「ウクライナの穀物輸出、ロシアの合意停止と再開」(BBC NEWS JAPAN・Sputnik日本)
(BBC NEWS JAPAN)
https://www.bbc.com/japanese/63444049
ロシアが穀物輸出の合意停止、黒海艦隊への「大規模な」攻撃を理由に
2022年10月30日
Reuters
ウクライナ産穀物輸出の再開は、大きな外交的成功と評価されていた
ロシア政府は29日、黒海に面した港からウクライナ産の穀物を輸出する国際合意への参加を停止すると発表した。
ロシアはこの直前、クリミア半島セヴァストポリに駐留しているロシアの黒海艦隊に、ウクライナが「大規模な」ドローン攻撃を仕掛けたと非難していた。
ウクライナ側は攻撃を否定している。同国のウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアの動きは「いささか想定内だ」と話した。
ロシアが侵攻を始めた2月以降に黒海を封鎖したことから、穀物輸出大国のウクライナに数百万トンの穀物が滞留し、世界的な食糧危機が危ぶまれていた。
その後、国連事務総長とトルコの仲介の下、7月に貨物船の安全航行や検査に関する合意文書が作成され、両国がそれぞれ署名。大きな外交的成功と評価されていた。
しかし、ロシアは自国の輸出が依然として妨げられていると主張し、合意を更新しない可能性を以前から示唆していた。
攻撃にはイギリスも関係とロシア主張
ロシア国防省は、29日の攻撃は穀物合意に関わる船舶を狙ったものだと主張し、1隻が軽微な損傷を受けたと説明した。
その数時間後、ロシアの外務省は「ロシア側は『黒海イニシアチブ』に参加する民間貨物船の安全を保証できず、本日から無期限でその実施を停止する」と発表した。
ロシア政府は、ドローン16基が破壊され、機雷除去の掃海艇が持続的な損傷を受けたとしている。
一方で、旗艦のフリゲート艦が被害を受けたという報道もあり、ロシアの主張の真偽は定かではない。
ロシアはさらに、この攻撃にイギリスの部隊が関わっていたと、証拠を示さずに主張。「イギリスの専門家が率いるウクライナ軍の行動と関連している」と述べ、「この人道回廊の機能を確保するロシア船に(中略)向けられた攻撃だ」とした。
9月に起きた送ガスパイプラインの爆破についても、ロシアはイギリスの仕業だと述べている。
一連の主張について英国防省は、ロシアは「壮大なスケールの虚偽の主張を売り物にしている」と反論した。
Reuters
セヴァストポリの港に入るロシア海軍の船舶(2014年撮影)
ゼレンスキー大統領は、ロシアの合意参加停止はきょう決まったことではなく、9月に「ウクライナ産の食糧の輸送船の動きを阻害した」時から始まっていると指摘した。
また、「エジプトやバングラデシュの人々の食卓に食べ物が並ぶかどうかを、なぜロシア政府の一握りの人間が決めることができるのか」と述べ、主要20カ国(G20)や国連などによる強い国際的な措置が必要だと述べた。
米ホワイトハウスはロシアの発表について、「食糧を武器化している」と述べた。
国連の報道官は、国連はロシア政府と連絡を取っていると明らかにした。その上で、黒海穀物イニシアチブは、世界中の人々の食糧を確保するための重要な人道活動だと強調し、「黒海穀物イニシアチブを危険にさらすような行動を、全当事者が控えることが極めて重要だ」と述べた。
ウクライナ政府はこのところ、ロシアが意図的に船の航行を遅らせており、170隻以上が列を作っていると非難している。
クリミア半島への攻撃
ドローン攻撃を受けたクリミア半島は、2014年にロシアが一方的に併合を宣言。ウラジーミル・プーチン大統領にとって非常に象徴的な場所となっている。
ロシアはクリミアに軍を集中させているが、ここ数週間で何度か攻撃を受けている。
セヴァストポリは地域最大の都市で、ロシアの黒海艦隊の母港になっている。
今年4月には、同艦隊の巡洋艦「モスクワ」が沈没。ウクライナは最新の対艦ミサイル「ネプチューン」2発を使った攻撃に成功したと説明している。対するロシア側は、弾薬の爆発で艦体が損傷し、その後「荒れた海」が原因で沈没したと主張している。
さらに10月には、半島とロシア本土をつなぐ唯一の橋で爆発があった。ロシア側は、この爆発で3人が死亡したと述べている。
(英語記事 Russia halts grain deal after 'massive attack')
関連トピックス 国連 食べ物 ウクライナ侵攻 外交 ウクライナ ロシア 軍隊 トルコ
(Sputnik日本)
