「日本:エネルギー政策を大きく転換、原発再開を加速へ」(RFI・Sputnik日本・DW English)
(Japon: le gouvernement veut accélérer la relance du nucléaire: RFI)
https://www.rfi.fr/fr/asie-pacifique/20220824-japon-le-gouvernement-veut-acc%C3%A9l%C3%A9rer-la-relance-du-nucl%C3%A9aire
日本:政府は原発再開の加速を考えている
発表 2022 年8月24日 14:24
岸田文雄・日本首相は原発の再開を望んでいる。AP - Toru Hanai
文 RFI
日本は、2011年の福島原発事故から停止している原子炉の運転再開を加速すると共に、新世代原子炉の開発について検討を進めることにした。8月24日、岸田総理がこれを表明した。ウクライナでの戦争が始まってから石油とガスの価格が高騰しているため、日本はエネルギー政策の大きな転換を強いられている。
報告 RFI東京特約記者、フレデリック・シャルル
世論が原子炉の再開を受け入れやすくするために、日本はこれを脱炭素化目標の達成を目的とした「グリーントランスフォーメーション」計画に統合した。政府は2030年までに、温室効果ガスの排出量を2013年と比べて46% 削減したいと考えている。
11年前の福島原発事故から日本国民はずっと原発に反対してきたが、現在ではその大多数がこれに賛成している。うだるような暑い夏の間の電力不足の警告や当局からのエネルギー消費削減[投稿者の和訳]の呼びかけにより、国民は原発の運転再開が必要になったことを確信した。
電気代が高騰
ウクライナでの戦争以降に電気料金が高騰しているので、これは尚更だ。輸入される石油やガスは日本経済にとって手が出ない程の高値となっている。岸田文雄首相は、原子炉再開の規模拡大や原子炉耐用年数の40年から60年への延長を推進する。8月に稼働中の原子炉は僅か7 基で、別の3 基は保守のため停止している。
原子力安全当局は、原子炉17基の運転再開を承認した。日本の電気技術者たちは、世界で最も厳しくなった新たな原子力安全基準を満たすために大金を費やしてきた。また、日本は次世代原子炉の開発を考えている。三菱重工業は、新型の高速中性子炉(増殖炉)を発表した米新興企業・テラパワー社と協力している。これは使用済燃料から発生したプルトニウムを確実に再利用できるものだ。マイクロソフト社の創設者ビル・ゲイツ氏は、この事業を支援している。
►これも読む:日本:フクシマから11年、一帯の放射能汚染は非常に高いままだ (RFI)[投稿者の和訳]
日本 原子力 岸田文雄 エネルギー
(Sputnik日本)
https://sputniknews.jp/20220826/12643080.html
エネルギー政策の転換-日本が新世代の原子力発電所を建設へ
2022年8月26日, 03:22
© AP Photo / Martin Meissner
日本の岸田首相は、新世代の原子力発電所の建設は、二酸化炭素の排出量を削減するための手段であると同時に、発電量を増やし、その不足のリスクを回避する機会であると考えている。日経新聞が報じた。
日本政府は、発電量を増やしながら、2050年までに二酸化炭素排出量をゼロにすることを目指している。報道によれば、この目的のために、新世代の原子力発電所の建設が早ければ2030年に国内で開始される可能性があるという。日本の経済産業省は、これらの施設の第一案をすでに作成している。新しい原子力発電所には、より安全な軽水炉が設置されることになる。政府は、2022年末までにプロジェクトの実施期限を提示する予定だ。現在、新世代の原子力発電所は設計段階であり、日本政府は2023年夏までに閉鎖された17の原子力発電所を再稼働させる意向だと報じられている。
日経新聞によると、新世代の原子力発電所建設に関する決定は、日本のエネルギー政策にとってターニングポイントになるという。2011年の福島第一原発の事故後、日本は新しい発電所の建設を実質禁止しており、国内法に基づき、稼働期間が40年から60年の古い電源ユニットの再起動が規 制され、この期間を過ぎると原子炉は無効化されている。報道によると、国内には全部で33基の原子炉があり、そのうち25基が稼働を行っていない。
