「トヨタ・マツダ・日産―日本車工場が相次いでロシアから撤退」(Sputnik日本)
(Sputnik日本)
https://sputniknews.jp/20220924/13065378.html
「トヨタのおかげで高品質がロシアに出現 自動車産業には大きな痛手」 トヨタがロシア現地工場を閉鎖へ
2022年9月24日, 00:40
© 写真 : provided by Toyota
トヨタ自動車はロシアで15年にわたって稼働してきたサンクトペテルブルク郊外の工場を閉鎖し、自動車生産を中止する。ロシア産業貿易省の報道部が明らかにした。
工場は稼働停止になり、後日、おそらく売却される。売却後もトヨタ車の生産は行われない。ロシア産業貿易省によれば、トヨタは解雇するオフィスと工場のスタッフに高額の補償を提示する。
ロシア人自動車専門家のイーゴリ・モルジャレット氏はトヨタ工場の閉鎖はロシアの自動車産業にとっては大きな痛手だとして次のように語っている。
「トヨタはロシア市場に来るよう長い時間をかけて説得され、ようやく参入した。15年間、Camry や RAV 4といったハイクオリティで非常に人気の高い車両を組み立て続け、この工場で働く労働者だけでなく、たくさんの関連企業に雇用を与えてきた」
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モルジャレット氏は、ロシアにはまだアフトVAZや中国のHavalも操業しているため、これでロシア自動車産業の終焉というわけではないものの、高品質が出現し、労働工程がハイレベルに組織されるようになったのは、まさにロシアに日本の自動車工場ができたおかげだと指摘した。
「これは非常に悲しい話だ。こうした類の工場のおかげでロシアの自動車産業はグローバルな自動車生産のシステムに加わることができていたからだ」
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© Sputnik / Sergey Mamontov
リュドミラ サーキャン
トヨタに続き、マツダもロシアでの生産を終了する意向だ。両社とも、物流チェーンの寸断により、部品の定期供給ができないことを理由に挙げている。マツダとロシアのソラーズ社が折半出資する合弁会社Mazda Sollers Manufacturing Rusは、2012年に金角湾に面したウラジオストクで操業を開始した。
ソラーズ社はこのニュースを認めた上で、マツダの持ち分の買い取りについて交渉中であり、工場は再稼働させて他ブランドの自動車を生産する予定だと語った。ウラジオストクの工場でどのような車の生産が始まるのかは、現時点では不明だ。これまで同工場では、ロシア市場向けにセダンのMazda 6、クロスオーバーのCX-5とCX-9を生産してきた。
マツダ車は、2006年の大ヒット映画『デイ・ウォッチ』で、主人公の女性がMazda RX-8に乗ってホテル『コスモス』の壁を走り抜けたことで、特にロシアの若者の間で人気に火が付いた。
時を経て、マツダにはロシア国内に信奉者、ファンクラブ、レースチーム「Mazda Rally Team」のファンが誕生。ロシアに工場ができたことで、マツダ車はより手頃になり、需要も高まった。現在、ロシアで生産されたマツダ車は、ロシアとEAEU加盟国の約70のディーラーで販売されている。
ロシアでのマツダ車の販売台数は、2019年30,576台、2020年26,392台、2021年29,177台だった。また、2021年の利益は5億8500万ルーブルを超えた。しかし、2022年1月〜8月のロシアでのマツダ車の販売台数は8,537台で、前年同期のわずか半分だ。2022年のマツダ車の販売台数首位はクロスオーバーのCX-5で、6,349台である。
トヨタとマツダのロシアでの生産終了は、本当に部品不足問題が原因なのか。それとも、政治が絡んでいるのか。スプートニクはロシアで最も古い自動車雑誌『ザ・ルリョム』の副編集長でアナリストのニキータ・グトコフ氏に尋ねた。その答えがこれだ。
「政治と直接の繋がりはありません。両工場は部品供給の問題が解決できないという状況にぶちあたり、今年4〜5月以降、あらゆる手段でこの状況を解決しようと試みてきました。両工場が休止していたのはこれが理由です。一方で、部品供給問題は対ロシア制裁によるものであり、この制裁は当然、政治と関係しています」
ニキータ・グトコフ氏は、マツダのロシア撤退について次のようにコメントする。
