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イラクの米軍基地に弾道ミサイル攻撃 イランが司令官殺害の報復と宣言 (BBC NEWS JAPAN)

イラクの米軍基地に弾道ミサイル攻撃 イランが司令官殺害の報復と宣言 (BBC NEWS JAPAN)









https://www.bbc.com/japanese/51029461





イラクの米軍基地に弾道ミサイル攻撃 イランが司令官殺害の報復と宣言





2020年01月8日







イラクの米軍基地攻撃、弾道ミサイル映像が公開 イラン国営テレビ





国防総省は7日夜、イラク国内で米軍が駐留する少なくとも2カ所の空軍基地が、十数発の弾道ミサイルで攻撃されたと発表した。ドナルド・トランプ米大統領が「何もかも大丈夫だ!」とツイートする一方で、イランのジャヴァド・ザリフ外相は「我々はエスカレーションを望んでいない」とツイートした。



イラク革命防衛隊は現地時間8日午前1時半(日本時間同7時半)ごろの攻撃について、トランプ氏の命令で3日にイラク・バグダッドでイラン革命防衛隊コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官が殺害されたことへの報復だと宣言。「アメリカのテロ軍に基地を提供したすべてのアメリカの同盟国に警告する。イランに対する攻撃行為の出発点となるあらゆる領土は標的になる」と表明した。国営通信イラン・イスラム共和国放送(IRNA)が伝えた。



国防総省によると、少なくともアル・アサドとアルビルの2カ所で、米兵の駐屯施設付近が攻撃を受けた。被害状況は明らかにされていない。



北大西洋条約機構NATO)は8日午後、被害状況を検分した結果、イラクにおける締約国軍の間にイランの攻撃による「犠牲者はない」と発表した。



イラク軍によると、イランが発射した弾道ミサイルは計22発。アル・アサド基地を狙った17発のうちは2つは不発で、アルビル基地を狙った5発はいずれも有志連合軍の本部を狙っていたという。ロイター通信によると、イラク軍はイラク人の犠牲者はいないと話しているという。



これに対してイラン革命防衛隊のラメザン・シャリフ報道官は、自分たちのミサイルがアル・アサド基地の「35カ所」に当たったと表明。国営テレビで放送された集会で、「アメリカ人たちは急ぎ緊急集会を開いた。まずはトランプが演説すると言ったが、その直後に演説は中止すると発表した。我々の言い分を間違いなく受け取ったに違いない」と述べた。



トランプ大統領は攻撃の第一報から約4時間たった米東部時間7日午後9時45分ごろ、ツイッターで「何もかも大丈夫だ(All is well)! イランからイラクにある2つの軍事基地にミサイルが発射された。被害者と損傷の把握が進んでいる。これまでのところ、順調だ! 我々は世界のどこより最強で装備万全の軍隊を持つ! 私は明朝に発言する」と書いた。







@realDonaldTrump





これに先立ち国防総省は声明で、「7日午後5時半(米東部標準時)ごろ、イランはイラク国内のアメリカ軍や連合軍の施設に対して、十数発の弾道ミサイルを発射した」と発表した。「イラン国内から発射されたのは明らかで、アル・アサドとアルビルで、米軍と連合軍の人員が宿泊するイラク軍基地を標的にした」という。



国防総省はさらに、「我々は、初期の戦闘被害評価を行っている。イランの脅しや行動に対応してここ数日、国防総省は我々や強力国の人員を守るため、あらゆる適切な措置を講じてきた。どちらの基地も、イラン政権がこの地域の米軍や資産を攻撃するつもりだという兆候から、厳戒態勢を敷いていた。状況と対応を検討するにあたり、我々はこの地域におけるアメリカの人員と協力国と同盟国を守り防衛するため、あらゆる必要な措置をとる」と表明した。



