フクシマの心配を余所に、日本はいまなお原子力に依存している (DW English)

フクシマの心配を余所に、日本はいまなお原子力に依存している (DW English)















(Fukushima fears aside, Japan still depends on nuclear power: DW English)

https://www.dw.com/en/fukushima-fears-aside-japan-still-depends-on-nuclear-power/a-63749114





ビジネス|日本





フクシマの心配を余所に、日本はいまなお原子力に依存している





ニック・マーティン





2022 年11月15日






2011年の福島の大災害は、日本の原子力発電の運命を決定づけるのに一役買ったか、そう思われていた。東京は現在、原子力発電所の寿命を延ばす計画を立てており、より小型でより安全な新しい原子炉を検討している。





2011年3月11日、マグニチュード9の地震日本を襲い、福島第一原子力発電所の原子炉を水浸しにする大津波を引き起こした。



チェルノブイリ以来の最も深刻な原子力事故は、反原発感情の新たな波を巻き起こし、国内の原子力発電所の大部分が緊急の保安検査のために休止した。



この大災害から数日の内に、数千km離れたドイツ政府は原子力発電を段階的に廃止する10年計画を発表した。この問題については、環境活動家たちが何十年にも亘りロビー活動を行っていた。





放射線の脅威に取って代わる新たな不安



大災害から 11 年以上が経ち、日本は環太平洋火山帯(活火山と頻繁な地震を特徴とする太平洋沿いのルート)と称するものの中にどっしりと座っているが、この夏、東京は原子力発電に再び取り組む[投稿者の和訳ことにした。



岸田文雄首相は、ウクライナ戦争のために生じたエネルギー供給の確保の必要性や日本のネットゼロ目標の達成を支援する必要性を挙げ、日本は冬までに最大9基、更に来年の夏までに7基の原子炉を再開する予定だと述べた。



「ロシアのウクライナ侵攻は世界のエネルギー情勢を大きく変えた。電力供給の逼迫によって引き起こされた差し迫った危機を克服するために、私たちは今後の数年間に可能な全ての政策を動員し、有らゆる緊急事態に備えるために最大限の措置を講じる必要がある」と、岸田氏は8月に警告した。



その後に発表された長期的な提案には、原子炉の耐用年数を現在の 60 年よりも長く延ばすこと―一部の科学者は、原子炉が休止中の年数を考えるとリスクは低くなると述べている―や、より小型でより安全な新しい原子炉を開発することも含まれている。



世界原子力協会の政策アナリスト、デビッド・ヘス氏は、「日本の政治指導者たちが時間を掛けて、国民の支持が改善し背景となる広範な環境が変化するのを待ってから、原子力技術に再び取り組むことにした感がある」と、DWに語った。





エネルギー供給をめぐり欧州とアジアが争う



環境は変わった。アジアへのガス供給はCOVID-19パンデミックの余波により昨年の冬には既に引き締まっていた。また、この世界的なエネルギー危機を受け、ロシアのパイプラインガスの代替となる液化天然ガスLNG)の供給を確保するためにアジアと欧州の国々が争ったため、天然ガス価格が更に急騰し、過去最高値を記録した。



また、日本の決定の背後には、石油やガスなど従来からのエネルギー資源が不足しているため、歴史的に原子力に依存していたことがある。



「日本には石炭と石油が余り無いため、エネルギー需要の非常に大きな割合を常に輸入していた―発電用だけでなく[輸送用と暖房用にも]だ」と、英ポーツマス大学の環境科学教授ジム・スミス氏はDWに語った。



福島のメルトダウンの前は、日本の発電量の約3分の1が原子力から来ていた。2020年までにこの数字は5%未満にまで低下した。東京は、2030年までに電力供給の最大22% を供給する新たな原子力の目標を設定した。



時々中断するという再生可能エネルギーの制約や、水力発電太陽光発電風力発電を大幅に拡大するための利用可能な土地の不足も、原子力の復活を計画する理由として挙げられた。それでも政府は昨年、電力生産における再生可能エネルギーの目標を2030年までに36~38% に引き上げた。これは2019年の2 倍だ。





原子力への『世界的なシフト』?



