日本とロシアは最終的に領土紛争を解決するか?(DW English):阿修羅♪

日本とロシアは最終的に領土紛争を解決するか?(DW English):阿修羅♪

http://www.asyura2.com/15/kokusai12/msg/406.html











(Will Japan and Russia finally resolve their territorial dispute?: DW English)

http://www.dw.com/en/will-japan-and-russia-finally-resolve-their-territorial-dispute/a-18959623





2国間関係





日本とロシアは最終的に領土紛争を解決するか?






日本とロシアは第2次世界大戦後いまだに平和条約を結んでいない。その理由はある列島をめぐる主権争いだ。安倍首相は今この問題に取り組むためにプーチン大統領との首脳会談を呼びかけている。しかし、この成功はあり得るのか?









安倍晋三・日本首相は1月4日月曜日、両隣国が平和条約を結ぶためにはウラジミール・プーチン露大統領との首脳会談が必要だと語った。「私たち双方は、戦争終結後70年も経つのに平和条約が締結されていないのは異常だと認識しており[…]、しかし、首脳会談を行わなければ北方領土問題は解決できない」と、安倍氏は今年最初の記者会見で語った。



ロシアと日本は第2次世界大戦後1度も平和条約を結んだことがなかった。北海道北部の島々をめぐる主張に対立があるためだ。この島々を日本は北方領土と、ロシアは南クリルと呼んでいる。正確に言えば、ロシアが第2次大戦後にその全てを占領した、イトゥルプ(択捉)・クナシル(国後)・シコタン(色丹)の3島と岩石で出来ているハボマイ(歯舞)諸島について長年の確執が続いている。しかし便宜上、4島の紛争と言うのが通例だ。



「安倍首相は解決の機が熟したと考えている。両国に安定した政治指導者が居り−両指導者は政治的に強力で今後更に数年間権力を維持しそうだ−、中国の台頭によりロシアが地域における関係の多角化を進める戦略的合理性が生まれているからだ」と、ワシントンに本部を置くカーネギー国際平和基金の日本専門家ジェームズ・L・ショフ氏がDWに語った。しかし、首脳会談の提案は驚くことでないかも知れないが、これは「難しい外交的綱渡り」になるだろうと、彼は付け加えた。









これらの島々は全て小さいとよく思われている。しかし、実際はそうでない。歯舞諸島は大した規模もなく無人でもあり、色丹島も比較的小さいが、他の2島はかなり大きい。本当のところ、これらがいまなお日本の一部と考えられるならば、それぞれ日本でイトゥルプ(択捉)は5番目に、クナシル(国後)は6番目に大きな島となる。この2島より大きな島は本州・北海道・九州・四国の主要4島だけだ。





この紛争の中心に存在するものは何か?





日露間の国境は元々1855年の下田条約によって設定されたものだ。両国はこの条約で4島全てを日本の領土とすることに合意し、それが以後90年間続いた。しかし、状況が変化したのは1945年、同年8月に対日戦争に加わったソ連が4島を占領した時だ。その後、ソ連は島々にいる日本人を退去させて1947年に正式に同連邦に併合した。



テンプル大学東京キャンパスの国際問題専門家ジェームズ・D・J・ブラウン氏によれば、ロシア側は島々を第2次大戦の結果として日本から合法的に取得したものと考えている。



「また、この立場を支持する人たちは、ヤルタ会議でローズベルト米大統領ソ連指導者スターリン氏の間で、対日戦争への参加の見返りに『クリル諸島ソ連に手渡されるものとする』という正式な合意があった事実を指摘することが可能だ」とブラウン氏は語り、ソ連はさらに、日本は1951年にサンフランシスコ平和条約に署名したが、同条約では「日本はクリル諸島についての全ての権利・権原・請求権を放棄する」と明確に述べられていると強調することが可能だと付け加えた。



しかし、日本の視点からすると、日本政府が同国「固有」の領土と考えているこれらの島々の占領については何の合法性もない。具体的に言うと、日本ではソ連が対日戦争の真正な勝利者だという見方よりも、既に打ち負かされていた日本から領土を盗むために「日和見的に」最後の数日間だけ戦争に参加したとの見方が優勢だと、ブラウン氏は語った。





現在約17,000人のロシア市民が島々で生活している





日本側はサンフランシスコ平和条約について、4島は実際には放棄したクリル諸島の一部ではないと主張している。その代わりとして、日本政府は、4島は地理的に分離した存在であり、日本では島々を「北方領土」と呼んでいると主張している。日本はまた、ソ連サンフランシスコ平和条約に署名しておらず、そのため、条約の条項から利益を期待することはできないという事実を指摘する。





