トランプ氏、きれいごとを排除 新型ウイルスの厳しい現実で変化 (BBC NEWS JAPAN)
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トランプ氏、きれいごとを排除 新型ウイルスの厳しい現実で変化
2020年04月1日
アンソニー・ザーカー、北米担当記者
Reuters
トランプ大統領(左)と国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は31日、ともに現状の深刻さを語った
ドナルド・トランプ米大統領は31日、新型コロナウイルスに関する記者会見で、ふだんと変わって厳しい認識を口にした。
見せかけをよくするための言葉や楽観論は皆無だった。奇跡的な治療法や、イースター(復活祭、4月12日)に経済活動を再開させるといった話も出なかった。
トランプ氏は深刻な表情で、「全アメリカ国民に、今後訪れる厳しい日々に備えてもらいたい」、「これからの2週間は非常に痛ましいものになるだろう」と語った。
新型ウイルスの感染症(COVID-19)による死者数の見込みを問われると、医療の専門家が答えたほうがいいと述べた。
アメリカにおけるCOVID-19の死者は現在、10万~20万人と予測されている。日別の予測では、例えば4月15日には1日で2214人が死亡すると想定されている。
米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長のアンソニー・ファウチ博士は、「かなり難しい時期を迎えることは誰も否定しない」と述べた。
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トランプ氏はこの日の記者会見で、政府が無策だったら死者は百万人単位に達していたとの予測に言及。NIAIDの予測の衝撃を和らげようとした。
わずか1週間前には、トランプ氏はCOVID-19についてインフルエンザのようなものだとしていた。初期の死者数は、インフルエンザや自動車事故の死者よりずっと少ないとし、こう述べていた。
「インフルエンザでは年に何千人も死んでいる」、「国のスイッチを切ることはしない」。
しかし現在、深刻さは深まっている。
トランプ氏は、新型ウイルスに感染して入院していた友人に関するエピソードを紹介。「少し年上でがっしりした体格で、強い人物」だったが、トランプ氏が連絡を取ろうとしたところ、昏睡状態に陥っていたという。
また、「友人の何人かと話をしたが、目の前の状況が信じられないと話していた」と述べた。
Reuters
Image caption アメリカでも特に被害の甚大なニューヨーク市内では冷蔵設備が遺体安置所として使われている(3月31日、ニューヨーク)
トランプ氏の態度の変化は、政敵への接し方にも及んでいる。
トランプ氏は最近、ミシガン州のグレチェン・ウィトマー知事(民主党)に対し、ツイッターで名前をあざけり、無能と呼ぶなどして攻撃した。
しかしその数日後、トランプ氏はウィトマー知事と「本当にすばらしい会話」をしたと述べ、政府の同州に対する支援を詳しく説明した。
27日の時点では、トランプ氏は自分に対して「感謝の気持ち」がない知事とは、話をしないと言っていた。
ところが31日には、カリフォルニア州とルイジアナ州の知事(ともに民主党)と会談したことを細かく紹介した。
この日の記者会見で政府が発したのは、現在の感染防止策をさらに30日間続けるというメッセージだった。今後、状況がさらに悪化しても、努力は効果を生むと強調した。
ただそれは、長く、ゆっくりとした試練となるだろう。
アメリカの対策チームの専門家、デボラ・ブリックス博士は言う。
「特効薬はない。魔法のワクチンも治療法もない。あるのは行動だけだ」
(英語記事 No sugar-coating: Trump changes tack on coronavirus)
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