ローマ教皇、同性カップルの法的保護を支持 「家族になる権利ある」[2020.10.22]/ローマ教皇庁、「同性婚は祝福できない」と公式見解[2021.3.16](BBC NEWS JAPAN)

ローマ教皇同性カップルの法的保護を支持 「家族になる権利ある」[2020.10.22]/ローマ教皇庁、「同性婚は祝福できない」と公式見解[2021.3.16](BBC NEWS JAPAN)









https://www.bbc.com/japanese/54628101





ローマ教皇同性カップルの法的保護を支持 「家族になる権利ある」





2020年10月22日







Reuters

ローマ教皇の今回の発言は、これまでのLGBTの権利に関する見解から一線を画したものだ




ローマ教皇フランシスコ1世は21日、ローマ国際映画祭で上映されたドキュメンタリーの中で、同性カップルにも婚姻関係に準じた権利を認める「シビル・ユニオン」を認めるべきだとの考えを明らかにした。



ローマ教皇の生涯や職務を描いた、エフゲニー・アフィネフスキー監督のドキュメンタリーの中で、ローマ教皇は「同性愛者には、家族の一員になる権利がある」と述べた。



「彼ら(同性愛者)は神の子であり、家族の一員になる権利がある。誰も見捨てられたり、惨めな思いをさせられたりしてはならない」



そして、「我々はシビル・ユニオン法を作らなくてはならない。そうすれば、(同性愛者は)法的に保護される」と述べた。



ローマ教皇はまた、自分は同性カップルの権利のために「立ち上がった」とも述べた。これは、ローマ教皇ブエノスアイレス大司教時代に、法律で同性婚を認めることに反対していた一方で、同性カップルのための法的保護の一部を支持していたことを指しているとみられる。



教皇の今回の発言は、同性愛者の権利容認について、これまでで最も明確なものと受け止められている。



しかし、BBCのマーク・ロウェン記者は、教皇ははっきりと同性愛者の権利について言及はしたものの、カトリック教会の教義自体が変更される兆しはないと指摘した。同性愛者などの重要な事柄について教義を変更するには通常、まずは内部で議論した後、もっと正式な形で提示されるという。





同性カップルも教会へ



ドキュメンタリーには、教皇が男性同士のカップルに対し、子ども3人と一緒に教会へ来るよう勧めるシーンもあった。



教皇の伝記を執筆したオースティン・アイヴァリー氏はBBCに対し、今回の発言には「驚かなかった」と語った。



教皇ブエノスアイレス大司教として、こういう立場をとっていたので」と、アイヴァリー氏は述べた。「同性カップルの婚姻には常に反対していたが、同性カップルに法的保護を与えるためのシビル・ユニオン法を教会が推奨すべきだと信じていた」。



カトリック教会の現在の教義では、同性愛は「常軌を逸した行為」とされている。



ローマ教皇庁(ヴァチカン)は2003年、「同性愛者の尊重は、同性愛者の行動や同性愛カップルの法的承認につながるものでは決してない」とした。





同性愛について教皇はこれまで何と



教皇LGBT性的少数者)の権利に関する今回の発言は、同性愛者を完全にではなく部分的に支持するという内容だった。



2013年に出版された「天と地の上で( On Heaven and Earth)」の中で、教皇は、法的に同性愛カップルを異性同士の結婚と同等にみなすことは、「人類学的退行」になりうると述べていた。



また、同性同士のカップルが養子縁組を認められれば、「子どもたちに影響を与える可能性がある。(中略)すべての人に男性の父親と女性の母親が必要だ。それが、彼らのアイデンティティの形成を助けるからだ」とも述べた。



