ウラジーミル・プーチン大統領の特別記者会見 より:日本「共同通信」杉崎洋文記者(在日ロシア連邦大使館)

ウラジーミル・プーチン大統領の特別記者会見 より:日本「共同通信」杉崎洋文記者(在日ロシア連邦大使館









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ウラジーミル・プーチン大統領の特別記者会見 より:日本「共同通信」杉崎洋文記者











杉崎洋文記者: いまわれわれが懸念としているところにつきまして、大統領閣下がアメリカに対しモラトリアムの維持などを呼びかけ、少なくとも現状維持を図っていらっしゃることはよく理解しておりますが、同時に鏡合わせの対応をされるとも発言されています。これは恐ろしい事ではないでしょうか。核戦争に勝利を求めることは、あってはならず、道義的にも非常に悪いことだと考えます。閣下はどのようにお考えでしょうか。 



技術や軍備を定期的に更新することは必要だと思いますが、同時に十分な理性という概念も存在します。閣下は、戦略的バランスを保つため、この概念を維持することができるでしょう。近い将来、閣下は包括的な平和イニシアティブを主導されるのではないかと考えています。これを広島から発するということは、お考えになられているでしょうか。



私は日本を代表しておりますので、これを聞かないと皆さんに叱られます。最近、平和条約交渉が行き詰まっており、その原因のひとつに、ロシアが日米安保条約に関する懸念を示していることがあります。この件については、一度ならず閣下からの発言がございますので、繰り返しというか、詳細については省かせていただきます。最近、INF(中距離核戦力全廃条約)が失効し、これが両国の関係にも影響しておりまして、というのも、閣下はアメリカと日本が当該種の弾道を日本国内に配備することを協議していると発言されています。また一方では、ソチで、中国に対しユニークな早期ミサイル探知システムの導入を支援されていると発言されています。ここからわれわれは、軍事同盟とはいかなくても、ロシアと中国との間で、お言葉を借りれば、軍事技術分野での緊密な同盟的な関係があるのではと思わされます。北東アジアにはすでに、一方の側に日本・米国・韓国、もう一方にロシアと中国という、ブロック対立が形成されつつあるということでしょうか。



かかる状況下、両国つまり日本とロシアは、将来平和条約を締結できるよう、相互理解、相互信頼にむけて妥協点を見いだすことができるでしょうか。よろしくお願いします。





V.プーチン: まず、日本と米国の軍事協力についてお答えします。ご自分の質問に、ご自身で回答されたかと思います。米国が日本と中距離弾道の配備を合意しつつあるとは、われわれが言ったわけではありません。そちら側、アメリカのソースからの情報です。ですが、われわれはこれを考慮しないわけにはいきませんよね。「島」の話しにおいてもです。明日、これらの島に、アメリカの新型攻撃兵器が登場しないという保証が、わが国にあるでしょうか。そんな保証が、どこにあるでしょうか。ですがこれは、われわれの話し合いの対象にはなりません。初歩的な形式上のロジックが示していると思います。



そんな中で、解決策を見いだすことができるかどうかについて。できます。そして、日本のいまの首脳とその作業をしています。私たちの関係には善意と信頼があり、詳細に、かつ、腹を割って、お互いに話し合っています。解決策が見つかったかどうかについて。まだ見つかっていません。では、何が一番大事でしょうか。一番大事なのは、これもお話ししましたが、解決を見いだす意思があるということです。解決は、いろいろな姿が考えられます。いつかお話しした通り、また、日本の友人の皆さんにも好評でしたが、柔道の用語をつかえば、「ヒキワケ」つまり、誰かが勝つというものではない、そういった形であるべきです。



ですが、世間が納得するような形で、そういった解決が見いだせるかどうか。70年探しているものの、今のところ見つかっていません。しかし、今後もこの方面で動いていく用意があります。



同盟関係についてお答えします。中国との軍事同盟というものはなく、その予定もありません。東アジアの、他の国がそういう軍事同盟を作ろうとしていることは、ご質問にあったアメリカ、日本、韓国の動きについては、われわれはそれを目にしており、非生産的で、良い結果をもらたさないと考えています。



ですが中国との協力関係については、防衛技術のそれも含め、発展しています。今日の中国は、ハイテクを誇る国となっていますが、個々のプロジェクトの実現にあたっては、時間それも長い時間を必要とする課題もあります。中国にも、単独で早期ミサイル探知システムを構築する能力はあるでしょう。しかしロシアの支援で、それがより早まることになるのです。これは、われわれの戦略パートナーの防衛能力に、質的な影響をおよぼすものです。



