【解説】 ロシア軍の予備役部分動員、何を意味するのか? (BBC NEWS JAPAN)/ロシアで部分動員発表 召集対象者は元職業軍人、予備役(Sputnik日本)











(BBC NEWS JAPAN)

https://www.bbc.com/japanese/62981983





【解説】 ロシア軍の予備役部分動員、何を意味するのか?





2022年9月22日





ローレンス・ピーター、BBCニュース







EPA

南部ヘルソン地域のロシア兵






ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は21日、ウクライナをめぐり「部分的な動員令」の発動を宣言した。ウクライナを侵攻中のロシア軍は今月に入り、占領地を奪還されるなど大幅な後退を強いられている。





国民向けのビデオ演説でプーチン氏は、ウクライナ政府を支援する西側諸国によって、ロシアの「領土的一体性」が直接脅かされていると述べた。



また北大西洋条約機構NATO)に対し、核保有国であるロシアはあらゆる兵器を使って、西側の「核の脅迫」に対応できると警告した。



この前日には、ウクライナ東部と南部の4州でロシアが任命した指導者らが、ロシアへの編入を問う「住民投票」と行うと発表している



ロシアは2014年にクリミア半島を併合した際も、同様の動きを見せていた。





部分動員、その実態は?



ロシアは、軍務経験のある予備役を30万人招集する計画。プーチン大統領は、招集されるのはウクライナでの紛争で必要となる特別技能を持つ人たちだと強調した。60歳以上の定年退職者も対象になる。



ロシアには2500万人の予備役がいるため、理論上はこの人数を動員することが可能だが、その予定はまだないという。プーチン大統領とセルゲイ・ショイグ国防相は共に、徴集兵を前線に送り込むことはないと強調している。



ショイグ国防相は一方で、1000キロにわたる前線を守るためには追加の部隊が必要だと述べた。



部分動員は数カ月にわたって段階的に行われる予定。プーチン氏は先に、ロシアは長期戦に備えていると話していた。ロシアの国営通信は、ロシア政府が動員令を発するのは第2次世界大戦以来だと伝えているが、実際には1980年代にアフガニスタン紛争のために、その後も北コーカサスでのチェチェン紛争のために、それぞれ数千人を招集している。



これらの紛争では十分な訓練を受けていない徴集兵らが多く殺された。そのためロシア政府は今回、反戦ムードの高まりを避けようと慎重になっているようだ。





ロシア軍はウクライナ軍より強いのか



ロシア軍は数の上ではウクライナ軍に勝っているが、ウクライナは戦場での戦術や西側の精密な武器などでその差を埋めている。



2月の侵攻開始時、ウクライナには19万人のロシア兵が投入されていた。これに、ウクライナ東部ドンバス地方の親ロシア派戦闘員が数千人いた。



ロシア政府はその後、金銭的な優遇と引き換えに大規模な兵の募集活動を行っている。そのため、シベリアやコーカサスといった貧しい地域から、チェチェン紛争を経験した戦闘員などが、追加の部隊員として投入されている。



ロシアは平時、軍隊の規模の上限を軍人100万人余り、一般職員約90万人と定めている。しかしプーチン大統領は8月、13万7000人を追加雇用する大統領令に署名した。



同国の徴兵制度では、18~27歳の男性に対し通常1年間の兵役義務を課している。ただし、健康状態や学生であることなど、さまざまな理由で免除される。



ロシア政府は当初、徴集兵をウクライナに送り込むことはないと述べていた。しかし実際には、徴集兵らに無理やりウクライナ行きの契約をさせていたことが明らかになり、当局者数人が懲戒処分を受けている。プーチン氏はその後、徴集兵は戦闘には投入されないと強調している。



侵攻以前、ウクライナ軍の規模は現役の兵士が19万6600人と、非常に小さかった。しかしウクライナ政府は大規模な動員令を発令し、兵士の数を大幅に増やした。





なぜ今なのか



西側の軍事アナリストや政治家らは、東部ハルキウでのウクライナ軍の大規模な反撃によって、ロシア政府が守勢に転じたとみている。これが、プーチン氏の最近の決断を説明している。



ショイグ国防相はさらに、これまでウクライナでロシア兵5937人が戦闘中に死亡したと発言した。しかし英国防省が7月に発表した分析では、ロシア側の死者は2万5000人と推測されており、これと比べてはるかに少ない。ウクライナは、敵側の犠牲者は5万人としている。



