2022年人身取引報告書(日本に関する部分)(在日米国大使館と領事館)[2022.7.19]

2022年人身取引報告書(日本に関する部分)(在日米国大使館と領事館)[2022.7.19]









https://jp.usembassy.gov/ja/trafficking-in-persons-report-2022-japan-ja/





2022年人身取引報告書(日本に関する部分)





U.S. Mission Japan





*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文 です。





国務省人身取引監視対策部





2022年7月19日





日本(第2階層)





日本政府は、人身取引撲滅のための最低基準を十分には満たしていないが、満たすべく相当の取り組みを実施している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による政府の人身取引対応力への影響が仮にあったことを考慮しても、政府は前年の報告書対象期間と比較して、全体的に取り組みを強化していることを示した。ゆえに、日本は引き続き第2階層となった。こうした取り組みの中には、さらに多くの人身取引被害者の認知と社会認識を高める運動の継続的な実施が含まれていた。政府はまた、4人の技能実習生を人身取引被害者と正式に認知した。政府は技能実習生を人身取引被害者と初めて認知した。しかし、政府はいくつかの重要な分野で最低基準を満たしていなかった。あらゆる形態の人身取引犯に対応し、人身取引被害者を認知し保護する政治的意思が引き続き欠けていたことが、政府の全体的な進展の欠如の要因となった。当局は引き続き、厳しさが十分ではない刑を規定している法律に基づいて、人身取引犯を訴追し、有罪判決を下し、全事件のほぼ半数で執行猶予を付けた。その一方、罰金刑のみを受けた人身取引犯もいた。このような行動は、抑止力を著しく弱め、人身取引犯に責任を課す取り組みを阻害し、犯罪の凶悪性に対して十分に対応していなかった。法執行機関は引き続き、商業的性産業において搾取を受けた何百人もの児童を、人身取引の兆候を審査しないまま特定し、人身取引被害者としての正式な認知をせず、保護支援サービスや損害賠償請求権の利用を妨げ、児童の性的搾取を目的とする人身取引犯を罰することなく活動させた。技能実習制度の下に日本国内にいる移住労働者の強制労働の報告は、政府が報告書対象期間に特定した数よりも依然として多かった。技能実習制度において、政府と送り出し国との協力覚書は、借金を理由に技能実習生を強要する主な要因の一つである外国に拠点を持つ労働者募集機関による過剰な金銭徴収を防止する上で依然として効果を発揮しておらず、政府は同制度の下、募集を行う者と雇用主に対して、労働搾取目的の人身取引犯罪の責任を課す対策を全く講じなかった。当局は、あらゆる形態の人身取引を網羅していない統一性のない非効果的な認知・照会手順に依然として頼り、そのため公務員は、人身取引犯に強要されて犯した違法行為で被害者として未だ認知されていない者に処罰を下した。政府は、あらゆる形態の人身取引被害者を対象とした適切な特定保護支援サービスを提供しなかった。





優先すべき勧告



  • 性的および労働搾取目的の人身取引事案を精力的に捜査、訴追し、有罪判決が下された人身取引犯に重い刑を科して責任を課す。

  • 技能実習制度やその他のビザ付与制度の下で日本にいる人たちや入国者収容施設に収容されている人たちなど、移住労働者の中で労働搾取目的の人身取引の被害者である人たちの認知、保護支援サービスへの照会など、関係府省庁の標準的な手順を策定し体系化して実施する。

  • 三者のあっせんを介すことなく商業的な性的搾取を受けた児童、技能実習制度の下での移住労働者、特定技能ビザ制度で日本に入国する移住労働者などの被害者が、適切に認知され、かつ支援サービスを受けられるようにし、また人身取引犯に強要されて犯した違法行為によって、拘束または強制送還されることがないよう、被害者の審査を強化する。

  • 性的搾取目的の人身取引および労働搾取目的の人身取引の男性被害者を認知する取り組みを高める。

  • 人身取引被害者専用シェルターなど、人身取引被害者への専門ケアと支援のための資源を拡充し、これらの支援サービスが外国人被害者と男性被害者の双方にも利用できるようにする。

  • 外国人技能実習機構および出入国在留管理庁の職員を対象とした被害者認知の研修、外国人技能実習機構と非政府組織(NGO)との連携の向上、技能実習計画認定前の全ての契約の審査、雇用主に対する調査の増加、労働者が支払う過剰な手数料やその他金銭を課す外国の募集機関との契約解除などにより、技能実習制度改革法の監督および執行措置の実施を強化する。

  • 要望があれば、全ての外国人労働者が雇用主や産業を変更できる公式な仕組みを確立する。

  • 実刑の代替として罰金刑を認める量刑規定を削除し、少なくとも4年を上限とする刑務所収容を含め、人身取引犯罪に対する処罰を強化するため、人身取引対策関連法を改正する。

  • 雇用主が外国人労働者のパスポートやその他の個人文書を保持することを禁止する法律を制定する。

  • 全ての労働者に支払いが課される募集費用およびサービス料を廃止するための関連政策を改定することにより、移住労働者が借金による強制の被害に陥りやすい状況を減らす。

  • 労働搾取を目的とした人身取引の一因となる組織や雇用主による「処罰」合意、パスポートの取り上げ、その他の行為の禁止の実施を強化する。・海外児童買春旅行に参加する日本人の捜査、訴追、有罪判決、処罰を積極的に行う。






訴追



政府は不十分だった法執行の取り組みを縮小した。日本には、国際的な法律に沿った定義を含む、包括的な人身取引対策法がなかった。日本は、成人および児童の売買春、児童福祉、入国管理、雇用基準に関する異なる刑法を通して、性的搾取目的および労働搾取目的の人身取引犯罪を違法とした。「売春防止法」第7条は、人に売春させることを犯罪としており、詐欺的または威圧的な手段を用いた場合には最長3年の懲役、もしくは最高10万円(870ドル)の罰金を規定しており、暴行または脅迫が用いられた場合には最長3年の懲役および最高10万円(870ドル)の罰金に処した。同法第8条は、被告が第7条に規定された犯罪の対償を収受し、もしくは収受する契約を結び、または同対償を要求した場合には、最長5年の懲役および最高20万円(1740ドル)の罰金を科して処罰を強化した。「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」は、児童を商業的に性的搾取する行為、周旋、および勧誘を犯罪とし、最長5年の懲役もしくは罰金、またはその両方の処罰を規定していた。同法はまた、商業的性行為や児童ポルノ製造による児童の搾取を目的とした児童の売買を犯罪とし、最長10年の懲役を規定した。政府はまた、児童福祉法を用いて人身取引関連犯罪を訴追した。同法は、児童にわいせつもしくは有害な行為をさせる目的での児童の移送、または隠匿を幅広く犯罪とし、最長10年の懲役もしくは最高300万円(2万6080ドル)の罰金、またはその両方の処罰を規定していた。職業安定法および労働基準法はいずれも、強制労働を犯罪とし、最長10年の懲役もしくは300万円(2万6080ドル)以下の罰金を規定していた。しかし、厚生労働省は、労働基準法における「強制労働」の定義は国際法の人身取引の定義よりも狭く、実際のところ、労働基準法の「強制労働」の罪とされた稀な事案は、人身取引犯罪としては処理されなかったと報告した。国際法における人身取引の定義と矛盾して、労働基準法は搾取を犯罪の必須要素として含んでいなかった。前年の報告書対象期間中と同様に、報告によると、相対的に厳しい処分を下すと控訴を引き起こす可能性が高まり、それが全体的な有罪率の低下につながり、検察官の職業的地位に悪影響を及ぼすという認識のため、多くの検察官が職業安定法労働基準法の適用を避けた。性的搾取を目的とした人身取引に対し、懲役に代わる処罰として罰金刑を認める場合、当該罰金刑は強姦のような他の重罪に規定される処罰と同等ではなかった。市民社会団体は、こうした重複する法律に頼っていることが、人身取引犯罪、特に心理的威圧の要素を持つ労働搾取目的の人身取引を伴う事案を認知や訴追する上での政府の能力を引き続き妨げていると報告した。政府には、雇用主、募集を行う者、労働あっせん業者による日本人あるいは外国人労働者のパスポート、渡航書類または身分証明書の取り上げを禁じる法律がなかった。技能実習生のパスポートおよび在留カードの取り上げは禁じられていた。しかし、前年の報告書対象期間と同様に、2021年にこの法律を執行したかどうか、あるいは技能実習生の書類を取り上げた雇用主や業者を処罰したかどうかの報告は政府からなかった。2017年に成立した日本の法律は、証人の買収を犯罪とする規定を含んでいた。同法により当局は、司法妨害罪で一定の人身取引犯を被疑者として立件するための新たな根拠を得た。しかし、4年連続で政府からは、政府が人身取引事案で同法律をどの程度適用したかという報告はなかった。政府は引き続き、外国人技能実習機構、警察庁厚生労働省を含むさまざまな省庁に対して、人身取引対策の研修を行った。関係筋は、主要な法執行機関職員と司法関係従事者内での認識不足に対応するために、一層の研修を行う重大な必要性があると引き続き報告した。



