イギリスで「対日戦勝利の日」75年式典 国立記念植物園で2分の黙とう (BBC NEWS JAPAN)
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イギリスで「対日戦勝利の日」75年式典 国立記念植物園で2分の黙とう
2020年8月16日
PA Media
退役軍人や家族が、「対日戦勝利の日」75年の記念式典で黙とうした(15日、英中部スタッフォードシャー国立記念植物園)
日本の降伏によって第2次世界大戦が終結してから75年を記念する式典が15日、英中部スタッフォードシャーにある戦没者追悼の国立記念植物園で行われた。チャールズ皇太子が、2分間の黙祷(もくとう)を先導した。
後に皇太子の長男、ウィリアム王子がBBCの終戦番組で国民に向かって、「過去の教訓を学ぶ」よう呼びかけた。
またエリザベス女王は、「とても果敢に戦った」人たちに感謝するメッセージを発表した。女王は、「極東戦線が終結した時のことを覚えている私たちは、その知らせを海外で任務中に知った人も、故郷で知らせを待っていた人も、あの時の歓喜にあふれる光景と、圧倒的な安堵の気持ちを決して忘れません」と振り返った。
チャールズ皇太子は、スタッフォードシャーの国立記念植物園で開かれた式典に、カミラ夫人と出席。日本軍による強制労働で多くの連合軍捕虜が犠牲になった、クワイ(クウェー)川鉄道(泰緬鉄道)工事の犠牲者をしのぶ慰霊碑に、花輪を捧げた。
数人の退役軍人とその家族が、庭園内に社会的距離を保ちながら配置されたベンチに座り、式典に参加した。
式典の一環として、イギリス軍とナチス・ドイツ軍の空中戦「バトル・オブ・ブリテン」を記念する編隊飛行が、植物園の上空を通過した。
国立記念植物園で終戦記念式典が行われた
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慰霊碑に花輪を手向けるチャールズ皇太子
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退役軍人たちと話すチャールズ皇太子とカミラ夫人
チャールズ皇太子は、太平洋戦争における退役兵士たちの奉仕は「時代を超えて響き続ける」と演説した。
皇太子は、イギリスでは1945年5月の欧州戦線勝利を大きく祝うあまり、その後もアジア各地で日本軍と戦い続けた兵士や看護師などが自分たちは「忘れられた軍隊」だと不満に思っていたことに触れた。その上で、「確認しましょう。皆さんは忘れられていません。むしろ、私たちは心の底からいつまでも、皆さんを尊敬し、感謝し、大切にします」と強調した。
現場で取材したBBCのジョン・マグワイヤ記者によると、アジア各地で日本軍と戦った約40カ国の連合軍の多様性を浮き彫りにする式典だった。英ウェールズやスコットランドの部隊代表の横には、英陸軍のグルカ兵やシーク教徒兵の代表が並んだ。インド楽器シタールの演奏や、南アジア系イギリス人俳優の朗読もあった。
式典に出席したボリス・ジョンソン英首相は黙祷に先立ち、「The Exhortation(奨励)」として知られる、戦争詩人ローレンス・ビンヨンによる1914年作の詩「For the Fallen(倒れし者のため)」の一節を朗読した。
「(戦場で倒れた人たちは)年をとらない、残された自分たちは老いていくが(中略)あの人たちを忘れない」という一節を朗読した首相は、「平和と繫栄」の回復のために戦った人たちに感謝した。
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戦没者を追悼するけしの花束を手向け、「(戦死者は)年をとらない」と詩の一節を朗読したジョンソン首相
このほか、BBCが15日夜に放送した終戦特番では、ウイリアム王子が事前収録された演説で、曽祖父の国王ジョージ6世が1945年8月15日に国民へ向かって演説し、「人類史上最も壊滅的な紛争がついに終わった」と告げたことに言及した。
「その時、対日戦線で勝利した日がどういうものだったか、想像するのは難しい。幸せと歓喜と、ともかくもほっと安心するとともに、深い悲しみや、二度と故郷に帰ることのない人たちに対する圧倒的な喪失感が入り混じった日だったのではないでしょうか」
「今日のこの日に私たちは、ひどい苦しみを耐えた人たちを思い、命を失った全ての人に敬意を表します」と王子は言い、さらに「当時を振り返りつつ、私たちは過去の教訓から学び、第2次世界大戦の恐ろしい出来事が絶対に、二度と繰り返されないよう注意しなくてはなりません」と述べた。
