福島原発発電所で発生した事故 2011年6月10日現在の状況の要点(フランス放射線防護・原子力安全研究所):阿修羅♪

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(Accident survenu à la centrale de FUKUSHIMA-DAIICHI Point de la situation au 10 juin 2011: IRSN)

http://www.irsn.fr/FR/Actualites_presse/Actualites/Documents/IRSN_Seisme-Japon_Point-situation-10062011.pdf





福島原発発電所で発生した事故 2011年6月10日現在の状況の要点(フランス放射線防護・原子力安全研究所)





この広報は、福島第一発電所の状況について、公表された情報に基づいて作成された。





I.原子炉の状況





状況の安定化





福島第一原発の原子炉[1]1.2.3号機は、燃料を納める圧力容器に淡水(1.2号機には約5m^3/h、3号機には約10m^3/h)を直接注入して(持続的に給水する、いわゆる「非循環」システム)、冷却する作業が続いている。原子炉1号機の格納容器では、格納容器の不活性状態を維持し、水素燃焼のあらゆるリスクを防ぐために、窒素の注入が行われている。同じ作業が原子炉2.3号機の格納容器に対しても検討されてきたが、東京電力はまだこれを実施できていない。このように、状況は安定しており、次の改善は、いわゆる「循環」システムによる、つまり、継続的な注水が不要な(東京電力の発表では、6月中旬に、原子炉2号機に同様の措置をとる予定だ)、炉心冷却を可能にする熱交換装置の設置に関するものとなる。循環冷却システムの開設により、建屋の底に溜まる汚染水を抑えることができる。





−原子炉1.2.3号機の炉心破損の評価





事故発生当初から、IRSNは利用可能な情報を用いて、2011年3月11日に起きた地震に関わる津波の結果、3基の原子炉は冷却機能を失い、そのため燃料が部分的に溶融したとの結論を出した。圧力容器の底に燃料が落下したと思われる事象の後、圧力容器に重大な破裂があったと結論づけられるような要素は何もなかったが、圧力容器や格納容器の水密性はもはや保証できないと、IRSNは考えることにした。



原子炉の状態(特に燃料について)を叙述するために、東京電力原子力安全・保安院は分析を続けている。原子炉の状態が進展するのに応じて、これらの分析を対象とした発表が行われており、今から数週間後には、炉心の実際の状態がよりよく理解できるだろう。



原子炉1号機の内部では、東京電力の運転作業員たちが原子炉建屋内に入り、圧力容器内の水位計を修理した結果、低い水位が続いていたことが判明し、燃料が圧力容器の底に落下したと思われるとの結論に至った。温度(摂氏110度)計測の結果、注水によって燃料は再び冷えて固まり安定したと、東京電力は結論づけた。



こういったことから、東京電力は次のように考えている。

・原子炉1号機の炉心にあった燃料の大部分は溶融し、圧力容器の底に落下した。

・現在は、注水によって炉心の冷却が確保されている。

・圧力容器内の水量は比較的少ないが、これは溶けた燃料が流れ落ちたと思われ、そのため圧力容器の下部に1カ所以上の割れ目が生じた[2]結果、そうなった可能性がある。



原子炉2.3号機についても同様に、東京電力は、ある程度の燃料が圧力容器の底に落下していることと、圧力容器に穴が開いていることの可能性を考慮している。東京電力は、さらに、3号機の原子炉建屋への通路を片づけるために、同建屋の周囲にある瓦礫の評価を進めた。これにより、例えば、建屋内の空気を浄化する装置・放射線の防護(鉛のパネル)・格納容器に窒素を注入する設備の設置や、水位計と圧力計の補充が可能となる。



燃料・圧力容器・格納容器の状態を推測するための、こういった諸要素によって、状況全体に対する評価が修正されるわけではない。実際には、燃料の冷却は注水によって確保されており、その一方で、窒素によって格納容器の不活性化が維持されているために、格納容器で水素爆発が発生するリスクが回避されている。これについては、格納容器に窒素を注入して不活性状態を保証するために現在行われている作業が、当面は、事態を確実に抑え込むために特に重要である。



いずれにせよ、施設の制御を回復するために東京電力がとったさまざまな行動によって、回復が進むにつれて、新たな要素がきっと発見されるだろう。しかし、現地の対応を決めるために重要な、そのような要素を明らかにすること以上に、東京電力が公開したそれらの新たな諸要素により、環境に対するリスクの評価を見直さずに済むことが大切だと、指摘しておかなければならない。



