「今後、ロシア産ガスの代金はルーブルで払うこと」(BBC NEWS JAPAN・Sputnik日本)

「今後、ロシア産ガスの代金はルーブルで払うこと」(BBC NEWS JAPAN・Sputnik日本)









(BBC NEWS JAPAN)

https://www.bbc.com/japanese/60950050





ロシア産ガス、「ルーブルで払わなければ供給停止」 プーチン氏が大統領令に署名





2022年4月1日





マイケル・レース、ビジネス担当記者







Getty Images

ドイツのガスパイプライン






ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は3月31日、「非友好国」に指定した国への天然ガスの輸出について、ロシア通貨ルーブルでの支払いを求める大統領令に署名した。代金をルーブルで支払わない場合はガス供給を停止するとしてる。ロシアは、ウクライナ侵攻をめぐる対ロ制裁への対抗措置として、アメリカや日本を含む48の国と地域を「非友好国」に指定している。





この大統領令は、ロシアから天然ガスを購入する国に対し、「ロシアの銀行にルーブル建ての口座を開設」することを義務付けるもの。



プーチン大統領は、「誰も我々にタダで物は売らないし、我々も慈善事業をするつもりはない。つまり、既存の契約は停止される」と述べた。



プーチン氏のこうした要求は、西側諸国の制裁で打撃を受けているルーブルの価値を押し上げるための試みとみられている。



ロシア産ガスを購入する外国人は、ロシア国営企業ガスプロム傘下の銀行ガスプロムバンクに口座を開設し、ユーロか米ドルを振り込まなければならなくなる。ガスプロムバンクはこれらの外貨をルーブルに両替し、ガス代金の支払いに充てる。



ルーブル建て支払いは4月1日の輸出分から適用される。しかし、欧州の買い手からその代金が支払われるのは5月中旬になると、英オックスフォード大学エネルギー研究所の研究員、ジャック・シャープルズ博士はBBCに語った。



このことは、ガス供給が直ちに脅かされるわけではないかもしれないことを示唆している。



ルーブルへの切り替えはロシアの主権を強化するためだと、プーチン氏は説明。西側諸国がそれに応じるなら、ロシアはすべての契約における義務を守るだろうとした。



ドイツはプーチン氏が発表した支払い通貨の変更は「脅迫」に等しいとしている。





ロシア産原油天然ガスに大きく依存



ロシアがウクライナに侵攻して以降、西側諸国はロシアに対して経済・貿易制裁を発動している。しかし欧州連合EU)は、加盟国がロシア産原油天然ガスに大きく依存していることから、アメリカやカナダのような輸入禁止措置は導入していない。



EUはガスの約40%、原油の約30%をロシアから調達している。そのため供給が途絶えた場合、代替を確保するのは簡単ではない。



一方でロシアは現在、EUへのガス輸出で1日当たり4億ユーロ(約542億円)を得ており、この供給をほかの市場にまわすことはない。





「大規模なエスカレーションの恐れ」



複数のアナリストは、ロシアがEU加盟国へのガス供給を停止して「対決を迫っている」とし、「冷戦中、最も緊迫した状況下ですら行われなかった大規模なエスカレーション」が起こり得ると指摘した。



「ロシアの財源にまた大きな経済的打撃を与えることになるだろう」と、市場調査会社フィッチ・ソリューションズのアナリストたちは付け加えた。



ロシアが発表したガス代金の新たな支払いメカニズムが、ユーロでの支払いを全面的に禁止するものなのかどうかもわかっていない。



西側の企業や政府は、ユーロや米ドルで設定されている既存の契約に反するとして、ガス代金のルーブル建て支払いを求めるロシア側の要求を拒否している。



ドイツのオラフ・ショルツ首相は3月30日、ドイツ企業は契約に定められた通りユーロ建て支払いを継続すると述べた。



銀行および資産管理会社インヴェステックの石油・ガス研究責任者、ネイサン・パイパー氏はBBCに対し、プーチン氏の動きは経済的圧力を「欧州に戻す」試みだと指摘。外国為替市場でのルーブルの需要が高まればその価値を押し上げる可能性が高いとした。



「一方で、長期的にみれば、ロシアは信頼できるガス供給者であり続ける必要がある。そのため、実際にガスの供給を制限するかどうかは不透明だ」と、パイパー氏は付け加えた。



「とはいえ、そういうリスクがあるだけでイギリスや欧州のガス価格は過去最高値に迫り、10年平均の6倍に達している。これは消費者が支払う光熱費の急騰につながる」







AFP

ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム1」の開通から10年が経った。写真は2011年11月8日のドイツ北東部ルブミンでの開通式を前に撮影されたもの