「退役軍人とその家族のためにも、そしてこの後に生まれてくる未来の世代のためにも」
王子はさらに、祖父のエディンバラ公フィリップ殿下(99)が、「解放された捕虜を英軍艦に収容する作業に関わったことを、まざまざと覚えている」と話した。
フィリップ殿下は日本の降伏時、東京湾上の英軍艦ウェルプに海軍将校として任官していた。
番組中のモンタージュで、他の多くの兵士の写真と共に、フィリップ殿下の当時の写真も放送された。
2017年に公務を引退して以来、フィリップ殿下が公の場に出る機会は限られている。
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記念式典で退役軍人たちと歓談するジョンソン首相
式典とは別に、ジョンソン首相は録画した談話で、「第2次世界大戦終戦から75年のこの日に、何千マイルも離れた山や島やアジアの密林で配備された英雄たちをたたえます。欧州での勝利を祝うことができず、帰還が最後まで遅れたこの人たちについて、困難を前に平和に平和と繫栄を復活させたその勇気と才覚をたたえます」と述べた。
東アジアで戦った退役兵士たちに首相は、「皆さんの帰国は最後になってしまいましたが、今の活気あふれるアジア各地で首都は輝いています。そこに皆さんに業績を見ることが出来ます。皆さんの後に生まれた私たち全員が、困難のさなかでの皆さんの勇敢の恩恵を受けています。記念日のこの日、そして今後毎日、皆さんを忘れません」と強調した。
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終戦を記念して北アイルランド・ベルファスト上空を飛んだ編隊飛行
イギリスでは、1945年8月15日は「VJ Day」もしくは「日本に対する勝利の日」と呼ばれる。
イギリス軍にとって対日戦は、数万人の兵士が日本軍の捕虜収容所で苦しむことになるなどイギリス軍史の中でも特に厳しい戦争経験となった。
対日戦線ではイギリスと英連邦の約7万1000人が戦死したほか、日本軍の捕虜として1万2000人以上が死亡したと推定されている。
日本の側では、250万人以上の兵士と民間人が死亡したとみられている。
欧州戦線は1945年5月に終結したが、日本は徹底抗戦の方針を示し、連合軍と日本軍の戦闘は東アジアで8月まで続いた。
7月末には米英中3国が日本に対する降伏勧告(「ポツダム宣言」)を発表したものの、日本はこれを受諾しなかった。アメリカは日本に降伏させることなどを目的に、広島と長崎に原爆を投下。推定21万4000人が死亡した。
15日には昭和天皇が国民にラジオ放送で降伏を発表した。
この日の75周年に日本では、安倍晋三首相が全国戦没者追悼式で「戦争の惨禍を2度と繰り返さない」と誓った。その一方で、極東国際軍事裁判(東京裁判)で戦争犯罪人とされた戦争指導者を合祀(ごうし)していることなどから、議論の的となっている東京の靖国神社に、安倍氏は私費で玉串料を奉納した。
靖国神社には15日、安倍内閣から閣僚4人が参拝している。
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ロンドンの戦争記念碑「セノタフ」にも、花輪が捧げられた
ビルマ戦線で従軍したサー・トム・ムーア退役大尉(100)は、8月15日は「一番特別な日」だと述べ、記念行事に参加するようイギリス国民に呼びかけた。
ムーア大尉は4月初め、新型コロナウイルス対策の最前線で働く人たちを支援するため、1000ポンドを募るキャンペーンを開始。4月30日の100歳の誕生日までに自宅の庭を100往復すると宣言した。歩行補助器を使いながら庭を往復するその姿が注目され、3200万ポンド(約43億円)以上が集まった。
「この日(VJ Day)になって、全ての戦線で和平が宣言されて初めて、戦争の苦しみがついに消え始めることができた」
「少し手を止めて、この日に思いをはせていただくよう、イギリスの皆さんにお願いします。全員が手を止めて、考えて、感謝しなくてはなりません。男女を問わずあれほど勇敢な人たちがかつて、究極の犠牲を払わなければ、たとえ今のこの困難な時でも、私たちが今のような自由を享受することはなかったので」
(英語記事 VJ Day: UK commemorates 75th anniversary as royals lead tributes)