「ロシア国債―『デフォルト』の意味」(BBC NEWS JAPAN・Sputnik日本)

「ロシア国債―『デフォルト』の意味」(BBC NEWS JAPAN・Sputnik日本)









(BBC NEWS JAPAN)

https://www.bbc.com/japanese/61947229





ロシア国債「デフォルト」に 利息支払いが国外保有者に届かず





2022年6月27日







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ロシアは外貨建て国債の利払い猶予期間が26日に終わり、デフォルト(債務不履行)状態に陥った。ロシアの外貨建て対外債務不履行は、ロシア革命の最中の1918年以来。





5月27日に期日を迎えたドル建て債とユーロ建て債の利息計約1億ドル(約135億円)が、30日間の支払い猶予期間に入っていた。ロシア側は資金的な支払い能力も支払う意思もあるとして、ベルギーにある国際決済機関「ユーロクリア」へ送金したと主張している。



しかし、米ブルームバーグ通信によると、ウクライナ侵攻をめぐる西側の制裁によって、期日までに利息が国外の国債保有者に届かず、債務不履行と見なされた。



ユーロクリアは、ロシア資金の扱いについてコメントはしなかったが、あらゆる制裁を順守すると述べた。



ロシアのアントン・シルアノフ財務相は1998年以来初のデフォルトに至った状況について、「茶番だ」と批判した。



ボリス・エリツィン政権末期の1998年、ロシア政府はルーブル建て国内債務の不履行を宣言したが、対外債務は不履行にならなかった。ロシアの外貨建て対外債務不履行は、1918年以来。当時はロシア革命の最中で、旧ソ連の初代指導者ウラジーミル・レーニン帝政ロシア時代の債務履行を拒否した。





予想されていた事態



ロシア国債のうち約400億ドル(約5兆4000億円)がドルやユーロなど外貨建てで、その約半分を国外の投資家が保有している。



国債のデフォルトは国債発行国の信用を大きく損なうだけに、ロシア政府はこれまで、すべての利息支払いを期限内に確実に実行するとし、それを実現させてきた。



しかし、2月24日のウクライナ侵攻を機に西側諸国が、国際金融ネットワークへのロシアのアクセスを制限したことから、ロシア国外の投資家への支払い手続きが滞り、いずれこうした事態になると広く予想されていた。



とりわけ米財務省が、債権者がロシアからの利払いを受け取れるように実施していた、制裁の特別免除措置を5月25日で終了させ、継続しないと決定した時点で、今回のデフォルトは不可避とされていた。



ロシア政府も、デフォルトは避けられないと受け止めていた様子で、6月23日には今後の対外債務返済はロシアの連邦証券保管振替機関(NSD)経由でルーブル建てで行うと発表していた。債務契約が、ドルなど外貨建てでの返済を定めていた場合も、ルーブルで支払うとした。







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ロシアのシルアノフ財務相国債デフォルトに至った状況を「茶番だ」と批判した






国営RIAノーヴォスチ通信は、外国の投資家が支払いを受け取れない可能性があるとシルアノフ財務相が発言したと伝えた。財務相はその理由について、外国の決済機関などがロシア関連の取引を禁止しているうえ、外国人投資家がロシアからの支払い受け取りを禁止されているからだと説明したという。



ロシアには支払い能力も意思も十分にあるため、現状は本当のデフォルトではないと財務相は強調。RIAノーヴォスチ通信によると、「これはまったくデフォルトには当たらないと、分かる人は全員理解している」、「この状況全体が茶番に見える」と、財務相は述べたという。



デフォルトは通常、政府が返済を拒んだり、経済悪化のため返済資金が調達できなかったりした時に起きる。



国債債務不履行は象徴的にその国の信用に打撃を与えるものの、ロシアが直ちに受ける実際の影響は少ない。債務不履行に陥った国は通常、追加融資が得にくくなるものの、ロシアはすでに制裁によって西側から資金調達できなくなっている。



加えて、ロシアは化石燃料輸出で1日10億ドルの収入を得ているとされる。シルアノフ財務相は4月の時点で、債務を増やす予定はないとしていた。





(英語記事 Russia defaults on debt for first time since 1998





関連トピックス 金融 ウクライナ侵攻 ウクライナ ロシア 経済











(Sputnik日本)

https://jp.sputniknews.com/20220629/11755366.html





ロシアの外貨建て国債デフォルト報道 一体何を意味するのか





2022年6月29日, 06:22







© Sputnik / Vladimir Vyatkin





格付け会社ムーディーズはウェブサイト上に、ロシアが6月27日にドル建てとユーロ建ての2つのユーロ債に関して、不履行に陥ったと発表した。ところがロシア財務省は、これらの銘柄の外国人保有者に対するロシア側の義務は全て履行されたと主張している。デフォルトは実際、生じたのだろうか?





