福島の大災害:東電の原発には今でも安全上のリスクがあるのか? (DW English)

福島の大災害:東電の原発には今でも安全上のリスクがあるのか? (DW English)









(Fukushima disaster: Is TEPCO nuclear plant still a safety risk?: DW English)

https://www.dw.com/en/fukushima-disaster-is-tepco-nuclear-plant-still-a-safety-risk/a-56713519





アジア





福島の大災害:東電の原発には今でも安全上のリスクがあるのか?





福島原発の大災害から10年、東京電力は安全上の教訓を学び損ねたと批判されている。







先日の地震では福島第1原発地震計が作動しなかった





福島第1原発の運営会社・東京電力(TEPCO)は、2011年に現地で発生した大災害の教訓を学び損ねたという新たな批判に直面している。



来月、原子炉3基のメルトダウンを引き起こした大規模な地震津波から10周年を迎える。



原発反対派やその他の市民団体は、東電の運営の透明性を更に高めるよう求めている。彼らは、東電がその責任をまだ十分に果たしていない証拠として、同社の発電所1ヵ所で先日発生した重大な保安規定違反を含む多くの問題を指摘している。





北日本の東電柏崎刈羽原発の従業員1人が自分の身分証明書を置き忘れたため、同僚のものを使って中央制御室に入ったことが2月上旬に発覚した。



この事象は発覚の5か月前に発生したが、重大な保安規定違反とは見なされなかったために、1月下旬の四半期会議まで原子力規制委員会(NRA)に報告されなかった。



同委員会はこれに同意せず、作業者が発電所の神経中枢に無許可で侵入したために「安全に影響を与えた」と結論付けた。東電は改善を命じられた。





福島の地震の問題



2月13日、大地震福島原発を含む日本の東北地方を襲ったため、この事象による副産物は更に悪いものとなった。



地震学者によると、このマグニチュード7.3の揺れは2011年4月以来日本を襲った最大の地震であり、実際にはほぼ10年前に発生した東日本大震災の最新の余震だった。











その後しばらく経ってから、東電は2つの原子炉建屋に設置された地震計が昨年故障し、修理されていなかったことを認めた。



更に、地震のために敷地の貯蔵タンク群の端まで放射能汚染水が流れたことや、原子炉2基で周囲の水位が低下したことが、原子力規制委員会への報告により確認された。



これは、周囲のコンクリートにあった既存の亀裂が揺れのために拡大したか、または、新たな亀裂が生じて、そのために、原子炉の冷却を保ち放射能の大気への更なる放出を防ぐために必要な水が逃げられるようになったことを示している可能性がある。



新潟の発電所における保安規定違反を受け、朝日新聞は社説で、この事件は東京電力に対し「原発事業者としての適性」について「疑念を提起した」と痛烈に批判した。



「この公益事業者は、考えられる全ての問題を徹底的に再検討し、作業者の安全意識を高めて、二度と失敗を繰り返さないようにする必要がある」と付け加えた。



東電はDWに配られた声明の中で、地震計の故障は7月の大雨が原因となった可能性があり、同社はこの問題に「取り組んでいる」ところだと述べた。



「現在、私たちは出来るだけ速やかにシステムを復旧するよう作業中だ」と同社は述べた。





東京電力の言い訳は「受け入れられない」



東京に本拠を置く原子力資料情報室の松久保肇事務局長は、歴史上2番目に深刻な原子力災害を引き起こした4基の損傷した原子炉の廃炉に責任を負う企業として、東電のこれらの言い訳は「受け入れられない」と述べた。



「この企業が物事を管理している方法から、彼らが2011年3月の大災害から自分たちの教訓を学んでいないことが私には分かる」と、彼は述べた。







この2011年のテレビ画像は、発電所の爆発の余波を示している





「例えば、東電は柏崎刈羽原発の運転を再開する準備ができていると言っているが、この非常に深刻な保安規定違反がもう発生してしまった」と彼は付け加えた。



福島原発の状況を抑え込んで損傷した原子炉を廃炉にするために開発中の技術について、東電が大きく前進したことには私は同意するが、運営面に付いて回る人的な過失が多すぎる」と松久保氏は述べた。



「彼らにこれらの現場を十分に管理することは出来ず、彼らに核施設を管理する能力はない、と言ったところだと思う。」



原子力監視団体・セーフキャストのアズビー・ブラウン主任研究員は、同社が廃炉作業において前進していることには同意するが、過失の発生は続いていると述べる。



「これは大いにやり甲斐のある仕事なので、彼らは多くのことで非常に上手くやっている。だから、このことについては私たちは彼らを認めねばならないが、彼らが一般国民の信頼を回復させたいと考えるのならば、経営陣が埋めねばならない大きな穴がまだいくつもある」と、彼は述べた。



「彼らは適切な保安規則を全て実施している。それでも、このようなことが起こっているのを私たちは見ている」と、彼は述べた。「それはあたかも、透明性や、問題の発生を直ちに規制当局に通知することや、その問題に取り組むことに対する制度的なアレルギーが存在するかのようだ。そして、このために彼らの評判は全く良くならない。」





放射線の増加



地震の数日後、発電所の沖合に設置された監視装置から高放射性セシウムの小さな増加(投稿者の和訳が検出された。これは、水が実際に敷地から漏れて海洋に拡散していったことを示すものであり、そのため、同社の過失は直ちに意味を持つことになったと、彼は述べる。



そして、これと時を同じくして、漁協の漁師たちが福島県沖で獲ったクロソイから政府が許可するレベルの5倍の濃度のセシウムが見つかったことが発表された。



原発事故のために生活を破壊された地元の漁師たちは2012年6月から試験漁業を限定的に行っており、獲れた魚の全てが食べても安全であることを検査官に証明できれば、今年は小規模な魚の出荷を再開できると期待していた。



東電の最近の問題をめぐり今回このことが発覚したために、日本の東北地方の多くからの農産物は買っても安全だと、一般国民の安心を取り戻すことはなさそうだ。





  • Japan: Tepco and the return to nuclear power (DW English)

    [このリンクからドイチェ・ヴェレ・サイトの動画をご覧になれます。]








  • 発表 2021年2月26日

    記者 ジュリアン・ライオール

    関連テーマ 福島, アジア, 日本










    (投稿者より)



    震災から10年、先月も捜索が行われて白骨化した遺体が1体見つかり、ご遺族の方が安堵されたとのことです。犠牲となられた方々のご冥福を改めてお祈りいたします。



    「技術面は進歩が見られるが、運営面は相変わらずだ」というのが記事の要旨です。この運営思想がフクシマの惨事を招いたのでした。時の経営陣が有罪判決を受けても、これは変わっていません。



    原発事故のために生活を破壊された地元の漁師たちは2012年6月から試験漁業を限定的に行っており、獲れた魚の全てが食べても安全であることを検査官に証明できれば、今年は小規模な魚の出荷を再開できると期待していた。」"Local fishermen, whose livelihoods were devastated by the nuclear accident, have been carrying out limited test fishing since June 2012 and had been hoping this year to resume small-scale shipments of fish to market if they were able to prove to inspectors that all the fish being caught were safe to consume."



    行間から漁師たちの無念が透けて見えます。相変わらずのことですが、今回も罪なことをしたものです。



    これは東電だけのことではありません。日本を動かす有らゆるシステムにこのような制度疲労が見られます。戦争に負け、GNP世界第2位から陥落し、原発事故のために数十兆円を流しても変わらなかったこの体質に、いま時の裁きが下されつつあります。