欧米よりもうまくエネルギー危機に対処する日本/「サハリン2」からの撤退は日本にとって不合理なもの(Sputnik日本)

欧米よりもうまくエネルギー危機に対処する日本/「サハリン2」からの撤退は日本にとって不合理なもの(Sputnik日本)









https://sputniknews.jp/20221006/13229436.html





欧米よりもうまくエネルギー危機に対処する日本





2022年10月6日, 20:22







© AFP 2022 / Kazuhiro Nogi





リュドミラ サーキャン





多くの国がエネルギー価格の高騰に悩まされている。とりわけ、自国のエネルギー源だけでは需要をまかないきれず、エネルギー資源の大部分を輸入に頼っている国にとってその悩みは深い。日本もその例外ではない。





この1年で、家庭用の電気料金はおよそ20%、産業用の電気料金は30%値上がりした。



しかも、世界市場におけるエネルギー価格の高騰により、その他のあらゆるものの物価が上昇している。



10月、日本では6532品目の値上げが予定されている。西村康稔経済産業相は、値上げは、日本がほぼ完全に外国からの輸入に頼っている液化天然ガスと石炭の価格の高騰を背景にしたものだと述べた。さらに大臣は、来春にもさらなる値上げとなる可能性も除外できないとした。







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西村経産相は、政府は早急に、電気料金の値上げによる激変緩和を目的とした総合経済対策を取りまとめると付け加えた。この作業は10月の末までに完了することになっている。西村大臣はまた、政府はすでに物価高対策で、予算額6000億円の「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」を創設することを決めたと明らかにした。



エネルギー価格調査会社「グローバル・ペトロール・プライシズ」のデータによれば、2021年12月時点で、家庭用の電気料金は1kWhあたり31円、産業用は23円となっている。



しかし、2022年の1月にはすでに日本の電力会社10社が、3月から家庭の電気料金を値上げすると発表した。値上げの計画を発表したのは、東京電力中部電力関西電力などである。東京電力は、家庭用の電気料金を283円、中部電力は292円、関西電力は55円、それぞれ値上げした。同時に公共料金も上昇した。2022年3月から公共料金は168〜229円、値上がりすると伝えられている。



夏にはいくつもの出来事が一気に起きた。



6月30日、国際石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」の事業運営主体の再編が伝えられ、パートナー企業は、新たに設立された運営会社と再契約するかプロジェクトから撤退するかの選択を迫られた。このニュースは、日本のパートナー企業と「サハリン2」による液化天然ガスの消費者にとって、晴天の霹靂であった。サハリンからの液化天然ガスの供給が止まれば、日本の電力は大きな損害を受けることになるからである。しかも、この夏、アジア市場における液化天然ガスのスポット価格は100万BTUあたり50ドル以上にまで上昇した。これは2021年の数倍、2019年までの平均価格の10倍の数字となっている。



日本企業は熟考するための時間を必要とした。しかし、9月に東北電力は結局、「サハリン2」の新事業主体との間で、以前と同様の条件で、液化天然ガスの供給に対する契約を結んだ。またこの少し前に、九州電力東京ガス、また東京電力カフュエル&パワーと中部電力との合弁であるJERAも同様の契約を締結した。







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7月に、日本政府は国内の電力が逼迫しているとして、節電を呼びかけた。外出するときには電気を消し、使用していない電化製品のスイッチを切り、洗濯はまとめてするようにとの要請が行われた。また会社の職員に対しては、使用していない部屋のエアコンを切り、昼休みにはオフィス機器の電源や電気を消すようお願いがなされた。さらに企業に対しても、不必要なネオンサインを消し、店内やショーウィンドーの照明やテレビを落とすようにとの要請もあった。



そして7月、複数の日本の電力会社が、8月から家庭用の電気料金を値上げすると発表した。東京電力は7月より247円値上げ、昨年の30%上昇の9118円となった。中部電力は、7月より231円値上げの8747円、北海道電力は、7月より99円値上げの8862円となった。