教皇は同年、同性愛行為は罪だと断じるカトリック教会の立場を再度表明した一方で、同性に対する性的指向は罪ではないとした。



「同性愛者で、神を求める善意のある人間を、私は裁けるだろうか?」と問いかけた。



2014年には教皇が取材に対して、同性愛カップルのシビル・ユニオンへの支持を表明したと報じられたが、ローマ教皇庁の広報はこれを否定した。



教皇はその後2018年には、聖職者の間での同性愛は「深刻な問題」で「心配」だと述べた。





(英語記事 Pope indicates support for same-sex civil unions











https://www.bbc.com/japanese/56410862





ローマ教皇庁、「同性婚は祝福できない」と公式見解





2021年3月16日







Getty Images

教理庁長官のルイス・フランシスコ・ラダリア・フェレール枢機卿(中央)は、カトリック教会は同性婚を祝福することはできないとの公式見解を示した






ローマ教皇庁(ヴァチカン)は15日、カトリック教会は同性婚を祝福することはできないとの公式見解を示した。



カトリック教会では、司祭などが教会の名の下に人々に祝福を与える。



教義および道徳の保持と促進を担う教理省は今回、神が「罪を祝福」することは「不可能」だと説明。一方で、同性愛関係には「前向きな要素」があると述べた。



教皇フランシスコ1世は昨年10月に上映されたドキュメンタリーの中で、同性カップルにも婚姻関係に準じた権利を認める「シビル・ユニオン」を認めるべきだとの考えを明らかにしていた。



フランシスコ1世はこの日、教理省の声明を承認。公式見解は「不条理な差別の形を示すためではなく、典礼上の真実を確認するためのものだ」と述べた。







Getty Images

教皇フランシスコ1世は2013年、「同性愛者を私は裁けるだろうか?」と言う有名な言葉を発している。






ロイター通信によると、ドイツやアメリカの一部のカトリック教区ではこのところ、性的マイノリティー(LGBTQ)の信者を歓迎する一環で、同性愛カップルを祝福する動きが出ていた。



教理省は今回、教皇庁に寄せられた「教会に同性婚を祝福する力はあるのか」という質問に対し、「いいえ」と回答。教義で秘跡とされているのは男女間の婚姻関係であり、その祝福を同性カップルに拡大尾することはできないと述べた。



「この理由から、たとえ安定した関係やパートナー同士であっても婚外性交渉(子孫を残す可能性のある男女の不変な婚姻関係ではないもの)は祝福できないのと同様、同性同士の関係性も祝福できない」と、教理省は説明している。





人々の反応は?



この回答に反発して、ソーシャルメディアでは同性婚の写真の投稿が相次いだ。



2020年の米大統領選に立候補していたピート・ブダジェッジ米運輸長官の夫、チャステン・ブダジェッジ氏も、2人の写真と共に、「愛は愛、同性婚は合法、教皇はあなたの地元の担当者じゃない、すてきなシーツとワインを予約して、平和と祝福を」とツイートした。











進歩派のカトリック・グループも、教皇庁の発表に懸念を表明した。



カトリックス・フォー・チョイス(カトリック教徒に選択を)」のシャーロット・クライマー氏はツイッターで、「LGBTQであることは選択ではない。性的マイノリティーの人は神によって造られた。ヴァチカンなどの宗教当局が何を言おうと、このように生まれ、この状態で完璧なのです」と語った。



同性愛者のカトリック信者グループ「New Ways Ministry」のフランシス・デバーナード会長は、教皇庁の声明は「驚くものではないが、失望した」と述べた。





フランシスコ1世の過去の発言



教皇は2013年、「同性愛者を私は裁けるだろうか?」と言う有名な言葉を発している。



また昨年のドキュメンタリーでは、「(同性愛者)は神の子であり、家族の一員になる権利がある。誰も見捨てられたり、惨めな思いをさせられたりしてはならない」と述べた。



ローマ教皇庁はこのドキュメンタリーの上映後、教皇の発言は文脈から引き離されて引用されたものであり、同性婚を支持するものではないと説明した。





(英語記事 Catholic Church 'cannot bless same-sex unions'







―参考―

教理省:同性間のユニオンに対する祝福をめぐって(VATICAN NEWS)[2021.3.15]