続投決めた岸田首相、「新しい資本主義」にどう取り組むのか (BBC NEWS JAPAN)

続投決めた岸田首相、「新しい資本主義」にどう取り組むのか (BBC NEWS JAPAN)









https://www.bbc.com/japanese/59115269





続投決めた岸田首相、「新しい資本主義」にどう取り組むのか





2021年11月1日





大井真理子、アジアビジネス担当編集委員







Getty Images

東京の通勤者たち






岸田文雄総理率いる与党・自由民主党が衆院選で勝利をおさめ、これからの経済政策に注目が集まっている。選挙前、分配重視の「新しい資本主義」は、社会主義のようだとやゆされ、中国共産党が掲げる「共同富裕」とも比較された。





特に投資家の間で批判を集めたのは金融所得課税の見直し。楽天三木谷浩史社長は「全く資本主義が理解できていないのでは?」とツイート。岸田氏が自民党総裁に選出されてから、日経平均株価は8営業日連続で下落し、「岸田ショック」と呼ばれた。その後、首相は金融所得課税の見直しにすぐには着手しないことを発表した。



しかし、その他の経済政策を見ても、安倍晋三元首相や菅義偉前首相との違いは明らかだ。安倍氏が表明した金融緩和、財政出動、成長戦略を3本の矢とする経済政策・アベノミクスのもと、日経平均株価は2倍以上になった。しかし岸田首相は「中間層への恩恵が不十分だった」と批判し、子育て世代への経済的支援などを掲げている。







Reuters

就任間もない衆院選単独過半数を獲得した岸田首相(10月31日夜、自民党本部)






だが、選挙後はアベノミクスが続くと予想する専門家は多い。 投資家であり、村上財団代表理事の村上絢さんもその一人だ。



「どこまで岸田さんが政策をきちんと発表できているか疑問もあるかと思います。でも今の自民党内の人事を見ると、政調会長高市さん、幹事長に甘利さん、アベノミクスの流れは岸田さんの下でも続いていくのではないかと思います」



高市早苗氏は自民党総裁選でアベノミクスを引き継ぐと公言し、安倍元首相の支持を得ていた。また甘利明氏は安倍政権で経済再生担当相だった。特に、金銭授受疑惑の甘利氏を幹事長に任命することへの野党や国民からの批判は明らかだったが、それでも起用した。今回の衆院選挙で甘利氏は小選挙区議席を確保できず、幹事長を辞任する意向を固めたと報道されている。



しかし格差が広がっているという不満は国民の間でもある。所得格差を示すジニ係数によると2010年代に小幅改善したが、国民がそう感じる理由の一つは給料の頭打ちだ。











でも「日本は分配するほど、成長が著しくなかった」と村上氏。「企業が過去最高益を更新し、株価も一時3万円を超えましたが、企業が利益を得てきたところは海外。内需ではなくて外需で稼いできた。それを日本国内でどう返すかのは難しい問題だと思います」。



それでは、どうすれば内需を成長させ、賃上げにつなげられるのか?



村上氏は、高市氏が触れた企業の内部留保への課税を支持する。



「日本企業の問題としては成長投資が促進されていないということだと思います。たとえば、今2500社が東証1部2部にあると言われていますが、その10%以上の会社が時価総額より多い現預金を持っていたり、政策保有株式を持っていたりする」



それを投資することで税率が下がるなど、プラスの側面があるというような政策を出すことが必要だと言う。











岸田氏は、自民党総裁に選ばれた後、「国民の声を丁寧に聞き、政策に反映させていく」とする基本方針を決定した。



金融所得課税見直しを当面撤回した時は、「市場の声を聞いた」と評価された一方で、「腰砕け」との批判も受けた。



選挙でほぼ負け知らずの自民党が再度選挙に勝った今、岸田首相が次に誰の声を聞くのか。旧世代の政治家たちか、アベノミクスの続行を望む大企業や投資家か、もしくは実質賃金が低迷し豊かさを感じられていない国民なのか。



そしてアベノミクスが達成できなかった「成長と分配の好循環」を日本経済に生み出すことができるのか、有権者は注視している。





(英語記事 How Japan's new PM is promising a 'new capitalism'





関連トピックス 岸田文雄 政治 日本経済 日本 アジア