「RCEP協定が発効、特に中国に有利な貿易協定」(DW English・RFI)

「RCEP協定が発効、特に中国に有利な貿易協定」(DW English・RFI









(RCEP: Asia readies world's largest trade deal: DW English)

https://www.dw.com/en/rcep-asia-readies-worlds-largest-trade-deal/a-60267980





ビジネス





RCEP:アジアが世界最大の貿易協定を準備している





準備に10年を掛けたRCEP協定が1月1日に発効し、東南アジア・アジア太平洋諸国間の貿易が緩和される。中国・日本・韓国の経済大国が最大の恩恵を受けることになる。







中国は、アジア太平洋諸国間の世界最大の貿易協定の主な受益者になる





アジア太平洋地域の大部分の国の間の貿易障壁が1月1日から大幅に低下する。これは世界最大の自由貿易圏が運用に入るためだ。



地域的包括的経済パートナーシップ(RCEP)は、東南アジア諸国連合ASEAN)10ヵ国と中国・日本・韓国・豪州・ニュージーランドの間の貿易協定だ。



RCEPは、世界の国内総生産GDP)の約30%に範囲が及ぶ。これは26.2兆ドル(23.17兆ユーロ)に相当する。また、世界人口のほぼ3分の1である約22億人が対象となる。



比較すると、米墨加協定(USMCA)は世界貿易の28%を対象とするが、欧州連合の単一市場はこれに及ばず18%近くで第3位だ。





「程度は浅い」が「相当な大きさ」の合意



「RCEPは程度の浅い合意だが、相当に大きなものだ」とエコノミストのロルフ・ラングハマー氏はDWに語った。これは、同協定が主に製造業を扱うからだ。「しかし、これは現在EU諸国が享受しているような巨大な圏内貿易において、アジアがEU諸国に追い付く機会を与えるだろう。」











RCEPの下で、圏内の貿易関税の約90%が最終的に撤廃される。アジア太平洋諸国がCOVID-19のパンデミックから回復しようとしている正に現在、2019年には既に2兆000億ドルの規模となった圏内貿易は大きく押し上げられるだろう。



また、RCEPは貿易・知的財産・電子商取引・競争に関する共通の規則を設けた。国連はこの動きについて、世界貿易の「重心」としてのアジア太平洋地域の地位を高めるだろうと述べた。



RCEPは圏内貿易を420億ドル押し上げるだろうと、国連の貿易部門UNCTADがこの協定についての最近の分析で述べた。





中国が最大の恩恵を



キール世界経済研究所(ifw-Kiel)の副会長だったラングハマー氏は、RCEPの利益は15署名国間で公平にはならないだろうと述べた。彼は、中国―この地域で群を抜いて最大の経済大国―が最大の恩恵を受け、日本や韓国がこれに並ぶとの予想を述べた。



「協定は、輸入側・輸出側の双方で中国の利益に合わせて作られている」と、彼はDWに語った。「RCEPは、中国に日本や韓国などの主要な輸出市場に向けた無関税の経路を提供すると同時に、その巨大な製造サプライチェーンのための輸入調達市場[ASEAN諸国]への経路を確保する。」



中国は現在、日本と2国間協定を結んでおらず、韓国との協定は限定されたものに過ぎない―両国は中国にとってそれぞれ3番目と5番目に大きな貿易相手国だ。







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中国のヨーロッパへの玄関口―新しいシルクロード、パート1






インドは交渉が後期に入った2019年に、中国からの安価な輸入品が国内に溢れることを懸念してこの貿易圏への不参加を決めた。





アジアの発展途上国には利益が小さい



利益の大部分はアジアの諸経済大国の手中に入るが、ASEAN域内の小さな国々にとってRCEPはその主要な産業を対象に含めていないため、彼らが不利な立場に置かれる可能性があると、ラングハマー氏は警告した。



「中国の近隣諸国の多くはコメの出荷や安価な労働力の輸出に依存しているが、サービスも農業もこの貿易協定の対象でない」と、彼は述べた。



ラングハマー氏によると、アジアの後発開発途上国カンボジアラオスミャンマー―は現在ASEAN域内の貿易の恩恵を受けているが、これがRCEP貿易による「侵食」を受ける可能性がある。例えば、これらの貧しい国々からシンガポールに向けられる輸出は、日本によって奪われる可能性がある。同国は今や全てのASEAN諸国に対して同じ貿易アクセスを得るからだ。



また、小さなASEAN諸国は、韓国や日本を含むASEAN域外への製品の無関税輸出を可能にする、貿易特恵プログラムからの利益の一部を失う可能性がある。



ただし、低所得国は、非RCEP加盟国からの商取引について相手国を変更するいわゆる貿易転換から利益を得るに違いない。UNCTADは、RCEP間の統合が今後10年間で更に進むにつれて、貿易転換は「拡大」するだろうと述べた。





関税撤廃には20年掛かる



それでも、シンクタンクのオックスフォード・エコノミクスのアジア経済部門の責任者であるルイ・カージ氏によると、RCEPに盛り込まれた関税と制約の完全撤廃には20年掛かるため、これらの経済的利益は「実現までに長い時間が掛かる。」







