日本:外国人による軍用地近くの土地購入が禁止される (DW English)
(Japan: Foreigners banned from buying land near army sites: DW English)
https://www.dw.com/en/japan-foreigners-banned-from-buying-land-near-army-sites/a-63541974
紛争|日本
日本:外国人による軍用地近くの土地購入が禁止される
ジュリアン・ライオール
2022年10月24日
主要な中心的インフラ施設や軍事基地に近い日本の数十の区域は、外国人による購入を許可するには余りにも機密性が高いと見なされている。中国に関係する投資家たちが特に注目されている。
日本の新しい法律は、国家の安全保障にとって重要な地区周辺の不動産を管理することにより、スパイ活動や破壊行為を防止することを目的としている。
日本当局は特別な保護を与えるのに十分な重要性を有するとして、日本と米国の軍事施設・原子力発電所や他の重要なインフラ施設・離島を含む全国58ヵ所を指定した。
これらは立法部により適用を受け今月施行された。しかし、今後数年間に更に多くの場所が追加されそうで、制限を受ける場所の数は 600ヵ所に達する可能性がある。
外国人や敵意を持つ政府の運営するフロント企業が、米国や日本の軍事作戦を混乱させるために使われる可能性のある不動産を購入する可能性があるという懸念の中で、国会は2021年の夏にこの法律を承認した。
最早「野放し」では無い
リストに掲載された58ヵ所には東京の指揮統制本部に加えて、ロシアと北朝鮮に近い日本の北端にある施設や中国に面した南の区域が含まれる。
「これまでは全国の機密性の高い場所がほぼ野放し状態で、例えば、外国の個人や企業が軍事基地に隣接する土地や不動産を購入することは難しく無かった」と、東京大学先端科学技術研究センターの山口亮助教は述べた。
「日本側には3つの大きな懸念がある。スパイ活動、それらの場所に近い地元の自治体に影響を与えるための情報戦、そして混乱や破壊のための小規模な攻撃だ」と、彼はDWに語った。
この法律は特定の国籍の人々を懸念の原因として指定していないが、北部で土地を購入するロシア人や中国人、日本における北朝鮮の大規模な民族団体のメンバーを当局が特に注意深く監視していくことは広く容認されている。
日本と韓国の中間にある日本の島・対馬のような国の一部では、島が韓国の正当な一部だと主張する人々もいるため、土地を取得を望む韓国人にも注意が払われるようになる。
「最大の懸念は概ね中国とロシアになる」と、山口氏は語った。
中国に関係する買い主が購入した多数の物件
2020年に日本政府が委託した報告によると、中国資本に関係する個人・団体が日本全国の機密施設に近い80の物件を取得したことが判明した。
これらの物件には、北海道の航空自衛隊・千歳航空基地から僅か3km(1.86マイル) の8ヘクタール (ほぼ20エーカー) の土地が含まれる。この区画は中国の会社が所有している。
同様に、台湾に近い沖縄県の最南端にある小さな島・竹富の町役場は、中国人の買い手が取引を完了する直前に介入を行い2.4 ヘクタールの土地を購入した。
他にも、北太平洋で活動するロシアの航空機や軍艦の活動を監視するために重要な納沙布岬の日本のレーダー施設に近い土地や、東京の南・神奈川県の米軍施設に近い土地について取引が成立した。
専門家たちは、外国の諜報員が軍事通信の傍受を試みる可能性があると警告しているが、外国所有の建物から軍用機にレーザーを照射する可能性も示唆されている。
米国に似た日本の動き
日本の動きは、機密性の高い米軍施設の近くでの中国製電気通信機器の設置が問題となっている、米国国内の懸念を反映したものだ。
FBI の調査によると、中国のハイテク大手・華為が製造した機器が中西部の多くの場所で携帯電話の中継塔の頂上に設置されている。これらは、高度に機密化された防衛通信を捕捉して妨害することが可能だと報告されている。
このデータには米戦略軍が使う通信が含まれている。同軍は米国の核抑止力を運用している。br>
テンプル大学東京キャンパス政治学教授の村上博美氏は、先ず米国が日本に問題の大きさを警告した可能性が高いと述べる。
「実際には、日本の意思決定者はこれが国家の安全保障にもたらす潜在的な脅威を認識していなかったと私は思う。ワシントンから指摘を受けて、東京がこれを初めて真剣に受け止め始めたと思う」と、彼女は述べた。
「しかし、北東アジアで独裁政権の力が強まっているため、軍事施設とインフラ施設の安全を確保する必要性が認識されているのは確かだ」と、彼女は付け加えた。
「適用範囲が十分でない」
しかし、法律を拡大する必要があると言う人々もいる。
「私は全体的にこの計画を歓迎するが、これにはいくつかの重大な抜け穴がある」と、福井県立大学国際関係学教授の島田洋一氏は述べた。
「最も明らかな問題は、現在のところ政府が沖縄南部沖の小さな島々の多くをリストから除外していることだ」と、島田氏は付け加えた。
「これは政府が中国を敵に回したくないからだと思うが、これらの領土は明らかに日本のものなので、これは間違いだ」と、同教授は述べた。
「離島の多くには軍事施設や早期警戒施設があり、国家の安全保障にとって重要なのは明らかだ。敵意を持った他の国々がこの区域における私たちの国の政策に影響を与えるのを許すことは出来ない。」
「近い将来、政府がこれらの島々にこの法律を適用することを強く望む」と、島田氏は述べた。
編集:ダルコ・ヤンジェビッチ
関連トピック ウイグル人共同体 米国防総省 北朝鮮 ロシア ディミトリ・メドベージェフ アジア 日本 国連安全保障理事会 ロシアの部分動員 中国
―参考―
- 「土地利用規制法」 9月に全面施行 住民運動、萎縮の危険性も きょう憲法記念日 尾池弁護士に問題点を聞く(東京新聞)[2022.5.3]
- 政府、20日に土地利用規制法施行へ 基本方針を閣議決定(産経新聞)[2022.9.16]
- <社説>土地規制法全面施行 根拠なき悪法は認めない(琉球新報)[2022.9.19]
- 安全保障上重要な施設周辺の土地利用規制する法律が施行(NHK NEWS WEB)[2022.9.29]
- 土地規制法 区域初提示 離島・自衛隊基地 58カ所(しんぶん赤旗)[2022.10.12]
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(投稿者より)
これは安全保障の観点から不可欠な法律とは思いますが、一方で、平和運動に携わる方々の人権を侵すものとして反対する声も大きいようです。
現在の政治体制が一部だけを利する構造になっており、国防の強化を唱える人たちと利権を享受する人たちが多くの部分で重なっているので、防衛政策そのものを疑う国民は多いです。先の戦争の記憶も消えていません。
一方、防衛を重視する立場からは平和運動の背景として外国勢力の存在が疑われるようになりますので、結果として国民の分断が更に進みます。困ったことです。
防衛施設だけではありません。森林、河川の源流、農地など、国にとって必要な水や食糧などを生み出す土地の多くが外国人により買い占められています。実態の把握だけでも急がれます。
「心配は要らない。世界規模の危機が進めばそのような土地は二束三文で売りに出されるから、その時に買い戻せば良い」という意見があります。一方、「彼らが危機で国に居られなくなった時の逃げ場所として日本の土地を買っているのだから、下手をすれば彼らに国を乗っ取られる」という声もあります、どうなりますでしょうか?。