アル・アサド基地は近年では過激派「イスラム国(IS)」掃討作戦の拠点となった同基地の駐屯施設には、約1500人の米軍を始め多国籍軍の兵士が宿泊している。



アルビル基地は現地部隊の訓練に使われており、米陸軍は昨年9月、「13カ国の軍関係者と民間人が計3600人以上」拠点としていると明らかにした。







アル・アサド空軍基地(Al Asad Air Base)とアルビル(Irbil)の位置。他にも米国旗マークの場所に米軍や連合軍の基地がある





トランプ大統領のツイートに先駆けて、イランのザリフ外相は8日早朝にツイッターで、「イランは国連憲章第51条にのっとり、相応の手段で自衛権を行使した。我々の市民や政府幹部に対する卑怯な武力攻撃が発せられた基地を、標的にした」と書いた。外相はその上で、「我々はエスカレーションや戦争を望んでいないが、あらゆる攻撃に対して自衛する」と主張した。



このツイートは、事態沈静化を呼びかけるイラン側のシグナルだと受け止められている。



BBCのジェレミー・ボウエン中東編集長は、ザリフ外相のツイートについて「区切りとなる線を引こうとしていたのだと思う。これが自分たちの最終的な行動で、国際法に沿ったものだと言おうとしていたのだろう。(中略)外相とイランは両国の軍事力の不均衡は重々承知している。それだけに、ボールをアメリカ側のコートに打ち込んで、アメリカに『事態をさらにエスカレートしたいのかどうかは、あとはそちら次第だ』と伝えようとしたのだと思う」と話した。





イランの政府首脳は







Reuters

イランのロウハニ大統領






イランのハッサン・ロウハニ大統領は8日午後、イラン国営テレビで放送された演説で、夜間のミサイル攻撃はイランが「アメリカを前に後退しない」ことを示したと宣言した。



AFP通信によると、ロウハニ大統領は「もしアメリカが犯罪を犯せば(中略)断固たる反応があると知るべきだ」、「(アメリカが)賢明ならば、現時点でこれ以上の行動はとらないはずだ」と述べた。



イランの報道によると、大統領はこれに先立ち閣議で、米軍は中東から追い出されるという見通しを示した。ロウハニ氏はアメリカについて「お前たちはソレイマニの手を体から切り落とした。お前たちの足は、この地域から切り離される」と述べたという。



ロウハニ大統領はさらにツイッターで同日、「ソレイマニ将軍はイスラム国、アルヌスラ、アルカイダなどと英雄的に戦った。将軍がテロと戦わなければ、欧州各国の首都は今頃とんでもない危険にさらされていたはずだ。その彼の暗殺に対する我々の最終回答は、この地域からすべての米軍を追い出すことだ」と書いた。



また、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は同日、「世界の横暴な者たちと戦う準備はできている」と述べた。イラン革命の前触れとなった1978年のコム抗議を記念する集会で発言した。



ハメネイ師は、ソレイマニ将軍の「殉教は我々の革命の活力を世界に示した」と言い、米軍基地への攻撃について「昨夜は連中の顔を平手打ちしてやった」と強調。「対決という意味では、こうした軍事行動だけでは不十分だ。大事なのは、合衆国の腐敗した存在が終わることだ」と付け足した。集まっていた群衆は、「アメリカに死を」という合言葉を繰り返した。



BBCのフランク・ガードナー安全保障担当編集委員は、イラン首脳のこうした発言を受けて、「イランの究極的な目標は米軍を中東から追い出すことだ。なので、これでおしまいというわけにはいかないだろう」と指摘している。





ミサイルの破片か







Reuters





ロイター通信の記者は8日、イラク・ドホーク郊外にできた陥没穴を視察する人たちの様子を撮影した。ドホークは、イランが同日未明に攻撃したと発表したアルビル空軍基地から約112キロ北西にある。







