「2023年5月、岸田首相のアフリカ訪問」(RFI・Sputnik日本)

「2023年5月、岸田首相のアフリカ訪問」(RFI・Sputnik日本)









(Tournée africaine pour le Premier ministre japonais Fumio Kishida: RFI)

https://www.rfi.fr/fr/afrique/20230429-tourn%C3%A9e-africaine-pour-le-premier-ministre-japonais-fumio-kishida





岸田文雄首相にとってのアフリカ歴訪





発表 2023年4月29日 02:18







広島で開催される G7 サミットについて、東京で記者団と会談する岸田文雄首相。 2023 年 4 月 20 日。REUTERS - ISSEI KATO



RFI






広島でのG7サミットまでひと月を切った4月29日、岸田文雄・日本首相はエジプト・ガーナ・ケニアモザンビークを訪問する。日本の指導者として2014年以来となる今回の4ヵ国訪問で得たいものは、アフリカでの影響力をめぐる闘争における中国とロシアの存在が動機となっている。





報告 RFI東京特約記者、フレデリック・シャルル



岸田文雄氏は、アフリカとG7の協力を強化したいと考えている。彼は個々の国ではなく、アフリカ連合を広島サミットに招待した。これは、G20唯一のアフリカ国メンバーとしての招待に慣れている南アフリカを怒らせる危険を冒すものだ。



しかし、この岸田文雄氏のアフリカ南部4ヵ国訪問は、何よりもアフリカ大陸における中国の影響力を減らしたいという日本の願望に動機づけられている。これは、「米国に対するアフリカの一般的な外交的嫌悪」の恩恵を受けていると、経済紙「日経」は指摘している。「そして、ロシアもそれを利用しようとしている。」



南の国々の天然資源に依存する日本を苛立たせるもの。それは、「習近平・中国主席を始めとする中国の指導者たちが、アフリカと南米の各地を訪問していることだ。このままでは、私たち負けてしまう」と岸田文雄氏は近親者たちに語った。



モザンビークでは、中国が支援する液化天然ガス事業が生産を開始した。ケニアと中国の貿易は2022年に27% 増加した。



昨年のチュニスでのTicadサミットで、日本はアフリカのために3年間で300億ドルの官民資金を投入すると発表した。アフリカではウクライナでの戦争の影響とこの戦争が招いた食糧不安に直面しているが、これはその経済の回復力を強める話だ。





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日本 アフリカ連合 G7







―参考―













(Sputnik日本)

https://sputniknews.jp/20230505/15902751.html





【視点】岸田首相のアフリカ訪問 新たな形のソフトパワー





2023年5月5日, 17:55







© AFP 2023 / Nipah Dennis





リュドミラ サーキャン





5月5日、日本の岸田首相がエジプト、ガーナ、ケニアモザンビークのアフリカ4カ国訪問を終了する。これは岸田首相にとって、就任後初のアフリカ訪問であるが、日本の首相がアフリカ大陸を訪問するのは2016年以来のこととなっている。今回の訪問が、現在日本が議長国を務めるG7(主要7カ国)の広島サミットの直前に行われていることは注目に値する。長野県軽井沢で4月に開かれたG7外相会談では、新たな市場、そしてASEAN東南アジア諸国連合)やアフリカ諸国を含む途上国とのより緊密な協力に関する問題が、5月19日から21日にかけて広島で開催されるサミットの主要な議題の一つとなることが明らかとなった。





アフリカ諸国との協力は、日本の外交において重要な位置を占めるものではなく、ごく最近まで、アフリカに対する日本の関心といえば、もっぱら経済や人道的なものだけであり、しかも基本的に民間ビジネスを通じたものであった。



世界の市場が激動する中、アフリカは天然資源が豊富で、人口増によって販売市場を広げ、労働力の潜在力も持っていることを考慮すれば、アフリカ諸国は、長期的な経済協力という見地から、日本にとってもっとも将来性のある場所の一つとなりつつある。







