福島原発の事故に続く、汚染地域における放射性物質の管理:IRSNは状況分析の報告を公表する(フランス放射線防護・原子力安全研究所サイトより)

http://www.asyura2.com/11/genpatu12/msg/115.html











(Gestion radiologique des territoires contaminés à la suite de l’accident de Fukushima : l’IRSN rend public son rapport d’analyse de la situation: IRSN)

http://www.irsn.fr/FR/Actualites_presse/Actualites/Pages/20110523_Gestion_radiologique_territoires_contamines_Fukushima-Rapport_IRSN.aspx





福島原発の事故に続く、汚染地域における放射性物質の管理:IRSNは状況分析の報告を公表する





2011年5月23日





非常に早く、3月21日には、IRSNは事故の展開についての観察に基づき、放射性放出物は「非常に大量」であり、チェルノブイリで生じた放射性放出物の約10分の1の量となり得るとの結論を出した。その後、この評価は否定されることなく、さらに、非常に遠距離の大気中の汚染を測定した結果、次いで、日本当局によって取り上げられた「ソース項」による見積もりによって裏付けられた。



この放出物が関連する期間、風は主に太平洋に向かって吹き、地球規模で好ましい気象だった。それでも、3月15・16日、放出物は現場から北西に向かい、その期間は大量の降雨があり、放射性の雲の高度も非常に低かったことから、高濃度の放射性堆積物が、現場の周囲20キロメートルの避難区域の外側に広がる地域の範囲はもとより、現場の周囲20〜30キロメートルの自宅退避区域の外側にも生成された。



事故の28日後、IRSNは、この放出物が関連する地域の計測線量の見積もりを示す最初の地図を発表している。当時、土壌の放射性堆積物の計測結果がなかったために、非常に不確かなものだったにもかかわらず、この地図は、20キロメートル圏外の地域に住む住民のための放射性物質のリスクに対する管理措置をとることについて、高い必要性をすでに示していた。



事故の66日後である5月16日、日本当局は実際に、3月15・16日に発生した放出の風下に位置する、数カ所の自治体で生活する住民の避難計画を発表した。



この措置は、特に、日本の文部科学省が発表した放射性堆積物の分布地図と、被曝してから最初の1年間に、この堆積物のために被る外部被曝の最大許容限界として、20mSvの数値を設定するという原則の決定に基づいて実施された。



一部の当事者がこの決定の妥当性に異議を唱えているという事実があるのはもちろんだが、IRSNは、同様の状況が発生した場合、フランス当局への勧告を研究するとこのようなものとなり得るに関心を持った。現在有効なテキストによれば、フランス国内で放射能事故が発生した場合、当局に勧告することが当研究所の使命の一つとなり得るからだ。



そういったことから、IRSNは、同じく2011年5月16日に作成した、日本当局が発表した情報に基づいて、日本の放射性物質の状況分析について、報告を公表する。この状況は、後述の形で要約が可能である。放射性放出物による住民の被曝の影響は、全く異なる2つの性質から成り立っているからだ。





半減期の短い放射性ヨウ素の被曝





この被曝の影響を特徴づける甲状腺線量は、息を吸うことや、汚染食料品(新鮮な牛乳や葉物野菜など)の摂取によって得られる。放出後数日間は、ヨウ素がもっとも大きな部分を占めるが、これはヨウ素131の半減期が短い(8日)ためだ。この線量を食い止める唯一の措置は、住民を安全な場所に移し、つまり、前もって避難させ、放出後できるだけ短い期間(最大で被曝後24時間以内)に安定ヨウ素を服用させ、汚染食料品による食料連鎖を断ち切ることである。福島発電所の北西にある、放出の影響を受けた地域では、数カ所で、1平方メートル当たり1000万ベクレルを超える可能性があり、防護措置がなければ1シーベルトを超える甲状腺線量を生じる可能性のある、非常に大量のヨウ素堆積物がある。20キロメートルの避難区域以遠では、実際に使われている防護措置についての詳細な知識がないため、特にこの地域内に居住する子供たちには、ヨウ素131の被曝による計測線量の影響を予測することは不可能である。子供たちにとっての主なリスクは、被曝後数年以内に甲状腺ガンにかかることである。事故から2カ月が経過し、この問題は、もはや被曝リスクの管理を引き上げるのではなく、ただ、実施される個々の計測によって今後示される統計から 実際に被曝した線量を明らかにするための科学的知識を高めるよう求めることが適切である。





セシウム(134・137)、および、他の不安定な放射性化合物





このような汚染地域で生活を続ける住民たちにとって、この被曝は、身近な環境での堆積物によって引き起こされる、外部被曝による線量として表される。これに、主に汚染された食料品を摂取した結果、場合によって生じる、内部被曝の線量が付加される。これらの線量は、1年間の被曝によってもたらされるものは非常に弱いが、数年間蓄積される場合には、公衆衛生リスク管理の対象として考慮される必要がある。



