『私たちはどんな逆風にも身を乗り出して打ち勝てる』(ドイツ連邦政府)[2023.12.31 連邦首相の新年の挨拶]

『私たちはどんな逆風にも身を乗り出して打ち勝てる』(ドイツ連邦政府)[2023.12.31 首相の新年の挨拶]













("We can lean into any headwind and prevail": The Federal Government)

https://www.bundesregierung.de/breg-en/media-center/new-year-address-chancellor-2250248





動画:ショルツ連邦首相の新年の挨拶





『私たちはどんな逆風にも身を乗り出して打ち勝てる』





この国の一人ひとりが必要とされている―警察官も宅配運転手と同じように、年金生活者も若い研修生と同じように。一緒なら、私たちはどんな逆風にも身を乗り出して打ち勝てる。これらが連邦首相の2024年の新年の挨拶の言葉だ。彼は言う。だからと言って私たちの時代の問題が小さくなることは無いが、そうすることでそれらを克服する能力に自信を持つことが出来ると。





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新年の挨拶





オラフ・シュルツ





ドイツ連邦共和国 連邦議会議員・連邦首相





2023年12月31日 ベルリン





検討は談話とされたし









親愛なる国民の皆さん!



全国を旅していると、特に多くの年配の人たちから、「こうして物事が次々とやって来る。このようなのは見たことがない」と良く聞きます。



・コロナが半ば終息すると、ロシアは直ぐに欧州の中心で容赦のない戦争を引き起こしました。



・その後、ロシア大統領は私たちのガス供給の元栓を閉めました。



・秋になると、ハマスイスラエルに残忍なテロ攻撃を行いました。



余りにも多くの苦しみ、多くの流血がありました。私たちの世界は、更に不安定で更に厳しい場所になりました。世界は息を呑むような速さで変化しています。



だからこそ、私たちも変わらなければなりません。これは私たちの多くにとって心配なことです。これ一部の人々にとって不満の原因にもなっています。私はこれを肝に銘じています。そして同時に、私は知っています―私たちドイツはこれを乗り越えるでしょう。



1年前に私たちがどこにいたか覚えていますか? 多くの専門家は3、4、5%の景気後退を予測していました。多くの人は価格が上昇し続けるのではないかと怖れていました。停電や住宅の寒さが懸念されていました。



事態は異なったものになりました。インフレは低下しました。賃金も年金も上がっています。この冬に向けて、私たちのガス貯蔵施設は満杯です。



事態は異なったものになったのは、私たちが景気低迷を抑え込んだためです。エネルギーを節約し、適切なタイミングで予防策を講じたからです。私たち全員が一緒にやったのです。私たちはどんな逆風にも身を乗り出して打ち勝つことが出来ます。



だからといって、私たちの時代の問題が小さくなる訳ではありません。しかし、それは私たちにそれらを克服する能力への自信を与えることができます。



「ドイツのあなたでなければ、誰に出来るのか?」 – 欧州や世界中の私たちの周りで多くの人が私にそう言います。そして、そこには何かがあります。



現在、ドイツでは過去のどの時期よりも多くの女性と男性が仕事に就いています。



それが私たちの繁栄を守り、将来に向けて強力に投資する機会を与えてくれます。私たちにはそうする必要があるのです。



最近、電車で旅行したり老朽化した橋の前で渋滞に巻き込まれたりした人なら誰でも気づくでしょうが、余りにも長い間に私たちの国は老朽化しました。だからこそ、私たちは現在、次のことに投資しています。



・きちんとした道路とより良い鉄道に、



・クリーンなエネルギー供給と気候保護の改善に、



・良質な雇用に―ドイツが常に世界をリードしてきた業種と、コンピューター・チップやバッテリーの生産など、ドイツが追いつくべき業種の両方―です。



11月中旬に連邦憲法裁判所が広範囲に及ぶ判決を下したことを考慮すると、これらはいずれも容易ではありません※1:投稿者注]。私たちが考えていた計画の全てを実行することは出来ません。しかし同時に、私たちは来年も将来に向けて記録的な金額を投資し続けることも事実です。そして、私たちは毎日起きて仕事に行く全ての人たちの負担を軽減し続けます。私たちの国を動かしているのはその方々だからです。



