「米FRB、27年ぶりの大幅利上げ。国民生活への影響」(BBC NEWS JAPAN・Sputnik日本)

「米FRB、27年ぶりの大幅利上げ。国民生活への影響」(BBC NEWS JAPAN・Sputnik日本)









(BBC NEWS JAPAN)

https://www.bbc.com/japanese/61821103





FRB、0.75%の利上げを決定 約30年ぶりの上げ幅





2022年6月16日







Getty Images

米連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長。物価上昇のプレッシャーを受けている






アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会FRB)は15日、約30年ぶりとなる大幅な利上げを発表した。高騰する消費者物価の抑制に一段と力を入れる。





FRBは、政策金利を0.75%ポイント引き上げ、1.50~1.75%の範囲にすると発表した。



利上げは3月以降で3回目。アメリカでは先月、インフレ率が予想外に上昇していた。



物価は今後もさらに上昇する予想で、経済の先行きは不確実さを増している。





政策金利は3.4%の見通し



FRBが会合後に発表した予想では、FRBが一般の銀行に貸し付ける際の政策金利は年末までに3.4%に達する可能性がある。連動して、住宅ローン、クレジットカード、その他のローンの借入コストが上昇するとみられており、影響は家計にも及ぶ。



借入コストの上昇は、経済活動を鈍らせ、需要を冷やす。理論的には、物価上昇圧力を和らげることにつながる。



各国の中央銀行も同様の措置を取っている。世界的に長年にわたり企業や家庭が低い借入コストを享受してきたが、その世界経済の様相が大きく変わることになる。





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戦略コンサルティング企業EYパルテノンのグレゴリー・デイコウ主任エコノミストは、「先進国の大半と新興国の一部で、中央銀行が同調して経済政策を引き締めている」と述べた。



「過去数十年間みられなかった世界的な環境だ。世界中のビジネスと消費者に影響を与える」





インフレ率の上昇が引き金



イギリスでは、中央銀行イングランド銀行が16日、12月以降5回目の利上げを発表し、基準金利を2009年以来初めて1%超に引き上げるとみられている。同国の消費者物価は4月に9%上昇している。



ブラジル、カナダ、オーストラリアはすでに利上げを実施した。欧州中央銀行も、この夏に利上げを予定している。







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利上げの影響は住宅業界などに及んでいる






アメリカでは、新型コロナウイルスパンデミックが発生した2020年に、景気を下支えするため金利が引き下げられた。しかし今年になってFRBはすでに、3月に0.25%ポイント、5月にさらに0.5%ポイントの、2回の利上げを実施している。



FRBのジェローム・パウエル議長は当時、より急激な引き上げは検討していないと述べていた。



しかし今月10日になり、インフレ率が5月に8.6%上昇したとの統計が発表された。それが、さらに積極的な動きにつながったと、パウエル氏は会合後の記者会見で説明した。



パウエル氏は、「インフレ率を下げることが不可欠だ」と述べ、0.75%ポイントの上昇は「非常に大きい」と認めた。



そして、「インフレ率は明らかにここ1年間、驚くほど上昇しており、今後も予想外の事態が起きる可能性がある」、「そのため機敏な対応が必要だ」と付け加えた。







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食品価格の上昇がインフレ率上昇の要因の1つになっている






FRBが今回ほど大幅な利上げを発表したのは1994年以来。



政策決定者の行動が遅れ、それを補うため今になって積極的に動いているため、景気後退誘発の可能性が高まっていると、前出のデイコウ氏は指摘する。



「私はますます心配している」、「年末ごろには成長が停滞し、景気後退にかなり近い状況になり、失業率は減少から上昇に転じていても、意外ではない」と同氏は話した。





声明文から異例の削除



FRBのパウエル氏は、アメリカは金利上昇に対応する態勢が整っているとし、依然として雇用が堅調に伸びていると指摘した。



しかしFRBの予測では、今年の経済成長率は1.7%程度にとどまる。これは、3月に発表した予測よりも1%ポイント低い。



失業率は、現在の3.6%から3.7%に上昇し、2024年には4.1%に達すると予想されている。



FRBが会合後の声明文を変更することはほとんどないが、今回は、FRBが利上げをしても労働市場は堅調を維持するだろうという一文を削除した。



この削除についてパウエル氏は、ウクライナでの戦争など、インフレを引き起こす多くの要因は、FRBにとって制御不能なことを反映したものだと説明した。





米国内外への影響



今回の金利引き上げにより、FRBが銀行に課す借入金利は2019年の水準に戻る。長期的にみれば、比較的低い状況が続く。



それでも、今回の引き上げの影響はすでに出ている。







Reuters

アメリカではガソリン価格の上昇が続いている






金利の上昇はドル需要を押し上げ、ドルは年初来10%上昇した。多額のドル建て債務を抱える新興国を筆頭に、他国は圧力を受けている。



アメリカでは金融市場が低迷している。米大企業数百社が対象のS&P500種は、年初から5分の1ほど値を下げた。多国籍企業は、インフレとドル高によって利益が圧迫されていると警告している。