しかしこれは、攻撃システムではありません。ご質問の中で、正しくおっしゃった、これには私も驚きましたが、正しくその名前をおっしゃったんですけれども。これは、ミサイル攻撃の早期探知であり、つまり、攻撃を受ける側に対して機能するシステムです。これが純粋に防衛システムであることは事実で、米国とロシアだけが保有するものです。繰り返しになりますが、あくまで攻撃に向けられたシステムではなく、自国領土を防御することを目的としているシステムなのです。



ではもう一社、BBCからの質問を受け付けましょう。BBCはロシアが大好きですから、ぜひ質問していただきましょう。ええ、ご質問が楽しみです。どうぞ。





日本「共同通信」杉崎洋文記者





私の質問は、残念ながら、両国が締結に向け努力していると理解しておりますが、平和条約に関することになります。シンガポールでの会談後、閣下と安倍首相とは、1956年ソ日宣言に基づき交渉プロセスを加速させることを合意されましたが、日本の社会は 、島をいくつ手にすることができるのかという点にのみ、関心を寄せています。ゼロになるのか、二、三、四なのか、わかりません。また一方では、ロシア人も理解に苦しんでいると理解します。つまり主な意見として、「なんで差し出さなくてはならないのか?」。いろいろな方から、また脅迫めいた言い方も含めまして、「土地のひとかけらさえ返さない」などと伺っております。つまりわれわれがなすべき領土の分割に関することです。しかし新しい条約、平和条約がこの、領土分割だけのためになるとしたら、物足りなくつまらないものになるでしょうし、両国民、世間が理解するでしょう 。両国の関係を新しいものにする、質的に新しい段階に引き上げるためには、どのような新しい考え方、観点を織り込んでいくべきだとお考えになりますか?



また、これに関係しまして、どうしてもお聞きしたいことがございます。最近、ロシア側は、閣下も含めまして、安全保障の問題を取り上げています。具体的には、日本に島を引き渡す場合、アメリカの弾道防衛システムおよび可能性として米軍や軍事インフラをを日本に配備することについてです。専門家レベルでの交渉は行われていますが、防衛に関することであり、日本はほぼ完全にアメリカに頼っています。これらの問題を二国間ベースで解決可能なのか、それとも、米国との直接交渉になるのか、いかがお考えでしょうか。よろしくお願いします。





V.プーチン: 忘れないうちに、最後のほうからお答えします。安全保障の問題は極めて重要であり、平和条約の締結においても同様です。アメリカの軍事インフラが日本に配備されることについて触れられましたが、沖縄には昔から、知る限り何十年の単位で、最大の米軍キャンプが存在しており、すでに配備されているのです。



日本がこれらの解決に参加していく可能性についてですが。これは、われわれにはわからない、閉じられた部分です。われわれは、このような決断にあたって、日本がどれだけ主権をもっているのか、把握していません。他の人より誰よりもご自身がよくご存知かと思いますが、私も存じておりますけれども、沖縄県知事が基地を強化し拡大するという一部の決議に反対だということです。反対はしているけれども、何をすることもできない。沖縄に住んでいる人々も、反対しています。



回り道をするまでもなく、世論調査をしても結果はわかりきっていますし、また人々が通りに出て基地をなくすよう主張してもいます。少なくとも、同地に既存のアメリカ軍事力の空軍能力の強化には、反対だということです。しかし強化発展プランは存在します。誰も賛成していないのに、物事は進みます。



平和条約の締結後何が起きるのかは、誰にもわかりません。しかしこの質問に答えることなくして、根本的な解決をとることは非常に難しくなるでしょう。そしてもちろん、対弾道防衛システムの配備には懸念を持っています。米国に対しても何度も申し上げていますが、ここで繰り返しますと、われわれはこれが防衛力というより、辺境におけるアメリカの戦略核潜在能力の一部だという風に受け止めています。そしてこれらシステムは同時に、攻撃複合システムと連動して機能するものです。



ですからここで、幻想は不要であり、われわれは全て理解します。しかし、これらを理解しつつも、平和条約の締結に向け努力し、真摯に努力していくつもりですが、それは私自身、また、安倍首相もまた同じ思いでいらっしゃいますが、現状が正常ではないとの信条があるからです。日本も、ロシアも、両国関係を完全に調整することに関心を持っており、それは日本からの経済的な何かがロシアに必要だからという理由からではないのです。ロシア経済はまあまあ発展していますから。



今朝、オレシュキン経済発展大臣から、訪日の成果について報告を受けたばかりです。前進の動きはあり、輸出や、日本市場で鶏肉を含むロシアの肉製品が解禁となることで合意したと聞きました。ですのでいずれにせよ動きはあり、動いていく方向になるのは自明の理です。しかし総体的に正常化というものは、ロシアにとっても、日本にとっても非常に重要です。複雑なプロセスですが、同僚の皆さんとこの道を進んでいく用意はございます。





19/12/20