ロシアが日本から原爆記念式典への出席を拒否されたことを厳しく非難する (DW English)

ロシアが日本から原爆記念式典への出席を拒否されたことを厳しく非難する (DW English)









(Russia slams Japan's snub over atomic bomb anniversary events: DW English)

https://www.dw.com/en/russia-slams-japans-snub-over-atomic-bomb-anniversary-events/a-61972179





アジア





ロシアが日本から原爆記念式典への出席を拒否されたことを厳しく非難する





モスクワは、日本がロシアのウクライナ戦争を受けて、広島と長崎の原爆投下を記念する年次式典に同国代表を招待しないと決めたことを非難した。







日本当局は、ロシア当局者が出席を予定した場合に他国が式典をボイコットすることを恐れたと述べる





日本の広島・長崎両市長が、戦争中に初めて原子爆弾が使われた日を記念する年次式典にロシア政府の代表を招待しないのを決めたことに対し、モスクワは怒りの反応を示した。



市当局は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領・同内閣の高官・更に東京のロシア大使館職員を招待しないという決定は、日本政府が行ったと述べる。



地方当局は、自分たちは東京の姿勢に落胆した、ロシア当局者の出席を望んでいたと述べる。



しかし、モスクワによるウクライナでの戦争核兵器を使うとの脅迫に衝撃を受けた多くの日本人は、この厳粛な記憶の日へのロシアの如何なる関与にも反対している。その中には、1945年8月6日に自分の街の上空で爆発した「リトルボーイ原子爆弾を8歳の少年として生き延びた森重昭氏がいる。





ボイコット拡大の恐れ



5月26日、松井一實・広島市長は記者会見でこの決定を確認し、ロシア当局者が出席する予定の場合、他の国々が式典をボイコットすることを怖れたと述べた。



「私は式典が政争の具として使われることを望まない」と彼は言った。



同日、田上富久・長崎市長は、「私は彼らを招待したかったが現実は難しい。式典は厳粛なものとして行いたい」と述べた。



爆弾が広島上空で爆発し、そして、その3日後に長崎上空で爆発した時に、一般市民を主として226,000人もの人々が死亡した。持続的な重傷を負った人は更に数え切れず、その一方で、爆風からの放射線はその後の数十年に亘り人々の様々な病気に影響した。



ロシアはテレグラムのソーシャルネットワーク・サイトで、ロシア連邦国際委員会のグリゴリー・カラーシン委員長は、「日本政府が米国による原爆攻撃の犠牲者を追悼する両式典にミハイル・ガルージン露大使を招待しないのは、政治的に失礼だ」と述べ、日本の決定を直ちに批判した。



一方、ロシア大使はこの決定を「卑劣な行為だ」と激しく非難した。



「主催者はウクライナでの特別作戦を口実に我が国を『キャンセル』することを決めた。不誠実にも、ロシアがウクライナ核兵器を使う可能性を疑う多くの偽の仄めかしが広まっている」と、ガルージン氏は5月25日にソーシャルメディアに投稿した。





原爆生存者は動かない



しかし、森氏は動かない。「私はテレビでニュースを見てきた。非常に多くの人々が殺されているのを見るのは悲惨だ」と、彼は述べた。「ウクライナ人が死んでいき、ロシア人が死んでいく。何のために?全ての戦争は悲惨であり、必要ないものだ。」



1945年、原爆が広島上空で爆発した時に爆心地から約3キロ(1.86マイル)の低い丘の上に立っていた森氏は、「私には何も出来ないが、何とかならないかという思いはある」と語った。



彼は足を吹き飛ばされ、自分がキノコ雲の中の小川にいることに気づいた。とても暗かったので、彼は自分の手が顔の前にあるのが見えなかった。自分は幸運にも生き残ったが、その後の数日間の街で死んだ人々や死にゆく人々の姿が自分の記憶に焼き付けられていると、森氏は語った。



「大使は当然のこととして、政府が彼に言わせたいことやプーチン氏が彼に言わせたいことを言っているだけだと思うが、ロシアを招待しないのは正しいことだったと思う。」







1945年8月に広島(左)と長崎(右)の上空で爆弾が爆発した時に、一般市民を主として226,000人もの人々が死亡した





市の報道官は、広島はロシア政府代表が記念式典に出席できることを望んでいたとDWに語った。「私たちは、誰でも原爆の結果を直に見ることが非常に重要だと考えている」と、彼女は述べた。



「東京の外務省は、ロシア代表団が出席した場合、他の国々が行かないと決めるも知れないと心配したので、私たちは仕方なくロシアを招待しないことにした。しかし、状況が変われば時期を見て再びロシアを式典に招待したい」と、彼女は付け加えた。



これと同じ意見の人々の中に、東京を拠点とする実業家で保守的な活動家のカトウ・ケン氏がいる。彼は、プーチン氏がウクライナ核兵器を使用すると脅迫したことに日本は「本当に衝撃を受けた」と述べた。





「耐えられない脅威」



「誰かが核兵器の脅威を利用して世界の他の国を虐めるのは耐え難い」と、彼は言った。



「私たちは日本人として核の恐ろしさを知っており、プーチン氏が自国の爆弾の1つを使うと警告したとき、ここの誰もが本当に衝撃を受けた。」



「個人的には、プーチン氏や彼の閣僚は来なかっただろうと思う。なぜなら、厄介な事が起こるからだ」と、彼は付け加えた。



「そして、大使が出席していたら、大規模な抗議が発生しただろう。彼らは密かに欠席にして良かったと考えているだろうが、それでも抗議は必要だと思っている。」



テンプル大学東京キャンパスの政治学教授・村上博美氏は、この問題は「微妙」だと述べた。



「日本政府がこの立場を取った理由は確かに分かる。彼らは追悼式典でいかなる種類の抗議や騒動も避けたいと思っているが、記念日は重要な教育ツールとしても機能している。」



「同じことが2度と起こらないようにするために、より多くの人々が広島と長崎で何が起こったかを知る必要がある」と、彼女は述べた。「現在ウクライナで起きていることを考えると、今回は恐らくその機会を逃したのだ。」





編集:Srinivas Mazumdaru





発表:2022年5月30日





記者:Julian Ryall (Tokyo)





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