2021年1月から12月まで政府は、44件の人身取引事案を捜査した。内訳は、59人の被疑者を含む39件の性的搾取目的の人身取引事案と、3人の被疑者を含む5件の労働搾取目的の人身取引事案だった。これは、政府が55件の人身取引事案を捜査した2020年より減少した。2020年は、48人の被疑者を含む40件の性的搾取目的の人身取引事案と、10人の被疑者を含む15件の労働搾取目的の人身取引事案を捜査した。2021年、政府は、性的搾取目的で33人、労働搾取目的で4人、計37人の人身取引被疑者の訴追に着手した。また、前年の報告書対象期間から継続している6人の性的搾取目的の人身取引被疑者と2人の労働搾取目的の人身取引被疑者の訴追も継続した。これは、性的搾取目的の人身取引で42人、労働搾取目的で8人、計50人の人身取引被疑者を訴追した2020年に比べて減少した。2021年、政府は、計29人の人身取引犯を有罪判決とした。20人は性的搾取目的、4人は労働搾取目的だった。これは、50人の加害者に有罪判決を下した2020年に比べて減少した。有罪判決を受けた人身取引犯29人のうち、21人は10カ月から3年の懲役刑を受けた。その中の12人は、刑の全部の執行が猶予され、その結果、実刑を受けることはなかった。29人の残りの8人は、罰金刑のみが科された。有罪判決が下された人身取引犯の量刑は、裁判所が50件中26件で刑の全部の執行を猶予し、50人の人身取引犯のうち14人に罰金刑のみを科した2020年と同様だった。また、前年同様に政府は、29人の人身取引犯に対して、商業的性行為、誘拐、強姦を受けた成人および児童、児童福祉、入国管理、雇用基準に関するさまざまな法律の下に有罪判決を下した。適用された法律には、「売春防止法」、児童福祉法、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」が含まれるが、それだけに限定されない。人身取引犯罪に加担した政府職員を捜査、訴追、あるいは有罪判決を下したという政府の報告はなかった。



技能実習制度の下で労働搾取を目的とした人身取引の兆候が広くみられることが知られていたにもかかわらず、政府から技能実習生を搾取する人身取引犯に刑事責任を負わせるという報告はこれまでになく、また政府は、刑務所収容期間を含む、相応な処罰を用いた刑を下したこともなかった。例えば、政府は2021年、技能実習制度内で労働基準法の労働違反があったとして、加害者1人を訴追し、有罪判決を下した。この加害者は、実刑の代替として罰金刑を受けた。これは犯罪の重さに比べて不十分だった。支援サービスを提供するNGOは、再三にわたり技能実習制度の実習の事業場内で起きている具体的な労働搾取目的の人身取引の申し立てに注意を喚起したと報告した。政府は報告書対象期間の年にこのような実習事業場の調査を数千回も実施したにもかかわらず、当局は概してこれらの申し立てを潜在的な人身取引犯罪として積極的に捜査しなかった。NGOは、外国人被害者を巻き込んだ労働搾取目的の人身取引事案に対して、心理的威圧を裏付ける証拠ではなく虐待の物理的兆候に過度に依存するなど、裁判所が極端に高い証拠基準を設定しているため、適切な法執行措置を妨げていると報告した。



性的搾取を目的とする児童の人身取引というまん延する問題に政府は対応せず、商業的性行為が第三者によりあっせんされたのでない限り、日本の法律は商業的性的搾取を受ける児童を性的搾取目的の人身取引被害者として捉えなかったため、人身取引の法律の下で商業的性的搾取を受ける児童に関する事案を捜査、訴追しなかった。政府は2021年、少なくとも540人の加害者と408人の被害者が関与する「児童買春」を627件報告したものの、第三者であるあっせん者の関与の有無にかかわらず、加害者を潜在的な人身取引犯罪として訴追もせず、有罪判決も下さなかった。また、これらの事案に関係する児童の大多数を人身取引被害者としては認知しなかった。当局はここ数年でも、こうした商業的性的搾取を受ける児童に関する何百件もの事案(2020年は600件超、2019年は784件、2018年は700件超、2017年は956件)を、正式に人身取引犯罪として捜査せずに処理した。4年連続で政府は、未成年の女子高生と成人との出会いをあっせんする「JK」ビジネスや、ポルノ出演強要における性的搾取目的の児童の人身取引に対する法執行措置を報告しなかった。8つの主要都道府県は、「JK」ビジネスを禁止し、18歳未満の少女が「援助交際」業で働くことを禁じるか、または「JK」ビジネスの営業者に対し、各地の公安委員会に従業員名簿を登録することを義務付ける条例を維持した。当局から、同条例違反で認知した営業所の数や閉鎖となった営業所の報告はなかった(2020年と2019年は報告なし。2018年に認知した営業所は137カ所、閉鎖した営業所はなし)。また当局から、「JK」ビジネスを取り巻く犯罪行為に関与した疑いのある者を1人でも逮捕したという報告もなかった(2020年と2019年は報告なし。2018年は69人の被逮捕者)。報告によれば、当局の中には、犯罪に気づかなかった、あるいは訴追の方法に確信がなかったという所もあり、多くの場合、極端に高い証拠基準を理由に挙げた。専門家の指摘は、性的搾取目的の児童の人身取引を適切に扱う法執行機関の取り組み不足が許容され、犯罪が引き続き発生することを永続化し、それが引き続き犯罪の蔓延を軽視し、その結果、人身取引犯に責任を課し被害者を保護する取り組みが、もしあったとしても、弱いものとなった、であった。





保護



被害者を保護する政府の取り組みは依然不十分なままであり、政府は、技能実習制度および商業的性的搾取を受ける児童の中から、人身取引被害者を公式に認知することをまたもや怠った。政府は2021年、計47人の人身取引被害者を認知した。31人は性的搾取目的の人身取引被害者で、その中の1人だけが外国籍、18人は児童だった。16人は労働搾取目的の人身取引被害者だった。全被害者のうち10人は、バーで「ホステス」として働くことを強制され、政府が労働搾取目的の人身取引被害者と認知したフィリピン人だった。これに対して、2020年は、「ホステス」として働くことを強制された7人のフィリピン人を含む、計38人が人身取引被害者として認知されていた。しかし、標準化された指針の不足、省庁間の不十分な連携、性的および労働搾取目的の人身取引犯罪に対する全関係省庁間での認識の違いは、被害者を認知し保護する政府の取り組みが不十分であったことの要因となった。政府には、公務員が被害者を認知する全国的な標準運用手順や指針がなく、犯罪を自ら通報した被害者向けのものもなかった。その結果、被害者が支援のケアを利用する妨げとなった。関係府省庁の従事者は、統一性のない不十分な被害者認知手順に従った。同手順には、あらゆる形態の人身取引、特に、性的搾取を目的とした児童の人身取引や移住労働者の労働搾取を目的とした人身取引は網羅されていなかった。専門家はさらに、特に外国人に関する事案において、警察と入管職員による人身取引の兆候の認識不足を報告した。それにより、外国人人身取引被害者が適切な保護を受けることができなかった。商業的な性行為を禁止する法律の範囲が限定的なため、児童や成人の搾取が、合法化されてはいるもののほぼ規制されていない「デリバリー・ヘルス・サービス」や都市部の歓楽街にある商業的性行為の範囲内で広く起きた。性的搾取や労働搾取目的の人身取引および性的搾取を目的とする児童の人身取引に対する当局の誤解に加え、政府による被害者の審査および認知手続きが不十分だったため、政府は引き続き、被害を受けやすい人々の中の認知されていない被害者を、出入国管理法違反など、人身取引犯に強要されて犯した違法行為の理由から逮捕、拘束、強制送還した。