国際的な格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、ロシア国債保有者が30日の支払い猶予期間が満期となる6月27日までに1億ドル(136億円)のユーロ債2件のクーポンの支払いを受けられなかったため、ロシアが対外債務不履行に陥ったと発表した。問題となった2件とは2026年および2036年に満期を迎えるユーロ債。ブルームバーグは先に、ロシアが外貨建ての公的債務の不履行(デフォルト)に陥ったのは、ボリシェヴィキの指導者ウラジーミル・レーニン帝政ロシアの債務をすべて帳消しにした1918年以来、初めて、と早まった報道を行っている。







ロシアがデフォルトに陥ったという認識は誤り=ロシア大統領府ペスコフ報道官

6月27日, 20:30






実際、デフォルトは起きたのか?



ロシア財務省は債務を全額、期限内に履行したと発表した。ドルやユーロでの支払いは2022年5月20日、つまり、米国がロシアの外貨建て国債を処理するライセンスが切れる5日前に、早くも全額が証券保管振替機構に送られている。



ロシアの証券保管振替機構は、ロシアのインフラで権利が計上されたユーロ債の保有者に同日送金し、さらにその先に投資家に送金するために、決済・清算システムのユーロクリアなど海外の仲介機関にも送金していた。資料から明確なように、決済のためにユーロクリアに5月24日にドル建て、5月25日にユーロ建てで送金された支払いを、ユーロクリアの社員は投資家に送金する金融上のチャンスがあったにも関わらず、それを行使しなかった。こうロシア側は主張している。



つまり投資家が資金を受け取れなかったのは、ロシア財務省が送金を行わなかったためではなく、第三者の行為によるものである。このような状況は債務不履行の理由としては国債文書に規定されていないため、通常の法律に基づいて検討される。このためロシア財務省は、被害を受けた外国人投資家に対して、支払いを行わなかった金融機関にクレームを出すよう提案している。





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経済 ロシア 国際











(Sputnik日本)

https://jp.sputniknews.com/20220630/11774671.html





ロシアはデフォルト状態であるが、本当のデフォルトではない?





2022年6月30日, 16:01







© Sputnik / Igor Zarembo





タチヤナ フロニ






今週最大の国際的なニュースとなったのが、欧州がロシアの外貨建て国債がデフォルト(債務不履行)状態に陥ったと発表したことである。しかしながら、ロシア政府はこれを否定した上で、それは技術的な問題によるものだとし、投資家に対する資金支払いの義務は遂行されていると主張している。この問題の本質について、またその解釈におけるロシアと西側の相違について、「スプートニク」が専門家にお話を伺った。また結果的に、こうした「本物とは言い難い」デフォルトがロシア経済に深刻な損害を与える可能性はあるのかどうか質問した。





ロシア高等経済学院世界経済国際政治学部のアレクセイ・ポルタンスキー教授は、これがロシア史上3回目のデフォルトであることは特筆すべきことであるとし、次のように述べている。





「最初のデフォルトは1918年、ボリシェヴィキ帝政ロシアケレンスキー臨時政府の全債務の不履行を布告したときのことです。2回目のデフォルトは1998年。ロシアの経済危機が原因でした。しかし2022年の3回目は原則的に過去の2回とは異なるものです。というのも、ロシアには資金があるものの、西側からの制裁と、外国の金融システムなどがロシア関連の取引を禁止していることによって、支払いを行うことができないという状況にあるのです。つまり、今回の場合、問題は、西側の政治的決定を基礎としたもので、ロシアが財政的に困難な状況に置かれているためではありません。もう1つ、1998年のデフォルトとは大きく異なっている点があります。当時、ロシア政府はロシアの債権者と協議を実施し、支払いを延期するなど、状況を「打開」し、何らかの決定を下すことを可能にしました。しかし現在は、ウクライナ危機が解決されなければ、良好な解決策を見つけることはできません。ですから、現在のデフォルトは、今の段階では出口の見えない状態となっています」。