住宅販売も急激に鈍化している。住宅ローン金利FRB金利の上昇に追随しているためだ。



小売売上高も5月は減少したことが、15日発表のデータで明らかになった。ガソリン代の上昇で支出が増えた消費者が、自動車などの高額商品の購入を遅らせていることが影響している。





(英語記事 US makes biggest interest rate rise since 1994





関連トピックス 金融 コロナウイルス 食べ物 ウクライナ侵攻 石油ガス産業 アメリカ インフレ 政治 経済







―参考―













(Sputnik日本)

https://jp.sputniknews.com/20220616/frb27-11568374.html





FRBが27年ぶりの大幅利上げ、インフレ抑制は数年以内に実現





2022年6月16日, 07:00







© Flickr / ctj71081





米国の中央銀行にあたるFRB連邦準備制度理事会)は15日まで開いた会合で、およそ27年半ぶりとなる0.75%の大幅な利上げを決めた。記録的インフレの収束が期待されない中、事前に示していた利上げ幅をさらに拡大した。





通常の3倍にあたる0.75%の大幅な利上げは1994年11月以来、およそ27年半ぶり。FRBのジェローム・パウエル議長は会見で、「直近でインフレは高いレベルでの推移が予想されているが、来年から再来年にかけては急速に低下する」と発言した。FRBは健全な労働市場のもと、消費者物価の上昇率を2パーセントに維持することを目指すと強調した。







ウクライナをめぐる情勢

ガソリン価格の急上昇はウクライナ支援の副産物=バイデン大統領

6月12日, 16:39






米国では5月の消費者物価の上昇率がおよそ40年半ぶりの8.6%に拡大していた。パウエル議長は7月に予定されている次回の会合でも0.5%から0.75%の利上げを実行すると表明した。



また、今回の会合では、今後の利上げのペースについて参加者の予測が示され、2022年末時点の政策金利の見通しは中央値で3.4%と、前回3月時点の1.9%から大きく上方修正されたことから、年内の残り4回の会合でさらに1.75%分の利上げが必要になる模様。





関連ニュース







米国 経済











(BBC NEWS JAPAN)

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-61862403





【解説】 アメリカの金利引き上げ、自分にどう影響? 5つの形





2022年6月21日





ナタリー・シャーマン、ビジネス記者、ニューヨーク

People walk past a currency exchange point in Cairo







Reuters





アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会FRB)は15日、約30年ぶりとなる大幅な利上げを発表した。高騰する消費者物価の抑制に一段と力を入れるためだ。





FRBは、民間の金融機関に資金を貸し出す際の基準金利を0.75%ポイント引き上げ、1.50~1.75%の範囲にすると発表した。



この影響は、アメリカの内外で、経済の隅々にまで到達する。



アメリカの金利引き上げがあなたにどう影響するか、その5つの形を説明する。





住宅ローンなど借金の金利が高くなる



直ちに影響が出るのはアメリカ国内だ。住宅ローンやクレジットカードのローン、学生ローンなど、様々な借金にかかるコストが上がる。



人気の30年固定金利住宅ローンの金利はすでに、2008年以来最も高い6%近くにまで上昇した。アメリカで中央値の価格の住宅を買おうとする人にとって、毎月の返済額はおそらく年初から600ドル(約8万円)は増えているはずだ。



「もっと早くから家探しを始めればよかった」と、オハイオ州の元教師デロレス・ロビンソンさんは言う。ロビンソンさんは今月になって新しいマンションを買ったばかりだ。







教職を引退したデロレス・ロビンソンさん(中央)が新居を探している最中に、借り入れコストが上昇した。「もっと早くに探し始めればよかった」とロビンソンさんは言う





ロビンソンさんは比較的、低金利でローンが組めたので安心したものの、家探しを始めた時よりは金利は高くなっているという。しかし人によっては、金利が高すぎてマイホーム購入を諦めるしかない人も出てくるだろう。