https://sputniknews.jp/20221029/13574390.html
ロシア、「穀物合意」参加停止=露国防省 セバストポリの攻撃受け
2022年10月29日, 23:50
c AFP 2022 / Yasin Akgul
ロシア国防省は29日、ロシア・国連・トルコ・ウクライナの4者協議の結果として結んだいわゆる「穀物合意」へのロシアの参加を停止すると発表した。ウクライナからの食料輸出を含む「穀物合意」の実現のために海上人道回廊の安全保障を担保していた露黒海艦隊や民間船に対し、同日ウクライナが攻撃を行ったことを受けた措置。
ロシア国防省は次のように発表している。
「10月29日、ウクライナ側が英国の参加のもと、『穀物回廊』の安全を保証していた黒海艦隊や民間船に対して行ったテロを勘案し、ロシア側はウクライナの港からの農作物輸出に関する協定への参加を停止する」
ロシア外務省も同日、穀物合意を「無期限停止」すると発表。ロシア側はウクライナの行為のせいで「黒海イニシアチブ」に参加している民間船の安全を守ることができなくなったとしている。また、ロシア側は参加停止について国連なども参加するトルコ・イスタンブルの共同調整センターに通達したとしている。
「ノルドストリーム」のテロ・黒海艦隊攻撃、英国が計画に参加=露国防省
10月29日, 19:55
同日、これまでにロシア国防省は、ウクライナ側がロシア・クリミア半島のセバストポリにある露黒海艦隊の基地を無人航空機(ドローン)などでテロ攻撃したと明らかにしていた。一連の攻撃の計画やウクライナ軍の第73海上作戦特殊部隊の教練は、ウクライナ南部ニコラエフ(ミコライウ)州オチャコフ市にいた英国の特務員の指導のもと行われたとしている。
ロシア・国連・トルコ・ウクライナの4者の協議の結果、7月に結ばれた穀物合意では、ウクライナの黒海沿岸の港からの穀物輸出のほか、ロシア産の農産物や肥料を世界市場に供給できるよう各種制限を撤廃することが示された。
8月以降、ウクライナからの輸出が再開され、10月7日までに計285隻の貨物船がウクライナの港から出港した。一方、西側諸国の制裁などによりロシア産の輸出への制限撤廃は円滑に進んでおらず、合意の期限を迎える11月19日に向けて協議が続いていた。
ロシア ウクライナ 英国 食料 ロシア国防省
―参考―
- ロシア 「穀物合意」参加停止も焦眉の問題についてはトルコ・国連と対話継続(Sputnik日本)[2022.10.31]
- ケニア、穀物合意に参加するロシア船へのドローン攻撃を受け調査委員会の設置を国連に要請(Sputnik日本)[2022.11.1]
- プーチン氏、穀物輸出合意の停止を演説で表明 破棄ではないと (BBC NEWS JAPAN) [2022.11.1]
(Sputnik日本)
https://sputniknews.jp/20221102/--13621767.html
ロシア、「穀物合意」参加再開 軍事利用しないことをウクライナが保証=露国防省
2022年11月2日, 19:32
c Sputnik / Turkish Defense Ministry
ロシアは、同国とトルコ、ウクライナ、国連の所謂「穀物合意」への参加を再開した。ロシア国防省によると、ウクライナは穀物輸出用の回廊を戦闘行為に利用しないことを保証した。
ロシア国防省は「特にウクライナ側は、『海上人道回廊は黒海イニシアチブ(穀物輸出合意)の条項および合同調整センターに関するその関連条項に従ってのみ使用される』ことを公式に保証した」と発表した。
ロシアは10月29日、「穀物合意」実現のために海上回廊の安全保障を担保していた露黒海艦隊や民間船に対してウクライナが攻撃を行ったことを受け、「穀物合意」への参加を停止すると発表した。「穀物合意」の停止に関する詳細は、スプートニク通信の記事をご覧ください。
関連記事
ロシア ウクライナ トルコ 国連
(BBC NEWS JAPAN)
https://www.bbc.com/japanese/63509052
ロシア、方針転換 ウクライナの穀物輸出再開に再び合意
2022年11月4日
2022年10月30日
EPA
ロシアが穀物輸出合意の参加停止を表明したものの、輸送船は黒海ルートを使い食料の輸送を続けていた。写真は、ウクライナ産の穀物を載せて検査を待つ輸送船(10月22日、トルコ・イスタンブール沖)
ロシア政府は2日、ウクライナ産穀物を黒海経由で輸出するための国際合意に、復帰する方針を明らかにした。ロシアは10月30日に、ウクライナによる攻撃があったと主張し、それを理由に合意参加停止を表明していた。
