「ウクライナの絶望的な徴兵事情について」(BBC NEWS JAPAN・Sputnik International)

ウクライナの絶望的な徴兵事情について」(BBC NEWS JAPAN・Sputnik International)









BBC NEWS JAPAN)

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-66590178





戦争に参加したくないウクライナの男性たち





2023年8月24日



ジェイムズ・ウォーターハウス、BBCウクライナ特派員







BBC/Rob Taylor

イエホルさん(仮名)は、武器を持たずに戦争に貢献したいと話す






ウクライナが、必要な兵士を集めるのに苦労している





志願兵では足りない。ウクライナでは常に、亡くなったり負傷したりした数万人の兵士の代わりが必要だ。ロシアの侵攻が始まって18カ月がたった今、それ以上の兵士がただひたすら疲弊している。



だが、戦いたくないという男性もいる。わいろを支払ったり、徴兵担当者から逃れる手立てを探したりして、国を離れた人が何千といる。一方で徴兵担当者らは、強引な手口を非難されている。



「システムがとても古い」のだと、イエホルさん(仮名)は言う。イエホルさんは、ソヴィエト時代にアフガニスタン戦争に参加した父親がメンタルヘルス(心の健康)を害したのを見てきた。だから彼は戦いたくないのだ。自分の身元を明かしたくないので、仮名を使いたいと本人が希望した。



ウクライナではロシアの侵攻以前、宗教上の理由で兵役に就きたくない男性には、農作業や社会福祉関連の労働といった他の選択肢が与えられていた。



昨年に施行された戒厳令によって、こうした代替案は消えた。しかしイエホルさんは、戦いたくない各自の理由はなんであっても、選択肢を与えられるべきだと考えている。



「状況は人それぞれだ」とイエホルさんは言う。「全ての男性市民は戦わなくてはならないと憲法に記されていること自体、私の考えでは、現代の価値観にあっていない」



イエホルさんは最近、首都キーウで警察に呼び止められ、兵役を避けていると非難された後、募兵センターに送られた。背中に故障があるのだと訴え、最終的には帰宅を許されたものの、次は許されないだろうと恐れている。



健康状態が悪い場合や、ひとり親の場合、誰かの世話をしている場合などは、兵役を免除される。しかし、徴兵逃れで有罪判決を受けると、罰金あるいは3年以下の禁錮刑が科される。



「それぞれの状況が考慮される状態で、誰もがこの戦争に貢献することが許されるべきだ」とイエホルさんは言う。「最前線にいる人々を気の毒に思うが、平和主義者のための代替案が与えられていない」。







Getty Images

軍事訓練を受けるウクライナの志願兵(キーウ、2022年10月)






ウクライナ政府の徴兵方法は、その根本から腐敗していると非難されている。



ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は8月半ば、国内各地の徴兵担当者を全員解任した収賄や脅迫が横行しているというのが、その理由だった。



オデーサ州で徴兵を担当する幹部の家族は、車やスペイン南岸の不動産など数百万ドル相当の資産を最近になって買ったと非難された。この担当官は、身に覚えがないと述べているという



ウクライナ国防省の関係筋はBBCに対し、こうした疑惑は「恥ずべきことで、容認できない」と話した。



徴兵により、60歳未満の男性のほとんどがウクライナから離れられなくなっている。こっそり抜け出そうとする多くの人は、多くの場合、カルパチア山脈を越えてルーマニアへ向かう。



一方、国内に留まる人々は、大規模なチャットグループの助けを得て招集を逃れている。メッセージアプリ「テレグラム」では、徴兵担当者のパトロール場所が共有されている。地域や街ごとにチャットグループがあり、中には10万人以上が参加しているものもある。



徴兵担当者は、制服の色から「オリーブ」と呼ばれている。この職員に呼び止められた場合、募兵センターで登録するよう命令する紙が渡される。しかし、その場でセンターに連れていかれ、家に帰るチャンスがなかったという報告も出ている。



ウクライナ国防省は国民に対し、政府データベースの情報を最新のものにするよう呼びかけている。また、招集の際には、各自にあった部署に配属するとしている。



しかし、徴兵担当者が厳しい、あるいは脅迫的な手段を使ったとの主張もある。わずか1カ月の訓練で最前線に立つことになった人の報告もある。







Ministry of Defence of Ukraine

ウクライナ国防省の新しいポスターには、「恐怖を認めることは勇敢だ」と書かれている






当局は信頼回復に必死なようだ。



「怖いと思ってもいい」というのが、最新の情報キャンペーンのスローガンだ。この言葉で、子供のころの恐怖心と、今日の心配事の類似性を引き出そうとしている。



キーウではいざというときのために、市民がロシア兵に抵抗する訓練を受けている。小道をパトロールすると、「第2グループ! 手榴弾だ!」と教官が叫ぶ。男性も女性も素早く地面に身を投げ出す。