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またここで指摘しておかなければならないのは、日本は、1993年に国際的な協力の枠組みであるアフリカ開発会議の主催を発表したことである。2022年8月にはチュニジアで第8回会議が開かれた。



岸田首相自身は、新型コロナウイルスによるパンデミックのため、会議には出席できずオンラインでの参加となったが、首相は、アフリカにおける技能生の育成、保健からの農業に至るまでの一連の産業分野の発展に刺激を与えるため、今後3年で300億ドル(およそ4兆円)レベルの投資を行うと約束した。



モスクワ大学グローバルプロセス学部のヤーナ・ミシェンコ助教授は、「スプートニク」からの取材に対し、今回の岸田首相の訪問の意味と目的について次のように語っている。





「今回の岸田首相のアフリカ歴訪は、地理的にアフリカの北、西、東を網羅するものです。わたしが思うに、今回のアフリカ歴訪には2つの大きな目的があります。一つ目は、今年G7の議長国を務める日本が、自分たちの国がこの役割に見合った存在であり、日本が国際社会全体の問題に関与していることをあらゆる手段を使って示そうとしているということです。アフリカ諸国は伝統的に、世界の主要な国々がその発展に向けた支援をおこなっている『グローバル・サウス』の一部とみなされています。



エジプトへの出発を前に岸田首相は、国際秩序の基盤の強さが試されているときに、主なアフリカ諸国のリーダーたちとの協力関係を今一度確認することがいかに重要かについて発言しています。また今回のアフリカ歴訪は、近く開かれるG7広島サミットの枠内での発言をより活発にするものです。こうした意味において、岸田首相は、アフリカで、日本の首相としてだけでなく、責任ある国際社会の人物として、また共通した地政学的見解とアプローチを提唱するG7全体の代表として協議を行っているのです。



これがエジプト、ケニア、ガーナ、モザンビークの指導者たちに影響を及ぼすかどうかは、おそらく、岸田首相の雄弁さや説得力だけでなく、国際関係、外交におけるいわゆる『リアルポリティーク』に対する彼らのビジョンにかかっているのではないかと思います」








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岸田首相のアフリカ歴訪のもう1つの大きな目的は、もちろん、日本の経済面での利害に関するものである。ミシェンコ助教授は、日本は一貫して、経済の多角化を図り、アフリカ大陸で拡大されつつある中国の影響力を抑止しようとしていると指摘する。





「アフリカ、そしてアフリカ市場における日本の最大の競争相手は言うまでもなく中国です。どちらの国もアフリカ経済への投資、そして発展の向けた支援提供のための大きな財政的な可能性を有しています。加えて、いずれの国も、エネルギー資源を含む、アフリカの豊かな天然資源に対する安定した長期的なアクセスを得ることに同じくらい関心を持っています」




現在、日本の企業はアフリカ54カ国のすべての国に進出している。しかし、日本は、アフリカとの協力を行いながら、経済分野においては近年中国との競争を迫られているが、この争いにはもちろん、中国が勝利を収めている。たとえば2021年に中国とアフリカ諸国との二国間貿易が2540億ドルだったのに対し、日本は170億ドルであった。







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今年ケニアとガーナが共に、国連安全保障理事会非常任理事国であることを考慮すれば、これらの国々が国連の機能強化および安保理改革の問題をめぐって、日本の首相と意見を交換する可能性も除外できない。



岸田首相が今回の歴訪で訪れたそれ以外の国について、ミシェンコ氏は次のように語っている。





「エジプトとの協力において、日本は日本企業を地元の市場に根付かせるための可能性を広げることに関心を持っています。とりわけ、自動車製造分野の協力の可能性は魅力的なものです。というのも、エジプト政府は自動車分野および国の交通システム全体をより環境にやさしいものにしようとしているからです。