ロシア、原発建設でフィリピンを支援
8月1日, 19:15
また、報道によれば、専門家らは、新世代の原子力発電所建設およびその第一段階においては、停止した原子力発電所の運転再開が、日本のエネルギー輸入への依存を減らし、現在、世界が経験している天然ガスと石油の価格の制御不能な高騰というエネルギー危機のなかにあって、特に重要となると指摘している。
通信社「スプートニク」は以前、二酸化炭素排出量の削減キャンペーンの一環として、英国政府が新しい原子力発電所を建設するプロジェクトを承認したと報じている。
関連ニュース
国内 原発 環境
(Japan signals a shift back to nuclear energy, 11 years after Fukushima disaster: DW English)
https://www.dw.com/en/japan-signals-a-shift-back-to-nuclear-energy-11-years-after-fukushima-disaster/a-62970544
アジア
福島原発事故から11年、日本は原子力エネルギーへの回帰を示す
国のエネルギー安全保障が脅威に晒されてエネルギー価格が上昇する中、東京は老朽化した原子炉の寿命を延ばし、新しい原子力発電所を開発する計画を立てている。
専門家たちは、原子炉の稼働寿命を現在の限界である40年から60年に延長することを検討している
福島第1原発の惨事と、日本の歴代政権による原子力エネルギーに対する慎重路線の採用から11 年が経ち、岸田文雄首相は心変わりを示した。
先日、グリーン・トランスフォーメーション実行会議の会合で議長を務めた岸田氏は、政府当局者たちとエネルギー専門家に対し、原発の数を増やした運転再開の強化、原子炉稼働寿命の大幅な延長、次世代原子力施設の開発・配置の検討を指示した。
この変化は重大な政策転換であり、ロシアによるウクライナ侵攻が日本のエネルギー価格に及ぼす悪影響と、日本国民の反原発姿勢のゆっくりだが着実な反転の両方を反映している。
岸田氏は当局者たちに対し、年内に原子力エネルギーの回帰に向けた確実な計画を作成するよう指示しており、これには原子力エネルギーの価値について懐疑的な人々を納得させるための更なる措置も含まれている。
退却中の野党
世論調査では意見の変化がすでに起こっていることを示しており、7月の「ヤフー・ジャパン」の世論調査では、回答者の74%が原子炉再開の増加を支持すると答えた。これは、原子力エネルギーに対する強い反対が80%を大幅に上回っていた、福島原発に壊滅的な打撃を与えた2011年3月の地震と津波の直後から大きく反転している。
それでもなお、原子力に反対する頑固な人々がいる。彼らは、現在では遥かに安全な選択肢が他に利用できるとして、原子力は国家のエネルギー需要に対する見当違いのアプローチだと述べる。
現在までに、フクシマの危機の前に稼働していた原子炉54基のうち10基が、大規模な耐震改修と徹底的な保安検査を経て、再び稼働している。
東京のある公園に掲げられた複数の白旗は、原子力の危機を引き起こし数千人を死亡させた11 年前の出来事を示している
日本政府は、来年の夏までに更に7基を稼働させ、2030年までに国内のエネルギー需要の20%を原子力発電で賄うことを望んでいる。
専門家たちは原子炉の稼働寿命を現在の限界である40年―一部の古い原子炉はこれに急速に近づいている―から60年に延長することも検討しているが、こちらは恐らく論争になるだろう。
政策研究大学院大学のエネルギー政策教授・根井寿規[Hisanori Nei]氏は、政府の原子力に関する方向転換は「驚くべきことで無い」と述べた。
「7月の選挙の前には、政府は反発を懸念してこの計画を発表したくなかったが、岸田は選挙に勝利し、今や次の選挙まで3年ある」と、根井氏はDWに語った.
「業界はこれを実現するために熱心にロビー活動を行っており、省庁もこれが来ることを仄めかす政策文書を公表していたため、このタイミングは驚くべきことでは無い。」
小型原子炉ユニットが答えか?