最近では、兵力の大きな損失を補うため、国内の刑務所で雇い兵を募集していることも明らかになっている。1979~1989年のアフガニスタン紛争では、旧ソ連軍は1万5000人の兵士を失っている。



BBCロシア語の調査では、ロシアはウクライナパイロットや情報専門家、特別部隊など1000人以上のエリート軍人を失っている。











プーチン氏は核戦争を警告しているのか



プーチン大統領は演説の中で、ウクライナ政府を支援する西側諸国が反ロシア的な「脅威」になっていると非難。ロシアの領土的一体性が脅かされた場合、必要であればあらゆる兵器を使用すると警告した。



また、「わが国にもさまざまな大量破壊兵器があり、中にはNATO諸国が保有するものよりも近代的なものもある」、「これははったりではない」と付け加えた。



ロシアの軍規では、国土が攻撃され脅かされた場合に戦術核の使用が認められている。



ロシア軍はウクライナですでに、時速6000キロ超の長距離極超音速ミサイルを使っている。しかしアナリストらは、戦争の潮目を変えるには至っていないとみている。



ロシアが占領地域での「住民投票」を実施し、ウクライナ領土の一部がロシアに編入されたと主張した後に、ロシアの領土がNATOの攻撃を受けていると主張する可能性がある。



ウクライナ政府と西側の首脳は、この物議をかもしている「住民投票」について、ロシアによる占領の隠れみのだとみている。



アメリカの駐ウクライナ大使、ブリジット・ブリンク氏もツイッターで、「偽の住民投票や予備役動員は、弱さのしるし、ロシアの失敗のしるしだ」と書いた。



オランダのマルク・ルッテ首相も、予備役招集や住民投票の強行といったプーチン大統領の決定は「パニックの証し」だと述べた。



その上で、「プーチン氏の核兵器にまつわるレトリックは、これまでにも聞いてきたもの」で、問題視していないと語った。



その他の西側諸国の政治家も、核の脅威は高まっていないとしている。





(英語記事 What does Russia's troop call-up mean for Ukraine?





関連トピックス ウラジーミル・プーチン ウクライナ侵攻 ウクライナ ロシア 核兵器 軍隊







―参考―













(Sputnik日本)

https://sputniknews.jp/20220924/13070068.html





ロシアで部分動員発表 召集対象者は元職業軍人、予備役





2022年9月24日, 17:49







© Sputnik / Eugeny Biyatov





ドミトリー ヴェルホトゥロフ






2022年9月21日の朝、ウラジーミル・プーチン大統領は、部分的な動員令の発動を宣言した。セルゲイ・ショイグ国防相によれば、召集されるのは30万人の予備役―つまり、予備兵として軍と契約を結んでいる元職業軍人および予備役である。





部分的な動員とは、動員資源の一部を兵役に就かせることである。一方、総動員とは、ロシアではおよそ2500万人とされる動員資源をすべて召集することである。今回の部分的な動員は、兵役の義務を負う男性の1.2%が対象となっている。



部分的な動員には、従軍および戦闘経験を有する人員や軍事の専門家を軍に引き入れることを可能にするという利点がある。つまり短期間での兵員補充が可能となるのである。経験を有する人員は、簡単な指示を受けるだけで、戦闘任務を遂行することができる。ちなみに、従軍の経験を持たない召集兵を訓練するにはおよそ6ヶ月が必要となっている。







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9月23日, 02:41






義勇兵大隊

実質的には、動員は大統領令が発令されるかなり前から始まっており、それは義勇兵大隊と言う形で編成されていた。部隊には、健康で、対象年齢の者であれば、誰でも志願することができた。従軍の経験は歓迎されたが、必須というわけではなかった。義勇兵大隊の兵士は、訓練を受けた後、6ヶ月間の契約を結ぶ。そして戦闘行為に参加した後は、ロシア軍での勤務を継続することができる。



義勇兵大隊は事前の訓練を受けた後、戦闘地域に派遣される。2022年9月1日時点で、ロシアには36の義勇兵大隊がある。義勇兵部隊は極東にもある。沿海地方の連隊「チーグル」、ハバロフスク州の通信部隊「コルフ将軍」、アムール州の自動車化狙撃大隊、ヤクート・サハ共和国の「ボオトゥル」である。



