「ウクライナは今年、負けるかも知れない」(BBC NEWS JAPAN)

ウクライナは今年、負けるかも知れない」(BBC NEWS JAPAN)









https://www.bbc.com/japanese/articles/c99zk4ex1l0o





ウクライナ議会、兵士動員に関する改正法案を可決 兵力の増強狙う







Reuters

キーウ郊外で演習するウクライナ軍のシベリア大隊






2024年4月12日





ウクライナ最高会議(議会)は11日、兵士の動員に関する改正法案を賛成多数で可決した。ウクライナ東部ではロシア軍が前進を続けており、ウクライナは兵力の増強を狙っている。



数カ月におよぶ議論の末に可決された改正法案は、厳しいプレッシャーにさらされているウクライナ兵の数を増やすためのもの。



法案に当初盛り込まれていた、動員された兵士は3年後に動員を解除されるとの条項は、軍の要請により削除された。



ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の署名を経て法案成立となる。



同大統領は今月初め、徴兵年齢を27歳から25歳に引き下げる法案に署名するなど、ほかの複数の措置を承認した。



改正法案は、徴兵手続きの厳格化と、徴兵を逃れようとした人に対する罰則の強化も含まれている。



オレクサンドル・フェディエンコ議員は、この法案は「我々には自分たちの領土を奪還する用意があり、武器を必要としているというメッセージをパートナー国に」発信するものだと述べたと、ロイター通信は報じた。



ロシアは兵力でウクライナを上回っており、ウクライナ軍はこのところ厳しい状況に置かれている。



ロイター通信によると、ウクライナのユリイ・ソドル統合軍司令官は法案可決前に議員らに対し、兵士の数でウクライナ軍はロシア軍に1対7から1対10で劣っていると説明。



「我々は最後の力を振り絞って防衛を維持している」、「この法を通過させれば、ウクライナ軍があなた方とウクライナ国民を失望させることはない」と話した。



法案に賛成した議員は283人で、野党議員49人は棄権した。





「動員解除」条項の除外に反発



棄権した議員の一人、オレクシイ・ゴンチャレンコ氏は、兵士が動員されてから3年後に動員を解除されるとの条項を除外した法案には賛成できないと述べた。



「兵役に就いている人や、動員される可能性のある人にとっての最大の疑問は、『自分はいつまで兵役に就くのか』だ。これを抜きにして、この法が動員状況を改善するとは思えない」とゴンチャレンコ氏は述べたと、英紙フィナンシャル・タイムズは伝えた。



国会の外では改正法案から動員解除の条項を除外したことに対する抗議行動が起きた。抗議者の多くには、軍務に就いている親族がいる。



「軍務に就いている男性も女性もとても疲弊している。彼らは2年間も戦い続けてきたのに、誰も彼らの交代を計画していない」と、ある人はロイター通信に語った。



「配置転換を実現するには、新兵がどれだけの時間(前線で)過ごさなければならないのかを知る必要がある」



「動員条件があやふやということは、永久に戦うことを意味する。厳密に定義された条件がなければ入隊する人は1人もいないだろう」



国会関係者によると、動員解除をめぐる問題については今後、別の法案で検討される。



兵役逃れを防ぐ厳しい措置も、法案の最終版から除外された。



法案の主な内容は次の通り。

  • 18歳から60歳の男性を対象に、個人情報を軍当局に提出し、徴兵事務所登録書類を常に携帯することを義務付ける

  • 志願者に金銭的報酬を与える

  • 全ての新兵について、戦闘に加わる前に訓練を義務付ける。18歳から25歳(徴兵年齢以下)には基礎軍事訓練を義務付ける

  • 執行猶予付きの有罪判決を受けた人の兵役を認める

  • 海外に居住する徴兵年齢の男性を追跡する手続きを定める

  • 徴兵当局の要求に従わない人について、車両の運転を禁止する




インフラ施設に攻撃



法案可決の数時間前、ウクライナはロシア軍の激しい砲撃に見舞われた。



80発以上のミサイルとドローンが、11日未明にウクライナ各地の標的を狙った。その多くはエネルギー・インフラを狙ったもので、攻撃の3分の1近くがウクライナの防空網を突破した。



