言葉こそ強気だが、日本は台湾の戦争に参加しないかも知れない (VOA NEWS)

言葉こそ強気だが、日本は台湾の戦争に参加しないかも知れない (VOA NEWS)









(Despite Tough Words, Japan Might Not Enter a Taiwan War: VOA NEWS)

https://www.voanews.com/a/despite-tough-words-japan-might-not-enter-a-taiwan-war/6791868.html





東アジア





言葉こそ強気だが、台湾の戦争に日本は参加しないかも知れない





2022年10月16日 午前6:01





エリン・ヘイル








ファイル―岸田文雄・日本首相は、東京・首相官邸での記者会見で話をししている。2022 年 8 月 31 日。





台北—アナリストたちによると、日本は軍事力を増強を続けているが、台湾と中国の間で戦争が起こった場合にこれをどのように行使するかについて、海外に向けた政府のメッセージと日本での国内向けの見解とでは認識が大きく異なる。



隣国である日本と台湾は正式な外交的な同盟関係で無いものの、文化的な深い繋がりと、蔡英文台湾総統とこの民主主義国を「重要なパートナー」と呼んだ今は亡き安倍晋三・日本首相との努力により、親密さが深まっている。



両首脳は在任中に軍事支出を増やし、中国の台頭という脅威について警鐘を鳴らす活動を行った。中国は台湾を省の1つと主張し、この民主主義国をいつか侵略する、あるいは、脅かす可能性がある。安倍氏と同じ保守派・自由民主党(LPD)出身の日本の新首相・岸田文雄氏は、前任者よりも静かな道を歩んでいるが、それでも前進している。



先頃、岸田氏はフィナンシャル・タイムズ紙に、日本は「東アジアで起こり得る有らゆるシナリオ」に備える必要があり、政府は2023会計年度に過去最高となる400億ドルの防衛予算を要求したと語った。また、自民党は5 年以内に軍事支出を現在のGDP比1%から、NATO 諸国が使う基準値のGDP比2% に引き上げることを目指している。





国内には戦争支持は殆ど無い



これにより、台湾とその戦略的同盟国・米国の一部議員は、日本が台湾を防衛するために中国との戦争に介入するかも知れないと考えるようになったが、アナリストたちは、そのような未来の確実性は小さく、日本国内では一般国民からの支持が無いと述べている。日本は戦争が発生した場合に台湾を支援すると約束しておらず、自民党右派以外からの支持は殆ど無い。







2022 年 10 月 16 日、中国・北京の人民大会堂で開催された中国共産党第20回全国代表大会の開会式で、倒れた同志のために黙祷を捧げるために頭を下げる出席者。





安倍氏のような人々は、異なる聴衆に対して2つの異なることを言っている。安倍氏やその仲間の右翼のような人々は米国に対して、そして、恐らく台湾に対しても、今や日本は集団的自衛権を行使する準備が出来ていると言った」と、日本の上智大学で比較政治学と日本政治学を教える中野晃一教授は述べる。「安倍氏は、台湾での戦争、つまり、『台湾での有事』は日本の有事であるとさえ言ったが、それは非常に極端な立場であり、日本では実際には余り取り上げられたり議論されたりしていない。」



2015年、安倍氏が「集団的自衛権」の禁止を解除して日本の平和憲法に大きな変更を推し通した時、彼は国内ではこの変更が日本を保護し米国に近づく方法だと囃し立てたと、中野氏は述べた。これが外国の戦争に参加する方法だという言い方はされなかった。



この動きは、法曹界の多くから日本の民主主義への攻撃と見なされたため、いまなお日本国内では大きな物議を醸していると、中野氏は述べた。また、「台湾は民主主義国であり、米国は民主主義の擁護者であり、日本は民主主義の擁護者であり、そして、安倍首相も…というこの議論は、寧ろ偽善的で不実な印象を与えている」と、彼は述べた。