2021年、7167人の技能実習生が職場から失踪した。その中には、搾取的または虐待的環境のため逃げたと思われる者や人身取引被害者として未だ認知されていない者もいた。当局は、契約している機関による労働搾取目的の人身取引やその他の虐待的環境から逃れてきた技能実習生を引き続き逮捕し、強制送還した。労働契約の中には、日本で就労中、妊娠あるいは罹患した実習生を自動的に帰国させる違法な条項を含むものもあった。本報告書対象期間中、技能実習生の中には、コロナ禍による休業から失業したため、送り出し機関への未払い債務の支払いのために新たな雇用主を探さなければならなくなった者もいた。しかし、当局は、違法に職を変えたとして、人身取引の審査をせずに、一部の技能実習生を逮捕した。政府は、2021年に強制送還された技能実習生はいなかったと報告した。前年の報告書対象期間と異なり、契約終了前に日本を出国する技能実習生に対して出入国在留管理当局が1万2865件の面接審査を実施したと法務省は報告したが、その中で認知された人身取引被害者はいなかった。さらに、政府には、出入国在留管理当局により収容されている技能実習生を含む外国人が、人身取引の兆候を示しているかの可能性を審査する手続きがなかった。専門家は2021年、出入国在留管理当局は出入国管理法違反で14人の人身取引被害者を逮捕し、中には人身取引の兆候を審査せずに強制送還された者もいたと報告した。



当局は、商業的性行為が第三者により仲介されたのでない限り、児童を性的搾取目的の人身取引被害者と認知せず、このことが、何百人もの児童が人身取引被害者として公的に認知されるのを困難にした。政府はまた、2000年に採択された国連人身取引議定書の定義上の基準に反して、性的搾取を目的とした児童の人身取引は、加害者による「被害者の支配」を要件とする理由で、児童の商業的性行為事案を、性的搾取を目的とした児童の人身取引事案として扱わなかったと報告した。地方の法執行職員の中には、これまでの報告書対象期間の間に、13歳という異例に低い日本の性的同意年齢が、商業的性的搾取を受けた児童を、人身取引被害者として公的に認知する取り組みを一層複雑にしていると述べる者もいた。政府は、性的搾取目的の人身取引の一形態である「児童買春」として2021年に警察が報告した627件の事案に関係する408人の児童の中で、人身取引被害者の認知を報告しなかった。よって政府は、前年の報告書対象期間と同様に、何百件もの児童の性的搾取や商業的性的搾取事件に関わったどの児童にも重要な保護支援サービスを提供しなかった。また、支援のためNGOを紹介することもなかった。警察は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダークィアもしくはクエスチョニング、インターセックスなど(LGBTQI+)の児童を含む、性的搾取目的の人身取引被害者となる可能性がある一部の児童を、引き続き非行少年として扱い、人身取引の確認審査も、これら児童の事案の捜査も、または専用の支援サービスへの紹介も行わず、代わりにこうした児童に対して素行に関する助言を行った。



ここ数年間と同様に、政府は、日本人、外国人を含むあらゆる形態の人身取引被害者に対して、人身取引被害者に特化したシェルターや精神的・社会的ケア、法的支援などの、全体的に十分な保護支援サービスを提供しなかった。政府は、警察は4人の性的搾取目的の人身取引被害者と11人の労働搾取目的の人身取引被害者を支援サービスのために婦人相談所や児童相談所に紹介したと報告した。紹介を受けた人の中に男性はいなかった。比較すると、2020年に複数の婦人相談所のシェルターで支援を受けた人身取引被害者は8人だったが、政府は児童相談所に紹介した被害者の人数について以前は報告していなかった。ある国際機関はまた、警察が商業的性的行為を目的とした施設への強制捜査中に認知した11人の人身取引被害者を保護支援サービス機関に紹介したと報告した。政府は、人身取引被害者と家庭内暴力や他の犯罪の被害者のためにシェルターを提供することができた婦人相談所と児童相談所に引き続き資金を提供した。婦人相談所のシェルターは、食料や、その他の生活必需品、精神的ケアおよび医療費を提供し、被害者は自由に出ることができた。しかしNGOの中には、こうした施設の物理的状況や支援サービスは貧弱で過度に制限されており、人身取引被害者に必要な専門的なケアを提供するには不十分であると主張を続けた団体もあった。政府による支援保護策は、他の犯罪被害者を中心にしており、政府は、関係職員が人身取引のあらゆる形態の被害者対応に必要な特定のサービスを提供できるよう整備していなかった。各都道府県の担当者が人身取引事案を扱った偶発的な現場経験の度合いによって、政府から提供される被害者が利用できる支援サービスやその質は異なった。政府は、性的搾取目的の人身取引の一部の形態も含む性暴力被害者のための各都道府県にある「ワンストップ支援センター」を引き続き運営したが、前年の本報告書対象期間と同様に、2021年にこれらの施設でサービスを受けた人身取引被害者がいたかについての報告はなかった。前年の報告書対象期間と異なり、政府は、人身取引被害者の保護に割り当てた金額について報告しなかった。2020年、政府が同年度にシェルターでの人身取引被害者の保護に割り当てた金額は、350万円超(約3万420ドル)だった。市民社会の支援提供者は、人身取引被害者が行政の支援を求めた場合、政府が被害者を正式に人身取引被害者として認知しない限り支援をすることができないと報告した。その結果、被害者への重要なサービスの提供が著しく遅延した。



合法的に日本に居住する被害者であれば受けることのできるその他の政府提供の社会支援サービスについては、外国人人身取引被害者の利用は限定されていたか、全く利用できなかった。出入国在留管理庁は2021年、11人の外国人人身取引被害者に対して日本在留を許可したが、被害者に対して重要なケアを提供したか、あるいは紹介したかについての報告はなかった。これに対して、2020年、出入国在留管理庁は8人の被害者に日本在留を許可した。しかし、政府は、外国人人身取引被害者が日本で就労することについて一律には許可しなかった。NGOはまた、政府が提供する言語通訳サービスの不備は、外国人被害者の保護にとって特に課題となっていることの一つであると強調した。政府は、人身取引犯が日本で搾取した外国籍者への保護支援サービスについては、駐日外国公館からの提供に依存、期待した。報告によると、出身国へ帰国することに伴う影響を恐れる外国人被害者は、一時的、長期的、または定住者として在留する便益を受けることが可能であったが、本報告書対象期間に、いるとすれば何人の被害者がこの便益を受けたかについて、政府からの報告はなかった。



被害者は人身取引犯に対して損害賠償を求める民事訴訟を起こす権利を有したが、前年の報告書対象期間と同様に、政府から被害者が訴訟を起こしたとの報告はなかった。また、制度を悪用して技能実習生を雇用する監理団体や子会社の経営者たちは、民事あるいは刑事責任を逃れるために破産の申し立てや経営上の変更の偽造を頻繁に行い、これにより、労働搾取目的の人身取引が技能実習の間中、罰せられることなく継続することを可能にした。雇用主の中には、技能実習生に対して行われた労働虐待への損害賠償請求の機会を減らすため、労働組合を脱退するよう実習生に圧力をかける者もいた。このため、賠償金の支払いを受けることが、実際にはほぼ不可能であった。4年連続で当局からは、裁判所が命じる被害者への損害賠償の事案に関する報告はなかった。過去、複数の社会市民団体は、ポルノ出演強要の被害者の中には、人身取引犯に対する訴訟への参加によって汚名を着せられ、社会統合の障害になることへの恐れを理由に、訴訟に参加しない選択をした者もいたと報告した。





防止



政府が続けた人身取引防止のための取り組みは不十分であった。その中には、被害を受ける危険の高い移住労働者を人身取引から適切に防止するための政治的意思の欠如が継続して示されたことも含まれる。政府は、全国レベルで関係府省庁の連携機関を維持し、2021年に1度会合を開いたが、人身取引対策の関係省庁の間では効果的に連携していなかった。政府は人身取引対策について、2014年に策定した人身取引対策行動計画に引き続き依存した。政府は、政府による人身取引対策のための行動について第7次年次報告書を作成し、2014年人身取引対策行動計画で表明した目標に照らして、施策の取り組み状況を追跡調査した。政府は、市民社会団体と人身取引対策について協議する会合を4回開いたが、これらの会合から具体的な成果があったかについての政府からの報告はなかった。当局は、警察庁の公式ウェブサイトを含むオンライン、ラジオ番組、ポスター、冊子を通じた情報発信と、NGO出入国在留管理局、労働基準監督署、日本内外の外国公館へのリーフレット配布を通して、人身取引に対する啓発活動を引き続き行った。啓発活動の内容のほとんどは、需要者側を対象にしているのではなく、被害者を対象にしたものであり、政府は商業的性行為の需要削減に十分な努力を払っていなかった。政府は、海外で児童の性的搾取に関与した日本国民を訴追する域外管轄権を有したが、2年連続で、2021年にはこの域外管轄権下での児童買春旅行事案の捜査や訴追を1件も報告しなかった。厚生労働省出入国在留管理庁、警察庁などの複数の省庁は、人身取引の可能性がある事案を特定できるホットラインの運用を継続したが、これらのホットラインが2021年に被害者認知に至ったかどうかの報告はどの省庁からもなかった。NGOは、ホットラインを周知する警察庁の人身取引対策リーフレットは明確ではなく、人身取引被害者には理解しづらいものだったと指摘した。



