参加している。こうした傾向はすべて、防衛力を強化し、日本をアジア有数の軍事大国にしたいという、この国の指導部の願望に合致している。だが、NATOとの関係を発展させる一方で、日本政府は少なくとも、今のところは、独立した権力は保持し続けたいと考えている」




アレクサンドル・パノフ氏

モスクワ国際関係大学外交学科長




サンクトペテルブルク極東研究センターのキリル・コトコフ所長は、日本は自国の国益を尊重しており、NATOに加盟する計画はないものの、米国が望めば、計画変更もありうると考えている。





NATOも含め、どんな組織でも加盟には一定の義務を伴う。加盟すれば、自由な行動は制限される。日本としてはこうした事態を避けて、同盟関係やパートナーシップにとどめたい。 なぜならば、日本がNATOに加盟すれば、対中関係は悪化し、日本経済に深刻な影響を与えかねないからだ。日本は中国の主要な貿易相手国であり、投資国でもあるため、そのすべてが失われるかもしれない。



そうなれば日本と、アジア太平洋地域で激化し続ける米中対立の中で、どちらの側につくか難しい選択を迫られているASEAN加盟国との関係は悪化する。さらに、NATOがこの地域に進出すれば、地域の安全保障面ですでに弱体化しているASEANの役割はさらに弱まる。ところが日本は安全保障や防衛で米国への依存があまりにも大きく、主権の行使力はとても弱い。このため、もしワシントンが日本に強く圧力をかければ、日本は屈服せざるを得ない...」




キリル・コトコフ氏

サンクトペテルブルク極東研究センターの所長




軍事政治学者協会の専門家オレグ・グラズノフ氏は、日本のNATO加盟は、NATO自身も日本も必要としていないと考えている。





「第一に、NATOという陣営は定義上、欧州の安全保障確保のためであり、世界の安全保障を目指していないため、東南アジアにおいては立場は弱い。第二に、日本のNATO加盟は、地域の数か国にとっては挑発行為で、軍事的脅威とみなされる恐れがある。つまり、最もありうるのは、NATOは統合という手段でグローバル化するのではなく、NATOの利益と関連する体制を作ることでグローバル化を進めるというシナリオだ。



その一例がAUKUSで、岸田首相は先日、バイデン米大統領との首脳会談で、日本政府はAUKUSと直接的なパートナーシップを結ぶとは最終的に決めていないが、議論はしていると述べた。私が思うに、JAUKUSの登場はかなり現実的だ。そして日本に続いて、甚大な経済的・軍事的潜在力を持つ韓国も同盟に加わるかもしれない...」




オレグ・グラズノフ

軍事政治学者協会の専門家






政治 太平洋 NATO AUKUS 地中海 中国 オピニオン









(投稿者より)



日本がその経済力と技術力のために、戦争をビジネスとする勢力に引き込まれることには警戒が必要です。



特に、内外の威勢の良い掛け声とは裏腹にNATOもAUKUSも数年後には消滅しているという見方もあり、前のめりの行動のために婆を引かされる可能性はあると思います。