Reuters





イラク首相の反応





イラクのアデル・アブドルマフディ首相は攻撃について、8日午前零時を過ぎて間もなくイラクから警告を受けたと明らかにした。ソレイマニ将軍殺害への対応として、イランが攻撃を実施した、もしくは間もなく実施するという警告だったという。首相によると、イランは米軍の所在地のみを標的にすると連絡し、具体的な場所は明らかにしなかった。これと同時にイラク政府は米政府から、ミサイルがアンバール県のアル・アサド空軍基地とアルビル県のハリール空軍基地がミサイル攻撃を受けていると通知があったという。



その上でアブドルマフディ首相は、「あらゆる主権侵害や領土への攻撃を拒絶する」と強調。現在の危機は「壊滅的な全面戦争の危機」で、イラクと地域と世界全体を脅かしていると警告した。



一方で、イラクの強力な親イラン派武装勢力のカイス・アル・ハザリ司令官は、まずはイランがソレイマニ将軍の暗殺に対応した今、将軍と共に死亡したイラク武装勢力のアブ・マフディ・アル・ムハンディス副司令官の暗殺に対応しなくてはならないとツイートした。





トランプ氏はすぐには演説せず





攻撃を受けて、トランプ大統領が国民に対してテレビ演説をするのではないかと憶測があったが、ホワイトハウスは今晩の演説はないと表明した。



消息筋によると、大統領の側近たちが演説原稿を整えていたという。



米報道によると、7日深夜の時点でマイク・ポンペオ国務長官やマーク・エスパー国防長官、マイク・ペンス副大統領はすでにホワイトハウスを後にしたという。



米連邦航空局(FAA)は、アメリカの民間航空各社に対して、イラン、イラクペルシャ湾オマーン湾の上空の飛行を禁止した。「今後も引き続き、国家安全保障当局と連携し、米航空各社や海外の民間航空当局と情報共有していく」とコメントを出した。







IPRES

ソレイマニ司令官の埋葬では群衆が押し合い数十人が死亡した






レバノンを拠点とするアル・マヤディーン・テレビによると、アル・アサド空軍基地への攻撃は、ソレイマニ司令官がイランの出身地に埋葬された数時間後に実施された。さらにその直後に、アルビルへの攻撃が行われたという。



イラン・ケルマンで行われたソレイマニ司令官の埋葬では、押し寄せた群衆が折り重なるように倒れ、少なくとも50人が死亡し、200人が負傷した。



このため、埋葬は予定から遅れて行われた。参列者が口々に「アメリカに死を」、「トランプに死を」と叫ぶなか、イラン政府幹部たちは、あらためて復讐の誓いを繰り返した。



イラン革命防衛隊のホセイン・サラミ総司令官は、「殉教者カセム・ソレイマニは死んだ今こそますます強力だ」と群衆を前に強調した。





各国の反応は







EPA

英下院でイランを非難するジョンソン英首相






ボリス・ジョンソン英首相はイランによる攻撃を非難すると共に、「ただちに事態の沈静化を追求する」よう呼びかけた。英下院で答弁した首相は、「イランはこのような無謀で危険な攻撃を繰り返すべきでない」と述べた。



さらに首相は、「我々が把握できる限り、アメリカ側に死者はなく、イギリスの人員にも負傷はなかった」とし、「中東におけるイギリスの国益保全のためできる限りのことをしている。英艦ディフェンダーモントローズは厳戒態勢を敷き、ペルシャ湾海上輸送を護衛する姿勢だ」と説明しした。



ドミニク・ラーブ英外相は、英米など連合国の部隊が駐屯していたイラク国内の基地をイランが攻撃したことを、英政府として非難するとコメント。「こうした無謀で危険な攻撃を繰り返すのをやめて、それよりも緊急に事態沈静化につとめるようイランに呼びかける」と強調した。