RCEPは、東南アジア諸国連合ASEAN)圏の10か国と中国・日本・韓国との間の新しい自由貿易協定だ



カージ氏は、文書主義がもたらす弊害の削減を大きな恩恵と見なしている。つまり、域内貿易は現在、少なくとも5つのいわゆる原産地規則の要件―製品の原産国を決定するための基準―に従っている。



「全ての署名国は、『共通の原産地規則』から利益を得る可能性がある。この規則に従えば、署名国は域内の貿易では原産地証明書が1つだけあれば良い」と、彼はDWに語った。





米国の不参加が意味を持つことに



シンクタンクのアトランティック・カウンシルはRCEPの分析で、米国の不参加により、「北京が地域の経済成長の推進力としての役割を固める可能性がある」と、警告した。



ワシントンは、環太平洋パートナーシップ(TPP)として知られる別に提案された貿易協定への参加により、中国の経済的影響力を封じ込めようと計画していた。しかし2017年、ドナルド・トランプ米前大統領は協定から脱退した。



その後、TPPの残りの加盟国は、3番目の協定である環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)を創設し、9月に中国がこれへの加盟を申請した。北京のCPTPP加盟が実現するかは全く分からないが、中国がRCEPのような程度の浅い貿易協定の規制要件を満たすことが出来れば、その可能性が高まる。



アトランティック・カウンシルは、北京にとってRCEPが将来の貿易協定を結ぶのに実際に役立つことになれば、「中国の参加と米国の不参加は更に大きな意味を持つようになる」と述べた。





クリスティ・プラッドソンが編集





発表 2021年12月30日

記者 ニック・マーチン

関連テーマ 東南アジア諸国連合(ASEAN)











(RCEP: la nouvelle zone de libre échange Asie-Pacifique entre en vigueur: RFI)

https://www.rfi.fr/fr/%C3%A9conomie/20220102-rcep-la-nouvelle-zone-de-libre-%C3%A9change-asie-pacifique-entre-en-vigueur





RCEP:新しいアジア太平洋自由貿易圏が発効する





発表 2022年1月2日 09:56







中国・青島 (Qingdao) 港の貨物船。アジア太平洋地域の15ヵ国を結ぶ新しい自由貿易圏・RCEPは2022年1月1日に発効した。CHINA-EXPORTS/ REUTERS/China Daily





RFI






世界経済において新たな重量級が生まれる。2022年1月1日、地域的な包括的経済パートナーシップ(Regional Comprehensive Economic Partnership, RCEP)が発効した。これにより、世界で最も広大な自由貿易地域が生まれることになりそうだ。





中国・日本・豪州・韓国やASEAN 10か国を含むこの新しいグループは、既に単独で世界の国内総生産GDP)の3分の1と世界人口の3分の1を占めている。



国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、このRCEPは最大能力で機能するようになった時には世界貿易の「新しい重心」となるだろう。規模からすると、これは「世界最大の経済圏になるだろう。」



今後20年間は署名国間で取引される商品の90%について関税が撤廃される。また、この協定には、商品とサービスの貿易・知的財産・電子商取引・競争についての共通の規則が用意されている。一方、この文書には、環境・労働市場・知的財産・公的助成金についての拘束力ある規則や条項は盛り込まれなかった。



2011年にこの同盟を洗礼盤の上に運ぶための交渉が始まった。協定は2020年11月に最初の加盟国によってASEANのオンライン首脳会議の際に署名され、2021年11月3日に豪州とニュージーランドがこれを批准した。ただ、インドは関心を示していたものの、安価な中国製品が国内市場に侵入するのを恐れて署名を留保することにした。





今日:RCEPに参加する15ヵ国の指導者は、ASEAN主導のメカニズムでもある最も大きな地域貿易協定の署名を目撃するだろう。 #RCEPについて、その目的や対象地域、また、RCEPが地域の経済統合にどのように貢献しているかをもっと学ぶ:#ASEAN

pic.twitter.com/gZrViNNvaW

ASEAN (@ASEAN))2020年11月15日






►これも読む:北京は広大な自由貿易協定の調印によって強化される





中国が主導



米国が2017年にドナルド・トランプ大統領の下で、競合プロジェクトである環太平洋自由貿易協定(TPP)を放棄したために残された空白を埋めるために、中国は数年前からこの条約を締結するための交渉を加速させた。





►これも読む:RCEP自由貿易パートナーシップ:ASEANに対する北京の攻勢





中国 日本 韓国 ASEAN 豪州 ニュージーランド 貿易・為替











―参考―











―投稿者より―



ドイツとフランスの記事です。EUはこれに大きく期待している、ということでしょう。一方、BBCは英語ニュースでもこれを無視しています。ロイターブルームバーグも同様です。同じ西側でも独仏サイドと英米サイドで評価が綺麗に分かれたようで、示唆的に思えました。







※ 2022.1.11 訳文を見直しました。