立場の硬化





この問題はこの数十年に亘り解決が非常に困難となっている。日本とソ連は冷戦で相反する側となったのだからなおさらだ。それでも、実際には1950年代半ばに実行可能な合意の概略が現れ、1956年のソ日共同宣言の中に記された。ソ連側は当時、平和条約締結後の日本への善意のジェスチャーとして小さい方の2島(色丹・歯舞)を日本に移譲すると申し出た。



しかし、アナリストのブラウン氏が指摘するように、日本側はこの申し出では不十分だ(この小さい方の2島は紛争中の土地全体の僅か7%しか占めていないから)と最終的に判断し、その後はずっと4島全ての返還を押し通し続けている。「数十年を経たにもかかわらず、基本的に行き詰まったままこの地点から動けずにいる」とブラウン氏は語った。





2国間関係への影響





しかし、この紛争により2国間関係の進展が完全に妨げられているわけではない。日本とロシアはまだ平和条約を結んでいないが、1956年に両国間で戦争状態の終了が正式に合意された。さらに、日本がロシア・サハリン島のエネルギー事業に大規模に投資しているなど、両国間には有意なレベルの経済交流が存在する。



それでもなお、領土紛争が続き、その結果として平和条約が結ばれていないことが両国間の政治・経済関係を阻害してきたのは間違いない。



「日本とロシアの経済は相互補完の関係にある−ロシアは日本に原料の提供が可能で、日本はロシアに高度先端技術の供給が可能だ。また、両国は同じ安全保障上の懸念をいくつか抱えている」とブラウン氏は語った。日本・ロシア・両国間の領土紛争についての同氏の著書は2016年3月にラウトレッジ社から出版予定だ。



これらのことを考慮すると、現在の2国間関係がその潜在的可能性を相当下回っているのは明確だ。「領土紛争が解決できるなら、2国間の協力は目覚ましく拡大するだろう」とブラウン氏は付け加えた。





安倍氏は関係確立を模索している





このような展開を考えると、先日の首脳会談開催の提案は時期的に重要だったかも知れない。両国は過去に何度もこの問題を討論してきたが、安倍首相は優先的な外交課題の1つとして、ロシア関係の改善を追い求めている。



「彼の主な狙いは領土紛争の解決だが、彼の動機がロシアを中国から引き離したいという願望にあることも間違いない。それは、日本は中国を安全保障上の脅威と見なしており、緊密な露中関係は日本の長期的な利益に合わないと判断されるからだ」と、ブラウン氏は強調する。



安倍首相はロシアに向けた外交目標を達成するために、プーチン大統領とできるだけ頻繁に会い、それによって彼との個人的な信頼関係の構築を模索してきた。「安倍氏プーチン大統領は相性が良く、日露間のあらゆる問題にもかかわらず両指導者は強固な2国間関係を建設する姿勢を明確に打ち出している」とロシア国際問題評議会のアンドレイ・コルトゥノフ会長はDWに語った。



しかし、2国間関係の当初の進展はウクライナ危機によって中断させられた。2014年3月にロシアがクリミアを併合すると、日本は主要な同盟国・米国に追従しなければならないと感じ対露制裁を導入した。「日本は故意にこれらが弱い制裁となるよう立案したが、それでも2国間の雰囲気には傷が入ったままだ」とブラウン氏は語った。最も顕著なことは、こうした諸問題のためプーチン氏が返礼の日本公式訪問をできずにいることだ。





国家主義の成長





この背景には、近年、両国に極端な国家主義が現れて関係進展を阻むようになったことがあると、ニューデリーに本拠を置くシンクタンク、オブザーバー・リサーチ財団の研究者ヴィンドゥ・マイ・チョタニ氏は主張する。



領土問題ではいかなる妥協的な解決策も内政面で利用されることが避けられないため、これらの島々の主権を放棄すれば安倍氏は日本国内での面目を失うだろうが、それだけでなく、日本海での韓国との紛争(竹島/独島)や東シナ海での中国との紛争(尖閣/釣魚)といった、日本の他の領土紛争を解決する可能性をも損ねることになると、このアナリストは指摘する。



その一方で、ヴィンドゥ・マイ氏は、強力な国家主義の維持はプーチン氏−ウクライナ危機とロシアに課せられている制裁を考慮すると−にとって不可欠だと主張する。



「こうした制裁がロシア経済に損害を与え始めたこの時に、この島々を保有していることは重要だ。ロシアはまた、日本政府が制裁を実施する限り領土問題を交渉しないという立場を保っている。日本の制裁の大部分は表面上だけの性質のものだが、ロシアは元より日本に米国からもっと独立した外交政策を行使して欲しいと考えている」と、ヴィンドゥ・マイ氏は説明した。





