「米シリコンヴァレー・バンクの破綻」(BBC NEWS JAPAN)
https://www.bbc.com/japanese/64935675
米シリコンヴァレー・バンク破綻、預金者を「完全に保護」と米政府
2023年3月13日
Reuters
米カリフォルニア州サンタクララのシリコンヴァレー・バンク(SVB)本社の看板
米政府は12日、米銀行シリコンヴァレー・バンク(SVB)が10日に経営破綻したのを受け、同銀行に預金している個人や企業は13日から全ての預金にアクセスできるようになると発表した。
SVBは10日、規制当局に資産を差し押さえられ、閉鎖された。アメリカの銀行としては、2008年の金融危機以来で最大の経営破綻となった。
米財務省、連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)は12日に出した共同声明で、預金者は完全に保護されるとしている。
また、納税者は破綻による損失を一切負担する必要がないとしている。
テクノロジー企業への融資で知られるSVBは、金利上昇の影響を受けた資産売却による損失を埋めるために資金調達に奔走していた。そうした中、今回の破綻に至った。
「貯蓄を安全に保つのに必要な措置」
当局の共同声明は、「アメリカの銀行システムは、金融危機後に実施された銀行業界に対するより良いセーフガードを確保するための改革により、回復力のある強固な基盤を維持している」としている。
「これらの改革は今日の措置と相まって、預金者の貯蓄を安全に保つのに必要な措置を講じるという我々の取り組みを示している」
これらの措置は、12日に破綻した、ニューヨーク州に拠点を置く米シグネチャー・バンクにも適用される。
信頼回復にむけた取り組みの一環として、規制当局は銀行が緊急時の準備金を利用できるようにする、新たな方法を明らかにした。
FRBは銀行が危機的状況に陥った際に、FRBからの借り入れを容易にする、新たな資金供給プログラムを通じて支援を提供すると発表した。
ジョー・バイデン米大統領は、米国民は「必要なときに銀行預金がそこに残っているという確信」を持てるようになると述べた。
金利上昇で経営圧迫
SVBはハイテク分野の起業初期のビジネスにとって重要な貸し手ととらえられていた。昨年に株式市場に上場した、ベンチャーキャピタルから支援を受けたテクノロジー企業やヘルスケア企業の約半数がSVBを提携銀行としていた。
SVBは1983年にカリフォルニア州で創業。この10年で急速に事業を拡大していた。
しかし、金利上昇により、新興企業が資金を調達するのが難しくなり、経営が圧迫されるようになった。
シリコンヴァレーでは破綻の余波が広範囲に及んでいる。多くの企業が、この破綻が自社の財務にどのような影響を及ぼすか検討している。
英調査会社キャピタル・エコノミクスの北米担当主任エコノミスト、ポール・アシュワース氏は、米当局は「(こうした破綻が)伝染するのを防ぐために積極的に行動に出た」と指摘した。
「このデジタル時代には一瞬で、より多くの銀行が破綻する可能性がある。そうした伝染が拡大するのを阻止するには、合理的に考えれば十分な措置のはずだ。しかし、こうした伝染には常に非合理的な恐怖が伴うため、この措置がうまくいく保証はないということを強調しておく」
こうした中、英決済機関バンク・オブ・ロンドンは英財務相に対し、SVBの英法人を買収するための正式な提案を提出したという。
英政府はSVBの破綻で影響を受けた同国のテクノロジー企業を支援するための計画を進めている。
(英語記事 Money in failed US bank is safe, government says)
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https://www.bbc.com/japanese/64936224
米2銀行破綻で金融関連株が世界的に下落 バイデン氏が懸念払拭を図る中
2023年3月14日
ダニエル・トーマス、ナタリー・シャーマン、ビジネス担当記者(BBCニュース)
Getty Images
ジョー・バイデン米大統領は13日、国民の懸念を払拭するため、米銀行システムは安全だと言明した
アメリカの2銀行が経営破綻したのを受け、ジョー・バイデン米大統領は13日、国民の懸念を払拭しようと、同国の銀行システムは安全だと言明した。それでも、世界中の金融関連株は同日、値を下げた。
米金融機関シリコンヴァレー・バンク(SVB)とシグネチャー・バンクが相次いで経営破綻し、当局は預金者保護のために介入せざるを得なくなった。この事態を受け、株価は下落した。
バイデン大統領は銀行システムを保護するために「必要なことは何でもする」と約束した。
