【解説】 画期的進歩が続く「核融合」、どういうものなのか (BBC NEWS JAPAN)

【解説】 画期的進歩が続く「核融合」、どういうものなのか (BBC NEWS JAPAN)









https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-63982203





【解説】 画期的進歩が続く「核融合」、どういうものなのか





2022年12月15日





エズミ・スタラード、BBCニュース







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核融合は、太陽でエネルギーが作られている仕組みだ






米エネルギー省は13日、エネルギーをほぼ無限に供給できる可能性のある技術について、画期的な進歩があったと発表した



核融合化石燃料を使うことも、有害な温室効果ガスを排出することもない。そのため、気候変動対策としても期待されている。





核融合とは?



核融合は、太陽でエネルギーが作られている仕組みだ。



1960年代以降、50カ国以上の物理学者が、この仕組みを地球上で再現しようとしてきた。



核融合が実用化されれば、世界中に膨大な量のクリーンエネルギーを供給できるようになる可能性があるからだ。



核融合では、軽い原子核を強制的に結合させることで、より重い原子核を作り出す。その際、大量のエネルギーが放出される。



重い原子核を引きはがす核分裂とは逆の反応だ。現在の原子力発電所は、核分裂でエネルギーを作り出している。





なぜ核融合が重要なのか



核分裂では多くの放射性廃棄物が出る。これは危険なため安全に保管しなければならないが、その期間は数百年とも言われている。



一方、核融合で出る廃棄物は放射能が小さく、もっと早く減衰するという。



核融合では石油やガスといった化石燃料が必要ない。また、太陽の熱を閉じ込めて気候変動の原因となっている温室効果ガスも排出しない。



核融合実験のほとんどで水素が使われている。水素は海水やリチウムから安価で抽出できるため、向こう数百万年にわたって燃料を手に入れることが可能だ。



そのため、核融合はエネルギー生産の「聖杯」と言われている。





核融合の仕組み



水素などの軽い原子を熱して結合させると、ヘリウムなどの重い原子が生まれると共に、核反応によって膨大なエネルギーが放出される。





核融合の仕組み











しかし、2つの物質を結合させるのは、実際にはとても難しい。



同じ正の電荷を持っているので、当然ながら互いに反発し合うためだ。



この反発を乗り超えるためには多くのエネルギーが必要になる。



太陽では、1000万度という非常に高温な環境と、地球の1000億倍以上の圧力がこれを可能にしている。



地球上で同じ条件を再現するため、科学者らはさまざまな方法を試してきた。



しかし、高温・高圧状態を長い間保つことは非常に難しい。



カリフォルニア州のローレンス・リヴァモア国立研究所(LLNL)にある国立点火施設(NIF)は今回、192本の強力なレーザーを使って微量の水素を加熱・圧縮し、やかん15〜20個分の水を沸騰させるエネルギーを作り出した。



つまり、科学者たちは初めて、実験に使われたレーザーよりも大きなエネルギーを生み出すことができた。





大規模な核融合はいつ可能になるのか



核融合技術ではここ数年、期待が持てる画期的進歩が続いているものの、大規模な核融合の実現はまだ数年先の話だ。







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イギリス・オックスフォード近郊にある欧州トーラス共同研究施設(JET)の核融合






2月には欧州の科学者チームが、核融合の実用化をめぐる実験で、革新的な結果が出たと発表した。



イギリス・オックスフォード近郊にある「欧州トーラス共同研究施設(JET)」での実験では、2種類の水素を融合した時に発生するエネルギー量が5秒間で59メガジュ―ル(約11メガワット)と、過去最大を更新。1997年に行われた実験結果と比べると、2倍以上だという。



しかし、今回NIFで成功した実験でさえも、そもそもレーザーの作動に必要な分を超えるエネルギーを生み出すことはできなかった。やかん15〜20個ほどを沸騰させる程度のエネルギーを生成するという段階に至るまでに、数十億ドルが投じられた。



物理学者たちは、真の画期的進歩の瞬間が訪れたとして、アメリカでの実験結果を歓迎している。ただ、核融合が一般家庭や企業用の電力を供給できるようになるにはまだ多くの課題があるとしている。



科学者たちは今後、より速いペースでより安価な核融合の実現に注力していくこととなる。





核融合の安全性は



国際原子力機関IAEA)は核融合について、「本質的には安全」なものだとしている。



核融合反応の開始と維持には非常に極端な条件が必要なことから、制御不能に陥る可能性はあり得ない。



核融合のプロセスは自己制限的なもので、反応を制御できなければ機械が自ら電源を落とす仕組みになっている」と、IAEAのセヒラ・ゴンザレス・デ・ビセンテ氏は説明する。



また、重い原子核が分裂する核分裂よりも発生する放射性廃棄物が少ないため、取り扱いや保管がはるかに簡単だ。





核融合地球温暖化対策となるのか



核融合には、石油やガスなどの化石燃料に依存せず、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを全く発生させないという特徴がある。



太陽エネルギーや風力エネルギーとは異なり天候に左右されることもない。



また、核融合にはリチウムと水素という地球上に比較的豊富に存在する物質を使用する。



核融合の利用が広がれば、世界各国が2050年までに炭素排出量を差し引きゼロにする「ネットゼロ」を実現するという目標を達成するのに役立つだろう。



しかし、最近の実験における成功が、意味のある規模にまで拡大するには何年もかかるだろう。





(英語記事 Nuclear fusion breakthrough – what is it and how does it work?





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(投稿者より)



核融合」、仰々しい話です。実用化までには尚も膨大な時間と費用が必要です。



それでも、日本では常温核融合の技術が製品化の段階に入ったと聞いています。融合炉が暴走しないように適温での反応を持続させるための調整が続いているそうです。開発には財閥系の不動産大手が参画していますので、地域冷暖房の熱源にする考えかも知れません。



問題は、水素をどうやって作るかです。石油精製の副産物として発生するとも聞いていますが、水素を作るために温室効果ガスを大量に出す技術は乗り越える必要がありそうです。