アメリカの4月の失業率、世界恐慌以降で最悪の14.7%に 米労働省雇用統計 (BBC NEWS JAPAN)

アメリカの4月の失業率、世界恐慌以降で最悪の14.7%に 米労働省雇用統計 (BBC NEWS JAPAN)









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アメリカの4月の失業率、世界恐慌以降で最悪の14.7%に 米労働省雇用統計





2020年05月9日







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米金融の中心地ニューヨークも新型コロナウイルス感染のホットスポットの1つ(タイムズスクエア、5月7日)






新型コロナウイルスの感染拡大で経済が壊滅的な打撃を受けているアメリカの4月の雇用統計が8日に発表され、失業率は14.7%と、1930年代の世界恐慌以降で最悪の水準となった。



労働省がこの日に発表した雇用統計によると、アメリカの4月の失業者数は約2050万人。



新型ウイルスのパンデミック(世界的流行)が始まって以降、アメリカは過去10年で最悪の経済成長率と、史上最悪の小売売上高に見舞われている。



わずか2カ月前の失業率は3.5%と、約50年ぶりの低水準だった。



米労働統計局の元局長で、現在はコーネル大学産業労働関係学部で教えるエコノミストのエリカ・グロシェン氏は、「歴史的にみて前例のないことだ」と指摘する。「米経済がパンデミックから回復できるよう、人工的にこん睡状態に導入したようなものだが、(中略)これほどの急激な失業増加につながってしまった。現代のどの指標で見ても、これほどの急激な変化はない」。





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雇用統計によると、あらゆる経済分野で落ち込みが見られる。特にレジャーや接客業が打撃を受けており、同分野の労働者は約770万人(47%)減少した。教育や医療サービス分野では約250万人分、小売業では約210万人分の雇用が削減された。



労働省によると、いま仕事のない人の4分の3が一時帰休レイオフ)中だと回答。このことから、失業中の多くが、経済が回復できると期待していることがうかがえる。



しかしエコノミストたちは、パンデミックによって経営方法の根本的な変更が強いられるだろうと警告する。たとえば、レストランは一度に入れる客の数を制限することになるかもしれない。その場合、必要な従業員の数は減ってしまう。そして、経済活動の停止が長引けば長引くほど、各事業が生き残れなくなる可能性は高くなる。



「事業が立ち行かなくなったり、労働者数や労働者の種類を変える必要があるようなビジネスモデルへと劇的に変更する必要が出てくれば、今は一時帰休でも、いずれ解雇に至る可能性がある」とグロシェン氏は指摘する。







アメリカでは過去6週間で3300万人以上が失業保険給付の申請をしている (出典:米労働省労働統計局)





経済危機はアメリカに限った話ではない。イギリスでは、イングランド銀行中央銀行)が史上最悪の景気後退になると警告している。



一方カナダは8日、先月の失業率が5.2ポイント上昇して13%になったと発表した。カナダ統計局は、労働者人口の約3分の1が失業あるいは労働時間が通常の半分以下になっていると推定した。



ドナルド・トランプ米大統領は米フォックス・ニュースに出演し、国内の失業者数約2050万人という数字は「完全に想定内」で「意外ではない」と受け流した。



雇用統計の発表を受け、トランプ氏は「民主党でさえ、それで僕を責めたりしない。自分にできることは、雇用の回復だ」と述べた。



しかし、米衣料大手「Jクルー」や米高級デパート「ニーマン・マーカス」といった複数の小売業者がすでに連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請している。



新型ウイルスの感染拡大によりエネルギー需要が落ち込み、原油価格が下落するエネルギー分野の多数の企業も厳しい状況にある。







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黒人労働者の失業率は16.7%に跳ね上がり、2010年以降で最も高い割合となった






いくつかの州ではすでに規制緩和が始まってはいるものの、経済活動を再開するのは難しそうだ。労働者は感染のリスクを恐れているし、学校閉鎖の影響にも対応しなくてはならない。



3月から在宅勤務をしていたニューヨークの司法助手、ターニャ・ニコラエフスカヤ氏は先月、一時帰休を命じられた。





「これからどうなるのか、よく分からない」



ニコラエフスカヤ氏にとって、今の雇用主は理想的だという。それだけに復職を希望しているがは、持病があるだけに感染への不安がある。また、8歳の娘がいるシングルマザーのため、学校が再開しなければ育児支援が必要だ。



「すべては育児支援があるかどうか。(中略)育児支援がなければ、仕事に復帰できない」







労働人口のうち、仕事をしていない人の割合。点線より左側がオバマ前政権時代、右側がトランプ現政権 (出典:米労働省労働統計局)





仕事をしているあるいは仕事を探している人数は先月、2.5%減少し、1970年以降で最低水準となった。一方で、労働時間が短縮された、あるいはフルタイムの仕事を見つけられないと報告する人の数は2倍近く増加した。



労働省は、雇用されてはいるが「仕事を休んでいる」と回答した人の数が急増していることから、予測よりも状況が悪化する可能性があると警告。これらの回答を含めると、失業率は20%近いとしている。



黒人労働者の場合は失業率は16.7%に跳ね上がり、2010年以降で最悪になった。ヒスパニックの失業率は18.9%に急増、白人の失業率は14.2%だった。



全体としては、失業率は統計を取り始めた1948年以降で最悪の水準で、ひと月での増加幅は1939年以降で最大だった。



クロース・ブラザーズ・アセット・マネジメントの投資サービス責任者のロバート・アルスター氏は「いかに大変な事態か、強調しきれない」と述べた。





(英語記事 Pandemic sends US jobless rate to 14.7%





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