世界原子力協会のヘス氏は、ポーランドチェコ共和国・イギリス・スウェーデン・フランスによる最近の決定を引き合いに出し、日本の決定は原子力に回帰する「世界的なシフト」の一部だとDWに語った。彼は、米国で超党派による原子力支持が高まる状況について指摘した。



「エジプト・ウズベキスタン・フィリピンなど、新規参入国のグループ全体が最初の原子炉建設に向けて前進している」と、彼は述べた。「日本はどちらかと言えば反応が遅い。そのためこのような勢いが、炭素による長期的な気候変動とエネルギー安全保障の解決策として、原子力エネルギーが世界的に広く受け入れられていることを日本に納得させるのに恐らく役立っている。」







ドイツの原子力の段階的廃止とは対照的に、エマニュエル・マクロン仏大統領は、新しい小型モジュラー原子炉の建設に 10 億ユーロの補助金を提供した

Image: POOL/AFP/Getty Images/JEAN-FRANCOIS BADIAS






また、フクシマから 10 年以上が経過し、日本が原子力に再び取り組むと言い切っていることから、ドイツの原子力の段階的廃止は「極めて不適切」に見えると、ヘス氏は考えている。



それでも、、いまなお原子力の段階的廃止を進めるはドイツだけで無い―ベルリンがエネルギー危機により、この冬に現存の原子力発電所3ヵ所の寿命を短期間延長するよう命じたにも係わらずだ。スペインとスイスも、今後 10 年間で原子力発電を止める計画を表明している。豪州・オーストリアデンマークアイルランド・イタリア・マレーシア・ポルトガルセルビア原子力発電への反対を続けている。



先頃、欧州連合は環境志向の投資家から調達可能な数十億ユーロの資金を得られるようにするために、原子力をグリーンエネルギーとして分類可能との判断を示した。







3件の調査により、福島の事故は「汚職・共謀・縁故主義の絡み合い」に根ざしていたことが示された

Image: Shohei Miyano/Kyodo News/AP/picture alliance






安全性の向上、リスク評価の向上



日本―そして日本の原子力産業―は、特に極端な浸水の事象や非常用電源の喪失に関連して、フクシマから多くの厳しい教訓を学んだ。発電所の周囲には防潮堤が建設されていたが、13~14メートル(14~15ヤード) の津波を封じ込めるだけの高さでは無かった。緊急時に原子炉を冷却するための地下の予備ディーゼル発電機が浸水した。



「振り返ってみると、設計に重大な欠陥があったのは明らかだ。1970年代に建設された発電所は、地震の多い立地を十分に考慮した設計で無かった」と、スミス氏は述べた。彼は、新世代の原子力発電所は仏エネルギー大手 EDFによるものを含めて、「福島で発生したようなメルトダウンは起こり得ない」という意味で、「受動的に安全」と表現されていると述べた。



また、事故による放射線に対する最悪の懸念は根拠のないものであり、被害者は「自然放射線から受ける線量よりも低い線量しか受けなかった」と、スミス氏は指摘した。彼は、この大災害による癌の増加が見られる可能性は統計的に低いだろうと述べた。



補償を求めて訴訟を起こした被害者たちの弁護士によると、甲状腺がんと診断されたりこれを疑われた患者の発生率は10万人あたり77人で、通常の100万人あたり1~2人よりも大幅に多い。日本政府はこれに異議を唱えている。



原子力災害は、何千年とは言わないまでも、何百年もの間、広大な土地を立入禁止にする。福島では150,000人以上の人々が避難を強いられ、その5分の1近くは現在も避難中だ。



「それはチェルノブイリにも当てはまる」と、スミス氏は述べた。「チェルノブイリの健康への影響はフクシマよりも遥かに悪かったが、社会的および経済的影響は直接的な健康への影響よりも深刻だ。」





編集 ウーベ・ヘスラー





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(投稿者より)



"Nuclear disasters do leave huge areas of land out of bounds for hundreds if not thousands of years, and at Fukushima, more than 150,000 people had to be evacuated, nearly a fifth of them permanently. "「原子力災害は、何千年とは言わないまでも、何百年もの間、広大な土地を立入禁止にする。福島では150,000人以上の人々が避難を強いられ、その5分の1近くは現在も避難中だ。」放射性セシウムが10回の半減期を経て1000分の1にまで減少するのに、ざっと300年掛かります。この問題の解決にはそれだけの時間が掛かるのだろうと思っていましたし、現在でも思っています。



ただ今回の件は、ウクライナ紛争によるエネルギー不足が電気価格の高騰を招き、国民感情を変えたと思います。欧州では5倍~10倍の値上げが珍しくない中で、日本は現時点で2~3割に抑えられていますが、それでも長年の経済停滞に痛めつけられている家計に更に重くのしかかっています。



原発の推進を狙う勢力の笑い声が聞こえて来そうで残念ですが、ウクライナでは原発に向けた攻撃がほぼ絶え間なく行われています。浜岡が運転を止めたのも、何かの事故があった場合に東名間の大動脈や横須賀の米軍基地が打撃を受けるからだとの話がありました。安全保障を真剣に考えるなら、原発に頼るのは止めた方が良いと思います。