政府は、2016年成立の「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習制度改革法)」の施行を継続した。技能実習制度改革法は、新規の技能実習生と雇用主が共同で作成する、生活環境、労働時間、その他の要素の概要である実習計画を、厚生労働省が認定するよう義務付けた。政府より、2021年に技能実習制度下での技能実習を認めた実習生の数について報告はなかったが、2020年11月から2021年1月中旬にかけて、政府は5万5754人の技能実習生の入国を認めた。しかし当局は、送り出し機関の契約と受け入れ機関の契約との一体性、あるいはこれらの契約と実習生の実習計画との一体性を確保する監督手続きを十分に実施しなかった。その結果、内容には齟齬があり、多くの実習生が労働搾取目的の人身取引を含む労働虐待を被りやすくなった。外国人技能実習機構は、前年の報告書対象期間と同様に、技能実習実施機関と監理団体の実地検査を実施、法務省も実地検査を実施した。外国人技能実習機構は、2021年に2万1833カ所の技能実習実施機関と3950件の監理団体の検査を実施したと報告した。その一方で法務省は、外国人技能実習機構が検査したのは1万954カ所の技能実習実施機関と2120カ所の監理団体だったと報告した。これに対して、2020年には、1万5318カ所の技能実習実施機関と2983カ所の監理団体を検査していた。政府からは、このような検査が人身取引被害者の認知や潜在的な人身取引犯罪の刑事捜査につながったかどうかについて報告はなかった。法務省によると、政府は2021年、19カ所の監理団体の免許を無効にし、前年の報告書対象期間の11件の免許無効から若干増加した。当局はまた、157カ所の技能実習実施機関について、技能実習制度法への違反があったとして厚生労働省の認定済み実習計画の認証を無効にした。これは、前年の報告書対象期間の91件から増加している。専門家の中には、技能実習制度の雇用主と実習生の数が調査官と比較して多いために、労働計画には執行力が欠如していたと述べる者もいた。2021年8月時点で、外国人技能実習機構は、失踪した実習生が複数いた送り出し機関からの新たな技能実習生の受け入れを一時中断した。外国人技能実習機構は特に、ベトナムの5カ所の送り出し機関について報告し、技能実習計画の認定申請も、これら監理団体の免許申請も受け付けなかった。複数の市民社会団体は、外国人技能実習機構は、特に技能実習生の数が増え続けるなか、職員数の相当な不足により、こうした大規模な事業における労働搾取目的の人身取引などの虐待の申し立てを十分に調査できていなかったと、引き続き懸念を示した。実習生の中には、雇用主による突然の契約変更や終了に関する仲裁を求めても、外国人技能実習機構と労働基準局は無反応であったと報告した者もいた。外国人技能実習機構は2021年4月、雇用主からの暴行や脅迫といった緊急事案に対応するため技能実習生向けのホットラインを開設した。2021年4月から11月の間、政府はこのホットラインで69件の匿名の電話を受けたと報告したが、このような電話が当局による労働搾取目的の人身取引被害者の認知に結びついたかどうかについて報告はなかった。



政府は、技能実習生送り出し国であるバングラデシュブータンビルマカンボジア、インド、インドネシアラオス、モンゴル、パキスタン、フィリピン、スリランカ、タイ、ウズベキスタンおよびベトナムとの間で技能実習制度に関する協力覚書を維持した。協力覚書は、依然として、募集行為を規制する日本政府の主要な手段であった。しかし政府は、募集機関や送り出し機関による虐待的な労働慣行や労働搾取目的の人身取引犯罪について、送り出し国政府に責任を課すことができなかったことから、依然としてほぼ効力を発揮しないままであった。協力覚書では、技能実習生に高額の借金を負わせるような「過剰な金銭」を徴収することのない各国政府が認定する機関からのみ、実習生を受け入れることを確認した。しかし、こうした国の送り出し機関の中には、金銭の代わりに高額の「手数料」を課すことで、金銭の徴収制限を回避し、かつ自国政府の認定を受けた機関もあった。ゆえに、これらの国から来日する実習生は、一旦日本に入国すると、これまで通り借金による強要の危険にさらされた。これは特に、技能実習生の中で最多であり、かつベトナムの送り出し機関に手数料を支払うことを要求されたベトナム技能実習生に当てはまった。日本の技能実習制度の雇用主の中には、実習生の逃亡を防ぎ、労働力を維持する手段として、実習生に給与の一部を強制的に預金口座に振り込ませていた者もいた。法務省、外務省および厚生労働省は、送り出し国に対して、募集費用徴収違反の申し立てへの調査を要求することが可能だが、送り出し機関を処罰し、あるいはこのような行為のために送り出し機関を締め出す決定は、送り出し国の当局の裁量に委ねられた。政府は過去4年、100の送り出し機関による不正行為疑惑を送り出し国に対して報告したが、2021年だけで何件を送り出し国に報告したかについての報告はなかった。政府はこれらの団体のうち23団体を認定済み送り出し機関のリストから除外したが、潜在的な人身取引犯罪として捜査したかの報告はなかった。



政府は、人材不足で知られている建設、造船、介護、その他10産業分野の人材を5年間補充するため、2018年導入の特定技能ビザ制度を引き続き実施した。2021年に同制度内での労働搾取目的の人身取引の報告はなかったが、専門家は、同制度は技能実習制度に備わる脆弱性と同様、労働搾取目的の人身取引を含む労働者の虐待への脆弱性を高め、監督措置が同じく欠けているとの懸念を引き続き示した。報告によると同制度は、既に技能実習生である適格者が現在の自分ビザを新設のビザへと切り替えることができ、日本での滞在期間の延長や同産業部門内での転職を可能にした。政府から、いるとすれば何人の技能実習生が2021年に雇用主を変えたかについて報告はなかった。日本の法律によりまた、営利目的の人材あっせん機関や個人が、免許要件のない「登録支援機関」となり、労働者を募集するブローカーと雇用主との間を有料で仲介することが可能となった。専門家は、このような業務料は、この制度下で入国する移住労働者に対して、借金による強要への危険性を生み出す可能性があると報告した。本制度下で政府は、悪意のあるブローカーと募集機関を一掃するため、情報共有の枠組みを提供した14カ国政府との協力覚書を維持した。





人身取引の概説



過去5年間に報告されたように、人身取引犯は、日本人および外国人の男女を労働搾取目的の人身取引および性的搾取目的の人身取引の被害にさらし、日本人児童を性的搾取目的の人身取引の被害にさらしている。人身取引犯はまた、東アジアや北米など、日本を越えた送り先で搾取する前に被害者を域内のどこからでも日本経由で輸送する。人身取引犯は、主にアジア出身の移住労働者の男女を労働搾取目的の人身取引の環境にさらすが、その場所は、日本政府が運営する技能実習制度などの事業に参加する企業なども含まれる。日本で急速に増加する外国人留学生は、虐待的でしばしば詐欺的な就労・就学契約条項のため、単純労働の分野において人身取引の被害者になる危険性がある。北東アジア、東南アジア、南アジア、中南米およびアフリカからの男性、女性および児童は、雇用または偽装結婚のために来日し、性的搾取目的の人身取引の被害にさらされる。人身取引犯は、バー、クラブ、売春宿およびマッサージ店での性的搾取を目的とした人身取引のために外国人女性を日本へ入国させやすくしようと、外国人女性と日本人男性との偽装結婚を利用する。人身取引犯は、借金による強制、暴力または強制送還の脅迫、恐喝、パスポートやその他書類の没収、その他の精神的な威圧手段を用い、被害者を強制労働や商業的性行為の状態にとどめる。雇用主は、多くの移住労働者に、生活費、医療費、その他の必要経費を支払うよう要求し、労働者を債務による強制にさらしている。売春宿の運営者は、素行が悪いとして恣意的に被害者に「罰金」を科すことがあり、それにより被害者が借金を負っている期間を強制的な措置として引き延ばしている。



