米国務長官、香港は「自治失われた」 中国の国家安全法めぐり (BBC NEWS JAPAN)

国務長官、香港は「自治失われた」 中国の国家安全法めぐり (BBC NEWS JAPAN)









https://www.bbc.com/japanese/52817544





国務長官、香港は「自治失われた」 中国の国家安全法めぐり





2020年05月28日







AFP



アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は27日、香港は高度な自治を維持できておらず、アメリカが認めてきた貿易や投資における優遇特権の継続にもはや値しないと議会に報告した。扇動や破壊行為の禁止を目的とした「国家安全法」を中国が香港に導入しようとしており、そのための議案が28日にも採択されるという現状を踏まえた発言と受け止められている。



中国政府は28日、北京で開いた全国人民代表大会全人代、国会に相当)、反体制活動を禁じる「香港国家安全法」の制定方針を採択して閉幕した。



これに先立つポンペオ氏の報告は、貿易の中心としての香港の地位に大きな影響を与えるおそれがあり、中国の怒りを買う可能性が高い。



ポンペオ国務長官は声明で、「事実を踏まえると、今や香港が中国から独立した高度な自治を維持していると主張できる、道理をわきまえた人は1人もいない」と述べた。



中国が導入をめざす「国家安全法」については、「香港の自治と自由を根本的に弱体化させる(中国の)一連の行動の中の、直近の動きにすぎない」とした。







「香港の将来が心配」「そう簡単に諦めない」 中国の国家安全法導入に抗議





また、「今や中国が自らを香港の手本にしようとしているのは明らかだ」と付け加えた。



香港では27日、国家安全法に対する抗議デモで数百人が逮捕された。





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ポンペオ氏の発言の重要性



アメリカはこれまで、世界的な金融と貿易の中心地の香港に対し、貿易や投資における優遇特権を与えてきた。これは、香港がイギリスの植民地時代から続いてきた。



しかし昨年11月にアメリカで香港人権・民主主義法が成立して以降、香港が十分な自治を維持しているかを米国務長官が定期的に認定することが、優遇特権継続の条件となっている。



国務長官が認定しなければ、米議会は貿易における香港の特別な地位を無効にできる。つまり、貿易やそのほかの目的において、香港を中国大陸と同じ扱いにすることを意味している。



ポンペオ氏は、「本日私は、事実を踏まえると、もはや香港は中国から独立した自治を維持していないと議会に報告した。アメリカは香港の人々を支持している」とツイートした。











優遇特権の取り消しによる影響は



優遇特権が取り消されれば、香港とアメリカの数十億ドル相当の貿易を危険にさらす恐れがあるほか、香港への投資を踏みとどまる人が出てくる可能性がある。



また、香港を世界との取り引きの仲介役として利用している中国大陸にも打撃を与えるだろう。中国大陸の企業や多国籍企業は、香港を国際的あるいは地域的な拠点として利用しているからだ。



ポンペオ氏の報告からほどなくして、著名な民主化活動家の黄之鋒(ウォン・ジーフン、ジョシュア・ウォン)氏はアメリカや欧州、アジア諸国の首脳に対し、中国が国家安全法を導入した場合にはポンペオ氏に続いて、貿易における香港の特別な地位を再考するよう求めた。



黄氏は、「国家安全法が施行されれば、香港は中国の権威主義体制に同化させられるだろう。法の支配においても、人権保護においても」と警告した。



さらに、国家安全法は「香港の駐在員や投資家に多大な損害をもたらすだろう」とした上で、香港の自治を維持することがビジネスを守る「唯一の方法」だと付け加えた。





国家安全法とは



中国は、反逆や扇動、破壊行為などを禁止することを目的とした、新しい国家安全法を香港に導入しようとしている。香港で拡大する暴力的な抗議活動に対抗するために必要だとしている。



中国政府に対する反発は昨年、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改定案をきっかけに激しさを増した。この改定案は立法会(議会)での審議が中断された後、最終的に正式に撤回された。







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香港・九龍半島中部の繁華街、旺角(モンコック)で抗議する人々(5月27日)



香港はかつて、150年以上にわたってイギリスの植民地だった。






イギリスと中国は1984年に、「一国二制度」の下に香港が1997年に中国に返還されることで合意した。香港は中国の一部になるものの、返還から50年は「外交と国防問題以外では高い自治を維持する」ことになった。



国家安全法をめぐっては、「一国二制度」を支える「香港特別行政区基本法」で定められている自由を奪うための直接的な試みだと批判の声が上がっている。



国家安全法は28日に採決が行われ、早ければ6月末には法として施行されることになる。



香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は25日、この法が香港市民の権利を制限することはないと述べた。



世界各国の200人もの政治家グループは、中国の計画を批判する共同声明を出した。



ドナルド・トランプ米大統領は26日、中国が国家安全法を強行導入すれば、今週中にも中国への「非常に強力な」対抗措置を発表すると述べた。ポンペオ国務長官も22日、この法は香港の自由に「死を告げる鐘」になると非難している。



イギリスやオーストラリア、カナダも「深い懸念」を示している。








<解説>香港に対するアメリカの「最終兵器」が中国政府を激怒させる――ザオイン・フェン、BBCニュース中国語(ワシントン)





今回のポンペオ氏の報告は、香港に対する優遇措置が危うくなっているという、中国政府への警告だ。



優遇措置が取り消されれば大きな経済的影響が出るが、地政学的な影響の方がずっと大きいかもしれない。恐らく中国政府からの反発が起きるだろう。それに、貿易や新型コロナウイルスパンデミック(世界的流行)、技術戦争をめぐる緊張が急激に悪化しているとみられる、すでに脆弱(ぜいじゃく)な米中関係をさらに危険にさらす可能性が高い。



香港への優遇措置を取り消すことが、自治や自由を求めて戦う香港人にとって助けになるのか。それとも、中国に対して限定的な戦略的影響力を持つ一方で、香港の人々を主に痛めつけることになるのか。それが重要な問いになっている。





(英語記事 HK 'no longer autonomous from China' - Pompeo





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