また、日本と台湾との緊密な関係にも係わらず、国民には軍事行動に対する欲求は殆ど無いと、東京・テンプル大学のアジア研究者ジェフリー・キングストン教授は述べた。



「人々は台湾を大いに讃え、台湾を愛している。彼らが台湾を愛する理由の1つは、台湾ほど日本を愛する国は世界に他にないからだ。しかし、『君たちはいい人だ、私たちは君たちを讃える』などなどの温かで曖昧な気持ちと、危険な場所に軍隊を送ることの間には大きな溝がある」と、彼はVOAに語った。「ワシントンには日本が介入して呉れるという期待があり、自民党の政治指導部は介入すべきだと考えていると私は思うが、国民は日本が平和憲法を逸脱することに極度に用心している。」







台湾





安倍氏と物議を醸している政治団体統一教会との関係が彼の暗殺により暴露されたために、同首相の遺産と今は亡き彼に関連するものは日本国内では全て「有毒」になったと、キングストン氏は述べた。





日本の防衛



それでも、日本は積極的に軍事シナリオに加わることが出来ないかも知れないが、米国との関係のために、ある種の補助的な役割を果たすことになりそうだと、米国・外交問題評議会でアジア太平洋を研究するシーラ・スミス上級研究員は述べた。彼女によると、日本は7ヵ所の米軍基地を抱えており、米空母ロナルド・レーガンの母港が存在する。つまり、米軍は台湾海峡に到達するために日本を通過することになりそうだ。



1979年の台湾関係法の下で、米国は法律により戦争の際に台湾の防衛を義務付けていない―島の自衛を助けるだけだ―が、ジョー・バイデン大統領は就任から米国が台湾を防衛することを示唆している。



また、日本には世界で一流の潜水艦隊があるので、中国を封鎖する場合に日本は重要な役割を果たすかも知れないが、容易に報復に直面するかも知れないと、スミス氏は述べた。



「米国と中国が互いに戦争することになった場合、米軍基地は恐らく標的にされるため、日本に必要な自衛の方法についての全く新たな次元の考え方が日米同盟には必要だ」と、彼女は述べた。



「日本が『日本の防衛シナリオ』と呼んでいる、ずっと複雑で大掛かりな一連の考え方が必要になるだろう」と、彼女は付け加えた。「もしあなたがこの米中戦争のより大きな文脈にいるなら、日本の防衛は日米両国にとって最重要な焦点であり、同盟の連携はその道を進むだろう。」











(投稿者より)



"the democracy"を「この民主主義国」と訳しました。「台湾は国では無い」という主張があるのは承知していますが、『国』という単語を使わなければ日本語になりません。御容赦ください。



安倍氏(亡くなった元首相)と物議を醸している政治団体統一教会との関係が彼の暗殺により暴露されたために」"due to revelations about the late prime minister's ties to the Unification Church, a controversial political group, following his assassination" 、米国の政府系メディアが統一教会を「政治団体」と説明していることに留意したいです。統一教会を作ったのは米CIAと言われていることも併せて記しておきます。



私は「台湾有事は起きない」との見解に同意しています。中国側の支払うコストが余りにも大きいからです。中国軍の台湾上陸に際しては数十万人の戦死者が想定されていますが、その時には一人っ子の親たちや祖父母たちが共産党の敵に回るかも知れません。



台湾も軍事力の整備だけで無く、自国の有事が「台湾対中国」でなく「世界対中国」の戦いになるよう、有らゆる努力を行っているようです。その努力がそのまま抑止力として働きます。



それでも、緊張緩和を真剣に考えるなら、日本も相手の圧力に対峙するだけの軍事力を整備する必要はあると思います。その上で互いに信頼関係を作りながら同時に圧力を抜く作業を進めることになると思います。勿論ですが、この程度は今後の情勢によって変わるでしょう。



米国も中国も経済が相当危ないので、私はそちらの方が心配です。特に、米国経済のクラッシュは既にある程度が想定済みですが、中国経済のクラッシュは当局が隠している分だけ体制の終わりに繋がり得ます。「言葉こそ強気だが」"Despite Tough Words" というのはお互い様に思えます。







※ 2022.10.22 コメントを一部書き直しました。