一方、ガーナと日本の間では、この国にとって非常に重要な分野での協力関係が発展しつつあります。日本はインフラ整備、医療センターの設立、保険・教育システムの発展、労働力の教育などに投資をおこなっています。1月にはガーナ共和国ウクライナの間で、食物の保管のための輸送ハブを創設する合同プロジェクトについて協議が行われました。日本の首相が今回の訪問の中で、その実際的な実現に協力について発言したかどうかは、日本の「穀物問題」に対する考えの指標となるかもしれません。



モザンビークは天然資源という見地から見て、大きな利益となりうる国です。日本の企業はこの国での液化天然ガスプロジェクトに参加していますが、これは日本にとって戦略的な意味を持つものです。しかしながら、モザンビークの指導者との協議では、モザンビーク沿岸警備隊の日本への派遣など、より広い議題が取り上げられる可能性もあります」






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岸田首相のアフリカ歴訪のもう一つの局面について、ロシア科学アカデミー、中国および現代アジア研究所日本研究センターの主任研究員であるオレグ・カザコフ氏は、次のように述べている。





「これは、アフリカにより有意な協力の条件を提示している中国との大々的なゲームであるだけではありません。またこれは、日本が、産業、エネルギー分野、保険、社会的なプロジェクトの発展に向けた支援に基づいた長期的な協力関係を築きながら、伝統的にアフリカに対して適用してきた『ソフトパワー』だけでもありません。



これは、日本のより大きな自由に関係する新たな方向での動きが始まっているということです。自国の安全強化の枠内で、強い日本は米国にとっても有益なものだというコンセプトに基づき、日本は国際舞台においてますます積極的で、独立したプレーヤーであるという立場に立つことが多くなっています。そしてこの傾向はおそらくより強まっていくでしょう」




なお、岸田首相はアフリカ歴訪の後、東アジアでもっとも発展したハイテクの中心地の一つであるシンガポールに立ち寄ることになっている。





岸田文雄 アフリカ 政治 オピニオン











(投稿者より)



ツイッターを眺めていましたら、ケニアの大統領が昨年の米国アフリカ首脳会談について、「アフリカ54カ国の首脳を一台のバスに乗せられ、小学生のように扱われた。もう2度と米国とあのような屈辱的対話しない」と憤慨している、とのツイートを見ました。これに関連して、更に別のツイートには、「だから今後は、アフリカと他の国との間で議論が行われる場合、(アフリカ連合委員会の)議長が私たちを代表する」とありました。



アフリカ諸国は欧米の搾取的な姿勢を嫌ってロシアに接近しつつありますが、発言力を強めるために結束する動きも示しています。G7が南アフリカでなくアフリカ連合を招待するのはこの動きを察してのことでしょう。



その南アフリカBRICSの一角ですが、BRICSには現在19ヵ国が加盟を申請中です。また、金や天然ガスなどのコモディティに裏付けられたルーブルを通貨に持つロシアの主導で、独自の中央銀行を持つことや相互の自国通貨を用いた決済システムを作る動きが進んでいます。



連休中、岸田首相はアフリカ、林外相は南米と分担して回っています。しかし、アフリカは欧州列強の植民地支配、南米は米国による同様の搾取的な経済支配に苦しめられた長い歴史があり、中国・ロシアへの接近はその反動でもあります。



日本は西側の国でありながらアフリカを植民地支配した歴史が無いことから、現地に比較的に受け入れられやすいと思われている所はあるかも知れません。また、南米大陸の国々には現地で確固たる地位を築いた日系人社会があります。それでも、実質的には既に逆転している力関係の下で、日本が欧米側の国であることがマイナスにならないことを願うばかりです。



何よりも、日本の国内事情を忘れてはいけません。経済が衰退し貧困が進み、私たち自身が変わらなければ成らない局面にいますが、いまなお「影響力の保持」「日本を常任理事国に」「中国に対抗」と言っていることに、強い批判が存在しています。



「大国としての責任」は大切ですが、貧窮する国民への配慮も必要に思えます。