「ロシアの年間平均自動車販売台数150万台のうち、マツダの販売台数は約3万台です。割合としては少ないものの、評判のいい車です。さらにマツダのロシア工場は野心的な計画も立てていましたが、今はこれも断念せざるをえない状況です。現時点では、ロシアでのマツダ車の販売、ディーラーの今後、アフターサービスがどうなるのかは、まだ決まっていません。3月に日本は600万円以上の自動車のロシア向け輸出を禁止しました。トヨタ車のほぼすべてがこの禁止に該当します。マツダ車は、以前はこの価格を下回っていたのですが、今のロシアでは300万ルーブルを下回る輸入車を見つけることはほぼ不可能です。同時に、ロシア人の支払い能力も低下しています。このニッチを埋めることができるのは中国なのですが、中国の自動車産業は、ロシアの実情に合わせて自動車を極寒仕様にするといった、ルノーや日本企業が組立ラインで行っていたことをする意向はありません。ソラーズ社はマツダの後釜をどこにするのか明言していませんが、地理的な近さを考えると、中国が真っ先に候補に挙がります。ところが、中国はモスクワや大都市にしか需要がないクロスオーバーに力を入れているんです。他方で、ロシアの消費者の多くは、自家用、小口配送用、タクシー用など、安価な車を必要としています。中国にはそのような安価な車種がたくさんありますが、それではマージンを稼げません。ロシア産ブランドでは、ステーションワゴンのLADA Vestaがこれに該当する可能性がありますが、この車種はまだ量産計画が発表されたにすぎません」
ロシアのマツダ・ファンクラブのメンバーであるマリア・コルズン氏は「私たちは皆、このニュースを聞いてとても悲しんでいます」とスプートニクに語った。
「ロシアの自動車市場は今、おそらく歴史上最悪の時期にあります。マツダ車のオーナーたちは、ロシアでの販売は継続されるのか、スペアパーツはどうなるのかを心配しています。一部のパーツは互換品で代替できますが、代替のきかない純正ユニットやパーツもあります。皆、一概に不安を感じています。ロシアで車を持つということは、単に生活を快適にするというだけではないんです。これだけ広大で、こんな気候ですから、車がないと生活は困難です。多くの人にとって自動車は働くクルマであり、多くの家庭を養う糧にもなっているんです」
マリア・コルズン
ロシアのマツダ・ファンクラブのメンバー
モスクワにある販売店『マツダ・タガンカ』の店長であるアレクセイ氏はスプートニクの取材に対し、マツダのモスクワ事務所から何の連絡もないので、営業は通常通り行っていると語った。この販売店にはすべての車種がそろい、売上は毎日あがっている。価格はたしかに上がったが、後になればなるほど入手困難になると懸念する人が多く、皆、自動車の購入を急いでいる。
さらに日産と三菱の2つの乗用車工場でも、組立部品の供給に困難を抱えている。日産はサンクトペテルブルク工場の再稼働を12月末まで見送る。
また、三菱自動車はこれまでにカルーガの工場での生産停止を発表している。
日本の大手トラックメーカー「いすゞ自動車」も部品供給が困難な状況にあり、ロシアでの事業継続に向けてあらゆる可能性を探るとの意向を示している。
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2022年10月13日, 19:03
© Sputnik
タチヤナ フロニ
日産自動車は、ロシア日産自動車製造会社(ロシア日産)の全株式を、ロシア国営の自動車・エンジン中央科学研究所に譲渡する。なぜ日本の自動車大手の指導部が、このような「苦肉の策」を取ると決めたのか、「スプートニク」が経済専門家にお話を伺った。
これは絶望からなのか、あるいは、世界的な西側の大企業やブランドがロシアからの撤退によって、数十億の損失を出し、重要な販売市場を失っている今、最終的に、現在の地政学的状況から、「勝者として抜け出る」ためのものなのだろうか。
雑誌「エクスペルト」の金融アナリスト、アンナ・コロリョワ氏は、日産は実際、最適な選択をしたと指摘する。しかも双方にとって、この合意は歓迎すべきものであるという。
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というのも、今回のロシアとの契約における重要な条件の一つに、6年以内に日産が資産を買い戻すことができるというものが含まれているからだとコロリョワ氏は指摘する。