明日以降、ドイツの勤労者の納税額は150億ユーロ減らされます。通常の収入がある4人家族に来年500ユーロを上回る額のお金が更に使えるようになります。今年からの減税と合わせると1,600ユーロを超えて増えることになります。更に、児童手当や住宅手当が増額され、そして最後に重要なことですが、全ての低所得者社会保障負担金も削減されます。例えば、小包の配達やスーパーマーケットの棚の品出しを行う皆さんや、子どもを学校に送ってから職場に出掛け家に帰ってから家事を行う皆さんが対象になります。彼らのことは毎日、新聞で読む訳ではありません。しかし、私にとって重要なのは、彼らの貢献が注目され認められることです。



親愛なる市民の皆さん!このような時でも私たちには頼れるもの、私たちに力を与えるものがあります。



私たちには欧州や世界中に友人がいます。私がドイツや欧州の安全を確保する方法について毎日話し合うパートナーです。私たちの強みは欧州連合にあります。EU が1つになって行動するとき、それは4億を超える人々の声を代弁します。人口が 80億人、間もなく100 億人になるこの世界で、これは貴重な財産です。



だからこそ、来年の欧州選挙で欧州が団結して強くなることが非常に重要です。なぜなら、私たちの大陸の東で起きているロシアの戦争はまだ終わっていないからです。中東の武力紛争も同様です。そして、来年には米国で大統領選挙が控えており、恐らくここ欧州に居る私たちも含め、幅広い影響を与えるでしょう。



私たち欧州連合は7年間の行き詰まりを経て、クリスマスの少し前に欧州の難民制度について抜本的な改革に合意しました。将来的には、私たちはEUと域外との境界をより良く管理できるようになるでしょう。そして隣国との国境でも、連邦警察が取り締まりを強化しています。これは上手く行っています。これらの国境を越える人の数は、この数週間で目覚ましく減少しました。



私たちの強みは民主主義にもあります。ここドイツで勇気ある女性と男性が自由選挙のために戦ったのは、それほど昔のことではありません。東ドイツで平和革命が始まったのは35 年前のことでした。



議論や決定について発言権を持つことは貴重な財産です。これには、進むべき正しい方向についての議論も含まれます。公正な妥協を求める論争も同様です。これがたとえこの数週間や数ヵ月の間に大声での議論を行わずに済んだとしてもです。しかし、どちらの方向に進むべきかについての議論がなければ、民主主義が機能しないのも本当のことです。互いについてを話すだけでは何も良くなりません。互いに向けて話さなければなりません。



私たちの強みは、妥協する準備ができていること、つまり、互いのために努力することにあります。これらは、現在恐ろしい洪水とその影響に苦しんでいるドイツの多くの地域で見られる努力のことです。私は被災した全ての人々のことを考えています。私たちがこの必要な時に彼らを助け、彼らを見捨てないのは当然のことだからです。そして、洪水と戦うために全力を尽くして下さった消防隊や連邦軍、連邦技術支援隊、救助サービスの全ての男女の皆さん、そして、多くのボランティアの支援者の皆さんに感謝したいと思います。皆さんの献身的な尽力に心から感謝しています!



親愛なる市民の皆さん、私たちの強みは、私たち一人ひとりがこの国で必要とされているという認識にあります。一流の研究者も介護者と同じように、警察官も配達運転手と同じように、年金受給者も若い研修生と同じようにです。



私たちがこれに気づくなら、この尊敬の心で互いに接するなら、私たちは将来について恐れる必要はありません。そうすれば、2024年は私たちの国にとって良い年になるでしょう。たとえ新年を明日に控えたこの日に、私たちが想像していたものと異なることが起こったとしてもです。



皆さんや皆さんの愛する方々が健康で平和で幸せな新年を迎えられることを心から願っています。







※1 次の記事が参考になると思います。











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(投稿者より)



"Check against delivery" 「検討は(原稿で無く)談話とされたし」としました。欧米社会ではスピーチ原稿の表紙にこのような文言が付されることがあるそうです。ただ、日本語訳にも更に良いものがありそうです。



メルケル氏もそうでしたが、ショルツ氏のスピーチも困難な時に生きる国民を鼓舞するものです。リーダーの言葉とはこのようなものなのだろうな、と改めて感じながら読ませて頂きました。





(2023.1.11 補足)



そのドイツですが、国内は大荒れのようです。