いずれにせよ、1〜3号機の原子炉建屋内に入れるようになったということは、諸施設の制御を段階的に回復するための段階として重要だ。





II.使用済み燃料貯蔵プールの状況





発電所内にある6基の原子炉の使用済み燃料貯蔵プール、および、使用済み燃料共用プールは、既存の装置によるものと、蒸発を補うための外部からの水の供給によるもの(特に4号機のプールでは、通常は土木工事でコンクリートの注入に使われるアームから供給を受けている)の違いはあるが、冷却されている。この現在利用可能な諸要素(プール内部の映像と汚染水の計測をチェックすること)により、保管された燃料には大きな被害はなかったという仮説が、確認されたことになる。その代わり、爆発によって資材がプール内に落下したため、プールにある燃料の撤去が複雑になるだろう。



建屋上部に置かれた原子炉のプールの構造の状態に関する主要な疑問だが、大きな余震があった場合にプールがどのような変動が起こるか、現在のところ評価できない。東京電力は施設の制御を回復する計画の枠組みの中で、数カ所のプールの強化工事を予定しており、6月6日に、原子炉4号機のプールを支えるために、鋼鉄製の支柱を立てる工事を始めた。このように、今から2011年6月末までに、30本の柱が補強のために立てられることになるだろう。





III.放出物の現状





利用可能な諸要素の状態では、大気中や海洋への放出が続いていることを排除することはできない。特に、発電所内の地面に積もっている放射性物質によって示される線量よりも、大きな数値が計測されることが現在でもたまにある。それでも、この拡散された放出物は、3月中旬に生じた放出物とは比べものにならないくらい少ない。



東京電力はこの放出物の拡散を抑えるために、外の地面や建屋内の汚染物質の固化(樹脂の噴霧)、地下に埋められた何本かのトレンチの水密化、建屋下部に大量に溜まっている水の回収・処理の準備、といった作業を続けている。こうして、5月12日、東京電力は、原子炉3号機につながるトレンチに割れ目が発見され、汚染水の放出を抑えるために、応急修理作業が必要だと発表した。



一般的に、原子炉建屋の底面・タービン建屋・地下のトレンチに溜まっている汚染水の除去が、いまだに大きな課題となっている。、雨季の到来により現在の水量がさらに増える怖れがあるからだ。こうした事情により、循環システムによる炉心冷却が2011年6月20日までに完成しなかった場合、または、補完的な汚染水の貯蔵手段がとられなかった場合、土壌と海洋の汚染物質が増加する(東京電力によれば、同日には、トレンチが溢れる可能性がある)ことが危惧される。これについて、東京電力は現在、発電所内に補完的な貯水設備を設置している。



さらに、アレヴァ社は、高濃度汚染水の処理施設(数万立方メートル)を設置しており、6月15日頃に運転を始めることになっている。この水は、除染された後、原子炉の冷却に再び利用することができ、そうなれば、外部からの水の供給が削減、場合によっては回避できる。





IV.施設の制御を回復する計画





4月17日、東京電力は、福島原発を危機から脱却させるための計画を示した。その計画は、短い期間内に2つの大きな段階をクリアすることを想定している。



第1段階は3カ月つづく予定で、残留性の高い放射線物質の放出を削減し、原子炉とプールの冷却を信頼あるものとし、汚染水の貯蔵場所を確保することを目標としている。計画が進んでいる例として、5月31日より、原子炉2号機の燃料プールの水が、循環システムによって冷却・濾過されるようになった(それまでは、外部からの水の供給によってのみ、冷却が確保されていた)。これにより、多湿だった2号機の湿度が下がり、その後の作業が楽な環境となるに違いない。東京電力は、今から7月初めまでに、類似のシステムを1.3号機のプールに設置する予定だ。



3〜6カ月目に予定される第2段階は、放射性物質の放出を抑えるために建屋の安全を確保し、原子炉を冷温停止状態に持ち込み、発電所にある汚染水の量を減らすことを目標としている。その他に、4号機のプール(爆発によって損傷した)を支える構造物の強化作業が進行中だ。



この緊急行動計画は、現在の状況に沿ったものだが、発表された期日はおおよその見当としか見なすことができない。特に、建屋内のさまざまな作業が進み、諸施設の実際の状況がよりよく把握されると、今後やるべき作業や、そのスケジュールがはっきりするだろう。現場で作業が行われる上での危険について、東京電力は規則に沿って注意を与えているが、直接的な異常事象についてはそれができていない。



