なぜ米国企業は事業を国内に戻しつつあるのか (DW English)

なぜ米国企業は事業を国内に戻しつつあるのか (DW English)









(Why US companies are reshoring their business: DW English)

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なぜ米国企業は事業を国内に戻しつつあるのか





供給の混乱と海外の生産能力不足により、ますます多くの米国企業が生産・製造施設を国内に戻しつつある。







フォードなどの米国企業は、生産施設の少なくとも一部を国内に戻しつつある





ジョンソン・エンド・ジョンソン社がジェームズ・ワイナー氏を追い払った時、彼は深く傷ついた。彼の営む繊維加工業ショーマット・コーポレーションは、2社間の供給契約のお蔭でそれまで多くのお金を稼いでいた。しかし1990年代半ば、ジョンソン・エンド・ジョンソン社は軽費削減のために保護具生産のアジア移転を決めた。



その結果、ワイナー氏は250人の従業員を解雇しなければならず、マサチューセッツ州の彼の工場は突然空になった。「私たちはその事業が扉を出るのを見た」と、彼はビジネス誌フォーチュンに語った。



ジョンソン・エンド・ジョンソン社も例外でない。米国企業は数十年間ずっと、より安価な原料と労働力を求めて生産設備の海外移転を続けてきた。多くの企業がグローバリゼーションにより経費を削り利益率を大幅に拡大させたが、企業はより高い効率を求めるためサプライチェーンが熾烈な競争の対象になっている。





体制に不備?



パンデミックが激化するにつれ、これまでのやり方がどれだけ可笑しかったかに今や人々は気づきつつある。米国経済は総体的に急速な回復中だが、このため原材料や供給業者の深刻な不足を訴える国内企業に多くの問題が発生している。中間製品の在庫がなく、マイクロチップも入手が極めて困難だ。コロナウイルスの危機は最適化を進める企業経営者の取り組みに不備があることを示している。



サプライチェーンの機能不全は、特に価格設定に対する影響力を殆ど持たない中小企業にとってますます頭痛の種になりつつある。商品の不足する至る所で価格が爆発的に上昇している。米国では10月だけでも生産者価格が8.6%上昇し、過去最大の月間上昇幅を記録した。大企業でさえ大きな障害に直面している。アナリストたちによると、この障害は2024年まで消えないかも知れない。



第3四半期、家電大手アップル社の損益は60億ドル(53億ユーロ)悪化した。スポーツ用品会社ナイキはベトナムでの生産停止を報告した。これは1億6000万足分の靴の生産が減ることを意味する。玩具会社ハスブロは運賃の急騰に不満を持っており、代用肉を生産するビヨンド・ミート社もここ数ヵ月で株価が大幅に下落している。





国内回帰へ



このため、ますます多くの企業が経費削減を進めると共に米国に生産拠点を移しつつある。早くも中国と米国の間の貿易紛争が本格化した2019年には、米国企業はアジア市場への依存を減らすことを模索していた。



今年3月、インテル社はアリゾナ州の新半導体工場2ヵ所に約200億ドルを投入すると発表した。ゼネラル・モーターズ社はミシガン州にバッテリーの生産拠点を移しつつあり、当地にリチウムイオン電池製造の新しい中心地が間もなく出現する。最近、鉄鋼価格が高騰しているため、鉄鋼メーカーのUSスチール社は30億ドルの新工場を、海外ではなくアラバマ州アーカンソー州に建設することにした。ロッキード社、ゼネラル・エレクトリック社、サーモ・フィッシャー社も国内回帰を検討している。



業界団体リショアリング・イニシアチブによると、今年、米国企業の約1,800社が事業の全体か少なくともその一部を国内に戻す予定だ。これにより米国で約22万人の新しい雇用が創出される。10年以上前、国内回帰を進める活動の結果として国内で生まれた雇用は僅か6,000人分だった。







サプライチェーンボトルネックにより、米国や他国の多くの企業が生産戦略の再考を強いられた





問題を認識している米国政府



ジョー・バイデン米大統領は無駄に出来る時間のないことを知っている。ホワイトハウスは現在の供給のボトルネックを安全保障上のリスクの1つと認定した。就任直後、バイデン氏はサプライチェーンの依存関係を詳細に調査するよう命じた。数日前、国内の生産者を支援するための彼のインフラ包括支援策がやっと議会を通過した。



しかし、国内回帰の専門家であるハリー・モーザー氏は、米国政府は更に多くのことを行う必要があると考える。「米国の製造コストはドイツよりも約15%高く、中国よりも40%高い」と中規模のエンジニアリング企業を22年間率いたモーザー氏は語った。



53歳のモーザー氏は、経費を削減して競争力を高める必要があり、その手段は恐らく税制上の優遇措置や熟練労働者の訓練への長期投資になると主張した。「根本的な問題に対処しなければ、補助金付きのチップやバッテリーを吸収するのに十分な電子製品やEV [電気自動車]を生産できない。」



それでもモーザー氏は、国内回帰の傾向は今後も続き国内の労働市場を後押しすると考えている。ワシントンに本拠を置くシンクタンク経済政策研究所は、製造業においては、特に耐久消費財業界で新しい雇用1人分につき最終的に更に5~7人分の雇用が生まれると考えている。





熟練労働者の不足



しかし、多くの企業は従業員の獲得が難しいと感じるかも知れない。多くの米国人は最近、職業生活を見直す試みの中で会社に背を向けている。多くの人は最早どの仕事も、特に組立ラインの仕事を受け入れたいと思っていない。9月だけでも440万人の米国人労働者が離職した―これは全国的な傾向で、「大退職」"the great resignation" と呼ばれるようになっている。



しかし、ワイナー氏のショーマット・コーポレーションはこの傾向に逆行している。フェイス・マスクの国内生産に対する政府の包括的な支援のお蔭で、同社は海外の製造を国内に戻すことに成功した。ワイナー氏の抱える従業員数は間もなく300人になり、1990年代より50人増える。彼の生産に必要な材料は現在、国内の業者のみから供給されている。



「このサプライチェーンが国境を越えることはないだろう」と、ワイナー氏は請け合った。





この記事はドイツ語の元記事を翻訳した。





発表 2021年12月8日

記者 サブリナ・ケスラー(ニューヨーク)

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