トランプ政権が突然、国家安全保障会議の『2018年インド太平洋戦略枠組み』を機密解除した (Sputnik International)[2021.1.15]

トランプ政権が突然、国家安全保障会議の『2018年インド太平洋戦略枠組み』を機密解除した (Sputnik International)[2021.1.15]









(Trump Administration Unexpectedly Declassifies NSC's 2018 Indo-Pacific Strategy Framework)

https://sputniknews.com/asia/202101151081783213-trump-administration-unexpectedly-declassifies-nscs-2018-indo-pacific-strategy-framework/





トランプ政権が突然、国家安全保障会議の『2018年インド太平洋戦略枠組み』を機密解除した







©Flickr /米国太平洋艦隊

© Flickr / U.S. Pacific Fleet





アジア・太平洋





2021年1月15日 22:44GMT



記者 モーガン・アーチュキナ






昨年米国国務省は、今後数十年に及ぶ中国との闘争についての青写真を発表した。これには、米国の社会・教育・文化の方向性をこの目標に向けて定め直すことが含まれる。かつて機密扱いされていたこの文書は、今度は中国社会を内部から弱体化させる計画を示している。





トランプ政権によって先頃機密解除されたこの重要な機密戦略文書には、インド太平洋地域における優位を維持するための米国のアプローチについて、国家安全保障会議(NSC)の私的な考えが明かされている。興味深いことに、この文書には2042年12月31日まで機密解除されるべきでないと明確に記載されており、ごく僅かだが黒塗りされたままの箇所もある。





『インド太平洋に対する合衆国の戦略的枠組み』と題された国家安全保障会議による2018年2月の文書は、国防総省によって公に発表された2019年6月の『インド太平洋戦略報告』とは明らかに異なる。




機密解除された文書と共に公表された声明の中で、退任間近のロバート・オブライエン国家安全保障担当大統領補佐官は、この文書は「世界で最も人口が多く経済活動の盛んな地域の中で2017年国家安全保障戦略を実施するための包括的な戦略の指針を示した」と述べた。



国家安全保障戦略を受けてその僅か数週間後に作成されたこの非公開の『枠組み』と、その1年半後に一般に公開された報告書を比べると、トランプ政権の優先事項でも公に述べたものと私的に認識したものとの間には不一致が認められる。





ロシア:悪意ある行為者か、境界的プレーヤーか?



いずれの文書も、この地域における米国の覇権に対する主要な脅威として先ず中国を挙げており、『枠組み』では「中国は優位に立つために国際的な規則や規範を回避するだろう」と述べている。





しかし、公開された『戦略報告』では、ロシアは「モスクワの戦略的利益を前進させようとする一方で、米国の指導力と規則に基づく国際秩序を弱体化させる」「復活した悪意ある行為者」と記載されているが、『枠組み』によると、NSCの参加者たちは非公開の場では、「米国・中国・インドと比較して、ロシアは境界的なプレーヤーであり続けるだろう」と互いに語り合っている。




実際のところ、『枠組み』が取り上げるのは地域における米国の国家安全保障における次の3つの問題のみだ。





  • インド太平洋地域における米国の戦略的優位性を維持しつつ、中国が新たな非自由主義的な勢力圏を確立するのを防ぎながら自由な経済秩序を促進し、地域の平和と繁栄を促すための協力分野を育成するにはどうすれば良いか?

  • 北朝鮮がもたらす脅威の大きさと種類について現在の差し迫った危険と将来の変化の可能性の両方を明らかにして、同国が米国とその同盟国を脅かさないようにするにはどうすれば良いか?

  • 公平で互恵的な貿易を促しながら米国の世界経済の指導力を増進させるにはどうすれば良いか?




機密解除された『枠組み』の率直さを考えると、いくつかの割愛箇所がはっきりと分かる。




例えば、「この戦略の最終状態に貢献するための日本・韓国・豪州の能力と意志を強化する」方針について概説する節の中で、リストの最初の行動は黒塗りされている。さらに、「行動」についての複数の節で、「インドの台頭を加速させる」方針の中に、および、「南アジアの新興パートナー諸国の能力を強化する」ことについての節の中に黒塗りが見られる。





南シナ海と台湾を守る



中国への対抗について述べられた『枠組み』の最大の節では、他の箇所で述べられている中国の軍事力に対して取られると予想される姿勢について多く示されている。これには、「紛争の際に『第一列島線』の内側で中国に持続的な空と海の優位を与えない。つまり、台湾を含む第一列島線諸国を守る」ことや、「第一列島線の外側の全ての領域で優位に立つ」という野心的な目標が含まれる。その箇条書きの最後の部分は黒塗りされている。







第77海上攻撃ヘリコプター飛行隊(HSM-77)「セイバーホークス」に配備されたMH-60Rシーホーク1機が、米国で1隻だけ前方展開し南シナ海で作戦遂行中の空母USSロナルド・レーガン(CVN 76)の飛行甲板から離陸する。





第一列島線」とは、北はカムチャツカ半島から南はマレー半島まで延びるアジア東海岸沖の一連の島々を指す中国側の用語だ。台湾と南シナ海がこれに含まれるが、北京はこの双方について領土の主権を主張し、ワシントンや地域の他の同盟国がこれに反対している。中国が掲げる軍事目標にはこの地域の軍事的優位を確立することや、米軍がこの線の外側で安全に行動する能力を拒絶することにより、この線を越えて進出することが含まれる。




