日本は新型ウイルスを抑え込めているのか 東京と全国で感染者急増 (BBC NEWS JAPAN)

日本は新型ウイルスを抑え込めているのか 東京と全国で感染者急増 (BBC NEWS JAPAN)









https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-58021982





日本は新型ウイルスを抑え込めているのか 東京と全国で感染者急増





2021年7月30日・更新 2021年7月31日





リアリティ・チェック(ファクトチェック)チーム、BBCニュース







AFP

ほとんどの五輪競技は無観客で行われている。写真の、7人制ラグビーの日本対イギリス戦も無観客だった






東京オリンピックが開幕した東京と日本全国で、新型コロナウイルスの感染者が連日、記録的に増え続けている。



東京都は31日、新たに確認された陽性者は4058人(うち65歳以上の高齢者は106人)だと発表した。初の4000人台で、1日あたりでは過去最多。4日連続で3000人を超えた。都によると、31日までの新規陽性者数の直近7日間移動平均は2920.0人(対前週比217.0%)、行政検査件数の3日間移動平均は1万2012.3件。3人の死亡が確認されたという。



30日に確認された新規感染者は3300人(うち65歳以上の高齢者は82人)。29日は3865人、28日は3177人だった。



30日の国の新規感染者は1万728人で、最多を更新した。29日は1万687人で、1日あたりの新規感染者が初めて1万人を超えた。ゴールデンウィーク後の5月8日に感染が急増した際のピークは7239人だった。



菅義偉首相は30日夜記者会見し、埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県に新たに、8月2日から31日まで緊急事態宣言を発令すると発表した。これに伴い、緊急事態宣言は東京都と沖縄県と合わせ、計6都府県に拡大する。宣言の期限が現在、来月22日までとなっている東京と沖縄の期限も、あわせて延長する。





五輪施設と都内の状況は



東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会は31日、新たに大会関係者31人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。内訳は大会関係者7人と業務委託スタッフ14人で、選手村滞在者はいなかった。選手、スタッフ、委託業者、ボランティアら大会関係者の陽性者は累計246人になった。そのうち、日本在住者は143人、外国在住者は103人。前日30日には、新たに選手を3人を含む大会関係者27人が新型コロナウイルスに感染したと発表している。





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五輪関係施設では、選手と大会関係者に対して厳しい感染対策が実施されており、選手やスタッフは連日、検査を受けている。



一方、五輪施設以外での人口あたりの検査率は、感染が急増した5月に比べて減少しつつある。







東京五輪・パラ】 選手村を公開 新型コロナウイルス対策は





東京では5月中旬から感染者が減り始め、6月半ばには一時、1日400人を割り込んだ。しかし、その後はまた増え続け、新規陽性者の7日間平均が7月17日に1000人を超えた。7月30日の7日間平均は2501.4人人だった。



1日に確認される陽性者の数は、7月28日は3177人、29日は3865人、30日は3300人をと、連日3000人を超えた。



医療専門家らは、大会を安全に開催するには、東京都の1日あたりの新規感染者が100人を下回る必要があると主張してきた。







都内の新規陽性者数(7日間平均) の推移(出典:東京都)





ワクチン接種率は



日本政府によると、30日の時点で1回以上の接種を受けた人は38.4%、2回の接種を終えた人は27.6%。



一方、米疾病対策センター(CDC)によるとアメリカでは29日までに全人口の49.4%、18歳以上の60.3%がワクチン接種を終えている。イギリスでは28日までに、成人人口の88.4%が1回の接種、71.4%が2回の接種を終えている。



東京都の小池百合子知事は27日、「ワクチンを若い人にも打ってほしい。若い人たちの行動がカギを握っている」と発言した。しかしこれに対しては、そもそも接種の予約ができないという不満が若者世代を中心に出ている。



日本がワクチン接種を開始したのは2月で、大半の先進国より遅かった。また、承認済みのワクチンはファイザー製だけという時期が、長く続いた。現在はファイザー製とモデルナ製が使用されている。政府は30日、5月に承認していた英アストラゼネカ製も公的接種に追加すると発表した。



日本はワクチンに関して、国際的な臨床試験と並行して独自の試験を実施した。そのため承認に時間がかかった。



河野太郎行政改革担当相は7月初め、モデルナ製ワクチンの供給量が当初計画から約6割減っていたことを明らかにした。減少分は9月末までに供給される予定で、9月末までの供給計画に影響しないと、河野氏は述べた。しかしこれを受け、自治体によってはワクチンの予約をキャンセルしたり、予約受付を停止する場所が相次いだ。



こうした状況で、1日の接種数は5月と6月半ばまで増え続けたものの、その後は減少している。









Reuters

政府はワクチン接種を推進しているものの各地でワクチン不足が問題になっている






日本では過去に他のワクチンの副反応が不安視された経緯があり、それが接種へのためらいにつながっている。



15カ国を対象にした英インペリアル・コレッジ・ロンドンの研究では、新型ウイルスのワクチンへの信頼度は日本が最も低かった。



供給不足と運搬の難しさも、接種の遅れを招いた。



日本の法律は、ワクチン接種ができる人を医師と看護師に限定している。だが接種を加速させるため、現在は歯科医師救急救命士臨床検査技師も特例で認められている。





その他の日本の対策



他の多くの国と異なり、日本はパンデミック対策としての厳格なロックダウンや国境閉鎖は実施してこなかった。







Getty Images

聖火リレーは3月に福島県で始まった






政府は昨年4月に1回目の緊急事態宣言を発令したが、自宅にとどまるよう求めたのは呼びかけにとどまった。暮らしに不可欠ではない企業や店舗は営業停止を要請されたが、罰則はなかった。



いくつかの国からの入国を規制し、のちに対象国を増やした。



日本は高齢者が多く、都市部に人口が集中している。それでもパンデミックの初期は、感染の抑制に比較的成功し、死亡率も低く抑えた。



その理由については、いくつかの説が唱えられた。

  • マスク着用などの安全対策を守る人が多い

  • 一般的に、ハグやキスなどの密接した身体接触の機会が少ない

  • 心臓病や肥満、糖尿病などの慢性疾患をもつ人の割合が比較的小さい






Getty Images

日本では公の場でマスクを着ける人が多い






ただそれでも昨年は1年を通して全国的な新型ウイルスの感染流行が起こった。感染者数は昨年後半に急増し、今年1月にピークに達した。



そうした中で、政府は経済対策として「Go To トラベル」を実施し、批判を浴びた。



今年4月には感染者の増加を受け、東京都など10都道府県に緊急事態宣言が出された。これは6月20日に解除されたものの、政府は7月8日、新型コロナウイルスの感染対策のため、東京都に4度目の緊急事態宣言を8月22日まで発令すると発表した。東京オリンピックは緊急事態宣言下の開会となり、ほとんどの会場で無観客開催となった。



五輪開始後、7月末になって連日、記録的な新規陽性者が報告されるようになり、緊急事態宣言は延長・拡大されることになった。







なぜ五輪は決行されるのか、BBC司会者が解説





(英語記事 Tokyo 2020: Does Japan have Covid under control? / Covid-19 pandemic: Japan widens emergency over 'frightening' spike





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