この値上げにより、電気料金は過去5年で最高の額となった。その他の企業も、すでに上限に達しているか、ほぼ上限に達しつつあり、燃料の価格に応じて、毎月の電気料金を修正するという状況になっている。



エネルギー価格と円安により、主な消費価格も高騰している。



2022年8月、9月の日本のコア・インフレ率は過去7年で最高の2.8%であった。しかも食料品の主な消費物価指数は13ヶ月連続で上昇している。



これは、生活費の高騰がより家計に響くことを証明するものなのではないだろうか。



ロシア国民経済行政アカデミーの国際政治・外国の地域研究科の研究員ロマン・ファインシミット氏は次のように述べている。





「エネルギー価格の高騰による負担を緩和するための策はいくつもあります。たとえば、電力に対する付加価値税の引き下げや廃止、市場における価格の上限設定などです。日本政府がどのような対策を講じるかはわかりませんが、すでに講じられているものもあります。またエネルギー資源とその供給者の多角化、稼働停止中の原子力発電所の再開、新たな節電技術の開発と導入、節電プログラムに参加する家庭へのポイント付加、電気使用制限に違反した企業への罰金、省エネをサポートする補助金制度などもあります。日本の家庭の収入水準は大幅に低下し、国内市場の発展にも否定的な影響を与えています。しかし、肯定的な面もあります。円安によって、日本の輸出企業は国外での利益を最大にすることができます。また2.8%というインフレ率は、G20の中でももっとも低いものとなっています。日本経済にとって今の状況はかなり珍しいものです。これまで政府はデフレ脱却に懸命でした。今、日本の大企業が自らの利益によって消費者のインフレを抑制する可能性を持っていることを考慮すれば、日本は欧米よりもはるかにうまくエネルギー危機に対処しているといえるでしょう。このようなアプローチによって、日本経済は、成長率も、また日本製品の競争力も下げなくて済むのです」。




オピニオン 経済 国内











https://sputniknews.jp/20221009/2-13263303.html





「サハリン2」からの撤退は日本にとって不合理なもの





2022年10月9日, 08:15







© AFP 2022 / Jiji Press/Stringer





リュドミラ サーキャン






EU欧州連合)はロシアに対する新たな制裁パッケージで、日本に有益なものとなる例外を設けた。これは石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」を通じたコンデンセート混原油の日本向けの海上輸送、当該輸送に関する技術サポート、ブローカー・サービス、融資または資金援助は、制裁の適用から除外されるというものである。





除外の期間は2022年12月5日から2023年6月5日までとなっている。ちなみに、ロシア・ウクライナ紛争を原因とするEUによる対露制裁はこれで8弾目となっている。



新たな制裁パッケージでは、とくにロシアから、またはロシア製の石油と石油製品の第3国への瀬取りを含めた輸送が禁止されている。これまでは、技術サポートや融資を含め、直接または間接的なサービスのみが禁止されていたが、今回のパッケージでは、輸送の禁止が発動されると同時に、例外が設けられた。



これは、石油または石油製品が上限価格で販売された場合についてである。とはいえ、この上限価格はまだ設定されていない。また、上限価格設定に合意したエネルギー開発プロジェクト、またこれをエネルギー安全保障のために必要とする複数の国に対しても例外が設けられており、日本もこの対象となっている。







欧米よりもうまくエネルギー危機に対処する日本

10月6日, 20:22






日本は原油の大部分を外国から輸入している。米国と英国が、今年3月にロシア産石油の輸入禁止を初めて発動した後、日本政府は石油の輸入禁止に対しては慎重な態度を続けていた。



