米インド太平洋軍は予算の倍増と、中国沖合のミサイル基地の環を求めている―報告(Sputnik International)[2021.3.6]

米インド太平洋軍は予算の倍増と、中国沖合のミサイル基地の環を求めている―報告(Sputnik International)[2021.3.6]









(US Indo-Pacific Command Seeks Doubling of Budget, Ring of Missile Sites Off Chinese Coast - Report: Sputnik International)

https://sputniknews.com/asia/202103061082269483-us-indo-pacific-command-seeks-doubling-of-budget-ring-of-missile-sites-off-chinese-coast---report/





米インド太平洋軍は予算の倍増と、中国沖合のミサイル基地の環を求めている―報告







© Flickr / Fort Bragg





アジア・太平洋





2021年3月6日 01:30 GMT





記者 モーガン・アルチューヒナ






中国は社会主義革命から100年の節目を迎える2049年までに「完全な先進国」と「世界の指導国」になるという目標を設定したが、米国はこの人口13億人余りの国が世界秩序―米国が自国に有利なように入念に構築したもの―を覆そうと企んでいると非難した。





今週、インド太平洋軍(INDOPACOM)のフィリップ・デービッドソン司令官が5年間の投資計画を議会に提出し、同司令官はこの中で年間予算を2倍以上の47億ドルに、2027年までに合計274億ドルにするよう求めた。





USNI Newsが閲覧した計画の写しの中で、インド太平洋軍は、「第1列島線に沿った国際日付変更線の西側に精密打撃ネットワークを備えた統合軍部隊を出動させることや、第2列島線上における統合ミサイル防衛、そして、安定を維持する能力や必要な場合には長期間に及ぶ戦闘作戦を実行し維持する能力を提供する分散軍事態勢」を求めている。




第1列島線とはアジア大陸の東岸沖に延びる、北はカムチャツカ半島から千島列島、日本、琉球諸島、台湾、フィリピン、ボルネオに至る一連の群島を指すが、中国はこの区域において武力戦争が発生した場合には米軍の安全な進入を拒否しようと企てるだろう。第2列島線はこれより小さな紐状に並ぶ島々で、マリアナ諸島、グアム、およびインドネシアの一部がこれに含まれる。





太平洋抑止イニシアティブ



この大胆な提案の基盤は太平洋抑止イニシアティブだ。これは、ロシア西部国境に大量のNATO兵器を配置する根拠となっている欧州抑止イニシアティブを手本にしたプログラムであり、2021年の国防授権法に採用された。



米国は約132,000人の部隊がインド太平洋の管轄区域に駐留しており、そのうち28,000人が韓国に駐留し、他に55,000人が日本各地の複数の基地に駐留している。更に、数千人が東シナ海東端のグアムに、また、数千人が豪州に拠点を置き、そして、タイ、シンガポール、フィリピンに小集団の形で散在し、残りはハワイに拠点を置いている。





昨年、米海兵隊は陸上重量装備の多くと、更には航空戦力の一部を廃止し、これと引き換えに新世代の艦船と移動ミサイル・システムを導入する計画を作り、戦力構造のほぼ全面的な再編を始めた。




この再編では、長距離対艦ミサイル(LRASM)・対艦巡航ミサイル(NSM)・トマホーク海上攻撃巡航ミサイル・精密攻撃ミサイルを含む、現在開発中または生産中の複数の長距離ミサイルの全てを発射する能力を持つ、海兵隊のロケット砲を300%増やすことが求められている。







Center for Strategic and Budgetary Assessments

「遠征前進基地」に配備された地上発射ミサイルは、中国の侵略に対する仮想壁を形成し得るものだ






遠征前進基地作戦(EABO)という新しい方針の下で、中国の艦船と航空機の立入禁止区域を設定して彼らの動きを抑制するために、CH-53Kキング・スタリオン大型ヘリコプターにより、このようなミサイル・システムなどを第1列島線に沿った各基地に配備することが急務となるだろう。




これらのミサイルの多くは、2019年に米国が中距離核戦力(INF)条約から撤退したことによって初めて可能になった。1987年に成立したこの2国間条約では、誤解による早まった反撃の可能性を減らす試みとして、ロシアと米国の地上発射地対地ミサイルの射程が制限された。米国はロシアが条約に違反したと主張したが、条約が失効する前でさえ、国防総省は条約を破るミサイルの開発に10億ドルを超える額を投資し、条約が失効した僅か数日後にこのような兵器の試験を始めた。





米国のミサイル基地に対する地域の抵抗



EABOは主に一時的な移動基地の設置を目的としているが、それでも、国防総省は第1列島線に沿った更に常置性の高いミサイル施設も模索している。ただ、この動きはかなり強い反対を受けている。





昨年、日本ではイージス・アショア・ミサイル・システムを山口・秋田の両県に設置する計画に対する地元の抵抗により、東京はこの計画を中止した。このシステムは表向きには朝鮮民主主義人民共和国からのミサイルに対する防衛だが、攻撃ミサイルを発射するように設定を変えることも可能だ。




昨年6月、複数の巨大な米空軍基地を抱える沖縄県玉城デニー知事は、ミサイル施設を島に設置する計画に抵抗の意を示した。「そのような計画があれば、沖縄県民が激しく反対することは容易に想像できる」と、彼はロサンゼルス・タイムズに語った。







© AP Photo / Choo Sang-chul/Newsis

9月、韓国・星州(Seongju)のゴルフコースで、終末高高度地域防衛(THAAD)と呼ばれる米国のミサイル防衛システムが見られる。2017年9月6日水曜日。






2017年に米国が複数の終末高高度地域防衛(THAAD)・長距離弾道ミサイル迎撃設備を配備した韓国・星州でも、地元の抵抗により国防総省再配備計画の中止を強いられた。米国当局は、THAADの強力なXバンドレーダーにより約3,000マイル離れた「野球ボール大」の物体を追跡できる、つまり、韓国から中国全土を見ることが出来ると自慢していた





『悪意あるプレーヤー』



2018年、トランプ政権はワシントンの戦略的優先事項を対テロ戦争からロシアや中国との「国家間の戦略的競争」の方向に転換すると発表した。国防総省とホワイト・ハウスによると、この台頭しつつある2大国は、冷戦終結の際に出現した米国の支配する「ルールに基づく」世界秩序を覆そうとする「悪意あるプレーヤー」だ。





これ以降、米国務省は中国との長期的な対立のための大規模な計画を作成した。計画には中国を政治的に孤立させ、その内部を弱体化させ、中国との戦いが必要な理由を米国の国民に教え込む試みが含まれる。




中国はこれと対照的に、同国の目標は世界秩序を覆すことではなく、西洋と日本による帝国主義支配と低開発のための100年間の不在を終えた後で、近代的な産業大国としてこれに参加することだと述べた。中国は1月に承認した改正国防法において、人民解放軍は防御を役割とすると明確に規定している。





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タグ 接近阻止・領域拒否, 米インド太平洋軍, INF条約, 長距離ミサイル, 島嶼, 中国









(投稿者より)



少し古い記事ですが、10年前の大震災関連の記事や4月に集中した地政学的な動きを優先させました。



ここに紹介されている内容は、中国の軍事力増強を踏まえた米国の新たな軍事戦略です。今後数年~数十年に亘る長期的な話題ですので、1・2ヵ月程度翻訳が遅れても、残しておいた方が良いと思いました。



ロシア・メディアの記事ですから論調が批判的なのは仕方がありませんが、この内容については国内でも多くの専門家の方が分析なさっています。尖閣などの島嶼防衛に関連する指摘も見られます。



作業にあたり、次の記事を参考にしました。