「日産の決定は、損失を最小限に抑える助けとなるものです。一方、ロシアとロシア経済にとって、これは重要な社会的意義があります。なぜなら、大手企業がロシア国内に残り、雇用を維持することができるからです。一方、別の方法をとっていれば、すべてが日産にとって不利なシナリオになる可能性もありました。それは、株が、もっとも不利な条件で、国有化される、あるいは新たな所有者に譲渡されるというものです。そうなれば、日本側は、急いでロシア市場から撤退した多くの企業のように、はるかに多くを失うことになったでしょう。失うのは企業だけでなく、積極的に他のアジア諸国に奪われつつある巨大な販売市場もです。中国もその一つです。しかも、経済の自動車部門は、もっとも競争が激しいものの一つです。ですから、日産がロシアに戻ってくるとすれば、ロシア市場において自らのシェアを占めるために、大きな努力が必要となります」。
というのも、自動車は、長期にわたって使用する製品であり、多くの家族が5年あるいは15年使用するために自動車を購入するものだからである。しかし、ウクライナ紛争が終結すれば、日本の企業は、撤退した地位を再び取り戻そうとするだろう。ただし、日産にとっての大きな問題は、具体的にどのような条件(変わってしまった現実の中で)でそれを成し遂げられるかということである。
コロリョワ氏は、なぜなら、ウクライナ危機の間に、日本はロシアの非友好国のリストに含められているからだと指摘する。
「ですから日本企業は、ロシアでのビジネスを再開するにあたり、困難に直面する可能性があります。これが、重要な経済部門の日本の企業が、静観の態度をとっている大きな理由の一つです。彼らは企業を維持しようとし、事実上、ロシア政府に譲歩しています。つまり、日本は(ウクライナにおけるロシアの特別作戦に反対であるという)いかなる声明を出そうと、ロシア政府に対し、かなり正しい、注意深い態度をとることを余儀なくされています。これは特に、サハリンのプロジェクトからのエネルギー資源の日本への供給をめぐる状況を見ていても明らかです。この事実から、日本政府は現在、米国や欧州諸国がやっているように、大きな政治的圧力をビジネスに反映させたりはしていません。日本企業は、ロシアに対する制裁の圧力をやや弱める可能性を持っています。少なくとも、少し中断させることができるでしょう。エネルギー分野において、日本政府は最大限にロシアとのパートナー関係を維持しようとしています。日本企業は、この状況を分析しており、日産も同様の路線で、撤退プロセスを少し減速しようとしているのです」。
そうでなければ、日産は、ロシア市場からの撤退だけで、莫大な資金を失うことになる。今回のような形で株を国有にすれば、企業は事実上、ロシアの株式を凍結するだけなのだとコロリョワ氏は結論づけている。一方、自社の株を、似たような形で、一時的な使用のためにロシアの国家機関に譲渡したのは、日産が2社目である(1社目はルノー)。というのも、ルノーにとって、ロシア市場は、製造の規模においても、販売台数においても、(フランス市場に次いで)主要なものだからである。日産はルノーの密接なパートナーであることから(ルノー・日産・三菱アライアンス)、日産がルノーと同様の方法を用いることはロシアでも想定されることであった。日産は、工場以外に、モスクワに販売・マーケティング・センターを所有しているが、これも国営研究所に譲渡される。このように、企業は、活動能力、主なコンピテンシー、生産サイクル、そして雇用を維持することができるのである。
しかしながら、コロリョワ氏は、(ウクライナ危機による情勢により)機能的な困難は残るだろうと指摘する。
「何より、利益の持ち出しに制限が設けられます。これがどのように行われることになるのかはまだわかりませんが、この問題はおそらく解決されるものと思います。というのも、日産との問題は政府レベルで(デニス・マントゥロフ産業貿易相が直接参加して)解決されたからです」。
しかしながら、依然、地政学的情勢は複雑なものであり続けており、日本企業はいずれにしても、一定の損失は避けられないだろう。何よりまず、パートナー国に対し、常にロシアへの制裁を強めるよう求める米国から日本への圧力によるものである。他方、日本は、抑制された「アジア式」のやり方で、最低限の損失で、この状況から抜け出そうとしている。ロシアにある日産の工場を維持することはまさに、ロシアから完全撤退した場合に日本と日本経済が被りうる損失を最低限にするための戦略の一部なのである。
日産 オピニオン 経済 露日関係
(投稿者より)
自動車は日本製造業の主力産業ですので、日本車メーカーが立て続けにロシアでの現地生産を止めたことには象徴的な意味もある思います。
ただ、日露間の中古車貿易は安定しているようですので、紛争が終わるのを待つことになりそうです。