オックスフォード大学エネルギー研究所のシャープルズ博士は、双方が状況に順応し、貿易を中断させることなく続けていくこともできるとしつつ、反対に、一方または双方が契約違反を主張して事態をエスカレートさせる可能性もあるとしている。



「事態がエスカレートして、一方または双方が仲裁を求めるような状況になっても、ガス供給が続くことを望むが、供給が停止する可能性は排除できない」





ドイツとオーストリア、緊急事態計画を発動



ガス供給の約半分と原油供給の3分の1をロシアに依存しているドイツは、国民と企業に対し、供給不足に陥ることを想定してエネルギー消費を抑えるよう求めている。ガス供給の約40%をロシアから輸入しているオーストリアは、国内市場の監視を強化している。



ガスに関する既存の緊急事態計画では、起こり得るガス供給不足に備えるため、3段階の措置を設けている。ドイツとオーストリアが発令した「早期警戒段階」はその第1段階にあたる。最終段階になると、政府はガスの配給制を導入する。



ロシアのガスプロム社からガス供給の90%を輸入するブルガリアは、供給停止に備えてガス貯蔵容量を2倍近くに増やす計画の一環として、地下掘削事業への入札を開始した。



ロシアからのガス輸入量が5%未満のイギリスは、供給停止による直接的な影響は受けないとみられる。ただ、欧州での需要増加に伴う世界市場での価格上昇には直面するだろう。



英政府はロシア産ガスのルーブル建て支払いを行う予定はないとしている。





(英語記事 Russia threatens gas cuts if not paid in roubles





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―参考―













(Sputnik日本)

https://jp.sputniknews.com/20220329/10481038.html





ガス ロシアのオファーは市場最上=ペスコフ露大統領報道官





2022年3月29日, 19:36







© AP Photo / Seth Wenig





ロシアのペスコフ大統領報道官は、ロシアは国産ガスの販売に関心を持っており、信頼できる供給国だとし、ロシアのオファーは供給規則性と価格の点で市場最上だと指摘し、ガスの代金をルーブルで支払うことを望まない西側の企業は、ロシアに対する経済戦争の状態で状況が大きく変わったことを理解しなければならないと述べた。





ペスコフ氏はまた、ウクライナからの避難民が強制的にロシアへ移動させられているというウクライナや他の国の主張についてコメントし、彼らは自発的にロシアを訪れていると述べた。



またペスコフ氏は、ロシアのプーチン大統領に対する米国のバイデン大統領の発言についてもコメントし、「個人的な侮辱は国家元首たちの関係に必然的に痕跡を残す」と述べた。







ウクライナをめぐる情勢悪化

バイデン大統領、プーチン大統領についての発言 「外交を複雑にすることはない」

2022年3月29日, 08:24






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ウクライナをめぐる情勢悪化 ロシア ドミトリー・ペスコフ ガス 石油













―参考―













(Sputnik日本)

https://jp.sputniknews.com/20220401/10514941.html





制裁参加で「過ち」と化す日本のエネルギー政策  サハリン2残留は決めたが、先行き混迷で再考必至





2022年4月1日, 18:58







© Sputnik / RIA Novosti





対ロシア制裁が強まる中、原油やガスなどロシアから調達しているエネルギーをめぐって欧州と日本は混乱・困惑状態にある。ロシアは、日本を含む「非友好国」に天然ガスの代金をルーブルで支払うよう求め、近日中にそのシステムを公開すると説明しているが、G7はこれを拒否。いっぽう、岸田文雄首相は3月31日、三井物産三菱商事が出資するLNG開発プロジェクト「サハリン2」から撤退しない方針を明言した。不安定化する日本のエネルギー情勢は今後どうなるのか?エネルギー安全保障の問題に詳しい、ポスト石油戦略研究所の大場紀章代表に話を聞いた。





米国の石油大手エクソンモービルは「サハリン1」からの撤退を早々に発表。「サハリン1」では、経済産業省伊藤忠商事石油資源開発、丸紅、INPEXが出資するサハリン石油ガス開発が3割のシェアを持つ。また「サハリン2」からは英シェルが撤退を表明している。G7と足並みを揃えて制裁に参加する日本は難しい判断を迫られたが、少なくとも「サハリン2」に関しては、権益が維持されることとなった。





日本が権益を失っても、ロシアはダメージなし



大場氏は「妥当だが後手を踏む苦しい判断だ。生産が始まっているサハリンのプロジェクトから日本が撤退し権益を失っても、他国が買い取って継続するだけで、ロシアに痛手はない」と指摘する。





