資源不足に立ち向かうために中古の電子部品を回収する日本(DW English)[2022.9.14]

資源不足に立ち向かうために中古の電子部品を回収する日本(DW English)[2022.9.14]









(Japan harvesting junk electronics to tackle resource shortages: DW English)

https://www.dw.com/en/japan-harvesting-junk-electronics-to-tackle-resource-shortages/a-63114220





アジア





資源不足に立ち向かうために中古の電子部品を回収する日本





新しい「都市鉱山の開発」活動は、使用済みのスマートフォン・テレビ・コンピューターから高価な金属を抽出することを目的としている。その目標は、外国の供給業者と不安定なサプライチェーンに対する日本の依存を減らすことだ。







日本のパナソニック従業員が電子廃棄物をリサイクルしている





国際貿易の混乱により国のハイテク製造業界に不可欠な原材料が不足する怖れがあるため、日本は毎年廃棄される大量の使用済電子部品を利用する野心的な計画を発表した。



環境省は8月下旬、最先端の電気自動車からコンピューター・スマートフォンまでの有らゆる電子機器から回収される金属の量を2030年までに2倍にして、リサイクルと再利用による資源化を目指すと表明した。



同省によると、2020 年には「都市鉱山業者」として活動する専門企業によって21万トン (231,485米トン) という見事な量の金属が回収された。



2030年までに回収量を420,000トンに増やすために、更に10億円(694万ユーロ、692万ドル)がこの業界の振興のために確保されている。





ゴミ箱で待つ金鉱



廃棄された携帯電話やテレビ、コンピューターのマザーボードや冷蔵庫、電子レンジ、自動車部品、その他の数え切れないほどの家庭用品には、多様な量の金や銀、リチウム、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛が含まれている。それらはバッテリーやハイテク電子機器の重要なコンポーネントを提供し、適切に処理すれば再利用が可能だ。



毎年廃棄される金属の量は余りに多く、2020年の推定の1つによれば、日本だけで6,800トンもの金が廃棄されている可能性が示唆される。これは、南アフリカで今なお採掘を待つ金の埋蔵量として知られる量よりも多い。



「10年前、廃棄された電子機器は価値が非常に高いとも開発の必要な資源とも見られなかった。それは単に、そこに含まれる金属の価格が比較的低かったからだ」と、物質・材料研究機構の責任者を経験し、現在サステイナビリティ技術設計機構の責任者を務める原田幸明氏は述べた。



「しかし、それは劇的に変化しており、既にここに在る材料を回収・再利用するために、更に多くのことを行う必要があるという認識が高まりつつある」と、彼はDWに語った.



原田氏によると、他の多くの国も同じことをしているが、国内の先進エレクトロニクス企業には旺盛な需要があり、また、その材料は海外からの輸入にほぼ完全に依存しているため、日本での必要性は恐らく更に深刻だ。



そして、日本は既に実質的に手中にある資源を活用する準備が世界で最も進んでいる国の1 つだと、彼は主張する。



「日本は、遥か以前の1990年代には電子部品の循環型経済を作り出す取り組みを最初に始め」、製造業者が家電製品に含まれるプラスチック・ゴム・ガラス・その他の材料のリサイクルを奨励したと、彼は述べた。



それらに含まれる少量金属を一緒に回収する重要性が時と共にずっと大きくなったが、以前は回収は非経済的だと考えられていた。



「また、日本は非常に高度な廃棄物の管理体制を持っており、今ではこれらの金属の回収は他国よりもずっと安価になっている」と、原田氏は述べた。





資源の独立性の向上



テンプル大学東京キャンパスの政治学教授・村上博美氏は、資源のリサイクルは日本が輸入への依存から離れるために重要だ。輸入は政府の制御を超えた混乱を受けやすいからだと、述べた。



「日本は、現代の経済が必要とする全ての資源が実質的に不足していることで有名であり、エネルギーと食料の2つの主要な分野において長年の懸念があった」と、彼女はDWに述べた。



10年前、東シナ海の小さな島々の主権をめぐる東京と北京の間の紛争により、中国は電気自動車に必要なレアアース金属の日本向け輸出を事実上禁止した.



この経験は東京に衝撃を与え、このため歴代の政権は供給源の多角化や、資源を政治的影響力として利用する可能性が低い相手国からの供給を模索するようになった。



「ここには現在展開中の重要な国家安全保障という側面がある」と、村上氏は強調した。「この数年、私たちは世界的なパンデミックの影響、サプライチェーンへの影響、海外からの部品や原材料のタイムリーで定期的な到着に依存する業界が受けた損害を目の当たりにしてきた」と、彼女は付け加えた。



ウクライナでの戦争と、エネルギー資源をロシアに依存する国々にロシアが行使可能だった圧力によって、状況は更に悪化した」と、彼女は述べた。



「日本は、燃料や食料だけでなく多くの分野で自分の弱さを認識しているため、『都市鉱山の開発』と、既にここにあるものを最大限に活用することは賢い戦術だ。」





オリンピックにおける金属再利用の取り組み



東京2020五輪大会は、日本の資源再利用の足掛かりにもなった。五輪史上初めて、大会中に授与される金・銀・銅メダル5,000枚の全てリサイクル金属から製造されると発表された。



組織委員会は全国に向けて、アップグレード版の購入により忘れられた古いコンピューター・携帯電話・その他のデバイスを引っ張り出し、この活動に寄付するよう呼び掛けた。これにより、一般国民には更に直接的な大会「参加」が可能となった。



1,300校を超える学校と 2,400店の小売店を含む日本中の自治体がこの運動に参加した。80,000トンの廃棄物が最終的に回収された。この大量の回収物は製錬された後に最も価値ある金属が回収され、金30 kg(66ポンド)
・銀4,100 kg・青銅2,700 kgが得られた。





編集:ウェズリー・ラーン





発表    2022年9月14日

記者    ジュリアン・ライオール(東京)

関連テーマ 日本リサイクルアジア












(投稿者より)



2010年のレアアース危機を乗り越えて、「都市鉱山採掘」活動は着実に進歩してきました。



少し前の記事ですが、日本経済にとって明るい話題だと思い、御紹介しました。