事故から34年 チェルノブイリ原発の今(Sputnik日本)

事故から34年 チェルノブイリ原発の今(Sputnik日本)









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事故から34年 チェルノブイリ原発の今







© Sputnik / Igor Kostin





社会





2020年04月26日 10:53






筆者 : リュドミラ サーキャン





トピック ポスト・チェルノブイリの時代 世界を永遠に変えたカタストロフィー





4月26日、史上最大の人災として知られるチェルノブイリ原子力発電所事故から34年を迎えた。悲惨な事故から34年が経過し、新型コロナウイルスが猛威を振るう中、「死の大地」は再びその存在を想起させた。4月はじめ、立ち入り禁止区域で森林火災が発生し、再びチェルノブイリの事故後の状況に関心が集まり、放射能の安全性というテーマが提起された。





放射能汚染地域での火災は脅威となるか



チェルノブイリ原発の立ち入り禁止区域の総面積は約2600平方キロメートル。同区域で森林火災が発生したのは今回が初めてではない。自然保護活動家らは、大気中に残留した放射線物質が拡散する可能性を指摘するが、研究者の多くは、リスクは最小限だと主張する。



崩壊した原子炉は強固な石棺で覆われ、2019年にはさらにそれを覆う安全対策用の構造物が建造された。



この構造物は完全に密閉され、その耐用期間は70年から100年とされる。放射性廃棄物の保管場所もしっかりと保護されている。これは鉄筋コンクリート製のセクションで、その壁の厚さは数メートルに達する。もっとも危険な場所はチェルノブイリ原発から10キロ圏内の「赤い森」とされている。この森では放射能汚染の数値が場所によって大きく異なる。



いくつかのエリアは、地球上の他のどこよりも放射能レベルが高い。しかし、別のエリアは状況がまったく異なり、汚染のないきれいな環境にある。立ち入り禁止区域のどのエリアがもっとも危険であるかを理解するため、英国ブリストル大学の研究者らはドローン2機を使い、「赤い森」の放射能レベルに関する詳細な3D地図を作製した。











立ち入り禁止地域に生物は存在するか







© 写真 : イーゴリ・ヒリャク

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事故が発生する前に58の集落があったチェルノブイリ周辺30キロ圏内には、ウクライナベラルーシの領土に広がる放射能・生態保護区がつくられた。事故から15~20年後、自然は放射能よりはるかにたくましいことを示した。人々が禁止区域から去った後、この区域は多くの動物たちの住みかとなった。保護区は世界中の研究者にとって「野外研究所」となった。そこでは「フクシマ-チェルノブイリ」プロジェクトを含むさまざまな国際プロジェクトが実現されている。日本の研究者らは「フクシマ-チェルノブイリ」プロジェクトの一環として、日本の原発の未来を予想するための研究を行っている。現在、チェルノブイリ原発周辺の放射能レベルは、もちろん、事故後よりもはるかに低くい。しかし、原発にもっとも近いウクライナのプリピャチ市は生活に適さないと宣言されている。一方で、チェルノブイリ市にはチェルノブイリ原発の職員が暮らしており、そこには研究者や専門家たちが訪れている。同市には店や食堂、さらにホテルも3軒ある。また立ち入り禁止区域には、「サマショール(自らの意思でこの地に住む人たち)」と呼ばれる人たちが数十家族暮らしている。彼らはそこで家畜を育て、果物や野菜を栽培し、魚を捕って生活している。彼らにとって最大の危険を含んでいるのがキノコだ。キノコに含まれる放射能の含有量は今でも基準の2~3倍に達する。立ち入り禁止区域での永続的な暮らしは危険であることから、時折、彼らの住居を医師や森林監視員、警官たちが訪問している。なお警官は、「ストーカー」と呼ばれる立ち入り禁止地域に不法侵入する若者たちの対応にも追われている。彼らは主に、エキゾチックな景色を背景に自撮り(セルフィー)するためにここを訪れている。





チェルノブイリツアーは危険か



事故から10年から15年が過ぎた頃にはすでに、旅行者たちが合法または非合法にチェルノブイリ立入禁止区域に訪れるようになった。立ち入り禁止区域の複数のエリアへの訪問が安全とされて以来、ゴーストタウンのプリピャチ市やその他のエリアへのツアーが大きな人気となった。毎年、ここには世界中から約7万人が訪れている。また、テレビドラマ『チェルノブイリ』が米国チャンネルHBOと英国のSkyで放送されたことから、ツアーは60%も増加した。







今のチェルノブイリは危険なのだろうか?





チェルノブイリツアー」社は通信社スプートニクに「ルートを離れることがなければ、放射能粒子に遭遇する可能性は極めて少ない。もし旅行者が非合法に遠出した場合、そうした事態が生じるおそれがある。しかし、立ち入り禁止区域の出口では、すべての旅行者が放射能検査を受ける。汚染レベルが基準を上回っていた場合、旅行者は特別な溶液で所持品を洗浄することになる。最悪の場合は、チェックポイントに靴や上着を置いて帰らなければならなくなる。とはいえ、こうしたことは極めて稀にしか起こらない」と説明した。



現在、立ち入り禁止区域には独自の環境が形成されている。崩壊した原子炉建屋を覆う構造物の屋根には約4000個のソーラーパネルが設置されている。原子力発電所太陽光発電所に様変わりした。保護区の試験用の畑では野菜が栽培されている。しかし、ここで農業を行うには安全基準が厳しいため、事業は儲からない。ここには、研究者たちの仕事もたくさんある。彼らは、放射線による影響がもっとも大きい地域で何が起こっているかを注意深く研究し、チェルノブイリのような事故が環境に与える長期的な影響を評価しようとしている。





スプートニク」の特別企画で、チェルノブイリ原発事故に関する他の記事もご覧ください。





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