環太平洋貿易協定は日本に利益と不安をもたらすだろう(DW English):阿修羅♪

環太平洋貿易協定は日本に利益と不安をもたらすだろう(DW English):阿修羅♪

http://www.asyura2.com/15/hasan101/msg/441.html











(Trans-Pacific trade deal to bring profit, anxiety to Japan: DW English)

http://www.dw.com/en/trans-pacific-trade-deal-to-bring-profit-anxiety-to-japan/a-18772120





貿易





環太平洋貿易協定は日本に利益と不安をもたらすだろう





環太平洋12ヵ国の貿易・関税協定が10月5日に署名されたことに、日本の最先端の自動車業界・製薬業界は喜んでいる。しかし、農業分野はこの協定が自分たちの弔鐘になることを怖れている。









安倍晋三首相は12ヵ国が米国の都市アトランタで環太平洋パートナーシップ(TPP)貿易協定に署名した翌日に話をし、この画期的な合意は日本に利益をもたらし「私たちの生活をより豊かにする」だろうと語った。



参加国のGDPの合計が世界の40%を十分に占め、さらに、将来さらに多くの国々の参加を得て拡大する可能性を持つこの協定は、「可能な限りの最大の成果であり国益にも適っている」と首相は語った。



日本国民の大多数とビジネス界は首相の評価に全面的に同意している。TPPの署名直後に実施されたある世論調査では、日本の一般国民の58%がこの協定を支持していると示された。反対は32%に止まった。



TPPは環太平洋の12ヵ国−豪州・ブルネイ・カナダ・チリ・日本・マレーシア・メキシコ・ニュージーランド・ペルー・シンガポール・米国・ベトナム−が参加しており、世界貿易の26%を占めている。協定は広範囲に亘り、参加国間の貿易と投資に対する関税と非関税障壁の撤廃を目標としている。



また、協定には規制緩和や外国投資・知的財産の保護のための共通の基準の実施なども見込まれている。協定は批准を経て、貿易に関する未来の諸協定の模範としての役割を果たすことが期待されている。豪州・シンガポール・カナダなど、TPP交渉に参加した多くの国々が既に米国と自由貿易協定を結んでいる。





自動車分野は協定を歓迎している





日本の強力な自動車業界−国の主要な経済部門であり、協定が最後まで行き詰まった原因の1つとなった分野−は、この発表を熱く歓迎した。



「私たちは政権の発表を歓迎し称賛する」と、日本自動車工業会(JAMA)の国際部門長であるタナカ・マサミ氏は語った。「私たちにはこの協定の影響について正確さを伴ういかなるコメントを出すのも時期尚早だが、加盟企業の貿易がより容易になり、新市場や既存市場で新たな機会を開拓できるようになるのは明らかだ」と、タナカ氏は語った。



日本の製造業者にとって協定の最も重要な要素の1つは、米国が日本車に掛かる2.5%の関税を協定発効の15年後から徐々に引き下げることに合意することだった。関税は20年後に半分になり、25年後に完全に撤廃される。



これに加えて、米国は日本から輸入される自動車部品全体の80%を上回る品目に掛かる関税を撤廃する。一方、カナダも日本車に掛かる6.1%の関税を5年後に撤廃し、さらに、日本から輸入される自動車部品の約90%に掛かる6%の関税も撤廃すると約束した。





日本の自動車業界はこの協定により、他のアジア諸国からの部品調達がさらに自由にできるようになる





トヨタ自動車は声明で、「この協定が自由貿易の更なる発展に貢献することを確信している」と述べた。JAMAは、米国の製造業者もまた日本から大量の部品を購入しているためこの取り決めから利益を受けるだろうとも指摘した。「さらに、フォードやGMの車両がさらに安くなれば、それは消費者にとってもいいことだ」とタナカ氏は語った。



日本の自動車業界はこの協定により、中国などTPP圏外の国々の工場を含めて、他のアジア諸国からの部品調達がさらに自由にできるようになる。なぜなら、自動車の販売先が北米だからだ。「原産地規則」の要件として、自動車1台につきわずか45%をTPP圏内から調達すれば良くなる。つまり、北米自由貿易協定の下での62.5%から減少する。





製薬業界は機会を狙っている





日本の製薬業界もまたこの協定から利益を得ることを確信している。「私たちは、貿易協定は日本の製薬業界にとって好ましいものであると考えており、最終的な協定が私たちの期待通りのものになったことを喜んでいる」と、日本製薬工業協会の鴫原毅(しぎはら・たけし)国際部長は語った。



鴫原氏は、交渉中の段階では知的財産権の問題や国内の医療制度への潜在的な影響をめぐり「業界内にはいくつかの懸念」があったが、これらの懸念は最終的な協定により払拭されたと語った。「私たちは、この協定が国内業界に大きな影響を及ぼすことはないだろうと考えている」と、彼は語った。「さらに、他のアジア諸国ラテンアメリカの事業を拡大できるようになるので、加盟企業にとって良い協定ができたと私たちは考えている。」





日本の製薬業界もまたこの協定から利益を得ることを確信している





革新的な新製品を他国市場により早く投入できるようになるため、日本企業にとってこの協定に不都合な点は何もないようだ。「自動車分野はいまなお日本の貿易の中心的な存在であり、米国市場の関税は既にそれほど高くないものの、部品産業はさらに利益を拡大できるだろう」と、富士通総合研究所のマルティン・シュルツ上席主席研究員はDWに語った。



TPPは安倍氏がより広汎な彼の「アベノミクス」政策の一部として取り組んでいる日本経済の構造改革に巧みに適合している。「いかなる他の参加国とも異なり、ここ日本ではTPPが内政の道具となっている」と、シュルツ氏は語った。「『アベノミクス』の構造改革はTPPに深く結びついている。」



「他の利点として、米国やメキシコでの生産に焦点を合わせたサプライチェーンを、日本企業はこれまで以上に柔軟に構築できるようになるが、生産は今やアジアの他国に移転が可能だ。」それでも、協定による敗者は間違いなく時代遅れな日本の農業分野だと、シュルツ氏は語った。





農民たちの不安





「農協は変わらなければならないが、政府は農協への圧力を強めるための道具としてTPPを使っている」と、シュルツ氏は語った。「政府の話では、価格の変化はゆっくりと段階的に行われるので、私たちが価格戦争を直ちに見ることはないだろうが、管理運営の面で変化が起こるだろうし、また、農業分野での独占が国内の競争を抑えつけてきた現状も変化するだろう。」





日本の農業分野は貿易協定に失望を表明している





農業分野が失望を表明し、農業がどのような影響を受けるかについて緊急警告を公表したのは不可避だった。全国農業協同組合中央会の奥野長衛(おくの・ちょうえ)会長は、米国の輸出規模を考えたとき「厳しい競争」を強いられるだろうと語り、TPPのために「生産者たちに不安と怒りが広がっている」と語った。



それでも、安倍首相は農業分野からの反対を予期していたようで、彼らの不安を和らげる動きを速やかに入れた。農業分野の向上のための諸措置を導入し、また、農業を新たな市場の育成やイノベーションの促進を目指す若い労働者たちにとって魅力的な職業にすると、この政治家は語った。







発表 2015年10月9日

記者 Julian Ryall, Tokyo

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