米国と北京との関係正常化には、台湾が中国本土の一部であるという北京の立場に同意することが含まれているにも係わらず、トランプ政権はこの数年間に亘り台湾への武器供与に数十億ドルを注ぎ込んできた。また、米国は係争中の中国による領土の主張を無視して複数回の大規模な軍事演習と「航行の自由作戦」を実施し、南シナ海における活動を強化した。





中国の反体制派を支援する



それでも、資金提供やその他の方法で反体制派に能力を与えることにより、中国の権威を弱める計画については、あまり述べられていない。



「影響力を維持しつつ中国の統治モデルの効力を消すために、地域全体に米国の価値観を促す」という方針は、「地域全体の活動家と改革者を支援する」ことを米国に求めている。後ろの方の「『中国』の威圧的な態度について個人・機関・政府を『教育する』」節で、『枠組み』は米国に対して、「中国の人々との間の検閲を通さないコミュニケーションを促す[…黒塗り…]能力に投資する」よう勧告する。







機密解除された米国国家安全保障会議による『2018年インド太平洋に対する米国の戦略的枠組み』からの抜粋。米国の価値観を促すために地域の活動家を支援することについての節が示されている。







機密解除された米国国家安全保障会議による『2018年インド太平洋に対する米国の戦略的枠組み』からの抜粋。「中国の人々との間の検閲を通さないコミュニケーション」を促すことついての節が示されている。





この文書は2018年に書かれたが、その後の2020年6月、香港での大規模な抗議活動を受けて北京が新しい国家安全保障法を施行した。この抗議活動の間に、この運動の主要な団体と指導者がCIAの支援する全米民主主義基金を経由して、広汎な接触と支持を米国から得ていたと言われる疑惑についてスプートニクは報じた。そのような財政支援を禁止する新しい安全保障法が可決されてから僅か数日後、香港で最大かつ最も影響力のある反体制派団体・デモシストは、インターネットにおける公式な活動の殆どを中止した





米中:2つの「政治経済システム」間の紛争



『枠組み』機密文書は、「両国の政治経済システムは性質と目標が相容れないため、米国と中国の間の戦略的競争は続いていくだろう」と述べている。



しかし、『枠組み』が拠り所とする『国家安全保障戦略』は、北京が「米国をインド太平洋地域から退去させ、国家が主導する自国の経済モデルの範囲を拡大し、自国に有利なように地域の秩序を再編しようとしている」ため、中国との間で「大国間競争」が復活したと述べている。2017年12月に大統領府が発行した同文書は、『枠組み』機密文書を書いた政府機関・NSCの要請に基づき、ナディア・シャドロー国家安全保障担当副補佐官(当時)がその大部分を書いた





国防総省は公式の場で、中国はその指導者の選択のために米国の国益に対する脅威であると言っていたが、NSCは非公式の場で、紛争は冷戦の形態を取る資本主義と社会主義との対決であり、いずれか一方が敗北するまで続くだろうと率直に述べていた。




この結論は、米国国務省が中国を孤立・弱体化させるための数十年に及ぶ闘争の青写真を公表したことを受けた、2020年11月から機密解除を受けた別の文書を補完している。これは冷戦中に米国の対ソ政策に影響を与えた「ケナン長文電報」と強い類似性を持っていると、その時にスプートニクは報じた。この文書は、海外の友人を獲得しようとする北京の試みを抑えるよう求めただけでなく、教育・文化・公共サービスを含む米国の諸機関に対して、中国を敵と見なさねばならない理由を米国の一般市民や諸組織に教え込む方向に転換することを優先させた。





北朝鮮



大韓民国DPRK)との関係についての節の大部分は黒塗りになっているが、平壌核兵器を放棄するよう説得することについての節の中の箇条書きの一部には、「[…黒塗り…]これを行うには:(1)韓国と日本に対し高度な従来型軍事力の獲得を支援する。(2)韓国と日本を互いに近づける。[…黒塗り…]。」と述べられている。





『枠組み』が書かれた時期が重要だ。2018年2月には米国と北朝鮮との関係が特に敵対的だったからだ。その僅か数か月前、ドナルド・トランプ米大統領は、この社会主義国弾道ミサイル計画と熱核兵器実験を止めなかった場合には、「炎と怒り」で脅すと表明した。






機密解除された米国家安全保障会議による『2018年インド太平洋に対する米国の戦略的枠組み』から北朝鮮についての節





『インド太平洋枠組み』が書かれた時までに、平壌は双方についての一方的なモラトリアムに合意したが、その後2018年と2019年に行われることになるソウルとの歴史的な和平交渉とワシントンとの非核化交渉はまだ始まっていなかった。これらの対話では、北朝鮮の指導者・金正恩氏が、米国が同国を締め付けている経済制裁を終わらせる代わりに、これらの兵器計画を終わらせるための大きな一歩を踏み出す意欲を示した。トランプ政権はこれを拒否し、交渉はすぐに行き詰まった。





インドをめぐる「不一致」



また、2つの文書におけるインドの位置付けも異なる。公開された『戦略報告』では、インドは米国が協力を拡大する必要のある地域の小国に分類されている。しかし、2018年の『枠組み』機密文書では、インドは更に目立つように取り上げられている。





ディプロマット誌によると、『枠組み』機密文書は、米国が地域を支配するためのワシントンの計画のための道具として存在するだけでなく、「多極的世界における多極的アジア」を好むナレンドラ・モディ印首相の政権による長年の国家戦略の枠組みと「明白な」不一致を示している。




東南アジアと太平洋諸島についての最後の節は、「ビルマ民主化への移行」を促進・支援する方針を含め、大量の黒塗りがある。





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