6月、岸田文雄首相が、G7に課せられた義務の枠内で、ロシア産の石油や石炭の輸入を少しずつ減らしていくと約束したことから、ロシアから日本への石油の輸入はほぼゼロにまで削減された。ロシア産のLNG液化天然ガス)の供給については言及がなかった。7月にロシア産石油の輸入は再開されたものの、輸入量は、昨年同時期比で65.4%低下した。



一方同月、日本向けの石油の輸出量は全体で3.8%増加した。そのうち、ロシア産石油の割合は全体の3.6%にとどまっている。もちろん、長期契約ではなく、そのときどきの必要に応じて、短期で取引するスポット契約が多く、調達先を変更して代替することが可能である。



しかし、日本政府は、ロシア産原油の輸入の削減や停止の時期などについて、日本が必要とする原油の調達に支障が生じないよう、今後の実態を踏まえ、国民生活や企業の事業への影響を最小限に抑えながら決定していくとの方針を明らかにした。







プーチン大統領、「サハリン1」運営会社の再編を命令

昨日, 12:13






スプートニク」からの取材に対し、ロシアエネルギー発展基金のセルゲイ・ピキン会長は次のように述べている。





「日本は、制裁の結果を熟考しなかったことで、加盟国、非加盟国の状況をかなり複雑化させたEUと同じ運命をたどりたくはないのです。おそらく、『サハリン2』からの日本向けの石油の輸送に対する今回の制限解除は、日本との合意なしには行われ得なかったものでしょう。



 日本はあらゆるリスクを計算しています。制裁によって石油の採掘量は減っているとはいえ、サハリンは日本にとって、重要な資源の源なのです。



 最近、大手海運会社の商船三井が、タンカー『Grand Mereya』でのLNGの輸送に関して、『サハリン2』の新たな事業主体との間で長期契約を締結したのも、意味のあることです。これにより、商船三井は以前と同様の条件で、輸送サービスの提供を継続することができるのです。



 日本企業は、きっちりと法を遵守しており、企業や国の評判を落として、制裁を回避しようとはしていません。EUが今回行った例外は、そうした日本企業に自由を与えるものです。これは世界の原油市場が激動している今、とても重要なことです。とりわけ、OPEC加盟国が石油の採掘量を日量で200万バレル削減することで合意したことを考慮するとなおさらです」








再編「サハリン2」をめぐる状況

「サハリン2」新運営会社、外国需要家の維持に成功=同社営業部長

9月28日, 21:35






一方、経済高等学院のアレクセイ・スコピン地域経済・経済地理学部長は、日本は合理主義的な国であり、今回のEUの決定は日本の介入があってなされたものだと確信していると述べている。





「というのも、日本は単にサハリンから資源を受け取っているだけでなく、採掘も行っているのです。つまり、かなりの投資と技術が注ぎ込まれているのです。ですから、EUの政治的野望のために、このプロジェクトから撤退することは合理的ではありません。



 『サハリン1』も『サハリン2』も、石油・ガス開発プロジェクトですが、石油や天然ガスを採掘するときには必ず不純物が出てきます。たとえば、石油の採掘にはヘリウムが、またガスの採掘には硫黄が回収されます。カザフスタンでは石油やガスの産地ではバリウムも採取できます。



 これは大した量ではありませんが、サハリンにある日本の採掘坑には、不純物を取り除く装置が設置されています。しかも、石油・ガスの採掘のライセンスに不純物についての記載はなく、それをどうするかは採掘する側の判断に任されています。



 日本人がそこから獲得した不純物を使用しているか、廃棄しているのか、わたしは知りません。しかし、副産物は燃やしてしまうこともできれば、何か有益なものにすることもできるのです」






再編「サハリン2」をめぐる状況 サハリン ガス 石油 エネルギー危機 対露制裁 国内 欧州連合 オピニオン











(投稿者より)



物価上昇が生活に及ぼす打撃は決して小さくないですが、それでも冬を控えて、世界各国と比べて日本のインフレが低いことやエネルギー事情が厳しくないことには感謝あるのみです。