モスクワが「北方領土の日」を祝う/エマニュエル駐日米国大使、「北方領土の日」にスパイス?日本支持発言の真意とは(Sputnik日本)

モスクワが「北方領土の日」を祝う/エマニュエル駐日米国大使、「北方領土の日」にスパイス?日本支持発言の真意とは(Sputnik日本)









https://jp.sputniknews.com/20220210/10139975.html





モスクワが「北方領土の日」を祝う





2022年2月10日, 15:51 (更新: 2022年2月10日, 16:06)







© Sputnik / Anton Denisov





アンドレイ イルヤシェンコ





ロシアが南クリル諸島付近で再び軍事演習と射撃訓練を行っている。ニュースになる要素といえば、日本が「北方領土の日」としている2月7日に射撃訓練が開始されたのはこれが初めてだということだろう。これは領土問題に対するロシアの立場が硬化していることを明確に示している。





松野博一内閣官房長官は2月7日の記者会見で、ロシアが同日、国後島周辺で射撃訓練を開始したことを明らかにした。これに先立ち、産経新聞が報じたところによると、2月にクリル諸島宗谷海峡を含む北海道沖の広大な地域で実施される射撃訓練について、日本政府はロシア政府から警告を受け、これに抗議したという。



ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官はこれに対し、「われわれは、もちろん、極東を含むロシア連邦全土で、軍事施設の建設、軍の訓練、作戦行動、演習などのプロセスを継続している。こうした演習は決して隣国の心配や懸念の対象になるものではない」と、お決まりの発言をした。



しかし、2月7日に射撃訓練が行われたのは偶然とは思えない。



これは平和条約に対するロシアの強硬な姿勢を改めて確認するものと捉えるべきであり、特にヨーロッパの安全保障に関する米国およびNATOとの協議において、ロシアの政策が西側に対してより厳しいものになっていることを示している。







日本 南クリル諸島をめぐる米国の姿勢を歓迎=林外相

2月10日, 14:27






ロシア政府が日本を例外的に扱うつもりがないことは、とりわけロシアのラブロフ外相の1月14日の記者会見から見てとれる。会見で外相は以下の点を強調した。



  • 露日関係が、日本の最大の同盟国である米国との関係の「人質」になってはならない。

  • 日本が米国と同盟関係にあることは「両国関係の発展の最適な雰囲気づくりに必ずしも資していない。」

  • 米国の中距離ミサイルが日本の領土に配備されることは「ロシア連邦にとって脅威となる。」

  • ロシアと日本の立場はしばしば異なっている。「私たちが緊密なパートナーでありたいのなら、国際的な議題に関するこうした深刻な矛盾をどこまで克服できるのかについても見極める必要がある」。




こうした発言は、ロシア政府が西側に対して採用している新しい積極政策のスタイルに沿ったものである。要するに、日本は米国との同盟関係にある限り、ロシアからの譲歩を期待すべきではないと協調しているのである。



この日、東京では「北方領土の日」にあわせた毎年恒例の返還要求全国大会がオンラインで開催されていたことも忘れてはならない。この全国大会で日本の岸田文雄首相は、2018年の(二国間)合意を踏まえ、粘り強く交渉を進めていくと述べた。







日本はクリル諸島帰属に関し人工的にヒステリーを増幅させている=ロシア外務省

2月8日, 18:35






首相が2018年にシンガポールで行われたロシアのプーチン大統領安倍晋三首相の会談に言及するのはこれが初めてではない。同会談では、1956年の共同宣言に基づいて平和条約交渉を行うことが確認された。この共同宣言には、平和条約の締結後、四島のうち色丹島歯舞諸島の二島のみが日本に引き渡されると記されているが、引き渡しの時期や手順、条件については明記されていない。



当時、1956年の共同宣言に基づいて平和条約交渉を行うという表現は、日本の立場にある種の変化が起こった、標準的な四島一括返還から、いわゆる「二島先行」に移行した、と受け止められていた。しかし、松野官房長官は(それ以前に岸田首相も同様の発言をしていたが)四島返還交渉における政府の立場に変化はないと述べた。



ロシアには、「二島先行」は島の交渉に限った外交的策略にすぎず、ロシアとの関係を完全に正常化しようという日本の意向を反映していないと考える者は少なくない。



いずれにせよ、ロシアが、自国に対して制裁やプロパガンダの戦争を仕掛けている国々にかつてないほどの寛容さを示していた時期は終わりを迎えたようだ。この新しい条件下での日本の立場の本質がいかなるものなのかは、あらゆるレベルでの積極的な交渉が行われて初めて明らかになる。こうした交渉に関する具体的な計画はまだ公表されていない。そして、射撃訓練は今のところ続いている。







クリル問題:係争中の島の領有権はどう変化していったか

2月9日, 19:59






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https://jp.sputniknews.com/20220214/10171631.html





エマニュエル駐日米国大使、「北方領土の日」にスパイス?日本支持発言の真意とは





2022年2月14日, 23:09 (更新: 2022年2月15日, 02:56)