人身取引犯はまた、日本人と外国人、特に十代の家出した少年少女を、性的搾取を目的とした人身取引の被害にさらしている。組織犯罪とつながりがあることが多い「援助交際」やさまざまな形態の「JK」ビジネスが、性的搾取を目的とした日本人児童の人身取引を依然として助長している。報告によると、中国、韓国、ラオス、フィリピン、シンガポールベトナムからの児童が、こうした場所で搾取されている。COVID-19の感染拡大により、失業および家庭内暴力が急増し、それにより、特に家出した児童など、一部の日本人女性や少女が「援助交際」に従事する危険性が高まった。NGOは、この目的のためにソーシャルメディアを活用し、女性や少女に連絡をとる人身取引犯が増えていると報告した。「JK」バーの経営者は、LGBTQI+の青少年を含む一部の未成年の少年少女を、ホステスやクラブのプロモーターとして労働搾取目的の人身取引の対象にする可能性がある。高度に組織化された商業的な性のネットワークが、地下鉄、若者のたまり場、学校、インターネット上などの公共の場で、被害を受けやすい日本人女性や少女を標的として、商業的性的行為を目的とした施設、小規模音楽演奏会場、小売店舗内、リフレクソロジー店にて、多くの場合借金による強要により性的搾取を目的とした人身取引の被害者とする。こうした女性や少女は貧困状態で生活しているか、または認知障害がある場合がある。モデルや芸能事務所に見せかけた団体の中には、詐欺的な募集手段を用いて、日本人男性、女性、少年および少女に不明瞭な契約書に署名するよう強要し、その後、法的手段をとる、あるいは不名誉な写真を公表すると言って脅し、ポルノへの出演を強要する団体もある。トランスジェンダーの若者の中には、自身のジェンダーを肯定するケアの資金源として、規制されていない都市部の歓楽街で雇用を求め、その結果、商業的な性行為や場合によっては労働搾取目的の人身取引で搾取される者もいる。入国を仲介する日本の民間業者は、日本人とフィリピン人との間に生まれた児童とそのフィリピン人の母親が日本に移住し、日本国籍を取得することを、多額の手数料を取って支援するが、これにより母親は多額の借金を負うことが多い。日本到着直後、借金を返済するため、性的搾取目的の人身取引の被害者となる母親や児童もいる。入国仲介業者に見せかけた組織犯罪集団もまた、仕事があると偽って、このような家族を日本に誘い、女性を歓楽街で労働搾取目的の人身取引や性的搾取目的の人身取引に従事させる。日本人男性は依然として、アジアの国々における児童買春旅行への需要の源泉の一部である。



労働搾取目的の人身取引の事案は、政府が運営する技能実習制度において引き続き起きている。この制度は本来、外国人労働者の基本的な専門的技能を育成することを目的としていたが、事実上の臨時労働者事業となった。送り出し国と日本との間で過剰な金銭徴収の慣行を抑制することを目的とした二国間合意があるにもかかわらず、バングラデシュブータンビルマカンボジア、中国、インド、インドネシアラオス、モンゴル、パキスタン、フィリピン、タイ、トルクメニスタンウズベキスタンベトナムからの技能実習生は、漁業、食品加工業、貝類養殖業、造船業、建設業、繊維生産業や、電子部品、自動車、その他の大型機械の製造業で職を得るために、数千ドルの過大な労働者負担金、保証金や不明瞭な「手数料」を母国の送り出し機関に支払っている。技能実習制度の雇用主は、明記された技能実習制度の本来の目的に反して、多くの実習生を技能の教授や育成が実施されない仕事に従事させている。事前に合意した職務と一致しない仕事に就かされている技能実習生もいる。これらの労働者の中には、移動と通信の自由を制限され、パスポートとその他個人的な法的文書を没収され、強制送還や家族への危害といった脅しを受け、身体的暴力、劣悪な生活環境、賃金差押え、労働搾取目的の人身取引を示唆するようなその他の状態に置かれた者もいた。技能実習生に「処罰合意」への署名を義務付け、労働契約を履行できない場合、何千ドルもの違約金を科す送り出し機関もあった。報告によると、契約を結んだ技能実習の仕事を辞めた実習生は、在留資格外となり、その後、労働搾取目的や性的搾取目的の人身取引の被害者になる者もいる。元技能実習生を含む、特定技能ビザ制度下の外国人労働者の一部は、人身取引の危険性にさらされている可能性がある。あるNGOは、日本でこのビザ制度の下で働く移住労働者の90%超が、2019年以前に脆弱な産業分野で働いていた元技能実習生であったと述べた。





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「スプートニク通信による駐日ロシア大使インタビュー:特殊軍事作戦と露日関係について」(Sputnik日本)[2022.8.5, 12]

スプートニク通信による駐日ロシア大使インタビュー:特殊軍事作戦と露日関係について」(Sputnik日本)[2022.8.5, 12]









https://sputniknews.jp/20220805/12347364.html





駐日ロシア大使に長編インタビュー ロシアへの偏見、キャンセルカルチャー、同じ志を持つ日本人からの支援について





2022年8月5日, 19:24







© 写真 : The Embassy of The Russian Federation to Japan





エレオノラ シュミロワ






ロシアによるウクライナでの特殊軍事作戦が始まってからすでに約5カ月半が経過した。この間、日本をはじめとする欧米諸国の多くは、空前の反ロシア情報キャンペーンを展開した。情報戦が同じ口調で繰り返される陰で、ロシアの発する声はしばしば気づかれず、聞かれずじまいだった。スプートニクは駐日ロシア大使のミハイル・ガルージン氏に取材し、特殊軍事作戦の動機と目的、ロシア側の立場に対する日本側の反応などについてお話をうかがった。インタビューの前編を公開します。





※本稿はガルージン駐日ロシア大使へのインタビュー・前後編の前編です。後編はこちらからお読みいただけます。





新たな局面での大使館の業務について





スプートニク:2月24日以降、大使館の外交官の仕事の内容や性質はどう変化しましたか? 働きにくくなりましたか?



ガルージン大使:「今年2月24日より、ドンバス住民の保護、非武装化、脱ナチス主義、ロシアの安全保障上の国益を脅かすことのない、ウクライナの中立的地位の確保を目的としたロシアのウクライナにおける特殊軍事作戦が開始され、日本の状況は根本的に変化しました。



それでも私たちは外交官らをこうした状況に対処できるよう整えようとしています。外交官はその職業の内容からして、国際的にも、受入国においても、また受入国との関係においても、いかなる変化にも対応できるようでなければなりません。



このため、こうした環境変化で日本の公人、またメディアによる反ロシア的な表現や発言、大使館周辺での抗議行動の激増などに日々直面する中でも、すべての大使館職員が効率的に公務を遂行しています。現在、外部からのネガティブな作用は今、少なくありませんが、私たちの公務がこれから影響を受けることは一切ありません」







「反露」は複数の国の政策の基盤になりつつある=露外務省

4月18日, 21:33






ロシアについての誤解、曲解



ガルージン大使は特殊軍事作戦が始まって以来、この5カ月間で生放送への参加も含め、応じたインタビュの回数は10回を超えると語っている。大使は、ロシアの立場には関心があるものの、「もし、あの日本全国を、そしてすべてのメディアを席巻した熱狂的な反ロシアキャンペーンがなければ、取材依頼はもっと多かったはず」との印象を明かし、こうしたネガティブな雰囲気が蔓延しているため、マスコミは取材の申し入れになかなか踏み切ることができないとの考えを示した。



ガルージン大使:ロシア大使館の最大の仕事は特別軍事作戦の狙いと動機を伝えること。だから私たちはまず、ウクライナ政権が自国の東部の住民に対し、過去8年間、大量虐殺を行ってきたことを指摘しているのです。



そして第2に、NATO圏はウクライナ新型の兵器を送り込み、あらゆる種類の反ロシア的な物語を吹き込むことで、ロシアの隣国ウクライナに反ロシア感情を植え付けています。ウクライナ社会は、ナチズムと過激で攻撃的な民族主義の細菌に感染しているのです。



そしてこのことは、NATO軍教官がウクライナ軍に与える常時訓練と、ウクライナ領内におけるNATO軍事基地建設計画と、ウクライナ政権の言い草では、本来はロシアのクリミアをウクライナが奪還するための軍事行動を教義的に明文化することと全て相まって、ロシアの安全保障を大きく脅かしました。



この2つの要因、つまり、ロシアの特殊作戦の2つの動機について、私たちも積極的にメディアに説明するようにしています。さらに、SNS上、大使館の情報リソースでも、私たちの主張が伝わるように工夫しています。特殊軍事作戦の目的、課題、動機とその進捗状況について、客観的で信憑性のある情報を提供しているのは、多くの意味でロシア大使館総領事館のリソースだけです」







ドンバスの解放を賭けた特殊軍事作戦

「ロシア人ヘイトはウクライナから始まったものではない」=米国の作家

4月11日, 17:45






スプートニク:日本の報道関係者からの取材でロシアに関するどんな誤解によく遭遇されますか?