キーウ州を含む3地域における最大の電力供給源だったトリピッリャ火力発電所は完全に破壊された。



ウクライナは西側諸国に対し、さらなる弾薬や防空支援を要請している。



しかし、600億ドル規模のアメリカの軍事援助パッケージは、連邦議会下院で野党・共和党の反対を受けて数カ月にわたり棚上げされている。





(英語記事 Ukraine war: MPs pass long-awaited law to boost troop numbers





関連トピックス ウクライナ侵攻 ウクライナ ロシア 欧州 東欧 政治 軍隊











https://www.bbc.com/japanese/articles/c51nml7rvvko





ウクライナは今年、負けるかもしれないと英軍元司令官 それはどのように







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ウクライナは2年間、ロシアの全面侵攻に抵抗してきた






2024年4月13日





フランク・ガードナー BBC安全保障担当編集委員





英統合軍の元司令官、サー・リチャード・バロンズは、ウクライナが2024年にロシアに対して敗北するかもしれないとBBCに話した。



バロンズ将軍は、ウクライナが今年負ける「深刻なリスク」があるとBBCに述べた。「自分たちは勝てないと、ウクライナが思うようになるかもしれないからだ」と、将軍は理由を説明した。



「その状態にウクライナが達した時点で、守り切れないものを守るだけのために戦い、死ぬことを、大勢が望むだろうか」



ウクライナはまだその状態に達していない。



しかし、ウクライナ軍の持つ砲弾や人員や防空能力は、危機的な状態まで枯渇(こかつ)しつつある。大いに期待された昨年の反転攻勢は、ロシア軍を占領地域から追い出すには至らず、ロシア政府は今や今年夏の攻勢に向けて準備を本格化させている。



では、ロシアの夏の攻勢はどういうものになるのか。その戦略上の目的は、何になるのか。



「想定されるロシア軍の攻勢がどういうものになるのか、それはかなりはっきりしている」と、バロンズ将軍は言う。



「前線のロシア軍は銃弾、砲弾、人員の数で5対1の比率で相手に勝っている。それに加えて、新しめの兵器の導入で、優勢が強化されている。これを利用してロシア軍は徹底的に(ウクライナ軍を)たたいている」







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ウクライナ軍は現在、深刻な兵器不足に直面している。西側諸国での政治駆け引きもこの一因となっている






「新しめの兵器」には、FAB滑空爆弾も含まれる。旧ソヴィエト連邦時代の無誘導爆弾を改良したもので、安定翼やGPS誘導装置を備え、爆薬1500キロを積み、ウクライナ軍の防衛態勢を大混乱に陥れている。



「今年の夏、ロシア側がある時点で、大規模な攻勢を仕掛けると予想される。わずかに相手をたたいて前進するだけでなく、ウクライナ軍の前線を本格的に突破しようとするかもしれない」と、バロンズ将軍は話す。



「もしそうなれば、ロシア軍が突破侵入し、ウクライナ軍がそれを阻止できない位置までウクライナ領内に入り込み、それを拠点にして利用しようとするかもしれない」



しかしそれはどこなのか。



ロシア軍は昨年、ウクライナがどこから攻めてくるか、正確に予想していた。南部ザポリッジャからアゾフ海を目指す方向だ。これを正確に予想し、適切に備え、そしてウクライナの前進阻止を成功させた。



今度はロシアが攻勢に転じる番だ。ロシアは軍勢を集約しているが、次の攻撃局面がどこになるのかウクライナ政府は推測するしかない状態だ。











イギリス王立防衛安全保障研究所(RUSI)の上級研究員、ジャック・ワトリング博士は、「どこに部隊を集中させるか、ロシアには選択の余地がある。これはウクライナが抱える難題のひとつだ」と説明する。



「前線はとても長い。そしてウクライナはそのすべてを防衛しなくてはならない」



もちろんそんなことは無理だ。



ウクライナ軍は地歩を失うことになる」と、ワトリング博士は言う。「問題は、どれだけ失うのか。そしてどの人口密集地がそれによって影響を受けるのか、だ」。



ロシア軍の参謀本部が、どの方向に勢力を集めるのかまだ決めていない可能性もかなりある。しかし、大まかに言って、3つの場所が可能性として考えられる。





ハルキウ



ハルキウはもちろん、かなり危険な状態にある」と、ワトリング博士は言う。



ロシアとの国境に危ういほど近いウクライナ第二の都市は、ロシア政府にとって魅力的な目標だ。



現在は連日、ロシアのミサイルに砲撃されている。ドローン、巡航ミサイル弾道ミサイルという殺傷力の高い組み合わせを阻止できるほどの防空力が、今のウクライナにはない。







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ロシアはドローンやミサイル、砲弾でハルキウを連日攻撃している






「今年の攻勢は、ドンバス地方から飛び出すことを第一目標にすると思う」と、バロンズ将軍は言う。「そして、ロシア国境から約29キロにあるハルキウを手に入れられれば、大きな成果となる。それだけに、ロシア軍はハルキウに注目しているだろう」。



もしもハルキウを失ったとして、ウクライナはまとまった単一国家として機能し続けられるだろうか。それは可能だと、多くの専門家は言う。しかしそれでも、国民の士気と国の経済にとって、悲惨な打撃になるはずだ。