いずれにせよ、高濃度汚染水を抑え込むことの他に、重要な行動の1つは、1〜4号機のプールに保管されている燃料を、できるだけ早く撤去することだが、これには少なくとも2年必要だ。やるべき作業が大掛かりになることを考慮すれば、諸施設の完全な解体と発電所用地の浄化には10〜20年かかるだろう。





[1]原子炉4号機は運転を停止しており、5.6号機は安全停止の状態にある。



[2]最近の要素を考慮し、東京電力は、4月17日に公開した、1号機の冷却を信頼あるものとするための、施設の制御を回復する計画の第1段階の工程表を見直した。実際には、1号機内の水位が判明し、当初予定されたような循環冷却機能が再び検討されることになった。また、圧力容器・格納容器の各内部の水位をより詳細に測定するために、新たな調査が始まった。











(投稿者より)



6月10日にフランス・IRSNが公開した、福島原発の状況について分析した報告です。訳は適宜見直していますが、解釈にミスや拙い部分はあると思います。ご容赦下さい。



6月1日の報告との大きな変更点として、メルトダウンをかなり早期の段階で検討していたとの記述や、メルトスルーについて否定的な見解を示した記述が、大幅に削減されています。



6月7日に政府は、メルトスルーの可能性を示唆した報告をIAEAに提出していますが、その根拠は何も公表されていないようです。以下は、その報告書に記された、1号機の圧力容器内の状態の説明です。





「RPV(圧力容器:投稿者)底部の温度は、3月23日に給水ラインからの注水に変更した際、注水量を増加した結果、オーバースケール(400℃以上)から低下し、注水量を低下させた後には一部の温度が上昇していることから、燃料はRPV内部にあるものと考えられる。5月11日に原子炉水位の水位計の基準水位を回復し校正した結果、水位が燃料域を下回っていることが確認されたことから、燃料は溶融し、その相当量はRPV底部に堆積しているものと現時点では推定される。ただし、RPV底部が損傷し、燃料の一部がD/W(格納容器:投稿者)フロア(下部ペデスタル)に落下して堆積している可能性も現時点では考えられる。」



原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書 −東京電力福島原子力発電所の事故について−:平成23年6月 原子力災害対策本部、IV- 41,42ページ)
http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2011/iaea_houkokusho.html





確かに、なぜ「RPV底部が損傷し、燃料の一部がD/Wフロア(下部ペデスタル)に落下して堆積している可能性も現時点では考えられる」のかは、書かれていないようです。



IRSNはメルトスルーに否定的な見解を示していました。6月1日の報告には、「燃料が出す熱の出力と、同じく利用可能な圧力測定の推移を考慮したとき、圧力容器の底にある多量の落下物による脆弱性に注目はひかれるものの、圧力容器の底に穴が開いていることはほとんどあり得ないと、IRSNは考えてきた。」(Compte tenu de la puissance thermique à évacuer et de l'évolution des mesures de pression encore disponibles, l'IRSN avait toutefois considéré peu vraisemblable un percement du fond de la cuve, tout en attirant l'attention sur la fragilité induite par les nombreuses traversées présentes en fond de cuve.)とありました。さらに、格納容器が置かれてあるコンクリートの床に溶けた燃料が接触しているならば、その反応を示唆するデータがあるはずだが、それも示されていない、と読みとることのできる記述もありました。



日本政府は今回も、やはり何の根拠も示さないまま、今度はメルトスルーを認める見解を出しています。



これについて、「圧力容器の底に燃料が落下したと思われる事象の後、圧力容器に重大な破裂があったと結論づけられるような要素は何もなかったが、圧力容器や格納容器の水密性はもはや保証できないと、IRSNは考えることにした。」("Même si aucun élément ne permettait de conclure à une rupture très importante des cuves après la relocalisation vraisemblable de combustible au fond de celles-ci, l’IRSN estimait que l’étanchéité des cuves et des enceintes n’était plus garantie.")と、今回の報告では記されています。



現実に水漏れは発生しているようですので、実際に「圧力容器や格納容器は水密でない」のは確実ですが、私には技術的な評価とは別に、この記述に、書き手の苛立ちが読みとれたような気がしました。





※2017.2.14 訳文を一部見直しました