ガルージン大使:ウクライナについて日本で確立されてしまっている、歪曲した認識について言いますと、まず、日本の指導部もメディアも2014年2月にキエフで流血の武装クーデターが起きたことに気づいていなかったということです。あの時に合法的な大統領が武力によって倒され、ネオナチや過激派、全く無責任な人々はウクライナに暮らすロシア人に対して宣戦布告し、ロシア語を禁じ、自分たちが生まれ育ったウクライナから去れと言い放ちました。



日本ではなんらかの理由で、ウクライナの現在の局面が今年2022年の2月24日に始まったのではなく、2014年の2月に始まったことに気づかないようにしているのです。



日本に存在する第2の誤った前提。それは、ドンバスのロシア語を話す市民に対して、ウクライナ当局が2014年から組織的に推し進めた大量虐殺政策を完全に無視するか、知らないという姿勢を取ることです。ドンバスのロシア語話者の市民は誰にも攻撃をしかけていません。彼らはクリミア市民と同じく2014年2月のキエフでのクーデターを認めず、独自の生活を築くと決意しました。第二次世界大戦中にナチスを幇助したウクライナ民族主義者たちがとるナチス戦犯の美化という、非道かつ容認できない価値観のウクライナ化を押し付けられることを拒否し、ロシア文化、ロシア語、大祖国戦争の大事な戦勝日を尊重しながら、子どもを教育しています。



日本人はこうした全てを無視しようとしています。ロシアがこの特殊軍事作戦で開戦したのではないという事実を無視しようとしているように。ロシアは逆に、2014年前半から、ウクライナ政権が国民、ルガンスク人民共和国ドネツク民共和国の国民に対して仕掛けている戦争を終わらせようとしています。ウクライナ政権は彼らに対して、空爆、大規模な砲撃、経済封鎖、社会封鎖(キエフによる東部市民への年金未払いやその他の社会的義務の不履行、水道システムの封鎖)を用いているのに、こうしたことがすべて無視され、現在の事態の展開に至っているのです」







ドンバスの解放を賭けた特殊軍事作戦

「正真正銘のジェノサイド」 ドンバスの砲撃で数万人が飲料水なしで放置 非常事態が発令

2月22日, 04:10






明治大学での講演、日本人からのフィードバック



ガルージン大使は日本のマスコミ、ラジオ、テレビだけでなく、大学ともコンタクトをとっており、6月30日は明治大学で学生を対象に講義を行った。しかもこの講演会は明治大学が主催したものだった。一方で、大使館が長年のパートナーだとみなしていた大学から講演を断られることもあり、ガルージン大使は無念だったと語った。



その明治大学の講演だが、大使いわく、やはり「ちょっとしたハプニング」なしには終わらなかった。




ガルージン大使:「講演は行われました。私が感じた限りでは、真剣に耳を傾けてくださっていたように思います。それでも前日にあらかじめ合意がなされていたプログラムは実行が叶いませんでした。まさにできなかったのは、通常、講演の後に行われる質疑応答で、主催者は直前になって何らかの組織上問題が起きたから出来なくなったと説明していました」



それでもガルージン大使は、日本の若者だけでなく、一般の人も大使館の情報リソースを読むことでウクライナの状況に対して、今までと異なる姿勢を取り始めていると考えている。



ガルージン大使:「私たちがリソースに公開する資料への反応から判断する限り、特殊軍事作戦の開始当時よりも、作戦の動機、課題、それが始まった原因を説明しようとする私たちの努力に理解を深めてくれる人が徐々に増えているようです。



ですから、日本には、ロシアの特殊作戦について的確で客観的、理性的、さらには肯定的な認識を持っている人たちがおられますし、その数は少なくありません。今の日本、特にマスコミに蔓延する反ロシア的なヒステリーの雰囲気の中では、このような客観的な見解を形成することは容易ではありません」







ドンバスの解放を賭けた特殊軍事作戦

ウクライナ紛争をNATOがどのようにして起こしたか 中国の退役軍人が説明

5月29日, 17:50






日本におけるキャンセル・カルチャーについて



スプートニク:こうした新たな環境の中で、日本ではロシア文化を拒絶する傾向が現れ始めていると思われますか?



ガルージン大使:「ご指摘のテーマですが、私としては別の角度からこんなふうに考えます。



まず、偉大で多面的で個性的なロシアの文化に対して日本は常に、大きな尊敬と敬意と、あえて言うならば憧れを抱いてきました。



こうした傾向は19世紀後半からありました。日本の非常に有名な政治家がこんなことを言われました。ここでは名前を出したくありませんが、その方は、自分の世代では、ロシアの古典文学を知らない人間はインテリとは言えない、とおっしゃっておられました。そんな時代が日本にはかつてあったのです。



ですから、ロシアの文化への拒絶がある種、公式的に作られた政治路線としてあるとは私は言えません。でも、そのような試みがなされた具体的な事例は、私たちは数例確認しています。ただし、問題は別のところにあります。



たしかに、キャンセル・カルチャーはそこまで至っていないし、そうならないことを望みますが、全体的にはマスコミや社会の公式的なレトリックに反ロシア感情を加熱させる傾向があって、これが経済から教育、科学技術から人道・文化に至るまで日本との協力が発展しにくい雰囲気を作り出している。問題があるのはそこです」





ガルージン大使は、日本政府が自らの決断で、日露のあらゆるコンタクトを事実上凍結したと指摘した。そしてその影響は、文化交流の集中度にも表れた。



ガルージン大使:「ここ数年の日露関係で双方向が努力して創った前向きな姿勢を破壊する行動がとられた結果、日本政府は、文化や政治、ロシアの対日関係といった特定の部分だけでなく、ロシア全体に対して、社会に極めて否定的なシグナルを発しています。ですから、キャンセル・カルチャーなどを直接呼びかけなくても、ロシアとの交流はどんな分野でも創造的な活動を発揮できるような雰囲気ではないのです。残念ながら、これが今日の状況です」







ロシア文化を「キャンセル」する試みは失敗する運命にある=ロシア上院

6月20日, 23:55






日本の友人、同じ志の方からの支援について



スプートニク:大使は長年のご経歴の中で、ロシアとつながりがある日本人と友好的な関係を多く築いてこられたことと思いますが、こうした苦境で彼らからの支援はありますか? 具体的なお名前をいただけるでしょうか。



ガルージン大使:「もちろん、何十年も前から固い友情で結ばれた方々はおられます。私は本当に彼らに感謝しています。でもお名前はあげないでおきましょう。日本の一部の勢力が、私の発言を曲解することもありえますから。



もちろん、この方々は私たちの立場に共感し、変わらず純粋にロシアを愛し、信じておられる。私たちとコミュニケーションをとること自体が、こちらを助けようということです。また、客観的な理由から数は少ないかもしれませんが、公の場で発言し、ウクライナでの特殊作戦の動機、課題、目的について理解を示し、日本が海の向こうから来る命令に従うのではなく、自国の国益に従って行動すべきだと強調して、助けようとしてくださる。こうしたアクションで支援をくださる方々に、本当に感謝しています」





ロシア国内 政治 ウクライナ オピニオン











https://sputniknews.jp/20220812/12449233.html





駐日ロシア大使インタビュー後半 露日関係発展における安倍元首相の功績、広島平和記念式典へのロシア不招待、制裁の真の意味について





2022年8月12日, 17:46







© AP Photo / Eugene Hoshiko





エレオノラ シュミロワ





今回は、「スプートニク」によるミハイル・ガルージン駐日ロシア大使へのロングインタビューの後半をお届けする。前半では、特別軍事作戦の目的と動機、キャンセル・カルチャー、ロシアの立場に対する日本の反応などについてお話を伺ったが、後半では、安倍元首相の死が露日関係の今後の発展にいかなる影響を与えるのか、なぜ広島の平和記念式典へのロシアの不招待が軍縮における大きな損失となるのか、また対露制裁はロシアを孤立させているのかどうかについて語っていただいた。





