ミャンマー国軍が100人以上を殺害と 国軍記念日のデモで/ミャンマーで将軍たち祝宴 市民100人以上虐殺の夜 (BBC NEWS JAPAN)
https://www.bbc.com/japanese/56553385
ミャンマー国軍が100人以上を殺害と 国軍記念日のデモで
2021年3月28日
Reuters
2月クーデターで実権を握った国軍への抗議が続くミャンマーで27日、抗議に参加した市民十数人が治安部隊に殺害された。死者数は、クーデター開始以降で最大となった。
現地情報によると、100人以上が軍に殺害された。政治囚支援協会(AAPP)は、少なくとも91人が亡くなったとしているが、実際にはもっと多いとみられる。
地元メディア「ミャンマー・ナウ」は、この日の死者は114人と報じた。また国連は、「大量の犠牲者」と数百人の負傷者が出たとの報告を受けたと発表している。犠牲者には子どもも含まれているという。
2月1日のクーデター以降、弾圧による死者は400人以上に上っている。AAPPは、死者数は毎日増加傾向にあるとしている。
「頭や背中を撃たれる危険」
この日は国軍記念日で記念式典などがあり、軍部は前夜、国営放送を通じて「これまでの無残な死者の悲劇から、自分も頭や背中を撃たれる危険があると学ぶべきだ」と警告していた。
アメリカやイギリス、欧州連合(EU)の政府高官は相次いで国軍の暴力を非難。ドミニク・ラーブ英外相は「最悪が更新された」と述べた。
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官も、この日の犠牲者数から「軍部はごく一部のために、大勢の命を犠牲にする」ことが明らかになったと非難。「ビルマの勇敢な人たちは、軍部による恐怖の支配を拒否している」と述べた。
在ミャンマーアメリカ大使館も先に、治安部隊が「丸腰の市民を殺害している」と指摘していた。EUのミャンマー大使は、国軍記念日に当たる27日が「恐怖と不名誉の日として刻まれるだろう」と批判した。
アントニオ・グテーレス国連事務総長も、「非常にショックを受けた」と語った。
人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウオッチのアジア代表副代表を務めるフィル・ロバートソン氏は、「ショッキングで、恐ろしく、残虐で受け入れられない光景だ」と非難した。
「鳥や鶏のように」
Reuters
27日の抗議運動はミャンマー各地で行われた。
ソーシャルメディアでは、銃で撃たれてけがをした人や、遺族の悲しむ姿などが拡散されている。
ビルマ人権ネットワークのキャウ・ウィン会長はBBCに対し、ミャンマー軍には「限度も節度もない」ことが明らかになったと話した。
「これは弾圧ではなく大量虐殺だ」
Reuters
実弾を使った弾圧は、ミャンマー全土の40カ所以上で報告され、首都ヤンゴンや第2の都市マンダレーなどで死者が出ている。
マンダレー管区ミンジャンに住むトゥヤゾーさんはロイター通信に、「(軍は)私たちを鳥や鶏みたいに殺している。自宅にいても」と話した。「それでも私たちは抗議を続ける」。
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マンダレーでは、市民が反全体主義のシンボルとなっている3本指の敬礼で抗議した
デモに参加した市民は、クーデターで政権を追われた与党・国民民主連盟(NLD)の旗を掲げ、反全体主義のシンボルとなっている3本指の敬礼で抗議した。
首都のヤンゴンでは、アメリカ文化センター内でも実弾が発砲された。アメリカ大使館は、この発砲によるけが人はいないとしている。
国軍は何と?