日本は国内にエネルギー資源を持たずほぼ全量を輸入に依存しており、ロシアによるウクライナ侵攻やエネルギー価格高騰の影響を非常に受けやすいため、政府は尚のこと原子力カードを切るよう強いられていると、彼は付け加えた。
解決策として特に有望な新技術の1つは、小型モジュール原子炉ユニット(SMR)だと政府は考えている。
8月26日、従来型原子炉の100万キロワットの能力ではなく、約30万キロワットの能力を持つSMRの開発について、日本は米国および他の9カ国と協力することで大筋合意に達したと発表した。
この 2011 年のテレビ画像は、発電所の爆発直後を示している
原子炉を小型化する利点は、建設費が安く、また、事故が発生した場合に大きな危機を引き起こす危険性が低いことだ。日本では、個々の都市のエネルギー需要を満たすために多数のSMRを配置することを政府が検討している。
原子力に「良い点は何も無い」
京都に本拠を置くグリーン・アクション・ジャパンの活動家アイリーン・美緒子・スミス氏は、政府が原子力エネルギーの回帰から得られる「良い点は何も無い」と述べた。
「彼らが再開させたい原子炉や稼働寿命を延ばしたい原子炉は全て、フクシマの惨事を再来させる可能性がある」と、彼女は述べた。「教訓は学んだし技術は安全だと彼らは言うが、彼らはその言葉を保証することが出来ない。」
「しかし、安全の問題という以上に、これは単に悪いエネルギー政策だ」と、彼女は強調した。「これら新しい原子炉の開発には膨大な費用と多くの時間が掛かる。その後、承認のための作業には長い時間が掛かり、更に、規制当局の承認とこれら新しく計画された原発の近くに住む住民から支持を得る必要がある。」
「私たちにそれだけの時間は無い」と彼女は言った。「今年の夏、世界中で報告された記録的な高温を見るといい。気候危機は既に私たちに迫っている。私たちには、起動まで10年掛けた挙げ句に全く役立たないかも知れない、新技術の検討を始める時間は無い。」
再生可能エネルギーがより環境に優しいエネルギー資源への移行に貢献できるが、直ぐに実施でき直ぐに効果を出す手頃な対策が他にもあると、美緒子スミス氏は考える。
「生産物を無駄にしないように効率を上げつつエネルギーの保全を進めるという、パラダイムシフトが必要だ」と、彼女は述べた。
建築物の断熱効率の向上は簡単な対策の1つだが、産業の工程からの廃熱回収と再利用も必要だ。
「フクシマの後、原子炉が全て停止し日本で実際にエネルギー不足が発生したとき、国民は前向きな反応を示した」と、美緒子スミス氏は述べた。
「彼らは使用する電力の量を劇的に減らし、資源を無駄にしないことを強く意識するようになった。もし求められたら、大衆が全く同じように反応しない理由はないと思う。」
「核のルネサンス」
しかし、根井教授は「核のルネサンス」が差し迫っていると確信している。
「ウクライナでの出来事は、日本を含む世界に国のエネルギー安全保障の重要性を示した」と、彼は述べた。
「自動車や住宅の燃料価格の上昇に既にショックを受けている日本の国民に、政府はこのメッセージを繰り返し伝えるだろう」と、根井氏は付け加えた。
「彼らが発信しているもう1つのメッセージは、日本が国際社会の信頼できるメンバーと真に見なされるためには、2050年までにCO2排出量を劇的に削減するという約束を果たす必要があり、その達成には原子力は不可欠だ、ということだ」と、彼は述べた。
「フクシマから10年以上経った今、日本はあの事故の教訓を学んでいる」と彼は述べた。
「私たちはもっと多くのことを知っている。つまり、再建・復旧・安全確保の方法を理解している。今、私たちはこれらの教訓を実践し、日本が新しい原子力技術を先導する開発者になり、エネルギー供給を保護する必要がある。」
編集:キース・ウォーカー
日付 2022年8月30日
著者 ジュリアン・ライオール(東京)
関連テーマ エネルギー, 日本, エネルギーヴェンデ(再生可能エネルギーへの転換), 福島, アジア
―参考―
(投稿者より)
要は、彼らは原発再開の機会を狙っていた。だから、この10年間エネルギー転換に本気で取り組まなかった。原発には多くの利権が存在しますし、核を持っておくことは軍事的にも有利と思ったのでしょう。
「日本では、個々の都市のエネルギー需要を満たすために多数のSMRを配置することを政府が検討している。」"In Japan, the government is considering deploying numerous SMRs to meet the energy needs of individual cities." ロシアでは既に北極海に面する街のエネルギー源として、原子炉を船に載せて沖合で運転している例があるようですが、日本でも似たようなことをするのでしょうか?確かに、SMR用核燃料はトラックで輸送できるようですので、都市部への原発立地は可能となります。
そうなると、街中の一般道路を核燃料が走り回る事態を住民は受け入れるでしょうか?ただ、ここをクリアしなければ、都市の快適な生活のために地方に原発(とそれに付随する様々な問題)を押し付けるという、20世紀にこの国に存在した問題の1つが再び持ち上がります。原発の問題は格差や差別の問題でもあるのです。
いずれにせよ、核廃棄物を無害化して環境に還す技術が確立するまでは、原発は「トイレの無いマンション」であり続けます。農耕地の除染作業に微生物を活用するなど、福島原発事故の直後には民間による取り組みが芽生えていましたが、国の予算が付かなかったせいか今では話を聞きません。この技術の実用化は可能だとは思いますが、そのための時間もコストも掛かるでしょうし、何よりも今の日本にはその意思も責任感も見られません。
ただ、反原発の立場から言わせて頂けるなら、今回のエネルギー危機を切っ掛けに、寧ろ原子力以外で「エネルギーの地産地消」の動きが加速することを期待しています。
※2022.9.5 記事を追加し、併せて見出しとコメントを変更しました。