インタビュー前半はこちらから。





露日関係の発展における安倍元首相の功績





スプートニク「安倍元首相の死は露日関係にとって大きな打撃となりました。この悲劇的な事件を受けて、露日関係の発展の展望は変化したとお考えでしょうか?」



ガルージン:「当然のことながら、我々は、2012年から2020年にかけての露日関係発展におけるきわめて肯定的な段階と深いつながりのある安倍晋三氏の悲劇的な死に対し、深い悲しみを感じております。それは、信頼のある建設的かつ定期的な両国首脳―プーチン大統領と安倍首相との対話が、露日関係において、双方にとって有益な複数の分野における進歩的な関係発展に向けた、質的に新しい創造的な相互協力の雰囲気を作り出すことができた段階でした。そしてそれは、多くの点において、両国にとっての突破期だったと感じています。そして、そのことは具体的な事実によっても証明されています。我々は日本との間で、政治問題についても、安全保障問題についても、きわめて深い、複合的な対話を行うことができました。そしてそれによって、両国の信頼を深化させることができました。というのも、首脳の口から説明がなされる機会を得ることによって、日本の戦略について、よりよく、より広く、より詳細に理解することが可能となったからです。また日本人にとっては、政治や安全保障分野におけるロシアというものをよりよく理解できるようになったことで、全体的な雰囲気がきわめて大きく改善されることとなりました。次に、我々は共同の努力によって、非常に大規模な一連の経済事業に着手することができました。それらは露日協力、露日関係の代名詞となりました。その最たるものは、北極圏で共同で開発した天然ガス田から液化天然ガスを日本に輸送するプロジェクト「アークティックLNG2」を始めとするエネルギー分野の事業ですが、そうした例はこれ以外にも数多くあります」。



こう述べたガルージン大使は、文化・人道的協力の分野でも、2018年から2019年にかけて露日関係にとってきわめてユニークな「ロシアにおける日本年」、「日本におけるロシア年」が開催されたことについても言及した。



さらに両国は、地域・姉妹都市交流年という、また別の、ユニークで大規模なプロジェクトを開催することで合意した。これについてガルージン大使は次のように述べている。







日露交流年は幸いにも12月に終わらない

2019年1月1日, 20:13






ガルージン:「ご存知のように新型コロナウイルスの制限があったにもかかわらず、我々は1月29日にその交流年のオープニング・セレモニーを実施することができました。しかし、残念ながら、ロシアによる特別作戦に対する日本の不適切な反応によって、この交流年を継続することはできなくなってしまいました。つまり、露日関係のあらゆる分野において、当時はきわめて画期的な発展があったということです。そして多くの点においてその発展は、真に戦略的で、先見の明のある政治家であり、愛国者であった安倍晋三氏が、日本にとって、広大な隣国であるロシアとの間で建設的な善隣関係を築くことの重要性を理解していたことに起因していると考えます」。



さらに大使は、「米国や英国、その他のG7諸国の制裁政策を完全にまた絶対的に追従している現在の日本政府の破壊的な努力の結果」、露日関係において達成された非常に多くの肯定的なものが崩壊したと強調し、遺憾の意を表した。



加えてガルージン氏は、現段階の露日関係の悪化は、少なくとも、露日関係史における過去40年に前例のないものだと評価している。



ガルージン:「しかし、残念なことに、これは日本側の選択です。ロシアは、両国がこの数年で共に積み上げてきた肯定的なものを破壊しようとする、あるいはそれにわずかの損失を与えるようなことは何もしていません。残念ながら、我々の関係を意識的に破壊しようとする日本側の行動によって、現在、両国関係は過去に例のないほど低いレベルにまで低下してしまいました。わたしが日本と関わってきた過去40年の間、ソ連と日本の関係においても、ロシアと日本の関係においても、今のような状況になったことは記憶にありません。そして、もちろん、これによって、いま我々は、外国からの助言ではなく、自らの国益に合致した行動をとる真に独立した国家との関係を積極的に発展していくことについて考える必要に迫られています。残念ながら、日本は現在、そうした国のリストには含まれていません。しかし、我々は依然として、両国の利益に適うような分野で日本との実用的かつ互恵的な協力について話し合う用意があります。我々は今も日本との対話の用意があり、結局のところ、何を選択するかという決定権は日本側にあるのです。つまり、日本は自らの国益に沿って行動するのか、あるいはG7という枠内でのいわゆる西側の連帯に合致するよう行動するのかということです。それは日本自身が決めることです」。





広島記念式典へのロシア不招待について



スプートニク「米国が投下した原爆の犠牲者を悼む広島と長崎の平和記念式典に日本政府がロシアを招待しなかったことについては、どう思われますか?」







「広島、長崎の悲劇は繰り返されてはならない」ロシア大使が原爆犠牲者を慰霊し、欧米の煽動による悲劇的結末を明言

8月4日, 13:30






ガルージン:「今回の決定には、当然ながら、控えめに言って、当惑しました。なぜなら、何よりもこれは、核兵器の管理、不拡散、核を含む軍縮に対する国際的な努力において主導的な役割を果たす国と認められているロシアに対する尊敬のなさを証明するものだからです。ロシアは何より、米国との間で現在も効力を持っている新戦略兵器削減条約の期限延長を発案し、核軍縮に向けた動きに貴重な貢献を果たしています。しかもこの条約は現在、核軍縮の分野における唯一の法的文書です。これらはすべてロシア外交が達成したものであり、それが見えないというのは、控えめに言って、近視眼的で偏向した立場だと言えます」。



ガルージン氏はまた、とりわけ、核軍縮の分野における米国の態度と比較しても、ロシアの代表を式典に招かないというのは理解できないことだと指摘し、次のように述べている。



ガルージン:「核軍縮の分野における米国の無責任な行動―米国が核兵器を自国領外に配備する唯一の国であり、米国が核不拡散条約を破り、いわゆるNATOの非核保有国といわゆるニュークリア・シェアリングを行い、米国がNATOの軍人に核兵器の扱いや使用法について訓練し、また米国が主権国家に対し攻撃を厭わず、こうした攻撃の中で、たとえば1999年にユーゴスラビアで行われたような劣化ウラン弾を使用するのを躊躇わないということと比較すれば、これはなおさらです。しかし、どうやら、広島と長崎の平和記念式典の開催者らはこれらのことを気にもかけていないようです。その代わりに、まったく真実でない、まったく馬鹿げたこじつけの口実を理由に、ロシアの代表者の参加を拒否したのです。これは憤慨と遺憾を呼び起こす以外の何ものでもありません。そしてもちろん、核軍縮の分野における実情への懸念に関するこれら2都市の指導者らの発言の信憑性に疑念を抱かせるものです」。







日本 長崎で平和祈念式典が開催される

8月9日, 14:30






スプートニク「しかも、あらゆることから判断して、日本政府は9月27日に行われる安倍晋三氏の国葬にロシアのウラジーミル・プーチン大統領を招待しないという決定を下すようですが・・・」。



ガルージン:「正確に言えば、我々は、他の国の在日大使館と同様、国葬が行われるという通知は受け取っており、それによれば、希望があれば、代表者を出席させることができるとのことでした。しかし、その後、日本政府に近い匿名の関係者らから、日本側はロシア大統領が訪問することになったとしても、それを受け入れないという発言がなされました。しかしまず、ロシア側からも、ドミトリー・セルゲーヴィチ・ペスコフ大統領公式報道官が、すでに明確に、大統領がその行事に参加する計画はないと述べています。次に、もし日本政府にそのような(プーチン大統領を招待しないという)考えがあるとしたら、それは現段階で、対露関係における日本政府の非友好的な態度、そして世界最大の大国の指導者に対してそのような態度を取る人々の先見の明のなさを今一度、証明するものです」。





制裁、そしてかつての関係が回復される可能性について



スプートニク「もし、制裁が解除されることがあるとしたら、露日関係の回復のプロセスにはどのくらいの時間がかかると思われますか?」



ガルージン:「正直申し上げて、これは非常に難しい質問です。第一に、我々は現段階で、日本が、露日関係において、少なくともウクライナをめぐる現在の情勢を適切に理解した上で、理性と責任のある路線に戻ろうという意志があるのかどうかということを知りません。我々は日本側の考えを知らないのです。しかし、最近行われた日米経済版2+2の会合での日本側の発言や、その会合の結果、採択された文書に記載された文言から判断すると、残念ながら、それらは日本政府が近々、ロシアとの関係において先見の明を持った戦略的に検証された立場を取ろうとしているとは思われません」。