ウクライナにおける特別作戦の開始直後に編成された義勇兵大隊の一部は、すでに戦闘行為に参加している。チェチェン義勇兵大隊はマリウポリの襲撃にも参加した。







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9月23日, 12:03






装甲兵員輸送車BTR–80の自動車化狙撃大隊には525人、歩兵戦闘車BMP–2およびBMP–3の大隊には495人が所属しており、大隊を構成する人員数は、平均500人となっている。つまり36の義勇兵大隊の兵士と将校の数は、合わせておよそ18000人である。



とはいえ、義勇兵大隊は、戦闘行為をできるだけ早く収束させるため、ウクライナにおけるロシアの部隊を強化するという課題を解決することはできない。今回の部分的な動員が発表される直前に、チェチェンアフマド・カディロフ首長は、地域の首長らに対し、義勇兵をさらに召集するよう提案していた。各地域で100人の志願者を集めることができれば、85000人の補充ができるからである。しかし、プーチン大統領と最高司令官は、部分的な動員という決定を下した。





実際の戦闘経験



ウクライナにおける特別作戦には、東部軍管区を含む、ロシアのすべての軍管区の所轄で構成される部隊が参加している。通常、旅団のような部隊の人員から、戦闘行為に参加する連隊が1つないし2つ編成される。戦闘が一定期間進むと、部隊では、兵員交代または配置換えが行われる。これは兵士らの休息と損失の補完のために必要なものである。戦闘に参加し、配置換えとなった人員、負傷した人員は、部隊に戻り、そうした形で、部隊は少しずつ、実際の戦闘経験を獲得していくのである。これは演習では決して得られない経験である。







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9月21日, 16:36






東部軍管区の部隊の中に、太平洋艦隊に所属する第155独立海軍歩兵旅団がある。この旅団は、大統領令によって、名誉ある「親衛」の称号を取得した。大祖国戦争以来続く伝統によって、戦闘において偉大な英雄行為と勇気、特別な功績をあげた部隊や旅団には、親衛の称号が与えられる。旅団を率いるアレクセイ・ベルンガルド大佐は、「ロシアの英雄」の称号を授与されている。



マリウポリ北方のヴォルノヴァハの戦いで、2月27日から3月12日にかけて、第155独立親衛海軍歩兵旅団の部隊は、8年かけて建設されたウクライナの防衛を突破し、敵を退却に追いやるのに成功した。その後、ロシア軍はマリウポリに進軍したが、マリウポリでは激しい市街戦と「アゾフスタリ製鉄所」で戦闘が発生した。確信を持って言えることは、日本に、この第155独立親衛海軍歩兵旅団のような経験を持つ自衛隊の部隊は一つもないということである。米軍海兵隊ですら、コンクリート製の要塞を突破したり、都市を襲撃したり、スターリングラードの戦いさながらの市街戦を経験したことはない。しかし、極東の部隊、太平洋艦隊にはそれがある。ちなみに、義勇兵大隊「チーグル」は、第155独立親衛海軍歩兵旅団と同じ基地で訓練を行なっている。







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9月23日, 22:49






ウクライナの特別作戦には、海兵部隊だけでなく、戦車部隊、砲兵部隊、自動車化狙撃部隊、そして東部軍管区に所属する混成の防空部隊が参加している。一方、空軍では、Su-25攻撃機の航空部隊も参加している。つまり、東部軍管区の軍は、ウクライナにおける特別作戦の中で、きわめて精力的に、実際の戦闘での戦いを身につけているのである。



プーチン大統領と軍の最高司令官は、ウクライナの特別作戦の目的は達成されると明言した。ロシア軍は、できるだけ早期に戦闘を終了するため、従軍および戦闘経験を持つ人員を補充し、最新の兵器や設備を手にすることになる。加えて、ロシア軍は、日本の自衛隊にはまったくない、実戦の経験をさらに強化していくことになる。戦闘経験は常に必要不可欠なものであり、それはロシアと極東の防衛強化と地域の平和の維持に貢献するものなのである。





ドンバスの解放を賭けた特殊軍事作戦 オピニオン ロシア 軍事











(投稿者より)



今回の紛争についての1つの山場のようですので、双方の解説を御紹介します。



ロシア側の記事は経験値を上げることの意義を強調しています。確かにその通りですが、私としては釈然としないものが残りました。平和ボケと言われるかも知れませんが、日本の自衛隊の方々には、1度も実戦に出ないまま退職することを誇りにする伝統を保ち続けて頂きたいです。