一方、雑誌「エクスペルト」の金融アナリスト、アンナ・コロリョワ氏は、ロシアのデフォルトをめぐる状況は、政治的なものであり、世界の投資家の前で、ロシアの信用を失墜しようとするものだとの見解を明らかにしている。





「西側とロシアの地政学的対立はかなり昔から続いていますが、現在それはかなり活発な局面に来ています。西側は自ら、ロシアの銀行をSWIFTシステムから除外し、外貨建て国際の支払いを禁止したのです。つまり、西側が「人為的に生じさせた不可抗力」の状況です。ロシアは債務をルーブルで返済する用意があるとし、実際、それを行なっていました。財務省は、債務者に支払いを行うため、自分たちができうるすべての手続きを取りました。しかし、西側はこの支払いを受け付けませんでした。この支払いを受け取るべき外国の銀行や寄託者がそれを債務者の元に届けなかったのです。ただ単に彼らが借り換えを行わなかったということです。しかも、米国のライセンスも意図的に延長をとりやめ、無効となりました。ロシアは債務者に対する義務を遂行するため、できる限りの手を尽くしました。従って、事実、このデフォルトは技術的な性質のものだと言えるのです」。




しかも支払額は1億ドルとそれほど大きな金額ではなかった。ロシアにとってこの財政的負担はまったく問題になるようなものではない。







ロシアの外貨建て国債デフォルト報道 一体何を意味するのか

昨日, 06:22






アレクセイ・ポルタンスキー氏は、よって、デフォルトに関する話はこれで終わりではなく、さらに続きがあるかもしれないと指摘している。





「ロシア国債の債権保有者(額は1億ドル)に続いて他の保有者(より大きな額の支払いを求めて)が続けば、ロシアはクロスデフォルトに認定されるかもしれません。なぜなら、金額が相当、大きなものになるからです。というのも、官民を合わせたロシア全体の対外債務は4500億ドルほどにのぼるのです」。




しかし、現時点で、ロシアのデフォルトは正式なものではなく、本質的に技術的なものである。











というのも、正式なデフォルトを認定するためには、ロシア債権保有者の25%以上が支払いを受け取っていないと宣言する必要があるからである。もしそうなれば、その他すべての外貨建て国債もデフォルトとなり、保有者は強制履行のための訴えを起こすことができる。そしてもしいかなる解決策も見出されなければ(1998年のデフォルトの時もそうであったように)、国外の資産などが差し押さえられることになると専門家は指摘している。



「さらにクロスデフォルトに陥れば、ロシアは西側のみならず、アジアでもお金を借りることができなくなります。世界においては、デフォルト状態の国にお金を貸すことはできない決まりになっています。しかし今回の場合、その結果はグローバルなものになる可能性があります。というのも、わたしが知る限り、クロスデフォルトがロシアのようにかなり大規模な経済を持つ国で起こるというような状況はこれまでになかったからです。今後どうなるかを100%予測するのはとても難しい状況です」。




日本の鈴木俊一財務大臣も似たような見解を示している。ロシアのデフォルトが認定されたのを受け、鈴木氏は、「これが経済にどのような影響をもたらすかについて、現時点で正確に評価するのはきわめて困難だ」と発言している。







G7 自国経済への損害を回避して、ロシアに痛みを与えることはできるのか?

6月28日, 06:00






一方でアンナ・コロリョワ氏は、まともな投資家であれば今起こっていることの本質を理解することができるだろうと指摘している。





「ですから、彼らはロシアに対してではなく、彼らの元に資金を届けようとしない国の政府に憤慨すべきです。つまり、自分たちの国の市民にお金を返さない国の政府に責任があるのです。ただ、西側の報道では、ロシアと投資者を外から結びつけるまったく違う図式を見せています」。




これにより、世界の金融部門では複雑な状況が出来上がっている。そして、それを解決するには、西側の対露措置、そしてまたそれに対するロシア側からの対抗策によって、まだまだ長い年月が必要とされるだろうとコロリョワ氏は述べている。





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