さらに大使は、ロシアは制裁が解除されることを期待しておらず、しかしロシアには現在の制裁による圧力を克服するための十分な資源があると思うと強調した。



ガルージン:「この記事を読んでくださっている方々がわたしの言葉を正しく理解してくださることを願っています。我々は制裁を解除してほしいと誰にも頼んでいません。そしてこれからもそうすることはないでしょう。制裁を今後どうするのかについては、それを発動した側が決めることです。制裁を発動した国々が、対露制裁という政策に盲目的に従った結果ますます明らかになってきた自国民に対する損害、自国の経済に対する損害に耐えるつもりであるならば、その国々はなぜか、それが自分の国にとって有益だと考えているということなのでしょう。第二に、ロシアには独自の経済、独自の科学技術、教育、文化、人的潜在力があり、いかなる制限をも克服することができるのです」。







欧州市民の半数以上が新たな対露制裁に反対 生活水準の低下を危惧 世論調査

8月9日, 04:27






ガルージン氏はまた、実際、ロシアは孤立しているわけではなく、ロシアに対し、制限を設けていない国々とは協力していく意向であるとし、国際社会にはそのような国がたくさんあるとし、次のように述べている。



ガルージン:「繰り返しになりますが、ロシアには、国際舞台における自国の長期的な国益に基づいて行動する真に独立した重要な国際的なパートナーが存在します。そしてそのような国はたくさんあります。いわゆる制裁を発動した国の数を見ると、全体で40ほどですが、国連加盟国は193カ国あるのです。大多数の国はロシアに対し制裁を発動していません。大多数の国―つまり150以上の国が、ロシアとの間で、国連憲章で謳われている重要な原則である主権平等の原則に基づいた、相互に尊敬する相互に有益な正しい協力関係を発展させるべきだと考えているのです。ですから、ロシアが国際舞台で孤立していると感じていると言うことはまったくできません。いわゆるロシアの孤立というのは、きわめて無知な西側諸国の多くの指導者の頭の中にのみ存在しているのであって、国連加盟国の大半の指導者の意識の中には存在しないのです」。







中露の接近はNATOの利益に反する=新しい戦略概念

6月29日, 23:23






最後に、大使は、崩壊した関係が短期間で回復するかどうかは疑わしいと述べ、次のように語った。



ガルージン:「正直に申し上げて、ここで時間的な指標を述べることはできませんが、『上り一日下り一時』(物事を作り上げるのには多くの時間と労力が必要だが、壊すのは簡単だという意味)という古いロシアの諺を例にとって挙げることができます。露日の関係が崩壊し、日本政府によって、過去40年で最低のレベルにまで悪化するのは時間的にはあっという間のことだったからです。それはわずか数週間の出来事でした。では、果たして、その壊れてしまったものを数週間で回復させることは可能なのでしょうか?わたしは無理だと思います」。





ロシア 露日関係 政治 オピニオン











(投稿者より)



現在のウクライナ情勢について、私の目にはイギリスのグローバリストがウクライナの人・モノ・カネを使ってロシアを潰そうとして、返り討ちに遭っている姿に見えます。ロシアは反グローバリズムでほぼ一枚板です。一方、イギリスにも反グローバリスト勢力はあるでしょうが、表には出ていないように見えます。



日本にとってイギリスは同盟国に準じた存在ですので、日本メディアが親英反露のスタンスを取るのは仕方ないことですが、ロシアが何を考えているかについての情報が少ないからでしょうか、当ブログのロシア関連の記事にも一定数のアクセスが継続して存在しています。



ひと月前の記事ですが、そういった経緯もありここで御紹介いたします。テレビとネット、メディアと個人などの形で補完して国全体でバランス出来れば、それで良いのかも知れません。








サハリン2事業:ロシアのガスを手放したくない日本 (RFI)/日本との対話は実務レベルで行われており、日本企業はロシアで事業を継続している=露極東・北極圏開発相(Sputnik日本)

サハリン2事業:日本はロシアのガスを手放したくない (RFI)/日本との対話は実務レベルで行われており、日本企業はロシアで事業を継続している=露極東・北極圏開発相(Sputnik日本)









(Projet Sakhaline-2: le Japon ne veut pas renoncer au gaz russe)

https://www.rfi.fr/fr/asie-pacifique/20220901-projet-sakhaline-2-le-japon-ne-veut-pas-renoncer-au-gaz-russe





サハリン2事業:ロシアのガスを手放したくない日本





発表 2022年9月1日14:57





2021 年 10 月 29 日、ロシア・プリゴロドノエ港で、サハリン2事業からの液化天然ガスを積み込むタンカー、サン・アローズ号。AP





RFI






日本は、同国の商社2社によるロシア極東のサハリン2石油・ガス開発事業に対する持分の維持を承認したロシアの決定を歓迎した。ロシアによるウクライナ侵攻の開始以来、東京はロシアに対する制裁に参加している。しかし、化石エネルギーが無い日本は、ロシアの石油・ガスを手放すとエネルギー安全保障が危うくなるとしてこれを拒否している。





報告 RFI東京特約記者、フレデリック・シャルル



日本の同盟国・米国は、日本列島の北にあるロシア・サハリン島で生産されたガスを断たないという日本の決定を理解している。島で採掘された1000万トンのガスの約60%は、液化された後に日本に送られる。このガスは日出ずる国の需要の9%を賄っている。



英シェル社が撤退と27.5%の権益放棄を決めた後、今年6月、ロシアはサハリン2事業を1国で支配することにした[投稿者の和訳。全ての株式はロシア政府が設立した新しい会社に譲渡された。新しい事業者と大株主は現在、ロシアのエネルギー大手・ガスプロム社だ。ロシアは三菱商事三井物産の 日本商社2 社に対して、ロシア政府による新しい事業主体においてサハリン2に対する2社の以前の持分―それぞれ10%と12.5%―の譲渡を承認した。



日本は現実的でなければならない。夏の間は停電を回避したが、今年の冬は暖房が切れることを心配している。東京都は都市ガスの使用量削減を検討している。日本はロシアからの石炭と石油の輸入を減らした。しかし、世界のガス市場は逼迫しており、ガス供給を失うとその穴埋めはかなり難しそうだ。



日本はまた、日本の商社がサハリン2事業から離れた場合、直ぐに中国企業に取って代わられることを危惧している。





日本 ロシア 石油 エネルギー コモディティ







―参考―













(Sputnik日本)

https://sputniknews.jp/20220901/12720706.html





日本との対話は実務レベルで行われており、日本企業はロシアで事業を継続している=露極東・北極圏開発相





2022年9月1日, 18:10







ロシアのアレクセイ・チェクンコフ極東・北極圏開発相 - Sputnik 日本, 1920, 01.09.2022

© Sputnik / Alexandr Kryazhev






ロシアのアレクセイ・チェクンコフ極東・北極圏開発相は、スプートニクのインタビューで、ロシアと日本の対話は実務レベルで行われており、日本企業はロシアで事業を継続しており、それは長期的なものになると述べた。





チェクンコフ氏はまた、政治レベルでの対話は行われていないと指摘し、そのような状態をつくっているのは、「東半球の主権独立国家と戦争状態にあり、西半球では植民地帝国として行動し、東半球では経済、技術、社会の発展や他国の物事に対する独立した見解に反対しているある国家」だと述べた。



チェクンコフ氏は、ロシアは完全な対話再開を待つ必要があると指摘した。同氏は、日本の米国依存を示唆して、次のように語った。





「日本側が英語から日本語への翻訳ではなく、日本国民の利益を表す純粋な日本語でわれわれと話をするならば、私たちは間違いなく関係を近づける用意がある。しかし、もう一度繰り返すが、従属関係にある人たちによって表明され、形成された公式の立場がある一方で、事業を継続している企業の利益がある。つまり、ロシアで長期にわたって事業を行うことを意味している。企業はこの危機を耐え抜き、そして我われは一緒に大規模なプロジェクトを実行する」




信用調査会社「帝国データバンク」によると、ロシアとのビジネスから撤退する日本企業の動きが減退している。





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ロシア 露日関係











(投稿者より)



ロシアが日本に見せる厳しい姿勢は口先だけのようにも見え、岸田政権がロシアに見せる実体ある厳しさとはバランスしていないようです。



あるいは、ロシアは米国情勢を睨みながら、「日本側が英語から日本語への翻訳ではなく、日本国民の利益を表す純粋な日本語でわれわれと話をする」日が来ることを予見し、そのタイミングを測っているのかも知れません。



但し、それは日本が米国から「独立」を勝ち取る、ということでは無く、米国が日本から去った「空白」が発生する、ということかも知れません。その「空白」を世界が狙っているようにも感じられます。そうなると、アヘン戦争以降の清国と同様の状況が21世紀の日本に発生するのでしょうか?



いずれにせよ、今年の冬はまずは一安心です。感謝いたします。