ロシアの国防省は、黒海に設けられた輸送路について、これを軍事攻撃に使わないとウクライナ政府が文書で保証したとして、輸出合意に再び参加すると述べた。
ロシアが合意参加停止を発表した4日後、トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領は演説で、「穀物輸送は、今日正午時点で以前の合意通りに継続される」と述べた。これに先立ち、トルコとロシアの国防相同士が協議していた。
エルドアン大統領の発表から間もなく、ロシアの通信各社がその内容を認める報道を開始。ロシア国防省報道官は国営テレビに、ウクライナの港や人道回廊を「ロシア連邦への軍事攻撃に使用しない」と保証する文書をウクライナ政府から得たため、ロシアは当面その保証で満足したと明らかにした。
協議を仲介した国連のアミール・アブドラ氏は、トルコの貢献をたたえ、ロシアの判断を歓迎した。
他方、ドイツのアナレーナ・ベアボック外相は、ロシアのゆすりや脅しに屈しない姿勢を国際社会が貫けば、何が実現できるか証明したことになると評価した。外相はドイツ紙ヴェルトに、「ロシアはまたしても飢餓を武器に、穀物を武器にしようとした。国際社会はこれに対して態度を明示した。ロシアのうそは信じないと。世界の最も貧しい人たちが、この侵略戦争からこれほどひどく苦しまずに済むように、私たちは船を送り続けると」と述べた。
国連とトルコ、ウクライナは、ロシアが合意参加停止を発表した後も、それまで通り黒海経由の穀物輸出を続けていた。
ロシアは、自分たちが不参加なままで「黒海イニシアチブ」と呼ばれるこの輸出枠組みを使い続けるのは危険だと警告していた。それでも輸送船は運航を続け、10月31日だけでウクライナからの出荷高は過去最高の35万4000トンに達した。
11月19日が期限
ロシアがウクライナ侵攻を始めた2月以降に黒海を封鎖したことから、穀物輸出大国のウクライナに数百万トンの穀物が滞留した。世界的な食糧価格高騰と食糧危機が懸念される中、国連事務総長とトルコの仲介の下、7月に貨物船の安全航行や検査に関する合意文書が作成され、両国がそれぞれ署名。大きな外交的成功と評価されていた。
合意に基づき、貨物船は安全航行が保証された黒海の人道回廊を通過し、トルコ・イスタンブールの調整センターによる検査を経て、ボスフォラス海峡を通る手はずになっている。
<関連記事>
- ウクライナの穀物載せた最初の貨物船、オデーサを出港(2022年8月)
- ウクライナから穀物輸出再開へ ウクライナとロシア合意「希望の光」(2022年7月)
- ウクライナの穀物輸出、ロシアが合意へ 仲介役のトルコが発表(2022年7月)
この合意は11月19日に期限を迎え、延長には当事者の合意が必要となる。
国連によると、8月3日の運用開始から、400回以上の出荷で、計980万トンの穀物や食用油、大豆などが運ばれた。
他方、ロシア政府は10月30日に、ウクライナが食料輸出用に黒海に設けられた人道回廊を利用して、ロシアの艦隊を攻撃したと主張し、合意停止を表明していた。
国連はその夜に人道回廊を航行中の船舶はなかったと主張した。またウクライナ政府は攻撃の実施を認めず、ロシアは輸出合意破棄の口実を探していただけだと批判した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナは合意の取り決めを履行するとして、ロシアが「世界を飢餓で脅している」と非難した。
穀物輸出に関する方針転換の前日には、ロシア政府はウラジーミル・プーチン大統領がトルコのエルドアン大統領と協議し、合意再開の条件として、黒海艦隊への攻撃について徹底調査が必要だと強調したことを明らかにしていた。
ロシア政治に詳しいコメンテーターのタティアナ・スタノヴァヤ氏はツイッターで、ロシア政府は脱出方法がわからないわなにはまったのだと指摘。「ロシア政府は結局、穀物輸出を止められないことが判明した」と書いた。
ロシアの方針転換が発表されると、小麦や大豆、トウモロコシ、菜種の価格は世界的に下落した。31日に上昇した先物価格も反落した。
(英語記事 Russian U-turn allows grain deal to resume)
関連トピックス 中東 食べ物 ウクライナ侵攻 外交 貿易 ウクライナ ロシア 軍隊
(投稿者より)
この問題に対してケニアが声を上げたという報道に注目しました。この戦争は食糧の絡む世界的な問題であることに改めて気付かされました。供給が絞られれば価格が高騰しますので、貧しい国から飢餓が訪れる可能性が出ます。
合意に至って良かったです。