しかし投資家たちの間では、ほかの金融機関も影響を受けるのではないかとの懸念が広がり、世界的な株価の急落につながった。
13日には、スペインの銀行サンタンデールと、ドイツのコメルツバンクの株価が一時、10%以上下落した。
アメリカのより小規模な銀行は、破綻の余波から顧客を守るための十分な流動性を備えているとし、顧客を安心させようとしていた。しかし13日には、欧州の銀行よりも大きな損失を被ることとなった。
こうした株価の急変動は、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制を目的とした利上げ計画を一時停止するのではないかとの憶測を呼んでいる。
バイデン氏は、シリコンヴァレー・バンクに預金している個人や企業について、政府が預金全額を保護するために介入した後の13日から、全ての預金にアクセスできるようになるだろうとした。
多くの企業顧客は資金が凍結され、従業員や取引先への支払いができなくなる可能性に直面していた。
ジェイムズ・クレイトンBBC北米テクノロジー担当記者は、カリフォルニア州メンローパークにあるSVBの支店前で、資金にアクセスしようと1日中行列を作っている人々に話を聞いた。
SVBはすでに電信送金を停止しているため、人々は小切手で預金を引き出そうとしていた。
クレイトン記者は、「『数百万ドル分』の小切手をさりげなくポケットに入れて出てきた、別の技術者と話をしたところだ。非日常的な日だ」とツイートした。
シリコンヴァレー・バンクはどのように破綻したのか
テクノロジー企業への融資を専門としていたSVBは10日、規制当局に資産を差し押さえられ、閉鎖された。アメリカの銀行としては、2008年の金融危機以来で最大の経営破綻となった。
SVBは金利上昇の影響を受けた資産売却による損失を埋めるために資金調達に奔走していた。このトラブルが伝えられると顧客は競って資金を引き出そうとし、現金不足の危機を招いた。
12日には、当局はニューヨーク州に拠点を置く米シグネチャー・バンクにも介入した。暗号資産(仮想通貨) 関連の顧客を多数抱えていた同行は、同様の銀行破綻に最もぜい弱な金融機関であるとみられていた。
Reuters
米カリフォルニア州サンタクララのシリコンヴァレー・バンク(SVB)本社の看板
バイデン氏は、預金保護で納税者に負担がかかることはなく、規制当局が銀行に課す手数料でまかなわれると約束した。
金融機関の信頼回復にむけた取り組みの一環として、規制当局は銀行が緊急時の準備金を利用できるようにする、新たな方法を明らかにした。
それでも、8日に米金融機関シルヴァーゲート・バンクが銀行事業を清算・縮小すると発表したのに続く、今回の2銀行の破綻は、ほかの企業でのトラブルを予兆するものだとの懸念も浮上している。
英調査会社キャピタル・エコノミクスの北米担当主任エコノミスト、ポール・アシュワース氏は、米当局は「(こうした破綻が)伝染するのを防ぐために積極的に行動に出た」と指摘した。
「このデジタル時代には一瞬で、より多くの銀行が破綻する可能性がある。そうした伝染が拡大するのを阻止するには、合理的に考えれば十分な措置のはずだ。しかし、こうした伝染には常に非合理的な恐怖が伴うため、この措置がうまくいく保証はないということを強調しておく」
英証券会社AJベルの財務分析責任者ダニー・ヒューソン氏は、「当初の安堵(あんど)感は、高金利時代が一部の銀行にとって、これまで考えられていた以上に耐え難いものになるのではないかという、ちょっとした懸念になっていた」と述べた。
「アメリカではジョー・バイデン氏がこれ以上のドミノ倒しが起きるのを防ぐため、『必要なことは何でもする』と約束したにもかかわらず、銀行の株価は下落した」
政治的影響
SVBの破綻は、2008年の金融危機の後に見られたような、政府による銀行規制と保護を、どれだけ行うべきなのかという議論を再燃させた。
FRBのジェローム・パウエル議長は、今回の破綻について徹底的かつ透明性のある検証を行うとしている。
バイデン氏は、より厳しい規制作りを求めると共に、投資家と銀行のリーダーが責任を免れることはないと強調した。
「彼らは故意にリスクを負った。(中略)それが資本主義の仕組みだ」
2024年米大統領選の共和党候補の1人と目されるティム・スコット上院議員は、今回の救済措置には「問題がある」と指摘した。
「政府が介入する文化を築くことは、将来、金融機関が過剰なリスクを取った後に政府の介入に頼ることを防ぐことには全くつながらない」
(英語記事 Global bank stocks slump despite Biden reassurances )
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