「福島の大災害:司法は東電元経営陣への無罪判決を支持する」(RFI・DW English)
(Catastrophe de Fukushima: la justice confirme l'acquittement d'anciens dirigeants de Tepco: RFI)
https://www.rfi.fr/fr/asie-pacifique/20230118-catastrophe-de-fukushima-la-justice-confirme-l-acquittement-d-anciens-dirigeants-de-tepco
福島の大災害:司法は東電元経営陣への無罪判決を支持する
発表 2023年1月18日 18:12
2017年2月23日、福島の汚染水貯蔵場所の前にいる東電の従業員。Tomohiro Ohsumi / AFP
文 RFI
水曜日、日本の司法は福島原発を運営する東電の元幹部3人への無罪判決を支持した。3人には、2011年3月の津波による原子力事故の過失について2019年に無罪判決が出されていた。
この決定は、活動家たちと1986年のソ連(現在のウクライナ)におけるチェルノブイリ事故後の最悪の原発事故である東北日本で発生したこの災害による避難民の支援者たちによって東京高裁の外で発表された。この控訴裁判所は公判がまだ進行中として、この支持の表明を直ちには行わなかった。
2019年9月、東京の一審裁判所が東電の勝俣恒久元会長(現在82歳)・武藤栄元副社長・武黒一郎元副社長の過失致死罪の容疑について無罪判決を言い渡した。この判決に対して控訴した原告たちによれば、津波が耐力を超える危険性を示す情報に基づき、2011年の大災害の十分に前以て福島第一発電所の運転を停止するべきだった。
原発事故が数千人を間接的に死亡させた原因だ
この災害に関連して刑事訴訟で個人として裁かれたのはこの東電元幹部3人だけで、彼らは最大5 年の刑を受ける可能性があった。彼らに対する訴訟は、2011 年 3 月 11 日にマグニチュード9.0の強い地震が引き起こした津波の後、発電所から数km離れた病院から 44 人の患者が極限状態での緊急避難中に死亡したことが訴因だった。
地震や特に津波により18,500人が死亡したが、この原発事故自体が直ちに犠牲者を出すことは無かった。しかし、地域から避難した多くの人々の生活条件の悪化による死亡として日本の当局によって認められた数千人の「関連死」について間接的な責任がある。
空前の損害賠償
さらに昨年夏、東電元幹部3人と4人目の元経営者は、同社株主により別の手続きに従い始められた民事訴訟で、13兆3,000億円[投稿者の和訳](現在の相場で950億ユーロ)という空前の額の損害賠償を支払う判決を受けた。
この天文学的な額は彼らの個人的な資力を遥かに超えているが、司法はこれについて、東電が発電所の解体・土壌の除染・放射性の廃棄物や瓦礫の保管の費用を賄うために支払う必要のある資金や、原発事故で被害を受けた住民に支払われる補償金に相当すると説明している。
► これも読む: 日本:フクシマから11年、一帯の放射能汚染は非常に高いままだ[投稿者の和訳]
(参考 AFP)
日本 司法 原子力 福島
(Japan nuclear plant execs acquitted over Fukushima disaster: DW English)
https://www.dw.com/en/japan-nuclear-plant-execs-acquitted-over-man-made-fukushima-disaster/a-64438627
犯罪|日本
福島の大災害をめぐり、日本の原発の経営陣に無罪
ジュリアン・ライオール
2023 年1月18日
東京の裁判所が、地震学者の警告にも係わらず、東電の幹部たちは2011年3月の強力な地震と津波を予測できなかったとの判決を出したため、国民の怒りが高まっている。
東京の控訴裁判所は水曜日、福島第一原子力発電所の運営企業の元幹部3人の無罪判決を支持し、2011年3月の地震と津波の前の数年間に自然災害の警告を無視したという嫌疑を晴らした。
福島第一原子力発電所の事故は、最悪だった1986年のチェルノブイリ事故に続き、史上2番目に深刻な原子力危機をもたらした。
東京高裁の判決は2019年の下級裁判所の判決を支持するもので、東京電力(TEPCO)の勝俣常久元会長は、自然災害がこの東北地方の発電所を破壊し原子炉6基のうち3基のメルトダウンを引き起こすと予想できなかったと判断した。
起訴状は、勝俣容疑者が44人の死に責任を負っていると主張した。彼らは療養施設からの避難を余儀なくされ、一時収容施設での生活を余儀なくされた後に死亡した。
高裁は同一の訴訟で、同社の武黒一郎元副社長と武藤栄元副社長に対しても同じ結論に達した。
『人災』
活動家たちは、裁判所の判決に対する失望と怒りを直ちに表明し、福島の事故に関する政府の公式調査ではそれが「人災」であると明確に述べられていたが、原発の最高幹部は実際には自分たちの失敗を許されていたと指摘した。 .