日本政府はロシアの施政下にあるこの島々を日本「固有」の領土と見なしている





手強い難題





2014・2015年にはこのような障害があったが、安倍首相は2016年には日露関係の勢いを取り戻したいという決意を変えていない様子だ。彼はこの点で、先日韓国との「慰安婦」問題について難関を突破したことに勇気づけられているかも知れない。「安倍氏はこの韓国との長年にわたる紛争の最終的かつ不可逆的な解決に成功したようで、恐らく、扱いが難しいロシアとの領土紛争も今や永続的な解決策を見いだせると信じている」と、ブラウン氏は語った。



それでもなお、両国の指導者は手強い難題に直面している。「2国間の経済関係は発展していないので、安倍氏プーチン氏はこの問題を進めるために付加的なインセンティヴを見つけ出さなければならないだろう」と、コルトゥノフ氏は強調した。「どのような妥協に至ろうとも両指導者は多くの政治的代償を払うことになりそうで、そのため、この微妙な問題で妥協に至る見返りにそれぞれの有権者たちに何を提供できるかが大きな問題だ。」





可能なシナリオ





しかし、どのような妥協が達成可能か?両国は島々の広大な土地をほぼ均等に分割(3島返還・1島残留、または、2島返還・2島残留)することで合意が可能だと、アナリストのヴィンドゥ・マイ氏は語る−主な優先事項として、問題となる土地の割合はできるだけ平等にしなければならない。以前これについて、現在安倍氏の外交顧問を務める谷内正太郎氏は4島全てよりもむしろ、3島と半分(歯舞、色丹、国後、大きな島・択捉の20%)を返還することを提案していた。





安倍首相はプーチン大統領とできるだけ頻繁に会い、それによって彼との個人的な信頼関係の構築を模索してきた





ロシアの戦略原子力潜水艦の中心であるオホーツク海への通路を守るために、この列島は非常に重要だとロシア人たちは主張していると、ヴィンドゥ・マイ氏は指摘した。日本がこの土地を取得するならば、ロシアは潜水艦探査装置と国後島南部の基地のいずれか、あるいは、双方の保持を可能にすることでこの懸念に対処するかもしれない。このような譲歩の上で両国は先ほど強調したような決着を付けるかもしれないと、このアナリストは付け加えた。



また、ロシアと日本はそれぞれの立場について歩み寄る可能性があることを、ヴィンドゥ・マイ氏は述べている。「両国は手始めに4島を共同で統治して商取引と人々の移動を自由にするかもしれない。歴史を見ると19世紀にこの先例が既にある」と、彼女は語った。



しかし、これらを言うのは簡単だが実行は難しいかも知れないと、アナリストのショフ氏は指摘する。「何らかの統治権の移動が数十年延期されることになっても、北方領土全て(あるいは、少なくとも大部分)の主権についてロシアが大幅に譲歩するしか日本は受け入れることはなさそうだ。そしてロシアは、国際的な孤立から救われるという点で短期的に得られるいかなる利益も、その島々を日本に『譲る』ことによる長期的な政治的コストには見合わないと感じることになりそうだ。」





ロシアが拒否しそうなのはなぜか?





アナリストのブラウン氏も同様の見方で、日本が柔軟性を示して経済関係の回復を約束したとしてさえも、ロシアの歩み寄りを促すことはなさそうだと語る。このアナリストはこれについて4つの理由を示す。第1に、ロシアの一般国民はこの島々がソ連による第2次世界大戦の勝利の結果とソ連兵士の犠牲のお陰で取得されたと見なしているので、どの島を譲ることにも強く反対している。



第2に、日本はもはやロシア国内でかつてのような経済大国と見なされていないので、経済的インセンティヴでロシアの意思決定を有意に揺り動かすことはなさそうだ。第3に、日本はロシア国内で「米国の厳しい監督を受けている国」と見られることが良くある。この印象は、日本がウクライナ危機の反応として米国に追従して制裁措置を導入した後で相当強まった」と、ブラウン氏は語った。





日本はロシアでエネルギー事業に大きな投資をしてきた





第4に、4島に現在居住しているロシア人の問題だ。現在、約17,000人のロシア市民が島々で生活し、島々が日本に返還された場合に彼らに何が起きるのか明確でない。「ロシア人同胞を見捨てるものとロシアで解釈されかねない協定に、どのロシアの指導者も日本と合意するか極めて疑わしい」と、この日露関係専門家は語った。



ブラウン氏などのアナリストはこうした全ての理由から、2016年に日本にとって好ましい協定がまとまる見込みはないと考えている。「本当のところ、日本が平和条約署名の見返りとしては恐らく多くても小さな2島(色丹・歯舞)の獲得が達成可能なところだと思う。日本側が全く受け入れ難いと考えるような協定だ」とブラウン氏は語った。







発表 2016年1月5日

記者 Gabriel Domínguez

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