「中東における戦争はダエシュ(イスラム国への蔑称)やその他のテロ組織を利するだけだ」とラーブ外相は述べた。



フランスのジャン=イヴ・ル・ドリアン外相は、「フランスはあらためて(イスラム国に対する)連合の同盟国や協力国との連帯を示し、イラクの主権と安全保障を重視する姿勢を表明する」と述べた。さらに、「暴力の連鎖は終わらなくてはならない。フランスは断固として、緊張緩和に向けて働いていく。我々は全当事者に連絡と取り合い、自制と責任ある行動を促している」と強調した。



欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、欧州連合EU)は、イラクとの核合意を救うため「あらゆる努力をいとわない」と述べ、中東における武器の使用中止を呼びかけた。



一方で、シリア外務省はイランと「全面的に連帯」していると表明し、「アメリカの脅しや攻撃を前にした」イランの自衛権を認めるとコメントした。国営シリア・アラブ通信が伝えた。



シリア外務省はさらに、「アメリカの無謀な政策や、その行動を決定する傲慢な物の考え方のせいで起きている事態の結果は、すべて米政権の責任だ」と批判した。



ロイター通信によると、アラブ首長国連邦UAE)のスハイル・マズルーイ・エネルギー産業相は、「同盟国のアメリカと、隣国のイランの関係がまぎれもなくエスカレートした。中東での緊張悪化は最も望ましくないことだ」と話した。





イラク駐留米軍





イラクの米軍施設攻撃に先立ちトランプ大統領は、イラクに駐留する米軍の撤退はイラクにとって最悪の事態となると牽制(けんせい)していた。



イラク議会は5日、ソレイマニ司令官がバグダッドで殺害された事態を受け、駐留米軍の国外退去を求める決議を採択していた。



この後、米国防総省が撤退に応じるかのように思える、イラク首相宛の書簡が流出。米軍は、協議のための下書きが誤って送付されたものと説明している。



イラクには約5000人の米兵が駐留している。



英外務省はBBCに対して、「現地の状況を確認しようと急いでいる。我々が最優先するのは、イギリス人の安全だ」と話した。



ベン・ウォレス英外相はソレイマニ司令官の殺害を受けて、中東に配備する英海軍や軍ヘリコプターに臨戦態勢をとるよう指示したと説明していた。







EPA

4日にイラクナジャフを通った司令官たちの葬列






どうやってここに至ったのか





以前から悪化を続けていたイランとアメリカの関係は、今月3日のソレイマニ司令官殺害によって一気に先鋭化した。



イラクの海外作戦展開を担当するコッズ部隊を長年指揮したソレイマニ将軍は、国内では国民的英雄として扱われていたものの、アメリカ政府は米兵数千人を死なせたテロリストと呼び、アメリカに対して「切迫した」攻撃を計画していたと殺害理由を説明した。



イランが「厳しい復讐(ふくしゅう)」を誓うと、トランプ大統領は「もしかすると不相応な形で」反撃に応えると発言。将軍は「化け物だった。もう化け物じゃない。死んだ」と非難し、「大きい攻撃を計画していた。こちらにとって悪い攻撃を。誰も文句を言える筋合いじゃないと思う」と述べていた。

イラクの立場は



イランは隣国イラクで様々なシーア派武装勢力を後押ししている。ソレイマニ司令官が殺害された際も、まさにそうした武装勢力の幹部と一緒だった。



その一方でイラクは、アメリカとも同盟関係にある。イスラムスンニ派のISとの戦いを支援するため、数千人の米軍が今もイラク駐留を続けている。しかし、イラク政府はソレイマニ司令官の殺害について、アメリカの行為は両国間の合意を逸脱したものだと批判している。



イラクのアブドルマハディ首相も、米軍が首都バグダッドでソレイマニ司令官を殺害したことに反発し、「イラクの主権を傲慢に侵害し、国の尊厳をあからさまに攻撃した」と非難していた。





(英語記事 Iran attack: US airbases in Iraq hit by ballistic missiles / Reactions to Iran's attack on US





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