Reuters
マンダレーでは道路にバリケードが築かれた
ミャンマー軍は、この日の市民殺害についてコメントしていない。クーデターを率いたミンアウンフライン総司令官は国軍記念日のテレビ演説で、「民主主義を守るために国全体と手を取っていきたい」と語った。
「要求を飲ませるために国の安定や治安を脅かす暴力は適切ではない」
国軍は先に、一連の銃撃はデモ参加者が行ったものだと主張している。
ミンアウンフライン総司令官は国軍記念日のテレビ演説で、「民主主義を守るために国全体と手を取っていきたい」と語った。また、NLDの党首アウンサンスーチー氏による「違法行為」があったため、国軍が政権を掌握する必要があったと強調した。
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クーデターを率いたミンアウンフライン総司令官
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国軍記念日の軍事パレード
ミャンマー国軍は1945年、第2次世界大戦中の日本の支配に蜂起した軍事組織が始まりとされ、3月27日が国軍記念日として制定されている。
首都ネピドーで開かれた軍事パレードには、ロシアのアレクサンドル・フォーミン防衛次官が出席。ロイター通信によると、中国やヴェトナム、タイからも代表が参加した。
ミンアウンフライン総司令官は、ロシアはミャンマーの「真の友人」だと話している。
アメリカとイギリス、EUはミャンマー国軍に対し制裁を科している。一方、ここ数年でミャンマー軍とロシア軍の関係は深まっている。ロシアはミャンマーに対し、軍事訓練のほか、武器を提供している。
(英語記事 More than 90 killed in Myanmar 'day of terror'/ US condemns Myanmar 'reign of terror')
https://www.bbc.com/japanese/56560577
ミャンマーで将軍たち祝宴 市民100人以上虐殺の夜
2021年3月29日
Reuters
クーデターに抗議して殺害されたキャウウィンマウンさんの葬儀(28日、ミャンマー・マンダレー)
ミャンマーで国軍によるクーデターに抗議した市民100人以上が殺害された27日夜、軍幹部は国軍記念日の祝宴を開いた。市民の虐殺について、12カ国の国防担当制服組トップがミャンマー国軍を非難するなど、国際社会では強い反発と非難の声が高まっている。
国軍記念日の27日、各地の抗議集会ではクーデター発生以来最悪の死傷者が市民の間に出た。アメリカは治安当局が「恐怖の支配」を実施していると非難したものの、国軍のミンアウンフライン総司令官は同日夜、記念日を祝う華やかなパーティーを開いた。国軍記念日は、1945年の抗日武装蜂起にちなんだもの。
国営テレビが放送した会場の様子がソーシャルメディアで拡散。ミンアウンフライン総司令官をはじめ軍幹部が白い制服に黒い蝶ネクタイ姿で、にこやかに赤いじゅうたんの上を歩いたり、晩餐用の大きなテーブルに着席している様子が見えた。
この映像はソーシャルメディアで反発を呼び、ビルマ人活動家のマウン・ザルニさんは「世界の皆さん、私たちミャンマーはもはやマ・ア・ラ率いる武装ギャングを、自分たちの軍たちと呼ばないし、そう認識していない。我々は連中をネピドーのテロリストと呼ぶ。国民が圧倒的に同意するこの見解を尊重してもらいたい。このテロリストたちは晩餐会でタキシードを着ている」とツイッターで書いた。
Dear World, We #Myanmar no longer call or view armed gangs led by Ma Aa La our Armed Forces.
— maung zarni (@drzarni) March 28, 2021
We call them Naypyidaw #Terrorists. Respect our overwhelming public's consensus view. At dinner parties these terrorists wear tuxedo. pic.twitter.com/Gv6Ab8qodJ
国軍記念日の式典には通常、各国の駐在武官が出席するが、今年はロシア、中国、インド、パキスタン、バングラデシュ、ヴェトナム、ラオス、タイの8カ国代表のみが参加した。
祝宴に先立ち、国軍は軍事パレードを実施。ミンアウンフライン総司令官は演説で、「民主主義を護持」したいと述べつつ、「暴力行為」に警鐘を鳴らした。
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国軍記念日を祝う軍事パレード(27日、ミャンマー・ネピドー)
12カ国の制服組トップが異例の声明
前日の市民殺害を受け、28日にはイギリスや日本を含む12カ国の軍や自衛隊の幹部が、異例の共同声明を発し、ミャンマー国軍の暴力行為を非難した。