「サハリン1はエクソンがオペレーターとして事業運営を担当しているので、時期を明らかにしていませんが、実際に撤退したら操業に支障が生じる可能性はあると思います。しかし日本企業が撤退しても他企業が買い取るだけで、ロシア側には何の打撃もありません。サハリンプロジェクトは、日本国内や米国の横やりを受けながらも、1970年代から相当の歳月、労力と国の威信をかけて取り組んできたものです。撤退となれば、これまでの日本のエネルギー政策を根本から覆すことになり、あまりにも失うものが大きいと思います。」




日本が権益を持っているからといって、必ず販売先が日本企業でないといけない、ということはない。なので、もし権益は維持するがロシアから買わないとすると、他で調達する必要がある。





天然ガス調達の際、長期契約の場合は価格を石油と連動させることが多く、一方スポット契約の場合はその瞬間のガスの値段が市場取引で決まります。今はスポット価格が高いので、長期契約の方が安く買えます。スポットが安い時もあるので一概に言えませんが、現状では調達のための追加コストがかかることになるでしょう。輸入を止めたり権益から撤退することは政治問題で、言うのは簡単ですが、実際にやってしまうと2度と戻れない。権益は戻らず、輸入も再開する判断が難しくなります。スポット購入により出費が増える、というコスト面以上の影響があるでしょう。」








ウクライナをめぐる情勢悪化

岸田首相 「サハリン2」からは撤退しない LNGの安価で安定供給が先決

2022年3月31日, 18:16





北極圏でのLNG開発プロジェクト「アークティックLNG2」は現在、日本・フランスからの新規投資が凍結状態にある。経済制裁の影響でロシアに送金できなくなっており、このままでは来年にも予定していた操業開始に間に合わない。



「日本が撤退すると更に開発に遅延をもたらす可能性があるので、若干ロシアにもマイナスかもしれません。でもこれも、日露で進めてきた非常に大きなプロジェクトです。施工も日本のプラントメーカーですし、プーチン大統領の肝煎りプロジェクトであるが故に、税制優遇もあります。日本がここから撤退するのは、むしろ日本にとって大きな痛手になります。」





制裁参加で、これまでのエネルギー政策が「過ち」となるか



これまでの日本はエネルギー供給の多様化と、エネルギーの自主開発比率アップを目指し、ロシアのプロジェクトに自ら参加したり、購入量を拡大しようという方針でやってきた。それでいながら、アジア諸国の中で最もアクティブに対露制裁に参加し、可能な限りの制裁を全て発動している状態だ。





「これまでのロシアの資源開発権益のことを考えれば、日本はあらかじめ、もう少し違った立場を表明すべきだったと私は思っています。日露エネルギー分野での協力関係、開発と輸入は、ここ30年ほど、日本のエネルギー政策において非常に重要な位置付けにありました。しかし今回、十分に検討して判断したのか、そうではなかったのかはわかりませんが、西側と一緒に大規模制裁に参加したことで、前提が大きく覆ってしまいました。ドイツの経済・気候保護相は、ロシアからの天然ガス輸入を拡大してきた過去の判断を『ヒストリカル・ミステークだ』と言ったそうです。ロシアからの購入を増やそうというスタンスでやってきた日本も、ドイツの言い方に合わせれば、同じ過ちを犯そうとしてきたわけです。いずれにせよ、日本のエネルギー政策は根本的な再考が必要となるでしょう。」




過去最高の中東依存に懸念



日本は、2020年の段階で原油の92パーセントを中東から調達しており、現在ロシアから調達している4パーセント失うと、さらに中東への依存度が増す。これは戦後最高であり、大場氏が言うところの「エネルギーセキュリティが脆弱な状態」である。





「米国は、ロシア以外の石油生産を増やす目的で、生産を増やす余力のあるイランの経済制裁を解除しようと目論んでいますが、イスラエルサウジアラビアは反発しています。イランが輸出を増やせば経済力がつき、中東のパワーバランスが崩れ、中東の混乱が増していきます。しかしそれでいて、日本は中東への依存をますます高めていく。中長期的には、日本は選択肢がない辛い状況に置かれていきます。」




ロシアのガスを拒否するなら、日本には原発の再稼働というオプションもあるが、再稼働プロセスを早めるとなると、今度は別の政治問題が生じる。また、国全体のエネルギー使用量を減らすと言っても、国民はただでさえコロナで様々な我慢を強いられており、ロシア問題のためにどこまで省エネに賛同が得られるのかは不透明だ。大場氏は「何の判断もしない、という判断をするのであれば、大規模プロジェクトの権益は維持しつつ、コストがかかってもスポットで購入していく。これが一番あり得るシナリオのような気がします」と予想する。





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