中印国境紛争、次はどうなるか? (DW English)

中印国境紛争、次はどうなるか? (DW English)









(What is next in the China-India border conflict?: DW English)

https://www.dw.com/en/what-is-next-in-the-china-india-border-conflict/a-60586745





アジア





中印国境紛争、次はどうなるか?







新年早々、インドと中国はヒマラヤで進行中の国境紛争について協議を行ったが結論は出なかった。この不一致は、アジアの両雄の間における危険な火付け役となる可能性がある。







インドの兵士がヒマラヤの街道沿いで警備に立っている





インドと中国の間で係争中のヒマラヤ国境は、1年のこの時期には殆ど活動が見られない。



この地域の広い一帯が雪に埋もれ、国境を巡回する部隊は氷点下の状態に耐えている。これはまた、対話の現在の状態を正確に描写している。



2020年6月にガルワン川渓谷でインドと中国の部隊が衝突し、少なくとも20人のインド軍人が死亡して以来、インドと中国は14回の軍事・外交協議を行った。その後、中国軍は自国の軍人4人が死亡したと述べた。



ラダック地域東部のガルワン渓谷は、実効支配線(LAC)として知られる事実上の国境に沿った、2国間の一触即発となっている多くの場所の1つだ。



1月初めのインドと中国の軍司令官間の最新の協議は、3か月前に行われた前回の会議と同様に、進展なしに終わった。



ニューデリージャワハルラール・ネルー大学(JNU)のギータ・コックハー中国研究教授は、「協議には障害が避けられない」と述べた。



コックハー氏はDWに対し、明確に定められていない全長3,500キロメートルの国境をどこで区切るかについて、インドと中国は異なる認識を持っていると語った。ニューデリーと北京の双方とも線引きについて複数の主張をしている。



両国が扱う「問題は根が深く長期に亘り未解決だ。これは特に、国境についての理解が相当かけ離れているからだ」と、彼女は述べた。











ヒマラヤにおけるインドと中国の膠着状態





ニューデリーの中国研究所・所長を務めたアルカ・アチャリヤ氏は、「中国が現在占領している所を明け渡すことは有り得ない」と述べた。



「彼らはそれをしたことがなく、彼らが歴史を書き換えようと考える理由が無い」と、彼女はDWに語った。



インドと中国はそれぞれ相手側が領有を主張する国境の一部を支配しており、ニューデリーは中国軍の侵略を繰り返し非難している。



また、インド政府は国境沿いでの中国の建築活動と報じられた行為に対して行動するよう圧力を受けている。



ニューデリーは数ヵ月後の地方選挙で、「中国にひれ伏したと解釈される決定をすることはないだろう」と、アチャリヤ氏は述べた。



これは全て、国境協議が長期に及ぶ作業になる可能性が高いことを意味していると、彼女は付け加えた。



「2022年には、更に詳細な取り決めに向けた足取りが実際に見えている」とコックハー氏は述べたが、それでも、適切な国境線の確定が直ぐに行われる可能性は低いと付け加えた。



「緊張が生じたときにそれを和らげるための新たなメカニズムがいくつか立案され確立されるだろう。それでも、根本的な問題は残るだろう」と、コックハー氏は述べた。



「私たちが認めねばならないことの1つは、問題の扱い方がインドと中国の双方で異なることだ。これは一部には彼らの政治構造のためだが、グローバルな立場のためでもある」と、コックハー氏は説明した。



「双方の全体的な優位性と国益を考慮すれば全ては段階的に進むだろうし、また、そうすべきだ。これは、途切れることのない議論が前進する唯一の方法であることを意味する」と、彼女は述べた。





致命的な対立は回避可能か



ガルワン事件以降も個々の小競り合いは続いており、死傷者は報告されていないものの45年ぶりに国境で発砲があったという報告さえある。 2020年6月の衝突では、双方の兵士の間で乱闘が発生し死亡者が出た。



複数回の協議にも係わらず、核武装した2つの隣国間で緊張が和らぐ兆候は無い。双方とも数万人の部隊が駐留しており、この背後には戦車や戦闘機を含めた大規模な軍事兵器がこの地域で控えている。



更に報道によると、インドと中国の兵士はガルワン渓谷でそれぞれの国旗を掲げて新年を祝った。



「状況は一定の不安に満ちており、何でも引き金になる可能性がある」と、アチャリヤ氏は述べた。



「多数の部隊と装備の存在を考えると、全体的な状況は高度な不確実性と緊張によって特徴付けられていると思う」と、彼女は付け加えた。



「一方、進行中の協議では、次の衝突を起こさないことにも注力している」と、彼女は指摘した。



コックハー氏は、双方が次の衝突を避けるために出来る限りのことをするだろうと楽観的だ。



「ガルワン事件が国境のどこかで繰り返される可能性は低いが、それでも、今年の前半は兵力引き離しは遅々として進まないだろう」と彼女は述べ、2022年後半に「進歩と結果」を予想していると付け加えた。





国境紛争はインドと中国の経済関係を圧迫する



国境紛争は印中関係の他の側面、特に貿易と投資にも影響を与えた。



ガルワン事件の余波を受け、ニューデリーは中国からデリケートな企業・業界への投資を制限する目的で、インドにおいて数十の中国アプリを禁止した。



また、同国は中国からの輸入品に対して特別な監視を行っている。



しかし、2021年には、両国間の2国間貿易は1,250億ドル(1,120億ユーロ)を超え、中国からの輸入は1,000億ドルという記録的な数字に近づいたと、ヒンドゥー紙は報じた。



「現時点でインド発展の展開における中国の役割という全体的な問題は非常に重要なものだ」と、アチャリヤ氏は述べた。



「自分の腰掛ける枝を切り落とすことは全く論外だが、その枝がたまたまインドと中国の経済関係なのだ」と、彼女は付け加えた。



「インドにはある程度の影響力がある。なぜなら、中国はアジアにおいて同じだけ大きな市場をどこで得られるのか?」と、彼女は述べた。



コックハー氏はこれに異論を唱える。「良好な経済関係が国境問題を薄めるという考えは全体的に馬鹿げている」と彼女は述べ、貿易量の増加にも係わらず、戦略的問題の全体的な勢いが関係に影響を与えていると付け加えた。



「国境問題が全体的な関係にとって重要であり続けるという事実は否定できない」と、コッハール氏は述べた。





編集者:ウェズリー・ラーン





発表 2022年1月28日

記者 アディティヤ・シャルマ(ニューデリー

関連テーマ 中華人民共和国, インド