以下の管理措置により、線量の削減が可能である。

−最も汚染された区域から住民を避難させること

−この地域の経済活動に制限を課すこと

−住民(の一部)がそこで生活を続ける場合、住居と移動場所の環境から頻繁に汚染を取り除くこと

−一定の閾値を超える汚染食品を供給ルートから除去するために、農産物を監視すること



これらの措置は、経済的にも、社会心理、つまり、感情的にも、さらに、衛生的にも(例えば、住民を大量移動にかかるコストがそうだ)、すべてコストが高いという特徴を持つ。責任を担う当局が決めなければならない費用見積もりは、国民集団が全体として、放射性物質の防護措置に関連するコストを受容するという点において、住民の一部が持続的に最後まで被り続けることになる、正当とされる線量を評価することにより得られる。



IRSNが発表したこの報告は、これらの措置を効果的に実行するための日程表のような、考慮可能な管理措置に関連する数カ所の地域住民が、できる限り線量を受けずにすむような、見積もりを出すための利用可能な情報を提供するという点から、福島第一原発の現場周囲の状況を分析している。また、この報告は、チェルノブイリ事故の後、ロシア・ベラルーシウクライナの顕著に汚染された地域で、住民が体験した状況との比較を示している。こうした比較は実際に適切なものだ。それというのは、影響する地域はより狭く、影響する住民もより少ないものの、日本の20キロメートル以内と以遠の地域で見られる高い放射能レベルは、ロシア・ベラルーシウクライナの数カ所の地域で認められた放射能レベルになぞらえることが可能である。



結論として、推測される放出物の成分、放出物の地理的分布、関係する住民の多さを考慮し、IRSNは、それ以上の線量では地域からの避難が必要となり得る限界として、セシウム137・134については、60万ベクレル毎平方メートル(最初の1年間で、最大10ミリシーベルトの外部線量に相当する)の閾値を考慮することを提案し得ると、この報告は示している。この措置は、食料品の放射性物質の性質について(基準を遵守して)現在実施中を監視することと、残留放射性物質による被曝に対する自主防護(土壌検査、食品検査)を実地に習得することにより補完され得る。



IRSNの報告書「福島原発事故による放射性物質が降下した、北西地域で生活する人々が被曝した外部線量についての、66日目の評価」ダウンロード





同IRSN報告書・英文版の、当研究所英語サイトからのダウンロード





下の最初の図は、IRSN/DRPH報告書No.2011/010から抜き出したもので、この地方における、福島原発に関連する地域的範囲を示している。下の2つ目の図も、同報告から抜き出したもので、「原子力安全・保安院」(NISA)と文部科学省が管轄する日本当局によって設定された、計画的避難区域と緊急時避難準備区域を示している。



セシウム137・134の堆積(単位:Bq/m^2)と、文部科学省が見積もった線量(単位:mSv)を3つの数値(5・10・20mSv)で区分した図







原子力安全・保安院」(NISA)と文部科学省が管轄する日本当局によって設定された、計画的避難区域(ピンクで囲まれた区域)と緊急時避難準備区域(黄色で囲まれた区域)












(投稿者より)



先日、フランスIRSN(放射線防護・原子力安全研究所)が、福島原発事故の評価を更新した報告を発表していますが、そのプレスリリースとして、IRSNサイトに掲載された文章を、日本語にして投稿いたします。誤訳があるかも知れません。ご容赦下さい。



当の報告書には仏文と英文のものがあります。本投稿のリンクからpdfファイルを読むことができます。日本語訳も、『グリーン・アクション』という市民団体のウェブサイトで読むことができます。下のリンクは要約のページですが、pdfファイルへのリンクがそのページにあります。是非お読みになってみて下さい。



(IRSN報告:福島原子力発電所事故から66日後の北西放射能降下区域住民の予測外部被曝線量評価(日本語訳):グリーン・アクション)


http://www.greenaction-japan.org/modules/wordpress/index.php?p=504




なお、この報告のあらましについては、すでに他の方が投稿なさった、AFP通信の記事が読めますので、今回はそのリンクを付しておきます。



(「さらに7万人が避難すべき」、仏IRSNが福島原発事故の評価を更新 (AFP):阿修羅♪)

http://www.asyura2.com/11/genpatu11/msg/710.html



このプレス・リリースには、今回の報告を出した目的や、評価から得られる教訓が示されています。私の和訳では十分に伝えることができないかも知れませんが、これまで政府・東電・マスコミが言ったこと、やったことなどを念頭に置きながら読むと、相当厳しい内容に思えます。