その結果として今後この悲劇の責任を誰も負わないだろうと、彼らは主張する。
3人の元幹部は、発電所の安全を脅かす大地震が東北日本沖で発生する可能性があるという地震学者たちの警告に耳を傾けなかったと告発され、2016年に最初に起訴された。
推奨された対策には、強力な津波を交わすための防潮壁を15.7m(51 フィート、6 インチ)に嵩上げすることと、原子炉に冷却水を供給し続けるために予備発電機を追加することが含まれていた。
発電所は、海岸から約70km離れたマグニチュード9の地震によって酷く揺れ、その数分後にこの地震により引き起こされた一連の津波が陸地を襲った。福島を襲った津波の高さは約14mだったが、原発の北にある大船渡の街では波の高さが最大40mに達した。
それでも、これは防波堤を破り原子炉4基を浸水させるのに十分だった。これにより、最終的に原子炉3基がメルトダウンを起こし、膨大な量の放射能が大気中に放出された。
検察は当初、この幹部3人に対する刑事訴訟を起こすことを拒否したが、一般市民で構成された委員会に事件を検討する機会が与えられたため、その決定は覆された.
禁固5年の求刑
検察官は、各男性に過失の罪で禁固5年を求刑した。被告人たちは、自身に向けられた嫌疑を否認した。
地震学者たちの警告にも係わらず、下級裁判所はこの男性3人が「高さ10mを超える津波を論理的に予測できなかった」と認定し、高等裁判所もこの立場に同意した。
この判決は、東京地裁が東電株主たちの提訴に対してこの男性3人は損害の責任を負うべきだとした昨年7月の判決に反している。裁判所は、災害を防ぐことができなかったとして、13兆3,000 億円(1,030億ドル、950億ユーロ)の損害賠償を支払うよう男性たちに命じた。
東京に本拠を置く原子力資料情報室(CNIC)共同代表の伴英幸氏は、「私はこの判決に腹を立てており失望もしているが、特に驚いているわけではない」と述べた。
「私たちは弁護士たちから事前に、民事訴訟による補償よりも刑事での有罪判決を得る方が遥かに難しいとの警告を受けていたが、裁判官が他の訴訟における判断の要因を1つでも更に詳しく調べなかったことに失望している」と、彼はDWに語った。
同地裁では、幹部たちが勧告に従って更に優れた海の防御物と更に強力な原子炉建屋の扉を設置していれば、災害を回避できた可能性は更に高かったと告げられたと、伴氏は述べた。
京都に本拠を置くグリーン・アクションの活動家アイリーン・美緒子・スミス氏も、裁判所の立場に失望を表明した.
「政府は調査の中でフクシマは『人災』だと述べたが、又もやその災害を助長した判断について誰も責任を負っていない」と、彼女は述べた。
「高レベルの放射線に晒された地域の家に未だに帰ることができない人々、事業を失った人々など、被害者たちにとってこれは酷い判決だと感じるばかりだ。そして私たちの社会にとってもそうだ」と、 彼女は述べた。
「この判決は、つまり、この発生を防ぐ権力を持っていた人々は今や行動しなかった責任から解放されたということだ。」
「これで良い筈が無い。将来に同様のことが再び起こった場合、同じ結論が生じる前例となる」と、彼女は付け加えた。
裁判所の判決は最高裁に上告される可能性があるが、まだ結論には達していない。
編集者:スー-ジー・ヴァン・ブルナーサム
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(投稿者より)
"deciding factors"「判断の要因」、専門用語が別に有りそうですが、調べ切れませんでした。他にも在ると思います。御容赦ください。
この問題は刑事と民事の双方で争われています。刑事では2度の検察審議会の結果を経て、市民側の指定弁護士が検察官役を担って一審・二審が行われました。つまり、公務員の検察官が2度不起訴を決め、その度に市民側がその判断を覆しています。
刑事では一審・二審と東電元幹部たちに無罪判決が出されたことになります。既に指定弁護士は上告の意向を固めています。
一方、民事では市民側が勝ち東電側が負けました。損害賠償額として示された13兆3000億円という数字は現実には余りにも高額で象徴的な意味しか無いのかも知れません。それでも「正義は為されねば成らない」という意思の表れには成ったと思います。