「2022年10月日豪共同宣言―安全保障とエネルギーで日本に恩恵」(Sputnik日本・Sputnik International・VOA)
(Sputnik日本)
https://sputniknews.jp/20221021/13455768.html
【解説】エネルギー確保に必死の形相の日本 豪州との反中国の友情は助けとなるか?
2022年10月21日, 18:01
© 写真 : 岸田文雄
ドミトリー ヴェルホトゥロフ
岸田首相はすでにオーストラリアへ向けて出発しており、日本と豪州の安全保障の新合意はすぐにでも調印される運びだ。日本と豪州は、2007年に安全保障協力に関する共同宣言に署名しているが、この文書はテロとの戦いや北朝鮮の核ミサイル開発に対抗するものであった。
しかし、北朝鮮問題に関する日豪の協力は成果を出ないままであった。両国の努力で、核弾頭を搭載した弾道ミサイルの開発を特に防ぐことはできなかったのである。
そして今、両国は新たな安全保障条約に調印するに至った。明らかになっているところでは、新たな宣言は中国の海洋進出に対抗するものとなっている。豪州は、安全分野における中国とソロモン諸島の協力に、特に大きな懸念を示している。しかし、声明からは、両国にとって、この新たな安全保障に関する宣言が何のために必要なのかについて一義的な結論を導き出すことは困難である。
日豪首脳、新安保宣言へ 天然ガス供給協力要請も
10月17日, 07:40
豪州に依存する日本
このような条約を締結するには、重要な理由がある。今回の場合だと、日本が、豪州や同地域のその他の国々からの液化天然ガスとエネルギー資源の輸入にかなり依存していることが大きい。2021年、日本は7150万トンの液化天然ガス、つまり世界の輸入量全体の15%に当たる量を豪州から輸入した。また2020年は7440万トンであった。輸入量はやや減少傾向にあるが、それはガスの価格が高騰したことにより輸入量を減らす必要が生じたからである。
2020年のデータでは、東南アジア諸国からの日本の輸入は、
となっている。
つまり豪州だけで、日本の液化天然ガスの輸入量の39.1%を占めているのである。これらの国々からの輸入量の合計は4910万トン、全輸入量の65.9%となっている。これに加えて、1210万トン、つまり液化天然ガスの輸入量の16.2%はペルシャ湾岸諸国から供給されている。液化天然ガスは特殊なタンカーで運ばれている。日本向けの液化天然ガスの主な輸送ルートは南シナ海とフィリピン海を通過し、フィリピン北東部を抜ける形で設置されている。
石炭に関する状況はさらに興味深い。
日本は2021年、1億8260万トンの石炭を輸入したが、そのうち豪州からの輸入は1億1940万トン、つまり全体の65.4%、そしてインドネシアからの輸入は2260万トン、つまり全体の12.3%をそれぞれ占めている。米国、カナダからも供給されているが、その量ははるかに少ない。日本に輸入される石炭の大部分は、液化天然ガスと同じルートで輸送されている。液化天然ガスと石炭は、日本経済にきわめて大きな役割を果たすものである。2021年、電力の26.5%が石炭から、また31.7%が液化天然ガスから生産されている。この両方を合わせると58.2%である。ちなみに、原子力は5.9%、太陽光エネルギーは9.3%である。豪州は、日本の燃料の確保において、かなり大きな役割を担っており、豪州に依存していると言っても過言ではない。
きわめて重要な供給に対する脅威
さて、ここで想像してもらいたい。たとえばソロモン諸島海域に、最大射程2500キロの巡航ミサイルCJ-10を設置できる64基の発射台を持つ052Dのような中国の新鋭ミサイル駆逐艦が現れたとする。この場所から駆逐艦は豪州の北東沿岸部をコントロールし、LNGタンカーに巡航ミサイルを撃ち込むことができる。300キロの弾頭というのは、命中すれば、タンカーを壊滅するのに十分な威力である。駆逐艦はまた石炭を積載した船を追跡し、沈没させることができる。このために魚雷発射管と130ミリ艦砲がある。液化天然ガスと石炭を積載した船を沈めるためには、潜水艦やコルベット、ミサイル艇、魚雷艇などを派遣することもできる。これらの艦船は基地から遠く離れた場所で活動することになる。