手にしているライフルは偽物だ。しかし、参加者の中から、本物を使う軍務に登録する人が出てほしいという、その期待はある。



22歳の学生、アントンさんはすでに決心している。



「戦争が始まったときは、徴兵される覚悟ができていなかった」と、草むらの中で転がる訓練を終えて一息つきながら、私に語った。



「でも今は、いずれ戦争に行くための準備をしないといけない」



アントンさんは、徴兵回避をよくは思わないが、戦いたくない人の気持ちは理解できるという。



戦場へ行くことが怖いかどうか、彼に尋ねた。



「もちろん」と、彼は答えた。「誰だって怖い。だけど、これ以上戦況が悪化したら、キーウで座っているわけにはいかない」。



ロシアの全面侵攻に対する防衛において、ウクライナはあらゆる予想を裏切ってきた。



ウクライナ全土の掌握を目指していたロシア政府は今や、ウクライナ領土の2割をなんとか支配し続けることに、注力する羽目になっている。



それでもウクライナの側も、戦い方を再調整しなくてはならない。



自国の反転攻勢が大勢が期待していたよりも進展が遅いのをどうするかだけでなく、自国民の士気をどのように高め、戦いに臨むようにするか、ウクライナ政府は取り組まなくてはならない。



兵士が必要なのは、否定しようがない事実だ。しかしそれと同時に、誰もが戦場に適しているわけではない。それも不都合だが真実だ。





(追加取材:ハナ・チョルノス、アナスタシア・レフチェンコ、ケイト・ピーヴァー、ハンナ・ツィバ)





(英語記事 The men who don't want to fight for Ukraine





関連トピックス ウクライナ侵攻 人権 ウクライナ 軍隊 法律 若者











(Millions of Ukrainians Dodging Draft to 'Avoid Certain Death' Fighting for NATO: Sputnik International)

https://sputnikglobe.com/20230903/millions-of-ukrainians-dodging-draft-to-avoid-certain-death-fighting-for-nato-1113096124.html





数百万人のウクライナ人が、NATOのために戦い「確実に死ぶことを避ける」ために徴兵から逃げている





2023年9月3日 18:37 GMT (更新:2023年9月3日 18:49 GMT







c AFP 2023 / GUILLERMO ARIAS





米当局は現在までにウクライナで最大50万人の軍人が死傷したと推算しており、ロシア国防省は夏の反攻だけでキエフが4万3000人を超える軍人を失ったと計算している。軍事アナリストのヴィクトル・リトフキン氏はスプートニクに対し、ゼレンスキー政権が人間を何時までも「挽肉製造機」に押し込み続けることが出来ない理由を語った。





ウクライナの「常時動員」キャンペーンは、悲惨な迄の戦闘年齢男性の国外流出の中で挫折に見舞われており、ウクライナ未来研究所は先日、同国の人口が2021年の4110万人から2023年時点で僅か2900万人まで減少したと計算している。最大だった1991年には5200万人だったので見る影も無い。



この危機の最中、代替メディアや一部の旧来の報道機関さえも、NATOが支援する対ロシア代理戦争への徴兵を更に募集する際に、ウクライナ当局が直面する困難が増していることを報じている。徴兵事務所の職員たちが街路の脇で男性を捕まえる、国外への旅行に厳格な制限を掛ける、戦場送りになることを避けようとする者に対して高額の賄賂を要求するといったことが、幅広く報じられている。先月、徴兵関連の汚職容疑が国際的な注目を集めたため、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は国内全地域の徴兵担当職員の解雇を大掛かりに行ったした



ロシア陸軍の退役大佐で経験豊富な軍事アナリストのヴィクトル・リトフキン氏はスプートニクに対し、「ウクライナの徴兵事情は非常に悪い。ウクライナの人口のほぼ半分が国外の欧州やロシアに居住しているため、本当に人が足りない」と語った。



同時に、何十万人もの「子供を作る、家を建てる、食料を生産するなど、色々なことの出来る17歳から50歳の若くて健康な男性」が、そうするのでは無くロシアとの紛争に送り込まれているとも、彼は述べた。この紛争にウクライナは勝てないと、現在では米国の主流の専門家たちの一部でさえ認めているのにだ。





「簡単な例を1つだけ挙げると、この2ヵ月間の反撃でウクライナは4万3000人を失い、3千台の装甲車両を破壊された…比較のために、これらの数字が何を意味するかを明確にするために、アフガニスタンでの10年間[1980年代:編集部注]の紛争中に、ソ連は1万5000人を失った。10年間で1万5000人、しかし、ここでは2ヵ月で4万3000人だ。したがって、ウクライナでは人々は自分たちが挽肉製造機の中に入るよう呼び出しを受けていることを理解している」と、リトフキン氏は語った。