全米不動産業者協会は、アメリカでの住宅販売が今年は9%減ると予測している。



金利上昇のせいで家が買えなくなる人にとって厳しいだけでなく、近年は2ケタの上昇が続いていた住宅価格の伸びも5%に抑制される見通しだ。



もしそうなった場合はインフレ率が下がり、FRBの金融引き締め策は奏功しているということになる。





年金受給額は少なく、ウーバーの利用料金は高くなる



金利が上昇すると、投資先が劇的に入れ替わる傾向がある。一般的な景気への懸念が高まっている今、その動きは特に顕著になっている。



アメリカで「401k(退職金を積み立てる個人年金)」口座などで株式市場に資産を持つ人にとっては、資産価値が急落していることになる。



S&P500種指数は今年1月の初めから20%以上、下落している。これは弱気相場の節目とされている。ナスダックも、その価値の3分の1近くを失っている。







Reuters

景気後退への懸念から株式市場は低迷している






暗号資産などリスクの高い資産も価格を下げており、アメリカ国外の株式市場にも影響が出ている。



投資会社も、配車大手ウーバーのように何年も赤字経営を続ける会社に収益性を求めるなど、高リスク投資から手を引いている。



この結果、配車タクシーや宅配便などの料金が高くなるか、そういう企業は廃業するかもしれない。食料品を注文から15分で配達するとうたったスタートアップ企業が、米ニューヨークでいくつか誕生しては倒産したように



ウーバーの ダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は先月、従業員あての手紙で、新規雇用の縮小を含めた収益化対策について語り、「投資家は、不透明感がある時期は安定を求める」と述べた。



「市場が激変しているのは明らかで、私たちはそれに対応する必要がある」と、コスロシャヒ氏は書いている。





雇用市場の低迷とリセッション(景気後退)リスク



需要の落ち込みから、パンデミック後の労働市場の急成長も終わりつつある。パンデミック直後の企業は激しい競争の中で労働者を求め、高給やその他の手当を提示したため、労働者の多くはより良い職への転職が推進されたのだが。



米不動産大手レッドフィン・アンド・コンパスは今週、業績悪化と金利上昇を理由に、数百人規模の人員整理を発表した。



ウーバーやアマゾン、ウォルマート、テスラ、スポティファイといった大企業も、新規雇用の縮小や停止を発表している。







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アマゾンをはじめとする米大手企業は、新規雇用の縮小を発表している






FRBのジェローム・パウエル総裁は、アメリカの労働市場ではなお需要が供給の2倍近くあるなど、非常に売り手市場になっていると指摘。同国経済が大量の雇用喪失を回避すると期待していると述べた。



しかし、インフレによるコスト高や個人の購買力の縮小などから、アメリカ経済はすでに困難に直面していた。



今年の第1四半期(1~3月)はすでにマイナス成長だった。これは国際貿易データのゆがみによるものだとされているが、小売売上高など他の指標にも暗雲が立ち込めている。



高い金利と弱い経済が合わされば、FRBの対応は、リセッション(景気後退)と呼ばれる持続的な下降を招く危険があるとアナリストらは、指摘する。





強い米ドル



米ドルは今年に入り10%上昇した。FRBの動きにより、投資家がより高いリターンを求めてアメリカに資金を移動させ、ドル需要が高まったからだ。



イギリスでは今週、1ポンドが1ドル20セントを割り込み、パンデミック以来の安値となった。イギリス旅行を計画しているアメリカ人にとっては、これは良い兆しだ。



しかしそれ以外の国では、米ドルの上昇により、ドル建て取引の多いエネルギーや食料といった商品の輸入が割高になる。政府がドル建ての債務を多く抱えている場合は特に、経済的負担が大きくなる。



シティ・インデックスの市場アナリスト、フィオナ・シンコッタさんは、「最も被害を受けるのは新興市場になることが多い」と述べた。







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イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁






アメリカ以外でも高金利



こうした力学が働いているため、アメリカだけが金利引き上げに動いているわけではない。



イギリスの中央銀行イングランド銀行をはじめ、スイスやオーストラリア、カナダなど十数カ国も、ここ数カ月で利上げを発表している。



こうした国の多くは、国内のインフレ率とも戦っているが、世界最大の経済国であるアメリカでの出来事にならってもいる。



クウェートサウジアラビアといったドルペッグ制を採用している国では、アメリカでの利上げの影響は即座に表れる。こうした国々の中央銀行は足並みをそろえて金利を引き上げ、アメリカへの資金流出を抑えようとする。



こうした動きが実際にに感じられるようになると、アメリカの経済情勢が引き続き注目されることになる。





(英語記事 Five ways US rate rise will affect you





関連トピックス 金融 通貨市場 アメリカ 貿易 株式市場 経済







※ 2022.6.23 記事を追加し、見出しを変更しました。