しかし、軍事行動が行われている地域に燃料、食糧、弾薬を積載した船が派遣されれば、これは十分に可能性のあることである。さらに、巡航ミサイルを搭載した戦略的爆撃機H-6Kを使用する可能性もある。そして、船に対しては、艦砲射撃による攻撃が行われるのではなく、海上の特殊部隊によって拿捕される可能性もある。
特殊部隊は拿捕した貨物船を沈没させることもできれば、別の港に移動させることもできる。これらはすべて、中国人民解放軍の海軍が客観的に有しているものであり、軍事紛争が勃発すれば、使用することができるものである。
しかも、日本にとってきわめて重要なエネルギー資源の供給に対する深刻な脅威が生じるのである。日本の電力生産の46.5%が南シナ海とフィリピン海を通過する海上輸送に依存している。それは主に豪州からの供給である。中国人民解放軍・海軍は、日本に対する液化天然ガスと石炭の供給の可能性を奪うことができると断言するのは時期尚早だろう。とはいえ、船との戦いは複雑で困難なものである。
こうしたことから、中国を視野に入れた安全保障分野における日豪の新たな新宣言は、液化天然ガスと石炭の海上輸送を保護することが主な目的であるものと思われる。こうしたことが現実とならないために、各国は諜報活動、そして艦隊や空軍の共同行動における緊密な協力を行うことが求められている。
新宣言の調印には、このようにきわめて深刻な背景があるのである。
オーストラリア 国内 政治 岸田文雄 軍事 オピニオン
―参考―
(Australia and Japan Agree to Enhance Security, Defense Cooperation: Sputnik International)
https://sputniknews.com/20221022/australia-and-japan-agree-to-enhance-security-defense-cooperation-1102527804.html
豪日、安全保障と防衛協力の増進に合意
2022年10月22日
© AFP 2022 / HIRO KOMAE
モスクワ(スプートニク)―豪州と日本は、安全保障協力に関する共同宣言に署名することにより、防衛と安全保障の分野における協力の強化に合意した。土曜日、アンソニー・アルバニージー豪首相が述べた。
「今日、岸田文雄・日本首相と私はパースで宣言に署名した。これは、両国間の強力で成長しつつある特別な戦略的パートナーシップを反映している。私たちは一緒に、安定し、開かれ、繁栄するインド太平洋を実現する取り組みを加速している」とアルバニージー氏はツイッターで述べた。
この宣言は、今後10年間の防衛と安全保障の分野における両国間の関係の発展を決めるものだ。サイバーセキュリティや宇宙空間などの分野における連携の強化や、反撃能力と相互運用性の増進に特別な注意が払われている。
また、両首相は両国間の重要な特別な戦略的パートナーシップを再確認することに合意した。
「ボストーク2022 」軍事演習中にロシアと中国の軍艦が日本海で出会う
© The Russian Defense Ministry
また、岸田氏は物価上昇や中国の活動拡大を背景に、エネルギー供給の安定を確保するための諸課題についても話し合う考えだ。両首相は、環太平洋パートナーシップと4ヵ国安全保障対話 (Quad) の枠組みの中での協力の問題について話し合う予定だ。
岸田首相の豪州訪問は10月23日まで続く。アルバニージー氏は既に2 度訪日している。1度目は就任直後の今年5月にクアッド首脳会議に参加するために、2度目は9月27日の安倍晋三元首相の葬儀に出席した時だ。岸田首相は今年1月に豪州を訪問する予定だったが、コロナウイルスによる国内の疫学的状況により、この計画は中断された。
世界 日本 豪州・オセアニア 岸田文雄a アンソニー・アルバニージー
―参考―
- 日豪首脳会談(外務省)[2022.10.22]
- パースで日豪首脳会談 新たな安保共同宣言(SBS[豪州の国内向け外国語放送]日本語)[2022.10.22]
Japanese Prime Minister Fumio @kishida230 and I signed the declaration today in Perth, reflecting the strong and growing Special Strategic Partnership between our two countries.
