数十年に亘る領土紛争の最中に、ウクライナ戦争をめぐり日露の緊張が高まる(VOA)

数十年に亘る領土紛争の最中に、ウクライナ戦争をめぐり日露の緊張が高まる(VOA)









(Japan-Russia tensions flare over Ukraine war amid decades-long land disputes/ VOA NEWS)

https://www.voanews.com/a/japan-russia-tensions-flare-over-ukraine-war-amid-decades-long-land-disputes/7602490.html





数十年に亘る領土紛争の最中に、ウクライナ戦争をめぐり日露の緊張が高まる





2024年5月8日 4:51 AM





記者 シャーメイン・リー








ファイル―この日付の無い写真には、日本では北方領土として知られる千島列島の1つ・国後島のユジノクリリスク近くの灯台の前に、戦争の要塞の一部として地面に据えられた古い戦車の砲塔が写っている。





日本・札幌—



数十年に亘る領土紛争の解ける兆しが見られない中、ウクライナ戦争の進展に伴い日本とロシアの摩擦が激化する可能性は高い。



クレムリンは先頃、現在ロシアが占拠しているが日本も領有権を主張している千島列島―日本では北方領土として知られている―付近の海域へのロシア船以外の船舶の出入りを禁止した。



この動きについて、日本政府は先日の米日安全保障同盟を受けたモスクワによる一連の脅迫の一部と見なした。



日本のテンプル大学政治学教授のジェイムズ・DJ・ブラウン氏は、モスクワから日本に対する更なる報復が有るだろうと考えている。



プーチン政権は、日本の非友好的行為と自国が見なすものに対しては報復すべきだと感じている」と、ブラウン氏はVOAニュースに語った。「日本がウクライナ支援や米国との軍事関係強化のために更に何かを行う度に、ロシアは日本を罰するために何らかの措置を講じている。」



同氏は、日本がキイフ支援のために更なる制裁措置を取る可能性が高いので、モスクワによる報復は「ほぼ確実」だと述べた。



報復措置の対象は東京だけではない。千島列島に居住するロシア人男性は3月、日本のメディアに対しこの領土は過去に日本のものだったと発言したことをめぐり、ロシアの裁判所から警告を受けた。



今年初め、ウラジーミル・プーチン露大統領は千島列島を訪問すると述べ、両国が数十年に亘り試みてきた主権をめぐる交渉への期待に水を差した。







千島列島





領土紛争は根深い



日本で2番目に大きい島・北海道の北東沖にある4つの島をめぐるロシアと日本の主張が競合するのは、少なくとも19世紀にまで遡る。第2次世界大戦の終わり近くに、当時のソ連は千島列島の完全占領を開始した。



日本はソ連が「何の法的根拠も無く」それらを編入し、平和条約への署名を拒否したと主張した。東京は、約1万7000人の日本人住民が島から強制退去させられたと述べた。ブラウン氏の話では、ロシア国民は千島列島を戦争中のソ連国民の犠牲に対する褒美だと考えている。



両国は合意に達するために数十年に亘り断続的に協議を続けてきたが、無駄だった。



紛争は2016年に緩和し、両国はその時に島々での観光事業や日本国民のビザ無し訪問を含む共同経済活動に合意した。



2年後、安倍晋三・元日本首相は4島を分割して2島を日本に返還する案を提案したが、プーチン大統領はこれを拒否した。日本の北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授の岩下明裕氏は、このプーチン大統領の日本に対する「失敗した外交」が、最終的には東京がモスクワに対して更に強硬な姿勢を取ることに繋がったと述べた。



岩下氏はVOAニュースに対し、「もしプーチン大統領安倍晋三氏と平和条約交渉をして日本に好意を示していたら、日本はウクライナ戦争に関して批判的な立場を取らなかっただろう」と語った。「2014年のウクライナ侵略の後、日本がロシアへの制裁に躊躇したのを覚えているだろうか?日本には今や対ロシア政策を抑制する必要がない。」





