LINEアプリをめぐる紛争で試される韓日関係(VOA)

LINEアプリをめぐる紛争で試される韓日関係(VOA









(South Korea-Japan ties tested by dispute over Line app: VOA)

https://www.voanews.com/a/south-korea-japan-ties-tested-by-dispute-over-line-app/7619440.html





LINEアプリをめぐる紛争で試される韓日関係





2024 年 5 月 20 日 11:05 AM





記者 ウィリアム・ギャロ








2024年5月14日、ソウルで、ソーシャルメディア・アプリ「LINE」を巡る日本との論争を切っ掛けに開かれた集会で、岸田文雄・日本首相(右)との尹錫悦(Yoon Suk Yeol)・韓国大統領の顔が描かれたマスクを着けた韓国の抗議者たちが見える。





韓国・ソウル —



日本のデジタル生活を支配するようになった万能ソーシャルメディア・アプリ「LINE」の株式を売るよう韓国企業に不適切に圧力を掛けたとして、韓国の政治家が日本を非難したことを受けて、脆弱な韓日関係が又もや緊張しつつある。



LINEはメッセージング・アプリとしてスタートしたが、現在では代金の決済からビデオ共有まであらゆる用途に使われている。これは韓国のテクノロジー大手ネイバー社と日本のソフトバンクグループによる合弁企業で東京に本拠を置くLINEヤフー社が運営している。



韓国のネイバー社がサイバー攻撃を受け、LINEユーザーの個人情報を含むデータが大量に流出したことを受け、日本の監督官庁はLINEヤフー社に対してネイバー社への依存を減らすよう求めた。



LINEヤフー社に対する日本政府の勧告には法的拘束力はないが、アナリストたちは、このような「行政指導」の声明は日本のビジネス界において重要な意味を持つと述べている。ネイバー社としては、自社の保有するLINEヤフー社の株式の売却を含む「有らゆる可能性」を検討していることを認めた。



日本の当局者たちは、自分たちの行動は情報セキュリティへの懸念によるものと述べているが、韓国の政治家や評論家たちは、この動きは贔屓目に見ても韓国企業の海外投資への干渉であり、最悪の場合は韓国のデジタル主権の侵害であると主張している。



この紛争は尹錫悦・韓国大統領への政治的圧力を強めている。尹氏は韓国の旧植民地支配者である日本との関係の緊密化を追求してきたが、先月の議会選挙で自身の保守政党が惨敗した。



尹氏は、北朝鮮のような共通の課題に対処するには日本との緊密な協力が必要だと述べている。しかし、韓国の左派野党は尹氏が宥和的すぎると非難し、日本は1910年から1945年にわたる残忍な韓国占領を償うために更なる措置を講じるべきだと述べている。





激しい反発



韓国の著名な政治家たちは、尹氏を攻撃するためにこのLINEをめぐる論争に飛び付き、これを彼の「降伏外交」の1つの例と決め付けると共に、日本に係わる韓国の痛ましい歴史と紐付けた。



韓国の主要野党「共に民主党」の李在明(Lee Jae-myung)代表はフェイスブックへの投稿で、この監督的指導を出した日本の通信大臣は、日本の朝鮮植民地統治の運営を助けた元高官の子孫だと指摘した。



伊藤博文(元韓国統監)は私たちの国の領土を強奪したが、その子孫は私たちのサイバー領域を略奪している」と、李氏は述べた。



尹氏の弱気な対応と李氏が述べるものに抗議するため、率直な物言いの元法相で少数野党・祖国革新党党首の曹国(Cho Kuk)氏は先週、韓国と日本の双方が領有権を主張している島々を訪問した。