ロシアのウクライナ特別作戦

スコット・リッター氏:反撃に失敗するずっと前にウクライナの運命は閉ざされていた

8月30日 13:17 GMT






「彼らは実際に戦闘の仕方を教えて貰えず、(適切な)武器なども与えられない。したがって、自分たちが祖国・ウクライナのために戦っているのでは無く、自分たちがゼレンスキーのために戦い、米国やNATOなどの利益のために戦っていることを、彼らは理解している」と、このウォッチャーは付け加え、ウクライナの徴兵たちは降伏を強く望んでおり、彼らの離脱を邪魔して戦線に引き止める役割を果たすファシスト民兵が無ければ、そのような事例が更に増えるだろうと仄めかした。



結局のところ、リトフキン氏は徴兵制の更なる厳格化がゼレンスキー氏を「救う」とは考えていない。「彼らは今や欧州各国に対してウクライナ人男性を国内から追放することを強制しようとしている…しかし、これが何の役にも立つことは無さそうだ。なぜなら、もし欧州各国が『逃亡者』の国外追放を始めても、彼らは中東やアフリカなど、どこか自分が戦わなくて済むような別の場所に逃げるだけだからだ。」



国内では人々が混乱したり恐怖を感じたりして仕舞いには沈黙し、或いは、拡大を続ける墓地が「ウクライナの擁護者」で埋め尽くされていると信じ込まされたりしていると、彼は述べる。このため、社会全体としては抗議活動は発生していないと、リトフキン氏は述べた。





NATOの傭兵は窮地を救えるか?



このウォッチャーは、ウクライナは既にNATOの「教官」、「志願兵」、ラテンアメリカからポーランドに至る傭兵で兵員を補充しつつあることを指摘して、ウクライナとそのNATOの「パートナー」諸国が傭兵により軍人の数を増強する取り組みも事態を救うことには成らないと述べた。



「約1万人のポーランド人がウクライナのために戦っている。そこには米国人もいる。しかし、彼らは概して給料を受け取ると、最初の深刻な困難に遭遇した後に国外に出る。ウクライナでは[外国人]はロシア軍に捕獲されないために特別に監視されている。しかし、どのようにしても彼らが捕らえられることは時々ある。つい先日、ロシア軍は6人のポーランド人を捕虜にした。しかし、このことは大声で語られることはない」とリトフキン氏は述べ、捕虜交換を待つそのような人々が大勢いると指摘した。





「勿論、これではどうにも成らない。彼らが空からの支援を得ずに戦っていることもここでは問題になっている。彼らはNATOの雛形に従って戦っている。しかしNATOも米国も、戦力と火力において自分たちと同等の敵と戦ったことが無い。ユーゴスラビアでもリビアでもイラクでもアフガニスタンでも彼らは常に相手の国を空爆し、その後で初めて軍隊を送り込んだ。しかし、ウクライナではこれが上手く行かなかった。ウクライナには航空戦力が無く、NATOの空軍もウクライナ上空を飛行しない。なぜなら、その上空はロシアの飛行士のものだからだ。私たちは絶対的な制空権を持っている。したがって、ウクライナは航空の援護なしで攻撃を行わざるを得ず、これは余りにも現代における戦争の在りと有らゆる原則に反している」と、この軍事ウォッチャーは総括した。








世界

米国「ロシアと中国に対して取り得る2つの戦争」において「打倒への布石を打つ」

9月2日 08:20 GMT





分析 ヴィクトル・リトフキン ヴォロディミル・ゼレンスキー ウクライナ ロシア アフガニスタン NATO









(投稿者より)



ウクライナの絶望的な徴兵事情については以前からロシアメディアでは取り上げられていましたが、先日のBBCの記事により裏付けが取れた形になりました。



ところで、中露メディアに流布する話として、日本の退役自衛官から構成された約130人の傭兵部隊がウクライナに到着してリヴォフ(という情報があります)のホテルに入ったところ、ロビーに掲げた日の丸をロシア側のスパイに目撃されたために、その日のうちにサーマル・ミサイルの攻撃を受けて宿舎ごと蒸発したそうです。



話の真偽は分かりませんし、真実が明らかになることは無いでしょうが、NATOとの連携を続けるために私たちの知らないところで厳しい判断があったのかも知れません。逆に、ロシアに対する日本の厳しい対応とは明らかに見合わない日本へのロシア側の緩やかな反応を見たとき、私たちの見えないところで危険を冒して対露工作をなさっておられる方々もいるのだろうなと思いながら、事態を見守っています。