© Sputnik / Anton Denisov





リュドミラ サーキャン





日本では1981年に制定され、すっかり無味乾燥になってしまった「北方領土の日」だが、これにスパイスを加えようとしたのが、ラーム・エマニュエル駐日米国大使である。ツイッターに投稿した動画の中でエマニュエル大使は、「米国は北方領土問題で日本を支持しており北方四島の主権を1950年代から認めています」と述べた。さらに日露間に平和条約が存在しないことについて「長年の懸案である平和条約の実現に向けた日本とロシア政府の取り組みを支援します」と付け加えた。





翌日、林芳正外務大臣は、記者会見で「今般エマニュエル大使が、共有する価値観と原則のために、米国は日本と岸田氏を支持する旨発信したことを歓迎しております」と発言し、実質、エマニュエル氏に対する感謝を述べた。





当該のエマニュエル氏の投稿のコメント欄には、「ありがとう」「こんなクリアなメッセージを日本の指導者からも聞きたい」など、感謝や賞賛のメッセージが数多く書き込まれた。いっぽう、「ありがとうございます。ヤルタ協定についてはどう思っていますか?」「フルシチョフ時代に2島返還の話があったのを、ぶっつぶしたのはアメリカさんだったような気が」「あなた達が数十年前から支持してくれていたら、返ってきていたかもしれないのに。無責任なことをツイートしない方がいいのでは?」などと、突っ込みを入れる人も見られた。







モスクワが「北方領土の日」を祝う

2月10日, 15:51






この発言は日本メディアでも大きく取り上げられた。数多いコメントの中には賞賛の声もあるが、多くは米国が過去に果たしてきた役割についての指摘である。その一部は「よく言いますね。そんなことをしたら沖縄を返還しないぞ、というダレスの恫喝で日ソ間の北方領土交渉を頓挫させておいて。日露間の北方領土問題の存在はアメリカにとって都合の良いものでしょう。日米の結束を強めるためには共通の敵のアピールが有効でしょうから」「日本と全く関係のないウクライナ問題でロシアに制裁するのに協力しろというわけだからこれくらいのリップサービスはしますよね。真面目に受け取ると損をします」というものだ。



これを受け、ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使もすぐさま、英語で発言した。駐日ロシア大使館ツイッターで彼は、ロシアは南クリルの島々における日本の領土主張を認めておらず、南クリルに対するロシアの領土管轄権の正当性を強調した。「領土の引き渡しは1945年のヤルタ協定で明確に規定されており、ソ連、米国、英国は戦争において、ナチスドイツと、その同盟国である軍国主義国家日本と敵対する同盟国として、これに署名した。」



2021年9月、ウラジオストクで行われた東方経済フォーラムにて、プーチン大統領は、ロシアも日本も、完全に両国関係を平常化させたいと思っているにも関わらず、両国間に平和条約が存在しないことをナンセンスだと述べた。また、プーチン大統領は、安倍晋三前首相と、1956年の日ソ共同宣言に基づいてこの作業を進めていく用意があることを話し合ってきたが、日本側は何度も態度を変えてきたと強調した。プーチン大統領によると、ロシア側は日本に対し、米軍や米国のミサイル防衛システムがロシアの国境付近に設置されるかもしれない可能性について、(それが起こらないように)日本に約束を求めたが、日本はその問いには答えていないという。



プリマコフ記念世界経済国際関係研究所・国際安全保障センター所長のアレクセイ・アルバトフ氏は、エマニュエル大使の発言は注目に値しないと話す。





「今、ロシアと米国とはウクライナ情勢をめぐって関係が先鋭化しており、バイデン米大統領は、大使の口を借りて、自身の同盟国への支持をデモンストレーションしてみせたのでしょう。特に何も新しいことはありません。私が思うに、エマニュエル大使の発言は、プーチン大統領が中国を訪問した時に署名した文書と関係があると思います。その中では、台湾は、中国から切り離せない、中国の一部であると記されています。つまり、今回のことも、同盟国に対し、領土問題においてエールを送ったに過ぎません。そもそもNATO内部でも、スペインとイギリスのジブラルタル問題、トルコとギリシャの小島をめぐる問題、米国とカナダの北極圏における海上輸送ルートをめぐる問題など、領土問題は枚挙にいとまがありません。なので、今回の騒ぎも、そのうち忘れられるでしょう。」




岸田文雄首相は2月7日の北方領土返還要求全国大会で、2018年の日露首脳による合意に言及し、粘り強く交渉を進めると述べた。アルバトフ氏は、対話継続はロシアにもメリットがあると考えている。





「日本との対話は続けるべきだと思います。極東における日本の投資はとても必要です。そこに日本の投資が来ないなら、それは領土問題ではなく、投資環境が悪いことが原因でしょう。もしかすると強固で双方に益のある経済関係が、領土問題の解決に一役買ってくれるのではないかと期待します。」






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