曹氏は激しい演説の中で、尹政権が「日本を崇拝している」と非難し、この韓国大統領は同国が再び日本の植民地になることを許可したと述べた。



韓国では独島、日本では竹島として知られるこの島への曹氏の訪問は、日韓当局者間の緊張した応酬を招いた。



日本の外務省がこの訪問は「全く受け入れられない」として正式に抗議した後、韓国外務省はこの申し立てを却下し、島々をめぐる日本政府の「不当な」主張を批判した。



韓国大統領府は、韓国企業に対するいかなる不当な措置にも「断固として強力に」対応することを誓約したが、一部の政治家がこの紛争を利用して「国益を損なう反日感情」を煽っていると嘆いた。



ソウルの日本大使館はコメントの要請に応じなかった。





三者会談



この紛争は、今月後半に予定されている韓国・日本・中国の首脳による会談―2019年以来初のこの3国による首脳会談―の直前に起こった。



韓国と日本の緊張は、韓国・日本・米国の協力拡大を批判してきた中国にとって良いタイミングかも知れない。



アナリストたちは、中国がこの会談を利用して韓国と日本の間に楔を打ち込む可能性があると指摘している。しかし、ソウル・延世大学外交問題を研究するジェフリー・ロバートソン教授は、中国は日本と韓国との対話、つまり米国を排除した対話を再開するだけで得るものは大きいと判断するかも知れないと述べた。



「中国が日韓関係の亀裂を見つけるために何かをする必要はないと私は思う。それらの亀裂は既に存在しており、現在はほぼ水で満たされつつあると私は思う」と、ロバートソン氏は語った。





日本の反応は鈍い



この「LINE・ネイバー紛争」は日本では比較的に注目が小さいと、神田外語大学の日本政治専門家ジェフリー・J・ホール氏は述べる。



「対照的に、昨年のLINEユーザーの個人情報の大規模流出は日本では大きなニュースとして扱われた」と、同氏はVOAとの書面のやりとりで付け加えた。



「政治家による竹島/独島訪問がなければ、多くの報道機関は殆ど注目しなかっただろう」と、ホール氏は述べた。



尹氏は日本との良好な関係を継続すると誓約したが、アナリストたちは反日勢力が直ちに消滅する可能性は低いと見ている。



「次の大統領選挙で野党が勝った場合に何が起きるか、日本も少しは思い知るだろう」と、ホール氏は述べた。





Lee Juhyun 氏がこのレポートに寄稿した。







―参考―











(投稿者より)



LINEは便利です。作業風景の写真を撮影して現場でアップロードすると、事務方がオフィスにいながら(最近はテレワークでしょうか?)即座に報告書を作ることが出来ます。企業の枠を超えてプロジェクトごとにグループを作り、情報を共有し企画を進めることも可能です。



LINEはもともと韓国企業が自社の技術を日本市場で活用するために始めた事業でした。韓国人はそのようなビジネスが日本人よりも上手なようですが、そのLINEが日本で瞬く間に支配的な地位を確立したのは、技術においてもビジネスモデルにおいてもLINEに代わるものが日本に無かったからです。流出事件を受けてデータセンターは日本に移されると聞きましたが、運営企業は半々の合弁で技術的にも韓国に依存していますから、日本の情報を韓国が握っている状況に変わりはありません。



実はこれを問題視する指摘はLINEが日本に浸透し始めた早い時点から有り、責められるべきは寧ろ問題がここまで拡大するまで重い腰を上げようとしなかった日本の側に在る、という評価の方が公平に思えます。実際、民間はともかく政府・自治体までもが積極的にLINEを利用しており、野放図にさえ見えます。やはり、代わりの選択肢が無いのです。



国産のSNSを求める声は大きいので、今回の件は考え方によっては日本側が流出事件を逆手に取りLINEを乗っ取ろうという話にも聞こえ、韓国側は実際にそのように見ているようです。ただ、日本の技術の将来を考えたとき、自前の資金と知恵を使ってデータの管理・運用まで自前で行う自前のSNSを生み育てて、世界と正々堂々の勝負を行うのが正しい在り方に思えます。