ウイルスとの戦いに「成功します」 英女王が異例の演説 (BBC NEWS JAPAN)

ウイルスとの戦いに「成功します」 英女王が異例の演説 (BBC NEWS JAPAN)









https://www.bbc.com/japanese/52177225





ウイルスとの戦いに「成功します」 英女王が異例の演説





2020年04月6日







「またお会いします」、エリザベス英女王が約束





イギリスのエリザベス女王は5日夜、ビデオメッセージを発表し、新型コロナウイルスとの戦いに「きっと成功する」と呼びかけた。女王が特別な事態に際して国民に語りかけるのは、即位68年の間でこれが5度目となる。



女王は、政府の指示に従って自宅に滞在している人たちに感謝し、「力を合わせて他人を助けている人たち」を称賛した。



また、「キー・ワーカー」と呼ばれる市民生活維持に不可欠な職種の人たちにも感謝し、「皆さんが1時間、そしてまた1時間と働いてくださるごとに、私たちの暮らしは今より普通のものへと近づきます」と語った。



イギリス政府によると、過去24時間で新たに621人が亡くなり、死者は4934人に達した。5日午前9時までに、19万5524人が検査を受け、4万7806人の感染が確認された。



女王の演説放送から1時間後、首相官邸ボリス・ジョンソン首相が入院したと発表した。ジョンソン首相は3月27日に新型ウイルス感染を発表し、官邸内で自主隔離していた。





「またお会いします」



ウインザー城で録画されたスピーチでエリザベス女王は、「私たちはこれまでにも多くの困難に直面してきましたが、今回はこれまでと違います」と語った。



「私たちは今回、世界中の全ての国と同じ取り組みに参加してします。科学の素晴らしい躍進と、直感的な思いやりをもって、病を治すために。私たちは成功しますし、その成功は私たち全員1人1人の成功になります」



今月の誕生日で94歳になるエリザベス女王はまた、感染対策のため他人と距離を置かなければならない「社会的距離」が、第2次世界大戦の疎開を思い出させると話した。



「社会的距離」が市民にもたらす「愛する人たちと離れる痛み」は、戦時中に家族と離れなくてはならなかった子どもたちの経験を思わせると女王は述べつつ、「けれども今も当時も私たちは、これが正しいことなのだと、心の奥底で承知しています」と強調した。







PA Wire

エリザベス女王はスピーチで、第2次世界大戦中に集団疎開した子どもたちにラジオで語りかけたことを思い出したと語った。1940年のこの演説は王女だった女王にとって初めてのもので、妹のマーガレット王女も参加した






その上で、政府のガイダンスに従い自宅にいる人たちは、自分のその行動によって「弱い立場の人を助け」ており、さらに「すでに多くが経験している愛する人を失う苦しみが、他の家族に広がらないよう協力している」と呼びかけた。



「私たちは一丸となってこの病気と戦っています。団結して強い意志を持ち続ければ、必ず病を克服できます」



女王はまた、自律と不屈の心が大事だと述べ、将来「この困難に自分がどう対応したのか振り返ったとき、誇らしく思えるようになる」ことを願っていると話した。



「これからもまだ、色々とこらえなくてはならないかもしれません。それでも、今より良い毎日は戻ってくると、それを心の支えにしましょう。友だちにまた会えます。家族にもまた会えます。みなさん、またお会いします」と女王は演説を結んだ。



女王が口にした「We will meet again」は、第2次世界大戦中にイギリスで国民的応援歌として愛唱されたヴェラ・リンの曲、「We will meet again」にちなんだものと思われる。





5度目の特別スピーチ



毎年恒例のクリスマス・メッセージを除き、女王が特別な事態に際して国民に語りかけるのは、即位68年の間でこれが4度目となる。これまでは2002年に母エリザベス王妃が亡くなった時や、1997年にダイアナ元妃の葬儀を前にして、あるいは1991年に第1次湾岸戦争が始まった際に、緊急テレビ演説を行った。



また、2012年には即位60周年記念のテレビ演説も行っている。



今回のスピーチは、滞在中のウインザー城であらかじめ録画されたもの。防護服を着たカメラマン1人が撮影し、その他の技術スタッフは別室で作業をした。



スピーチはテレビやラジオのほか、王室のソーシャルメディア・アカウントなどで発表された。



BBCのニコラス・ウィッチェル王室担当編集委員によると、女王の特別演説は王室と首相官邸が緊密に協議しながら実施を決めたものだという。



BBCのジョニー・ダイモンド王室担当編集委員は、従来のように団結を呼びかけて市民の努力に感謝するという「安全」な内容にとどまらず、もっと踏み込んで聞く人を安心させ、元気づけようとするものだったと指摘。



さらに、今回の危機は国のあり方を決定付ける重要な瞬間だと強調したのも、女王の演説としては踏み込んだ内容だったと、ダイモンド記者は分析した。







Ben Birchall/PA Wire

イギリスでは、自宅待機仲の子どもたちが虹の絵を描いて窓に飾っている。女王は、虹の絵はパンデミックに対抗するイギリスの「精神」を象徴するものになるだろうと語った






ロンドンに設置された新型ウイルス専用の仮設病院「ナイチンゲール病院」はツイッターに、職員がスピーチを聞いている写真を投稿。最前線ではたらく国民保健サービス(NHS)職員に語りかけてくれたことを感謝した。



自分も新型ウイルスに感染し、自宅隔離から復帰したばかりのマット・ハンコック保健相も、女王の演説は「感動的で重要なものだった」と語った。



また、4日に最大野党・労働党の党首に選出されたサー・キア・スターマーは、女王はイギリス全体を、そして「新型ウイルスに打ち勝つという決意」を代弁してくれたと述べた。



王室ではチャールズ皇太子が感染したのち回復し、国民に語りかける動画を1日に公開していた。







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