ウクライナ戦争をめぐる緊張



2022年2月にロシアがウクライナに侵攻した直後、ロシア政府は日本との平和条約交渉を全て停止し、以前に合意されていた経済活動や島々への日本国民のビザ無し訪問を中止した。これは岸田文雄首相が戦争でウクライナ側に立ったことを受けたもので、岸田首相はこの停止について「極めて不当」だと述べた。



日本は昨年パトリオット防空システムを供給するなど、ロシアの侵略に対してウクライナを支援してきた。岸田氏は、ウクライナや米国との連帯を示すために紛争地帯を訪問した最初の日本の指導者となった。



モスクワは東京との関係に「重大な結果」を齎すと警告した。それでも日本は昨年12月、戦争で疲弊するウクライナに人道目的の10億ドルを含む45億ドルの援助を約束した。



日本のウクライナ援助は北海道の住民に悪影響を与えている。北海道当局と北海道新聞社が昨年実施した調査では、北部の日露国境付近の回答者の半数を超える人々が、漁業活動・貿易・人の接触が減るなど、ウクライナ戦争が地元の生活に悪影響を及ぼしていると感じていることが示された。



ロシアは昨年10月、東京による福島原発の廃水放出を引き合いに出し、日本からの全ての魚介類の輸入を禁止した。



「モスクワは、福島原発の処理水による放射線の脅威を口実にした。実際には、これはウクライナ支援を理由に日本を罰するロシアの試みだった」と、ブラウン氏は述べた。



調査では、多くの人が北方領土問題の解決を予感させるものは無いとも述べたが、過半数は東京の対ロシア政策を支持すると述べた。



両専門家は、ロシアは現在日本に対して軍事的脅威を与えていないと述べた。ブラウン氏は、「ロシア軍は係争中の島々に駐留しているが、彼らの役割はロシアの原子力潜水艦の砦として重要なオホーツク海を守ることだ。北海道に水陸両用攻撃を仕掛ける能力は島々に無い」と述べた。



岸田首相が今年2月に再開を呼び掛けたにも係わらず、予測可能な将来の間は平和条約交渉は凍結が続く見通しだ。



岩下氏は、「岸田氏はロシアに対して外交上の好意を示しているが、それが報われるとは期待していない…両国間の国益についての溝が埋まる余地は殆ど無い」と述べた。



同氏は、日本に対するロシアの圧力は「何の結果も齎さないだろう」と付け加えた。







―参考―











(投稿者より)



これは米国VOAニュースの記事です。日露問題についての米国の見方であることに御留意ください。一方、ロシア側の主張は以前からロシア・メディアが日本語で発表しています。最近の記事について「参考」にリンクを貼っておきましたので、御覧に成ることをお勧めします。



"Japan has been providing assistance to Ukraine against Russia’s invasion, including supplying Patriot air defense systems last year. "「日本は昨年、パトリオット防空システムを供給するなど、ロシアの侵略に対してウクライナを支援してきた。」日本国内ではこれについて、「米国がウクライナに供給したために不足した在庫を穴埋めするために米国に輸出するのであり、ウクライナへの支援では無い」と説明されていました。



プーチン氏が色丹島歯舞諸島を日本に返還することに合意しなかったのは、返還後の島々に米軍基地が置かれることは無いと安倍氏プーチン氏に確約できなかったからです。米軍は安保条約の規定により日本の任意の場所に基地を置いて良いことになっていますが、日本はこの島々について規定の適用を除外することについて、米国の承諾を得られなかった、という意味です。米国とは交渉をしなかったか、交渉の結果として米国から拒否されたかのいずれかでしょうが、そのいずれかは明らかにされていません。



ゼレンスキー氏の任期は今月20日に切れましたが、全土に戒厳令を発動して大統領の職に留まっています。ただ、紛争自体はほぼ決着が付いていて、ロシアでは国防大臣が交代したようです。新任者はエコノミストですが、軍人に軍のリストラをさせると街にホームレスが溢れるので、これをエコノミストにやらせるということかな、とも考えました。