— Anthony Albanese (@AlboMP) October 22, 2022
Together we are accelerating efforts to realise a stable, open and prosperous Indo-Pacific. pic.twitter.com/ltLy4rApOQ
Perth is the perfect location to deepen cooperation between Australia and Japan on minerals and energy. pic.twitter.com/R6D9Bgdbk5
— Anthony Albanese (@AlboMP) October 22, 2022
(Japan, Australia Sign Security Pact With Eye on China: VOA)
https://www.voanews.com/a/japan-australia-sign-security-pact-with-eye-on-china-/6800823.html
東アジア
日豪、中国を視野に入れた安全保障協定に署名
2022 年 10 月 22 日 午前5:31
フランス通信社
2022年10月22日、アンソニー・アルバニージー豪首相が岸田文雄・日本首相と豪州・パースのキングス・パークを歩いている。
豪州・パース —
土曜日、豪州と日本は機密情報の共有と防衛協力の深化に合意し、中国の軍事的台頭に対抗するための安全保障協定に署名した。
岸田文雄首相とアンソニー・アルバニージー首相は西オーストラリア州の都市パースで協定に調印し、15年前のテロと兵器拡散が最大の関心事だった時に起草された埃まみれの協定を改訂した。
この協定の下で、両国の防衛軍はオーストラリア北部で一緒に訓練し、「防衛、情報の共有、および、その他の多くの分野に亘る協力を拡大・強化する」と、豪州の当局者たちは述べた。
「この画期的な宣言は、私たちの戦略的提携の分野に強いシグナルを送る」とアルバニージー氏述べ、「安全保障協力に関する共同宣言」を称賛した。
岸田氏は、この合意は「厳しさを増す戦略環境」への対応だと述べたが、中国や北朝鮮の名前は挙げなかった。
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豪州も日本も、世界的なスパイ活動のメジャーリーグでプレーするのに必要な、海外の諜報工作員や外国の情報提供者を有していない。
日本には、米CIA・英MI6・露FSBに相当する対外諜報機関が無い。豪ASIOは、これらの組織の数分の1の規模だ。
しかし、専門家のブライス・ウェイクフィールド氏によると、豪州と日本は強力な信号と地理空間機能を備えており、電子盗聴ツールとハイテク衛星が敵に関する貴重な情報を提供している。
オーストラリア国際問題研究所のウェイクフィールド所長は、この合意は、日本が安全保障の分野で積極さを増していることを示すもう1つのシグナルだと述べた。
「日本が安全保障に関して米国以外のパートナーと公然と協力して来なかったという点で、これは重要な合意だ」と、彼は述べた。「実際に、英国など他の国との協力の雛形になるかも知れない。」
この協定は日本にとって、豪州・イギリス・カナダ・ニュージーランド・米国による強力な情報共有同盟ファイブ・アイズに参加するための新たな一歩と見なす人たちさえいる。
日本大学の日本諜報史専門家・小谷賢氏は、「日本が米国以外の外国とシギントの共有を可能にする画期的な出来事だ」と、AFPに語った。
「これはクアッド(豪州・インド・日本・米国)の枠組みを強化するもので、日本がファイブ・アイズに参加するための第一歩だ」と、彼は付け加えた。
「ふるいのように漏れた」
そのような提案は数十年前には考えられなかっただろうが、日本は近隣における様々な出来事により、第2次世界大戦の結果として確立した平和主義政策の再考を強いられた。
ここ数年、北朝鮮は日本の上空と周辺に繰り返しミサイルを発射する一方で、中国は世界最大の海軍を築くと共に世界最大の常備軍を刷新し、正に日本の玄関に核兵器と弾道ミサイルを蓄えた。
しかし、東京が同盟国との安全保障協力を更に密接にするには、まだハードルが残っている。
日本が同盟国と情報を共有することは、東京が極秘の機密資料を処理し安全に送信する能力に対する長年の懸念によって妨げられてきた。
「率直に言って、日本は伝統的にふるいのように情報を漏らしてきた」と、日本の諜報政策に関する本の著者であり、香港城市大学教授のブラッド・ウィリアムズ氏は述べた。
情報漏洩を厳罰化する法律は導入されたが、豪州は今のところファイブ・アイズ・ネットワークから収集された情報を日本に渡すのを控えざるを得なくなりそうだ。
地と風と火
また、岸田首相とアルバニージー首相は重要な鉱物・環境・エネルギーについて更なる協力を約束した。
日本は豪州産ガスの主要な購入国であり、また、国内におけるエネルギー生産の不足と化石燃料への依存を緩和する試みとして、豪州の水素エネルギー生産計画に一連の大きな投資を行ってきた。
「日本は豪州からLNGの40%を輸入している。そのため、日本が豪州と安定した関係を持つことはエネルギーの面から非常に重要だ」と、会談に先立ち日本のある当局者が述べた。
重要な鉱物に関する覚書により、日本は豪州から、風力タービンから電気自動車までの有らゆるものの生産に不可欠なレアアースの供給を得られるようになる。
中国は現在、枢要な鉱物の世界生産を支配しており、このため一部の人々は政治的な理由により供給が削減される可能性を懸念している。
(投稿者より)
中国が太平洋の軍港から、豪州産の天然ガスを日本に運ぶ輸送船に巡航ミサイルを撃ち込むことが実際にあるかどうかは分かりません。それでも、諜報の分野で日本が米英並みの待遇を得ることが叶わないにせよ、日豪関係が更に近くなるのは良いことだと思います。特に、時局柄エネルギーの安定供給に向けて前進があったのは有り難いことです。
中国を強く意識したこの共同宣言について、中国外務省が「アジア太平洋地域に軍事ブロックは必要ないだけでなく、ましてや陣営対立と新冷戦を煽る小集団なども必要ない」とコメントしていることも申し添えておきます。