自衛隊の山崎幸二統合幕僚長やアメリカのマーク・ミリー統合参謀本部議長のほか、オーストラリア、カナダ、ドイツ、ギリシャ、イタリア、デンマーク、オランダ、ニュージーランド、韓国、イギリスの国防担当制服組トップが合同で、「プロの軍隊は国際規範に沿って行動し、仕える人々を傷つけるのではなく、守ることがその任務だ」と強調した。
イギリス政府はさらに、ミャンマー国内にいるすべてのイギリス国民に対して、「できるだけ速やかに出国するよう」強く呼びかけた。英外務省はこの出国勧告は、「3月27日に暴力が大々的に悪化した」ことを受けてのものとしている。「それ以前は、ミャンマーに留まるべき喫緊の理由がないなら出国するよう、勧告していた」と、英外務省は説明している。
ミャンマー国軍は27日、国内40カ所以上で市民に向けて発砲した。主要都市ヤンゴンで数十人が死亡したほか、北部カチンから南部タニンダーリに至るまで、全国的に死者が出ている。
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軍に拘束されたアウンサンスーチー氏のポスターを手に、抵抗を意味する3本指の合図をするマンダレーの人たち
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、この日の犠牲者数から「軍部はごく一部のために、大勢の命を犠牲にする」ことが明らかになったと非難。ドミニク・ラーブ英外相は「最悪が更新された」と述べた。
アントニオ・グテーレス国連事務総長も、「非常にショックを受けた」と語り、国連のトム・アンドリュース特別報告者は緊急サミットの開催を呼びかけている。
しかし、国連安全保障理事会の常任理事国で拒否権を持つ中国とロシアは、ミャンマー国軍をこれまで非難していない。このため、国連安保理を通じた対応は困難とみられている。
葬儀でも発砲か
28日には前日のデモ鎮圧で命を落とした人たちの葬儀が相次いだ。
マンダレーでは、前日に撃たれて死亡したキャウウインマウンさんや、4人の子供がいるエイコーさんなどを弔う葬儀が行われた。
エイコーさんの親族はAFP通信に対して、「近所の人から聞いた話だが、エイコーは撃たれて、そのまま炎の中に放り込まれたそうだ」と話した。「家族の稼ぎ手は彼だけだった。そのエイコーがいなくなり、家族にとってとてつもない喪失だ」。
ロイター通信は複数の目撃者の話として、ヤンゴン近郊のバゴーでは20歳の学生の葬儀で治安当局が発砲したと伝えた。
「彼のために革命歌を歌っていると、治安部隊がいきなりやってきて私たちを撃ち始めた。私たちもみんな走って逃げた」と、参列していた女性は話した。被害者の報告は今のところないという。
27日にデモ鎮圧で大きな被害が出たマンダレーやヤンゴンでは、28日には大規模な抗議行動はなかったものの、北部カターや北部ティーボーなどで抗議集会があったという。
政治囚支援協会(AAPP)によると、28日には12人の死亡が報告されている。
<解説> 死傷者の中には子供も―――モウミイン、BBCビルマ語
14歳のパンエイピューさんの母親は、軍の部隊が通りを自宅へ向かってやってくる音を耳にしてただちに、家の扉をすべて閉ざした。急いだものの、間に合わなかった。気がつけば、血まみれになった娘の体を抱きしめていた。
「娘が崩れ落ちるのを見て、最初はただ何かに滑って転んだのだと思った。けれども続いて、娘の胸から血が噴き出した」。ミャンマー中部メイッティーラから、この母親はBBCビルマ語に話した。
27日の殺戮(さつりく)はあまりに無差別で、その分だけ衝撃的だった。戦場用の武器を手にした治安部隊は、通りで見かけた者は誰でも、手当たり次第に撃つつもりだったようだ。
ここまで残虐になれるのだと、軍は身をもって示した。クーデターが起きて以来、軍の暴力性は一気に別次元のものになった。
軍部も民主化勢力も、どちらも手を緩めるつもりはない。軍は国民を威圧し恐怖に陥れることで「安定と安全」を実現できると考えている。しかし、若者たちが先頭に立つ運動は、ミャンマーから軍部の独裁をこの際あとかたもなく追い出してしまおうと決意を固めている。
増え続ける死者の数を数え続けるのはつらい。特に、命を落とす子供の数は。
(英語記事 Myanmar coup: Generals celebrated amid global fury over massacre)
―参考―
- Joint Statement of Chiefs of Defense Condemning Military-Sponsored Violence in Myanmar (U.S. Department of Defense)[2021.3.27]
- 各国参謀長等による共同声明について(防衛省)[2021.3.28]
- ミャンマー、民間人に対する軍事力の行使を非難 日本を含む12カ国の軍制服組トップが異例の共同声明(大紀元時報日本)[2021.3.28]