ドンバス



「ドンバス」と総称されるウクライナの東部地域は、2014年以来ずっとロシアと戦っている。ロシア政府に後押しされた独立勢力が当時、「人民共和国」を自称して以来のことだ。



2022年にはロシアが、この「ドンバス」を構成するドネツク州とルハンスク州の両方を違法に併合した。この1年半というもの地上戦のほとんどは、この地域で行われてきた。



ウクライナはこのドンバス地方で、まずはバフムート、続いてアウディイウカという二つの町を失わないようにするため、膨大な人員や資源を防衛戦につぎ込んだ。



その作戦には異論も多く、結果的に両方の町だけでなく、ウクライナ軍有数の優れた兵士を多く失った。



そうした批判に対してウクライナ政府は、自軍の徹底抗戦によってロシア軍は不相応なほど多くの兵士を失ったと反論している。



それも事実だ。この地域での戦場は「肉ひき機」とまで呼ばれている。



しかし、ロシア側には戦場に送り込める兵士がまだまだ大勢いる。ウクライナ側にはいない



アメリカ欧州軍のクリストファー・カヴォリ司令官は10日、米下院軍事委員会で証言し、アメリカがウクライナへの兵器・砲弾供給をかなり急がなければ、ウクライナ軍は戦場で10対1の劣勢に立たされると警告した。



物量は重要だ。ロシア軍は戦術も指揮系統も装備も、ウクライナ軍のそれに劣るかもしれない。しかし、(砲弾の数を含めて)数字の上であまりに優勢なので、たとえ今年ほかに何もしなかったとしても、ウクライナの村をひとつまたひとつと制圧し、ウクライナ軍を西へ西へと後退させることは最低限のデフォルトとして可能だ。





ザポリッジャ



ここもまたロシア政府にとって、魅力的な手柄だ。



ウクライナ南部ザポリッジャは、平時の人口は70万人以上。そして、ロシアの前線に危険なほど近い。



ザポリッジャはロシアにとって厄介なとげでもある。違法に併合したザポリッジャ州と同じ名前の州都だが、それでもいまだにウクライナ領で、住民は自由に暮らしているからだ。



しかし、ロシア軍自身が昨年、ウクライナ軍の攻勢ルートを正確に予測してザポリッジャ南部に強大な防衛線を築き上げたことが、今ではロシア軍の前進を難しくしている。



三重に設置された防衛線からなる、いわゆる「スロヴィキン・ライン」の周辺には世界最大の地雷原が広がる。今や世界で最も徹底的に地雷が敷設された場所だ。ロシアはこれを部分的に解体することもできるが、そうした準備作業はおそらく探知される。







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ウクライナは今や、世界で最も多くの地雷が敷設された場所のひとつだ






ロシアの今年の戦略目標は、領土ですらないかもしれない。ただウクライナの戦意を喪失させ、ウクライナ敗戦はもはや決まったも同然だと西側諸国を説得さえすれば、ロシアにはそれで充分なのかもしれない。



「もはや望みはないという感覚を生み出すこと」がロシアの目標だろうと、ワトリング博士は考えている。



「今年のロシアの攻勢で、双方がどうなるとしても、この紛争を決定的に終結させるようなものにはならない」と博士は言う。



バロンズ将軍も同意見だ。確かにウクライナ軍はいま厳しい状況にあるが、ロシア軍がその優勢をてこに決定的な前進を果たせるかどうかは疑わしいと、将軍は見ている。



「ロシアは一定の戦果を得るものの、突破はできないというのが、おそらく最もあり得る結果だと思う」と将軍は話す。



「(ドニプロ)川まで一気に前進できるだけの、規模と能力の部隊はロシア側にない。(中略)それでも戦況はロシア有利に転じることになる」



確かなことがひとつある。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ侵攻をやめるつもりなどまったくない。







ロシアのウクライナ全面侵攻、2年間を振り返る プーチン氏はさらに安泰か





ポーカーの勝負で、手持ちのチップをすべてかけているプレイヤーのようだ。ウクライナが防衛に必要な装備を、西側は提供しない――それがプーチン氏にとって頼みの綱なのだ。



北大西洋条約機構NATO)でどれだけ首脳会議が開かれても、どれだけあちこちで会合が開かれ、感動的な演説が相次いでも、プーチン氏の計算通りになる可能性がある。





(英語記事 Ukraine could face defeat in 2024. Here's how that might look





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(投稿者より)



この戦争は本質的には英米のDS勢力とロシアとの代理戦争です。イギリス側から敗戦の可能性について指摘が出たことは大きな意味を持つと考えました。